河合隼雄のレビュー一覧
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「子どもの宇宙」という題にふさわしい。
誰しも子どもの頃に宇宙を持っていた、その宇宙は果てしなく広く、大人は何もわからないし、分かろうとしてくれただろうか。
「大人になるということは、子どもたちのもつこのような素晴らしい宇宙の存在を、少しずつ忘れ去ってゆく過程なのかとさえ思う。」1
子どもに接する機会のある方(いわゆるすべての方なのだが)にぜひ一読していただきたい。ふとした言葉や行動を何気なく子どもたちは見ている。それら行動の一つ一つが子どもの宇宙にどのように影響するのかはわからない。分かろうとすることはできるが、それが正解かもわからない。
詰め込み教育といわれ、数字のみで評価したりされた -
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「努力によってものごとは解決しない、とよくわかっているのだけど、私には努力ぐらいしかすることがないので、やらせて頂いている」
とか、
「自立ということは、依存を排除することではなく、必要な依存を受け入れ、自分がどれほど依存しているかを自覚し、感謝していることではなかろうか。依存を排して自立を急ぐ人は、自立ではなく孤立になってしまう」
とか。
肩の力がふっと抜けるような言葉がたくさん。
でも、きっと忘れてしまうから、本棚に置いてまた思い出したら読みたいです。
河合隼雄さんの本は初めて読んだのですが、この本はエッセイでわかりやすく、サラッと読めました! -
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中学生の頃初めて読んだ源氏物語(と言っても漫画)は、光源氏の節操のなさや不誠実さばかりに腹が立ち、途中で挫折してしまいました。大人になった今、源氏物語は光源氏を主人公とした物語ではなく、それを取り巻く女性たちの生き方についての物語だったのだなあと思えるようになり、面白く読めるようになりました。
女性(だけに関わらず男性も)の生き方が多様化し、どう生きるかへの答えをそれぞれ個人で見つけ出さなくてはならない現代において、異性との関係や一般的な価値観だけによって、自分の幸せや生き方を定めていってもよいのか、それとも自分だけの生き方(物語)を模索し続けるのか・・・重い課題です。
河合隼雄氏ならで -
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河合隼雄 [著]. -- 講談社, 1987. -- (講談社学術文庫 ; [811])
目次
第1章 影(影のイメージ、ユングの「影」概念、影の種々相)
第2章 影の病い(二重身、二重人格、夢の中の二重身)
第3章 影の世界(暗黒、不可視の影、地下の世界)
第4章 影の逆説(道化、トリックスター、ストレンジャー)
第5章 影との対決(自我と影、影との対話、影と創造性)
-感想-
読み終わって、あまり感想を書く時間も無いのだけれど、やはりぼーっとしている。自己実現とは、自分の自我に無意識を少しずつ統合していくこと。本当の自己を実現(現実に顕在させる)という意味で、「自己実現」というっぽい。今 -
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『小川洋子のつくり方』の中の全作品紹介を読んで興味を持った一冊。
大学で心理学を専攻した身として、河合隼雄はもちろん知っていたけれども、なぜかどうしても著書を読む気持ちにならず、当時周りがみんな読んでいたのに、何となく話を合わせて読まなかったわたし。
今この本に出会えて良かった。
''人間は矛盾しているから生きている、整合性のあるものは生き物ではなく機械です''
矛盾を意識し、折り合いをつける。その折り合いの付け方が個性であり、物語だ、と。2人がそこで共感していて、共感し合えることが素晴らしいと思った。
その物語を小説にして見せてくれる小川洋子さんの -
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目次
幸福とは何か
モモの笑顔
兄弟
子育て
何を伝えるのか
感謝の言葉
常識
人生の後半
幸福の効率計算
儀式〔ほか〕
読み終わって、毎回のように読後感に浸りながら、ボーッとしている。どうやら、河合隼雄さんの書かれた新聞の掲載記事『幸せ眼鏡』59つのエッセイを纏めた本であった。短いエッセイが沢山あり、内容も繋がっているものがあれば個別のものもあり、今の自分が気になっている部分だけ読めるような、使い易い本な感じがする。なので、本書が独立したエッセイ纏めであるがゆえ、少し一気に読み進めるには向いてなかった感じがした。しかし、そのエッセイのひとつひとつに、やはり河合さんの感受性の豊かさとか、想像 -
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ネタバレ【なぜ】友人紹介本
【ここだけ】
秘密や嘘をついて自分を磨いていく。秘密を持ちながら成長するを真珠と例えるか、素晴らしい。
【感想】
これはすごい沁みる本。
河合隼雄さんに初めて出会ったがこれから著者買いが始まりそう。
【メモ】
