【感想・ネタバレ】中空構造日本の深層 増補新版のレビュー

あらすじ

空を中心とするとき、統合するものを決定すべき、決定的な戦いを避けることができる。それは対立するものの共存を許すモデルである――日本人の心理を、中空を保って均衡し合う構造とし、西欧の中心へと統合する心理構造との対比で論じる。関連論考「日本神話にみる意思決定」、吉田敦彦との対談「神話と日本人」を増補。
〈解説〉吉田敦彦/河合俊雄

(目次より)

神話的知の復権
『古事記』神話における中空構造
中空構造日本の危機

昔話の心理学的研究
民話と幻想
「うさぎ穴」の意味するもの
日本昔話の心理学的解明

現代青年の感性
象徴としての近親相姦
家庭教育の現代的意義
偽英雄を生み出した「神話」
フィリピン人の母性原理

あとがき
旧版解説(吉田敦彦)


日本神話にみる意思決定
巻末対談「神話と日本人」河合隼雄×吉田敦彦
増補新版解説(河合俊雄)

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Posted by ブクログ

中空構造とは、特定の中心が存在せず、相反する要素がバランスを保つという構造を指す

男性原理……ものごとを切断する機能を主とし、切断によって分類されたものごとを明確にする

女性原理……結合し融合する機能を主とし、ものごとを全体の中に包みこんでゆく。

西欧のシンボリズム
男性 太陽 精神 能動
性 月  肉体 受動

「日本人の特徴としてあげられる、敗者に対する愛惜感の強さ、いわゆる判官贔屓の原型となるものであろう。」p46

スチューデントアパシー

すべてをどこかで曖昧にし、非言語的了解によって全体がまとまってゆく。p71

英雄誕生にまつわる数々の不思議な物語は、自我の来歴を、人間の全存在の中に意味づけるのに、最もふさわしいものなのである。

昔話がもっとも無意識的なものを示していると思われる。

p89「現実原理」(親の言いつけ)
「快楽原理」(狼の誘惑)

日本の昔話……現実の世界とおとぎの世界との境目が溶けちゃっている。p96

境界を不鮮明にして全体性を求めるp98

睡眠時には、むしろ内界に対して「目を開く」ことになる。

「内的事実」……自身の経験の意味付け、統合。

幻想を全否定した近代人は神経症という怪物に悩まねばならない。p114

「人間にとって大切な『個』としての感情を強めるには、その人が守ることを誓った秘密を持つことが一番いい方法である」
「自分自身が主人であると思い込んでいた自分のもっとも個人的な領域の中に、自分よりもより強力な他者の存在することを、目の当たりに顕示されることになる」ユングp122

自己の相対化。
自己-他者という関係性の中でしか自己は存在しない……と。(そこまで言ってない?いや、実際そうだろ)

しかし、生と死の世界が区別を失うとき、世界はまったく平均化された静止、無の状態になってしまう。そこには、無気力、無感動が漂うことになる。p127

「子どもの目」を通して見た文学……p134

(トリックスター文学、とでも言おうか。)

完成するはずのものが別れて立ち去っていくところに美しさを見出そうとしたのではないかという気がします。この立ち去る、消え去ることの美しさというのが、日本人にとっては美意識と結びつくのではないかと思います。p149

ここで何か女性にとって非常に大事なもの、女性にとって絶対的な秘密と言っていいもの、それは大事なものであるけれども醜いものであるかも知れないというふうなものを、男は見てはならないという非常に大事なテーマが出てくるのです。p152

(男女の違いというものを、異類婚として表した。違いを認めて結婚する。同じだと思うから齟齬が生じる。)

(「統合をする」とは「秩序を齎す」ということと言い換えられるか)p188
虐待児の持つ人間関係は「支配-隷属」関係になるが、それは虐待という経験をなんとか統合しようとした結果なのだろう。
この関係以外受け入れられないため、加害者に感謝するようにもなる……。(虐待的きずな)

……人間の意識構造のみでなく、その全存在にかかわるおそれを惹き起こす……全存在をゆすぶる体験を、霊的な体験といってよい……p198
近親相姦……自然の法

母性の原理とは、端的にいえば、すべてのものを平等に包括することで、そこでは個性ということを犠牲にしても、全体の平衡状態の維持に努力が払われるのである。p209

(日本の教育も母性原理やなあ)
家出……個としての意識を持つ、母性原理からの脱却。

p229ドイツ国民を指導する英雄などではなく、ヴォー タンの元型の作用する集団現象の上に乗っかった兆候のひとつであったことが解る。その 彼が自らをヴォータンと同一視し、無限の力をもつと過信したとき、崩壊はまたたく間に 生じることになったのである。

ヒトラー個人への崇拝ではなく、世界観信仰ね。

母性原理に生き方のひとつとして、「あきらめ」ということがある。p247

日本人は自因の文化?p253

外交的な人は、自分の内的なものを外的事物に投影して考えることが多い……p254

父性-母性と国民性p256

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2024年12月15日

Posted by ブクログ

中空構造自体は大体ふだん河合隼雄の本で触れられているので、他に色々な母性や中空の話が語られているのだが、不思議と印象がない。
中空ゆえなのかもしれないが、妙にあやふやとしている。

中では、ヒトラーに見ることの出来る強烈な英雄像ー父性
フィリピンの母性、が記憶に残った。

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2025年03月08日

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