吉村昭のレビュー一覧

  • 関東大震災

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    ネタバレ

    あまり知らなかった関東大震災のことをしれてよかった。本所被服本廠跡のことは全然知らなかった。朝鮮人のことは、中学の教科書とかにでてたかな?という感じで、学びが多かった。関東大震災から来年で100年。生きてるうちに経験するかもね

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    2022年05月09日
  • 零式戦闘機

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    面白かった。飛行機の技術後進国だった日本が堀越二郎等の必至の努力と独創性で欧米を凌駕する驚愕の飛行機零戦を開発した。開発後の活躍とその黄昏を描いた作品。
    普通新兵器は2年もすれば他国に追いつけれるものだが戦争末期までこの零戦はナンバーワンの性能を保っていた。逆に考えるとと物凄い先進的な技術なので他国が追いつく迄に時間を要したということ。
    最後の方で地震の後空襲を受け工場が凄惨な状況になる。
    描写が精緻なだけに暗澹たる気持ちになった。

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    2022年03月20日
  • 新装版 間宮林蔵

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    吉村先生、記録文学はハードボイルドです。主人公の心情を抑えながらも乾いたと言うより客観的文体で、人物を追います。北方先生が題材【林蔵の貌】にしたのもわかります。凄い日本人がいました。もっと知られて良いですね。NHKでドラマにして欲しいです。

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    2022年02月23日
  • 三陸海岸大津波

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    知らなければならない。知って正しく恐れなければならないことがある。
    南三陸海岸大津波。
    この言葉ですぐに思い出すのは衝撃的な3.11の圧倒的な自然の猛威とそれによってもたらされた甚大な被害。
    あれだけでなく、過去に幾度となく襲ってきた津波。そしてその度に壊され失われる家や船やひと。人間関係や仕事。
    自然の激しさと人間の無力さを痛感しながら、それでも生きる、その土地を選び生き抜く人々の覚悟に言葉を無くす。
    記録文学の持つ力をまざまざと感じた。
    昭和の桃の節句に襲った津波を生き抜いた子どもたちの作文が胸を打つ。
    日本人として必読の書のリストがあるとしたら、必ず入れなくてはならない一冊だと思う。

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    2022年01月30日
  • 冬の鷹

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    ターヘルアナトミアと、当時の辞書を手に取って、解体新書を作る過程を試してみた吉村昭さんが書いた、解体新書創造がメインストーリーとなる前野良沢物語。
    世の中は、さほど動いていないように思えて、激動の時代だった江戸中期のストーリーから、現代に繋がるメッセージはとても大きいものでした。
    是非、人生の挫折ではないかと、壁に突き当たっている人に読んでもらいたい一冊です。
    前野良沢さん、生まれて亡くなるまで壁しかない人生。でも、その生き方にはなぜか憧れる。

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    2022年01月19日
  • 戦艦武蔵

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    非常にリアリティのある『戦争』という一場面を武蔵という存在を通して知ることができました。
    人は、集中してしまうと、その意味を忘れてしまう。
    そのことを改めて警戒しておかなくてはと思わされました。

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    2022年01月06日
  • 魚影の群れ

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    1950年頃愛媛県戸島で起きたネズミ大量発生騒動をモデルにした「海の鼠」など4編。自然災害を書かせたら神。時代も環境も違うのに臨場感があって、村人の一人になって一緒に毒ダンゴを作ってる気持ちになった。名作揃いの吉村昭氏の著作の中でも決して引けを取らない。高熱隧道や羆嵐と同じレベルの衝撃。短いページの間に何度も期待と歓喜と失望が繰り返される。1960年代から70年代にかけて吉村昭と新田次郎の新作が読めてたなんて、その時代の読者は幸せだなぁ。

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    2021年12月03日
  • 背中の勲章

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    太平洋戦争を日本人捕虜の視点で綴った記録文学。敢えて捕虜第2号を扱うあたりが著者らしい。死を覚悟した監視行動、捕まってからの心理、他の捕虜たちとの結束や諍い、帰国してからの葛藤...。ありきたりだが、歴史は繰り返してはならないことを実感させてくれる一冊。

