今野敏のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
シリーズ4作目。暴力団組織の思惑が絡んだ事件、、、という展開なのは本シリーズでは”デフォルト”なんですが、安積班や樋口シリーズなどの強行犯ものと違い、なんというか、事件そのものの広がりはないですよね…。
今野作品ですから面白いのは間違いないのですが、事件の行きつく先は暴力団ってことになると、自ずとパターンが決まってしまいますし、神野のところへ話しを聞きに行くのも、もやはお約束の恒例行事という雰囲気すらあります。
関係者の思惑も今回はなかなか明らかにならず、終盤に一気に解決へ向かうわけですが、合川の身柄確保があっけなく、ちょっと盛り上がりに欠けたように思います。 -
Posted by ブクログ
倉島、兵藤、ヴィクトルの3人の視点で物語が進むこの構成はおもしろいですね。読者はすべての事情を把握している、だけど各登場人物は相手のことを完全にはわかっていない、という情報の非対称性ゆえのおもしろさとでもいえばよいでしょうか。
特にヴィクトルは自身が思っている以上にすでに捜査の手が伸びているわけで、そのことに本人が気付いていないときには「いやいやい、気付かれているよ」と思わずツッコミたくなってしまいます。
ただ、本作では暴力シーンが多く、またとてもリアルな描写で相手を痛めつける内容になっている点は好みがわかれるところでしょう。個人的には痛めつけられる相手の痛みやそのときの心情、絶望感を想像してしまって、どうも居心地が悪くなってしまいますね。
各視点の持ち主3人それぞれは仕事や現在の境遇に仕方なく甘んじている、でも本作の事件を通して心に火が付いたり、新しい人生を歩んだりと、ラストでは心機一転という結末を迎える”明るさ”が暴力シーンとは対照的な本作の救いのように思えました。 -
Posted by ブクログ
今野敏の警察小説で、他の作品と異なり本作は明治時代を描いたもの。およそ100年ほど前の東京が舞台ですが、内容を読むと捜査の基本動作・心得は今とさほどかわらないように感じました。
事件の背景は時代を反映した思想的なもの、いやはや、こんなところまでよく調べているな、さすが今野氏といったところでしょうか。
登場人物については現代版今野作品の登場人物と比べてしまいますね。鳥居部長は田畑捜査一課長、葦名は樋口かな、とか、雰囲気やたたずまいが似ていて、著者としては似せて書いたつもりはないのかもしれませんが、読むたびに現代版登場人物をどうしても思い浮かべずにいられませんでした。
とはいえ若干退屈でいつものテンポ、小気味よさがないと感じる部分もあり(ラストの展開では日頃の今野作品だな思わせる内容でしたが)、その分星評価は普段より低めにしました。
また、印象に残ったフレーズ、
「高島先生は、予言されていました。いずれ、東京の店の看板は、横文字ばかりになるだろうって…。」
これ、まさに現代の日本ですね。まぁ、作者は現代の人なので正確には作者の「予言」というわけではありませんが、作中の登場人物にそう語らせることで、いかにも明治の時代から未来を予見しているかのようにみえ、思わず”納得”してしまいました。
警察組織が歴史的に薩長偏重な点もほかの今野作品で語られていましたが、この作品を読むとより一層の実感がわきます。