p24 問題を問い続ける。ネガティブケイパビリティか
p24 「私はこうしました」と言えるやり方が大事だが、つい「正しい」のはどれかと探そうとしてしまうから「私」がなくなってしまう。
p34 5分のカメラ故障で運命が変わった。それまでの人生はその5分のために積み上げられてきたもの。だから5分が輝いた。…ポジティブシンカー
p71 母は土のようなもの…いい例え
p7 -
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#こころの処方箋
#河合隼雄
#新潮文庫
#読書記録
忙しくて落ち着いて読書する時間がなかったので、
たっぷり読書する盆休み。
時代がすごいスピードで進んでいて、
その進歩に乗っかるのも大事なんだけれど
やっぱり本当に大事なことは変わらずそこにある。
そのことを思い出させてくれる一冊。
目次を眺めるだけでもホッとする、家におきたい本でした。
最近よく見る、
こうやったらこうなりますよ、という本でないのがいい。
のんびりゆっくり分からないことにも
向き合っていけばいいのだなあ。
谷川俊太郎さんのあとがきも最高でした。
#PrescriptionForTheHeart
#HayaoKawai
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ユング派の心理療法や心理分析では、イメージを大切にするので、ここで河合隼雄先生は、猫のイメージが表す、人間の中の力動をさまざまな角度から詳らかにしています。また、ユング派では物語も重要視されます。そのため日本昔話や宮沢賢治から、ポール・ギャリコ、ル・グウィンまで、古今東西の猫のお話が紹介されます。
端的ながらも、目に浮かぶような的を得た表現でイメージを説明され、もちろんながら洋の東西を問わず知識が深く、知的で、分かりやすく、それでいて子どものような感じやすい目で、無意識の言葉のない世界も見渡し、感じ、またそれを私たちに伝えるために言葉にされる。
言葉とイメージ、意識と無意識、右脳と左脳を行 -
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「生きるとは、自分の物語をつくること」
物語は、既にそこにある。
なんか、分かりそうな言葉だなと、最近感じる。自分の視野で見えているものは一時的で、その瞬間瞬間に過ぎないけれど、人が生きてるだけで、それは全く瞬間的でない。そこには間違いなく過去があって、歴史があって、今までとの繋がりがあって、多様な偶然が折り合った果てに、今の自分がここにいる。
何となく毎日を生きてると、すぐに忘れてしまうし、今この感想を書いている間も、自分が「そういった意味」で現実を見れているかと問われると、見たいように認知している部分があるし、確かとは言えないよなと感じる。
近代化学の発展から、合理的で効率的であること -
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ショートショートになっていて読みやすい。
示唆に富みすぎておぼえられないのでスマホのメモを片手に読む。誰が買った本なのか不明だが、家の本棚を眺めてみたらあったので読み始めた。
以下ネタバレ。
この子は不良だとか、それは母親の愛情不足が原因だとか、このような決めつけや固定観念を捨てて対応すると本質が見えてくる。
ふたつよいことさてないものよ。吉と凶は相殺されるということか。
イライラするのは自分に都合の悪いことが心に引っかかってるから。
急がば回れ。
自己を殺しきれずに生殺しになった自己が溜まりすぎると時として大反逆を犯して周りに迷惑をかける。
100点を狙うべきとこ -
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暴力、そして『ねじまき鳥クロニクル』の副読本
ユングとか河合隼雄とかの怪しさはいったん脇に置いておきます。
村上春樹の無意識的・形而上的な創作技法が多少なりともつまびらかにされてをり、それは氏には珍しく赤裸々に開陳されたものだと思ふのです。
特にこの対談のメインとなってくるのは、暴力についてです。それは氏が『ねじまき鳥クロニクル』を書き終へたばかりといふのもあるし、それが氏にとって体から出てきた(頭で考へただけではない)物語だからです。
同じく暴力を扱った作家として、村上龍と大江健三郎の名前もすこしだけ出てきます。
河合隼雄の心療経験の話が面白く、それがうまく村上春樹と噛み合ってゐ -
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長田弘さん(詩人、児童文学作家)、河合隼雄さん(臨床心理学者)の児童文学作品をテーマにした対談集。
長田さんの詩情豊かな言葉、河合さんの心理学者の立場からの発言は、どちらも示唆に富むもので、相乗効果が生まれていました。
次から次へと出てくる作品の数々に、胸が踊りました。敬愛するお二人のお話に引き込まれ、読みたいと思っていた児童文学作品を、いつまでもツンドク状態にしていてはダメだと強く思いました。未読の本のうち、どれから読もうか迷ってしまいます。
【印象に残った言葉】
・永遠より長い一瞬の世界が絵本の世界(長田)
・絵本の世界というのは記憶のリサイクルによってできていて、おんなじ絵本がずっ