河合隼雄のレビュー一覧
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本屋でたまたま目についた。常々シェイクスピアをコンプリートしたいと思いつつ、いつも他の本の誘惑に負け、シェイクスピアが後回しになってしまうことを気にしていたからか。
シェイクスピアの戯曲のうちの11作について、翻訳者の松岡和子氏が原書での言い回し等を例に出しながら様々な質問を投げかけ、それに対し河合隼雄氏が登場人物の心情等を心理学的に説明する等々…とてもバラエティにとんだ対談集。
まず、各戯曲がうろ覚えの私は、河合祥一郎氏「あらすじで読むシェイクスピア全作品」で各戯曲の流れや登場人物を再度頭にいれてから、各章に突入。シェイクスピアの裏話ではないが「そういった見方もあるのね‼︎」というような -
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かなり噛み砕いて書いてあり、様々な事例とともに紹介されているため、とても分かりやすい。
コンプレックスとはマイナスの要素だけでない。それを乗り越えた先に人格の発展があると考えれば、かなり救われるものがある。
(人間の心の中は無意識の領域がかなり大きくあると考えられるが、それらをいちいち意識していたら正常な意識、思考など保てないだろう。意識的な自我をメインとして据えながらも、それらを補うものとして無意識領域があり、その中で何らかの感情によって結合されている心的内容の集まりがコンプレックス(複合体)である。)
自我を自分で作り上げること、自分自身を冷静に見つめることが日本人は苦手である。ゆえに -
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「父性の復権」で、主張されているような、昔の日本の父親にように戻れ、ということに、なんとなく違和感を感じていたが、本書では、そのような父親像を痛快に否定してくれる。
明治の父親は強かったからとあれを真似しようと思ったら、大きな間違いを起こすことになります。あれは、父親がいばるための制度であったのにすぎません。人間としては、鍛えられていませんでした。(p87)
本書で繰り返し述べられているのは、家族や子育てというのは、そんな簡単なことではない、ということである。
自由意思を持った人間が集まって、しかもちゃんと生きていくという、とても困難きまわりないことをやっているのが家族だからです。(p1 -
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2009年刊行。
カウンセリングと倫理、友情、時間、家族等について講演した記録。
最近カウンセリングを受けて、正直うさんくさく、一体カウンセリングって何なわけ?と思って手に取った本。なかなか含蓄に富んだ内容だった。
わたしをカウンセリングしたカウンセラーにも読ませてやりたいと思った。
正直、流派や経験値、年齢世代性別等によっても相当に左右されそうな内容で、カウンセリングの技法と呼べるものを定型化(河合先生言うところのマニュアル化)は難しそう。しかしそうすると普及や習得スキルの標準化は難しそう。
文中、将棋の名人の、研究者、勝負師、芸術家が同居するのが勝てるベストバランスという発言に、まさ -
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ネタバレ日本におけるユング心理学の権威である河合隼雄さんと村上春樹さんの対談集。村上春樹さんの「約束された場所で (underground2)」の最後にも少し対談集があったのですが、それが面白かったのでセットで読みました。
村上春樹さん自体はかなり僕と違った価値観を持つ人だと思うのですが、その自分とは大きく異なる価値観を部分的にでも共感させる文章力はさすが☆そして、相手のことを最大限に尊重しながら受け止める側に撤する河合隼雄さんはホントすごい!!
「苦痛のない正しさは意味の無い正しさ」「早い対応、多い情報の獲得、大量生産を目指す時代だからこそ、対応性の遅さや情報量の少なさ、手工業的しんどさが人間を -
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まさに入門としてオススメの本だけど、実際にカウンセリングをするとなると、ここに書かれていること以上に投影の問題など知っておかなければいけないことはたくさんあると思う。
読んでいて、カウンセリングにおいて何が大切かを色々と考えることができたので得たものは大きかった。
読みながら感じたことのメモ
○ カウンセリングは、問題と感じている外の世界を必死に整えるためにやるというより、その人の内なる想いや願いを一緒に見つめる作業なのだと思った。クライエント自身が自分の純粋なものを内側に発見できたとき、少しずつ自立のプロセスを歩みながら、自分の力でどうにかしたいと心から思えるのだと思う。逆に、表面的 -
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心とはどういうものかということを、臨床心理学者であった河合隼雄さんのおすすめの文学作品をとりあげながら語られたもの。知識として、学問的に心を理解するのではなく、文学作品に触れながら、登場人物の心の働きについて一緒に感じてみようというねらいがある。
この本を読んで、物語というのは知識や情報を並べるだけでは決して生まれないもので、作者が無意識をどんどん掘り下げながら創作しているものだから、読書することで読む側の無意識もまた自然と掘り下げられるのだということがよく分かった。そういう視点を忘れずに本に向かい合うと、本から得られるものというのは格段に広がっていくし、自分自身に向かい合うことに通じている -
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"無意識" ってすごく不思議だと思いませんか。「気づいたらやってた」「そんなつもりじゃなかった」みたいなことって私はすごくあって。自分の意識が向かない未知の領域に、常々恐怖に似た感情を抱いてました。
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オンライン社会の今、個人が「意識」できる領域は、ますます小さくなっていて。少しでも無意識領域への働きかけができたら、最強だな!と思っていました(そう、映画「鬼滅の刃」のように…)。
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本書によると、物質にエネルギーがあるように、心にもエネルギーがあるらしく。なにやら、無意識に働きかけるには、そのエネルギーコントロール(ユング的には夢分析)が鍵となるようなのです!「引き寄せ -
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児童文学と子どもたちがもつ豊かな世界について、臨床心理学者河合隼雄が現代を生きる私たちに向けて書いた文章を集めた著作。
とても読みやすく、かつ、胸に刺さる本だった。
読み始めてすぐ、ペーター・ヘルトリング作「ヒルベルという子がいた」について語られる文章を読みながら、涙が止まらなくなった。
ヒルベルというかんしゃくと頭痛持ちで、周りからは悪い子とされている子どもと、マイヤー先生という素晴らしい先生とが出会う特別なシーンを、臨床心理学者河合隼雄ならではの視点で読み解いていて、その深い洞察力と、児童文学を読むこと、そして子供たちへの真摯な視点に感動を覚える。
だが、私が涙したのは感動によるものだけで -
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河合隼雄先生のまなざしを追体験できたような、そんな読後感をもった。いいかえれば、すこし優しくなれるかもしれない、と思った。児童文学への導きとしても参考になる。引用された作品はどれも知らないものだったが、その魅力をひきだす河合先生の語りに誘われ、いくつも興味をもった。以下引用。
私は心理療法という仕事を通じて、多くの子どにも大人に会ってきたし、そのようなことについて報告を受けたり、指導をしたりすることを長年にわたって続けてきた。そして、私は実に多くの子どもたちが、その宇宙を圧殺されるときに発する悲痛な叫びを聞いた。あるいは、大人の人たちの話は、彼らが子どものときにどれほどの破壊を蒙ったか、そ