森博嗣のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ10作目にしてこのミステリーの主題は密室など殺害方法のトリックにあるのではなくそれを通じて語られる哲学的思考にあるのだと思い至った。(肉体も脳もハードでしかあらず思考こそ本質で唯一自由)
つまりトリックの華麗さを期待して読み進めるべきではない。個人差あるけど全員共犯でした、は単なるミステリーのトリックとしてはかなり御法度な感。
四季先生、次会うときは死んでるとかいうくせに直後めちゃくちゃ生きてるし。
読み甲斐を感じるのはやはり四次元の概念(作中では連続する多面体だったけど個人的にはchが切り替わる空間だった)や、現象を単純化して理解伝達する過程、そしてそれが不要で複雑を複雑のまま理解する天才、統合されない人格、突き詰めるほどに二分化できなくなる現実とバーチャル、、といった思考。
有限と微小はラストの「有限の生と微小の死」より、「コンピューターも他の人間の頭脳も、さらに偉大なる頭脳の、有限かつ微小な細胞に過ぎない」のほうがしっくり。あと象徴するオブジェクトとしてちょこちょこ出てきたものの、パンってなんだったんだ結局。
ただ1作目が密室から一歩も出ないThe perfect insiderで、10作目が実は最初から密室には一度も存在しなかったThe perfect outsiderなのはかなり好き。
なんにせよ、読み終わってしまって今更ながらに喪失感。別シリーズ読むかなあ。 -
Posted by ブクログ
これまで裏で暗躍している印象が強かった保呂草がガッツリと事件に絡んでいくのが印象的な本作。練無や紫子の過去、紅子の離婚の経緯などが少し見え隠れするのも、シリーズを追っているからこそ気になる要素が万歳で面白かったです。シリーズもいよいよ折り返しですが、まだまだキャラの掘り下げはされると思いますし、まさかの新キャラも登場!ますます目が離せませんね。
※以下、少しネタバレ
まさか別の飛行機に乗って犯行が行われていたとは…。でも今回のトリックや魔剣の在処などはしっかり考えれば気づけたかもって思えるものだったのでちょっとくやしい!いつもは高度なやり取りばかりでサッパリわからないことが多いので、今回気付けたら気持ちよかっただろうなー。まあ脅迫文のメッセージはまったくわからずGoogle先生に教えてもらいましたが(笑) -
Posted by ブクログ
「孤独は悪いもの」「寂しいことは避けるべき」と、私たちは無意識のうちに刷り込まれて育ってきたように思う。人との絆や温かさを描いた作品が「良いもの」とされる世の中で、孤独はどこか“欠けている状態”として扱われることが多い。しかし、この本を読み終えて、孤独そのものに深い価値があることを初めて腑に落ちるように理解した。
特に印象に残ったのは、「ブランコ」の比喩。前に揺れるときは楽しく、後ろに揺れるときは孤独。その振り幅があるからこそ、人との関わりや幸福をより鮮やかに感じられる。孤独があるから、愛やつながりを実感できる。つまり、孤独を拒絶していては、本当の意味での「喜び」にすらたどり着けないのではないか。
私は今、大学生活の中で最も孤独な一年を過ごしていると感じている。でも、それを「苦しい」とは思っていない。むしろ、自分と向き合うために必要な時間であり、静かで澄んだ孤独の中で、自分の輪郭がじんわりと広がっていく感覚を得ている。人と会う時間の尊さも、孤独を知っているからこそ実感できるのだと。
来年、桜が咲く頃には、社会人として新しい環境に飛び込んでいく。だからこそ、この孤独の中で学んだ「静けさを愛する強さ」や「ひとりでいることの豊かさ」を忘れたくない。孤独は、決して負ではない。寂しさを抱きしめながら、人はちゃんと前に進めるのだと、この本が教えてくれた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ西之園萌絵と犀川のやりとりが好きなのだが、この物語は過去(回想)であり、犀川が登場しない。
また、笹木の手記で話が進むため、少し寂しさと違和感を感じていた。
物語中盤で笹木が西之園に強引に口づけをしたところは絶句した。そんなシーンは作者は誰も求めていないし、皆が否定したがるだろうと。
また、それと同時に、これは本当に萌絵か?という思いも湧き上がった。
結果として、西之園萌絵ではなく、叔母の睦子の若かりし頃の話だったので安心した。そして、笹木は睦子の夫の佐々木だった。
殺人事件よりもそちらが気になって仕方なかったよ。
密室トリックなども面白かった。
こんな方法で密室を作れる、と作中で語っては、それは出来なかった、という現実があり、終盤の笹木が犯人ではないか?というのは、読んでいて本当にそのようにも感じたし、それしかないようにも思えた。
この作品がシリーズの中でも人気、というのを見ていたが、犀川と萌絵の絡みが少なくわたしのなかでは一番ではない。
今のところ「封印再度」が一番好き。 -
Posted by ブクログ
ミステリとしてフェアかアンフェアか。
著者が読者に対してミスディレクションを仕掛ける以上、どこまで情報を開示されているか、というのは本格ミステリを読む上での楽しみの一つだが、場合によっては、唐突な伏線回収に戸惑うこともある。
多分、本作も唐突な伏線回収に戸惑うかもしれない。しかし、論理的に思考を進めていけば、しっかりと伏線が見抜けるようになっている。自分は見抜けなかったが、それでも納得したし、楽しく読めた。
きっと、本格ミステリーが好きな人ほど本作は楽しく読めるだろうが、ミステリを苦手とする人には、そこまで面白さが見出せないかもしれない。