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    2021年11月18日
  • 海の史劇

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    日本海海戦を中心にその前後に起きた様々な出来事も詳らかに...。意思決定、群集心理、傲慢、侮り、悲哀、憐憫...。
    太平洋戦争に突入してしまう下地を作ってしまった圧倒的な勝利が歴史的な転換点であったことを改めて実感...。示唆に富んだ秀逸な作品である。脱帽。

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    2021年10月20日
  • 深海の使者

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    どうしてこんなにも細かな記述ができたのだろうと思いつつ読んでいたのだが、巻末の半藤一利氏による解説を読んで納得した。作者は、何より当事者の証言を丹念に取材することを第一にして記述に取り組んだということである。
    それは、長期間の潜航による艦内の様子など、まるで映画を見ているかのような、迫真の表現となって結実しているのである。
    太平洋戦争のあまり知られざる一面を取り上げた作品として、特筆すべきものであると確信する。

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    2021年10月16日
  • 冷い夏、熱い夏

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    読むのを止められなくなって、一気に読んでしまいました。最後にこれが、作者の体験した実話だと知りました。

    弟の凄絶な癌との闘いの様子に、正直ほぼ恐ろしさだけを感じて読み終わったくらいです。


    たくさん兄弟がいる中の、末の2人である作者と弟。上の兄弟とは歳が離れていることもあり、2人の結び付きは幼い頃から強く、作者は弟のためにずっと傍に寄り添います。弟に「癌」という病名を隠して…。

    癌であることを本人に知らせないこと、モルヒネの取り扱い方など、医療に関してど素人の私でも、
    かなり違和感を感じたのですが、1980年代前半の話であったことに深く納得しました。

    そして、この40年間でものすごく進

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    2021年09月30日
  • ポーツマスの旗

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    日露戦争後、ロシアとの講和条約交渉に臨んだ外相・小村寿太郎の物語。旅順を攻略し、日本海海戦に勝ったとはいえ、既に日本は兵も物資も底をついており、戦争継続が不可能な状態で交渉に臨む。しかし、実態は国民には知らされず、我慢を強いられた人々は賠償金などの獲得を当然のものとして期待している。一方のロシアはまだ余力があり、極めて強気な姿勢で交渉に臨んでくる。
    この困難な状況での緊迫した交渉の場面がスゴイ。冷静に強く交渉し、ポーツマス条約の締結を実現する。しかし、賠償金は取れない。小村が出国時に考えていたように、日本では条約に反対する人々の暴動が発生する。
    小村寿太郎という人の強さと弱さを見事に描きつつ、

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    2021年09月09日
  • 高熱隧道

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    黒部峡谷に発電所を作るためにトンネルを掘り続けた技師と人夫の文学。雪崩が起きるような場所なのに、100度越えのトンネル内で作業をしなければならないという、人がいられる環境ではない工事の極限さが書かれています。
    この本はあくまでも小説なので、本当の話ではないですが、作中に出る工事や事件は文献を調査し表現されているため、現実にこういうやり取りがあったかのように錯覚させられます。
    全般的に表現されているマッチョイズムは現在でもある意味受け継がれており、会社における上司と部下の関係に垣間見えますね。
    いやはや、恐ろしいものを読ませていただきました・・・。

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    2024年05月11日
  • 殉国 陸軍二等兵比嘉真一

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    太平洋戦争末期の沖縄戦を14歳男子の視点から綴る記録文学。
    なんの疑念も持たない愛国心、忠誠心を育んだ軍国主義教育の結果、人の死になんの感慨も湧かなくなる過程...。虱、虱、蛆、蛆、蛆...。目を背けたくなる描写の数々...。後世に残すべき一冊。

