■真っ当に女性からモテたい男たちへ
男なら誰しも「モテたい!」という願望を持ったことがあるだろう。
それは進化論的に至極当然の感情だ。より多くのメスからアプローチが貰えるオスの方が自身の遺伝子を残せる確率は上がるし、非モテのオスは必然的に自然淘汰されてしまうからだ。
実際に人間以外の動物(例えば
...続きを読むライオンやクジャクなど)は腕っぷしの強さや見た目の派手さがメスから選別されるファクターとなり、それに満たないオスは冷酷にも切り捨てられていく。
人間の男にも同じようなことが言える。
いわゆるイケメンや高身長、金持ちなどのステータスがモテを左右する要件となり、条件を満たさない男性は女性から選択肢に入れてもらえない。
PUA(ピックアップアーティスト/ナンパ師)業界においても、モテ男は「アルファ(ハーレムの王者であるライオン、アルファオスが由来)」と呼ばれ、彼らは女性関係に全く不自由していない。
世の中を見ればモテ男に比べて非モテ男の方が圧倒的に多いという印象だ。
まさに需要と供給のミスマッチが起きている。
悲しいことに、進化論的に見て「モテる」という事実は女性からさらに魅力的に見える要素となるため、「モテを持つ男はさらにモテる」というモテのマタイ効果が生まれてしまう。
なぜ、そうした格差ができるのだろうか?
イケてる見た目やステータスを備えていない非モテ男に、女性からモテる権利はないのだろうか?
一方で特にイケメンでも金持ちでもないアイツがモテているのはなぜなのか?
本書はこうした「モテ」の悩みに、進化論に基づく科学的なアプローチでアドバイスをくれる。
今まで出版されたモテ本は、PUAによる小手先のナンパ本であったり、恋愛工学を用いた心理テクニック本などが多かった。
本書はそれらとは一線を画し、しっかりと女性の目線に立ち、彼女たちにとって男のどういう部分が評価対象になるのかを科学的に教えてくれる。
ただし、一朝一夕で身に付けられるような技術ではなく、時間をかけて自身の肉体や精神を磨き、人生そのものを好転させていくという真っ当な自己啓発本である。
著者のジェフリー・ミラーは、「ラップダンサー(ストリップクラブなどで客の膝の上で踊るようなダンサー)が貰えるチップ額は、当人の生理(排卵サイクル)の状態によって変わる」ことを実証し、イグノーベル賞を受賞したという面白い経歴を持つ進化心理学の研究者だ。
共著者のタッカー・マックスはシカゴ大学を飛び級しロースクールを修了したエリート人気作家であるものの、その知性とユーモアでクラブやバーで遊びまくり、あらゆる女性とセックスした「アルファ」だ。
こんな2人が共著した「モテ本」が面白くないはずがない。実際の研究成果とモテの実体験がクロスオーバーした知見は、非モテ男子ならば一読する価値があると思う。
■モテるためにはどうすればいいの?
本書では「モテ」を実現する5つの原則が提示されている。
①科学にもとづいて決める(先入観には頼らない)
②女の子の視点を理解する
③自分の魅力を装備する
④正直であること(自分自身にも相手にも)
⑤ウィンウィンの関係を築く
これらは進化論的に深い論理で核心的な原則だ。
これらの原則は単なる「モテ」のためだけでなく、家族や仕事で信頼関係を築き、より良いパフォーマンスを発揮するためにも役立つ。
また、進化論的にモテを実現するためには「自信をつける」ことが重要となる。
女性は男性の見た目や金銭的なステータスだけを判断しているわけではない(もちろんそういう女性もいるが)。
その見た目を維持できる意志力や、堅実に働きリスクを取れるその生活力に魅力を感じている。
そして何よりそうした経験から出てくる自信に惚れるようだ。
宝くじで100億円当てた男と、ゼロから会社を立ち上げ10人の従業員と何千人もの顧客を抱える10億の価値のある男では、多くの女性が後者を選ぶことが示されている。
また、どうやって女性と出会うべきかも教えてくれる。
パートナー探しの最適な「出会い市場」を見つけることは、恋愛マーケティングとして非常に重要で、どれだけ優秀なアルファでも闘う場所を間違えると女性に魅力が伝えられない。逆に非モテ男だって市場を間違えなければモテ男になり得る。
「ブラット・ピット並みにカッコよくなる必要はない。ある町のあるバーでひと晩だけ、ほかの男よりもピットっぽくなれれば十分だ。」
■おわりに
本書は女性からのモテにとどまらず、より充実した人間関係を作るためのハウツー本として読むこともできる。
すっかりオスが抜けてしまった既婚者にもオススメしたい。
自分はこの本を読んで、妻にいつまでも魅力的な男と思ってもらうために努力したいと感じたし、喜んでもらうためにはどんなことをしたら良いのかを考えるキッカケにもなった。