吉村昭のレビュー一覧
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昔読んだ漫画の中にモチーフとして登場していて、ずっと印象に残っていたが読むのが怖いような気がして保留にしたままになっていた。数十年の時を経てやっと購入。死をテーマにした中短編集で、思っていた通り暗い雰囲気に包まれた作品たちだけど、描写は素晴らしく美しい。透き通るような骨標本や暗闇に星が瞬く場面が頭の中で鮮明に映像化される感覚になる。ジャンルはかなり違うけどその感覚は宮澤賢治を読んだときに感じたものと重なる。これが戦時中を生きた人の死生観なのか。高校時代、現国の先生が太宰治の「人間失格」を評して〝精神的に参っているときに読むとヤバい〟と言ってたけど、この作品もどこかメルヘンめいた世界に引き込まれ
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ネタバレ 購入済み
目を離せない展開
作者の徹底した現実感の表現は、どの作品でも心を捉えて離さない。関係が薄いのではないかと訝るプロローグが物語の大きな問題と深く関わってきたり、物語の中では些細な出来事に過ぎないのではと思っていると、皮肉なエピローグにつながったり。単なる事実の羅列のように見えながら、小説としての構成の見事さもその一因かと。
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ネタバレ
ノンフィクションを読みたいと言ってた
Fの常連さんに、吉村昭をお勧めしたら
どハマりしてるようだったので
私も久々に、ご相伴にあずかろうかと 笑
速筆の吉村氏、とにかく著作が多い
もう既に、他界されてるので
これ以上、増えることは無いにしても
制覇するには、気が遠くなるなぁー (^-^;
しかし、好きな作家のデビュー作は
しっかりと押さえて置かないとね
学生時代からの短編や
同人誌などを含めたら、ちょっと違ってきますが…
「記録小説」というジャンルを確立させたという意味では
本書は、デビュー作と言っても過言ではないようです
日本帝国海軍からの極秘依頼で
三菱重工長崎造船所で -
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ネタバレ
随分前に、柳田邦男の「零戦燃ゆ」を読んで
全6巻という、あまりにも長くて難しい作品だったため
太平洋戦争モノでも
零戦関係は、もういいかなぁーと思ってたところ
吉村昭の『戦艦武蔵』を読んでしまったからには
零戦も避けては通れないよなぁーと 笑
吉村先生なら、きっと
違う切り口だろうと、期待を込めて…
三菱名古屋航空機製作所で
初めて、艦上戦闘機が制作されたのは
大正十年十月
国産の航空機は存在せず
機体、発動機と共に
外国製航空機を輸入していた
その後も、外国機の制作権を入手して
外国人技師を招聘
その技術指導の元に
設計製作に従事していたに過ぎなかった
日本の造船技術が
世 -
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ゴールデンカムイに影響されて読むことにした。
北海道開拓の多くの部分が囚人によって行われていたこと、囚人には、凶悪犯だけでなく、佐賀の乱、萩の乱、神風連の乱、西南戦争といった士族の反乱者・秩父事件などの自由民権運動の激化事件の参加者たちもいたこと、初めて知った。
自由民権運動の闘志が結構収監されてるの、知らなかったな。
「日本の民主主義は戦後、アメリカの占領軍によってもたらされたもので、人民が勝ち取ったものじゃ無いからありがたみが染み付いてない」
っていう言説をよく見るけど、明治から昭和にかけての自由民権運動について知れば知るほど、そんなこと言えちゃうのは悲しいなと思う。
秩父事件、とか -
購入済み
さすがだ
淡々と事実だけを追った筆致だからこそ人間の深い哀しい業を感じる。これだけ読み手を惹きつける文章力はすごいと思う。最近の添加物だらけの文章を書く作家の方に一度是非読んで欲しい。偉そうにすみません。
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銀四郎おやじ
三毛別のヒグマ襲撃事件の事はテレビやウィキペディアで知り、興味を持ったのでこの本を読んでみた。他のレビューにもあるとうり、確かにヒグマ怖えなあと思ったけれど、その怖さは他のメディアで見聞きしたときの方が怖かった。それはこの本がヒグマの怖さを誇張することなく表現しているからだと思う。そこに住む人々の暮らしや、集団の弱さみたいなものを意識しながら読んでいた。何より銀四郎おやじの存在感たるや、ヒグマ以上じゃないかと思う。
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海の史劇について
私は戦史 軍艦 艦船模型が好きで、もう長いことやっています。この本は吉村昭の代表作の1冊です。「戦艦武蔵」も読みました。
吉村さんの知識には脱帽です。まだ半分も読んでいませんが、楽しく読んでいます。日本海海戦での日露の戦い、内容は知ってるが読みやすいです。 -
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上巻に引き続き高野長英の逃避行。発覚した場合自分の家が没落するという大きな危険を孕みながらもこれだけの人々にゆく先々で助けられる姿や、薩摩藩・宇和島藩等までも協力する様子を見て高野長英という男が只者ではないことを再認識させられた。先見の明があり、学のあるものはどの時代も国からは恐れられる存在である。長英も例外なくその1人であるが、この人物が果たして明治維新後も生きていたとしたら日本にどのような影響を与えただろうか、そんなことを考えるととても惜しいことをしたような思いになる。
歴史の教科書では決して語られない詳細の記述により、まるで自分も共に逃避行しているかのようなスリリングな描写に読む手がとま