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    2021年08月04日
  • 雪の花

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    吉村昭氏にはまってます。精力的に詳細な調査の裏付けに基づいた作品は説得力があります。この作品も読み始めたら止まらなくなります。主人公と作者の情熱がダブルで迫ってきます。この主人公のような生涯をかけての努力によって、今の我々の幸せがあることを実感します。吉村氏のおかげで先人の偉業を知れて感謝です。

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    2021年07月14日
  • 大本営が震えた日

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    まだあの戦争から100年も経っていないんだ。
    太平洋戦争の末期じゃなく今から始めるって時ですら、こんなに薄氷を踏むような浅はかな戦略だったんだ

    いかにあの時代が人命より国家を重視してた証左だ

    それは、無理やり五輪を開催しようとしている今の日本と重なる

    こんなに人名を軽視していた時代から、
    まだ100年すら経ってないんだな。

    ファクトフルネスじゃないけど、いろいろあるけど世の中は少しずつ良くなってるんじゃないかと信じたい

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    2021年06月29日
  • 殉国 陸軍二等兵比嘉真一

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    14歳の少年が目撃した沖縄戦。

    吉村氏の取材力によって、壮絶な沖縄戦の実態がノンフィクションのように描かれる。

    鉄血勤皇隊と国のために奉仕、死もいとわない少年たち。
    一人でも多くの米兵を殺し、生き恥をさらさずに死ぬ、純真な心はそれを当然のこととして、強く思い、願う。

    しかし、戦況が悪化するにつれ、友人や沖縄の市民の死を目撃するにつれ、非日常であるはずの「死」が日常のものとなり、何の感慨ももたなくなってしまう。

    風化させたくない沖縄戦の実相。

    あの場所で何が起きたのか。
    読み継がれるべき本だと感じた。

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    2021年06月27日
  • 透明標本 吉村昭自選初期短篇集II

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    吉村昭の初期短編集のその2。表題作含めて7編が収録。
    表題作でもある「透明標本」は大学で検体された遺体から骨格標本を作ることを生業とする男が独自に編み出した技術で透明な骨格標本を作ることに取り憑かれる話。「蔵六の奇病」など日野日出志的ロマンチシズムを感じさせる作品。
    評価の高い無気力な若者たちの集団自殺を扱った「星への旅」も面白いが、商品にならないカラーひよこを墓地に捨てに行く少年を描いた「墓地の賑わい」が山野一の「四丁目の夕日」的な地獄味があって印象的。

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    2021年06月21日
  • 大黒屋光太夫(下)

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    面白かったー。読後、まずはどれだけが事実かが非常に気にになったが、どうもかなりが史実に基づいていると知り尚更に読んで良かったと思った。

    あの時代に、言葉が一言も通じない外国に流れ着き、長い年月を過ごさなくてはいけないというのはどれだけの事だったか想像を絶する。仲間が一人ずつ亡くなっていったり、絶望していったりするのも胸が締め付けられた。

    そして、過酷な状況においては賢くないと生き残れない、という事も改めて気づく。

    光太夫に諦めてほしくない、と強く思いながら読み進め、一緒に悲しみ、苦しみ、焦れて、歓喜する。とても良い読書ができた。いつの時代も、異国の人であっても心を通じ合える人はいる、とい

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    2021年06月02日
  • 花火 吉村昭後期短篇集

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    吉村昭『花火 吉村昭後期短篇集』中公文庫。

    吉村昭が昭和後期から平成18年に没するまでの後期に発表した作品群より遺作『死顔』を含む16篇を収録した短編集。いずれも身近にある『死』を感じさせる短編ばかり。自らの死期を悟り、描いたのだろうか。

    『船長泣く』。三崎から出港した太平洋を漂流するマグロ漁船の中で、飢餓と渇きの狭間に繰り広げられる船長と船員の葛藤を描いた秀作。史実に基づいた記録文学なのだろう。

    『雲母の柵』。監察医務院に勤める新米検査員を主人公にしたサスペンスフルな香りのする短編。日々変死体と向き合う中、同期の3人の中の女性検査員が突如辞職する。彼女に僅かばかりの好意を抱いていた主人

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    2021年05月29日