あらすじ
性が入れ替わった男女を描いた異色の王朝文学『とりかへばや物語』。かつて「淫猥」と評された物語には、「性の境界」をめぐる深いテーマが隠されていた。男らしさと女らしさ、自我とエロス、性変換と両性具有――深層心理学の立場からジェンダーと性愛の謎を解き明かすスリリングな評論。河合隼雄が遺した名著、選書版で登場。
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Posted by ブクログ
ユングのアニマ・アニムスの話は難しかった。しかし、「性」というものを単純な二分法で考えることはできないのではないかということを最近ぼんやり考えていたので、筆者はそのことを明確に指摘し、さらにその理由を秩序の構築に求めていたのでなるほどと思った。さらに進んで二分どころか性には無限にバリエーションがあり、「男」と「女」を両極に置いたグラデーションのように考えてもよいのかもしれない。 この本で紹介されていたいくつかの物語はいつか読んでみたい。
Posted by ブクログ
[僕と私と私と僕と]女が男として,男が女として育て上げられる様子を描いた異色の古典『とりかへばや』。ときに「卑猥」として厳しい評価も受けてきた本作品から,性をめぐる深層心理,そして心象風景を覗き描いた作品です。著者は,分析心理学を専門とし,文化庁長官を務めた経歴も有する河合隼雄。
あらすじを見て,「あ,『君の名は。』っぽい」と手にした作品だったのですが,まず紹介される『とりかへばや』のストーリーがとても興味深い。そしてそれを土台として築き上げられる河合氏による分析がこれまた魅力的でした。
〜平安時代の男性は性関係については抑制がないとしても,知ることに対する抑制があった。それはやはり一種の美的感覚によるものだった,と考えられないだろうか。帝が知ることを思い止まるところでは,中宮の類のない美しさの描写があった。抑制を壊すと美が崩れるのである。美にはバランスの感覚が重要なのである。〜
文学批評とはまた違う味わいに☆5つ