【感想・ネタバレ】コンプレックスのレビュー

あらすじ

「コンプレックス」という言葉は日常的に用いられるが、その意味を正確に理解している人は少ない。それは、現代なお探険の可能性に満ちている未踏の領域、われわれの内界、無意識の世界の別名である。この言葉を最初に用いたユングの心理学にもとづいて、自我、ノイローゼ、夢、男性と女性、元型など、人間の深奥を解き明かす。

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人前であがってしまう、要領が良くない、暗記が苦手……などなど、何かがうまくいかないことをコンプレックスに感じた経験がある人は多いと思います。しかし、どうして私たちはコンプレックスを感じてしまうのでしょう? そもそもコンプレックスとは何なのでしょうか?

本作は、「コンプレックスとはどういうものなのか」といった基礎的なところから、「コンプレックスと普遍的無意識」といった専門的なところまで深く解説しています。いくつかの具体例を挙げつつ、分かりやすい言葉で説明しているため、心理学に疎い人にも読みやすい文章になっています。
私が本作を読んで特に印象深く思った点は、「コンプレックスのあり方は今の自分のあり方と関係する」というところです。「自分のコンプレックスがどう成立したのか」について考えることは、今までの自分を振り返ることになります。コンプレックスと向きあうことは、自分を知る一番良い選択肢かもしれないと感じました。

不安を感じ、これでいいのかと悩むとき、ぜひこの本を手に取ってみてください。きっと一緒に悩みぬき、答えを探してくれることでしょう。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

影の現象学も良かったけど、個人的にはこちらの方がわかりやすかったかも知れないです。とても面白くて夢中で読んでしまいました。
1971年に発売された本だけど、現代にも通じる部分もところどころあって、特に後半の大学の話は既視感…と思いながら読んでいました。
河合隼雄先生は精神分析やカウンセリングを「泥臭い大変な仕事」とよく表現していて、その言葉を聞くたびに身が引き締まるような感じがします。

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2025年04月03日

Posted by ブクログ

P199
人間がどうして生まれ、どうして死ぬかは、科学的に説明される。しかし、「私は一体どこからきてどこにゆくのか」という点について、こころの中に納得いく答えを得るためには、つまり、心の奥深く基礎付けるためには、神話を必要とする。
私:神話イコール物語ですね。
p183
つまり、ユダヤ人として父権の強い家庭に育ち、父親との年齢差が非常に大であったフロイトにとっては、エディプスコンプレックスが大切であり、次男として生まれ、軽いせむしであったアドラー、しかも、精神分析学会に参加した時、フロイトは既に偉大な人として頂点にあり、その下の方につかねばならなかった彼としては、劣等感コンプレックスを重要と考えたのも無理からぬことである。エバンス「ユングとの会話」
私:なるほどです。
総評
私:この本は「ユング心理学入門」を違う切り口で解説した本で、新鮮味はあまりない。河合さんの本を最初に手にする人にとっては良書と思う。

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2024年03月25日

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優越感もコンプレックスの1つ、他人より優れた自分でありたいというありのままの気持ちを愛せない気持ちの現われ。人間は同時に矛盾した気持ちを持つことがあり、その時に選ばれなかった方の気持ちを忘れたり、合理化したりする。コンプレックスというのは悪いことではない、コンプレックスも自分の中で消化して認められるようになれば、自分の1つとなり、人間的に成長出来る。夢のなかでは自我が弱くなるため、コンプレックスのイメージが表出しやすくなる、しかし言語化されずイメージのためどう解釈するかが大切。コンプレックスを人格化することで対決しやすくなる、例えば肺がんの場合、肺がんのままとらえると生理的な恐怖だけしか捉えられない、死という概念に人格を与えることで、それに対する様々なものと対話できるようになる。現代社会は、様々な儀式が形骸化してしまっている。(例えば卒業式などは新しい社会に出る自分の覚悟を決めさせるものではなくなっている)なので自分で自分のイニシエーションをおこない、新しい自分の受容を行わなければならない。

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2023年10月19日

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1971年発刊の名著。ユング派に属する心理療法者・河合隼雄さんによるコンプレックスに対する解説。

はじめにはっきり申しますが、すごい本です。中身が濃く、圧倒されもするのですが、なかなかこれだけの本には巡り合うことはありません。読みだしこそ、「怖い」と思いました。「こうなったら異常!」というトラップ的なテストが張り巡らされているような気がしてです。でも、そんな低い次元での話ではなく、もっと底の方からえぐるように未知のもの(それは人間心理のこと)を考察したものを、こちらも同じ目線でくらいつき、かみ砕いて知るべく読み進めるような読書になりました。

序盤ではこういった例が紹介されていました。父親がよく棒きれで自分を打ったこと、父親がわけもなく自分を打った後で、急に親切にするので戸惑ったことなどを語った言語連想テストの被験者がでも、「父親が死ねばいいとなどとは、決して思ったことはない」というのです。でも、テストの結果からは憎しみや恨みを抱いていることがわかる。

コンプレックスっていうのは、言動や行動がスムーズに行えなくなるその原因の心理複合体という意味だそうです。僕は単純に劣等感のことかと思っていたのだけれど違いました。それは数あるコンプレックスのなかの一つの種類である劣等感コンプレックスに過ぎないのでした。言語連想では、連想につまづいたり、予期せぬ深い連想が出てきたりしたとき、これを「主体性を損なっている」と見るのでした。主体性だけがあればすいすいすらすらとできることが、心理複合体によって主体性が阻害されて、時間がかかったりできなくなったりする。対人恐怖などで頭が真っ白になるなんていうのも、主体性が阻害されていることという理解になる。こういうところだけを読むと、怖くなりますよね。それにたぶん僕はこういうのをすごく抱えているので、なおそういう気持ちになります。

本書には精神分析や心理療法の分野は広大だということを痛感させられます。というか、人間の精神面がものっすごい広くて深いからこの本もこれほどまでにびりびりとひりつくような内容になっているのでしょう。著者が語るところは氷山の一角。でも、海面下の氷山本体とでもいえるそのばかでかさを示唆する語りですから、読んでいると神経がまいってくる。

論説本を読むことは、海面上の氷山を知りつつ、まだ見ぬ海面下にも意識を向かわせるのが一般的だと経験上思うのだけれど、その海面下のものは海面と同等か、これから成長していくだろう大きさかだったりするものが多いように思います。本書のようにもうすでにこんなに本体のばかでかい状態なものなんてなかなかないんです。本書はそこに挑む。視覚的にも聴覚的にも触覚的にも触れられない、モノ(人間の心理)の輪郭とその中身をとらえようと試みていく。そしてその読むことによる探求は、読者自身や読者の知人友人などの内部深くにまでいたり、結果として読者は、消耗のみならず打撃や刃先によるような傷までも負いかねないことになる(まあ、身構えは必要ということです、不用意でなければちゃんと読めます)。

自我でコンプレックスを受け入れていくことで自我は強く成長していくといいます。そして、その過程であるコンプレックスと自我との「対決」は命を落としかねないほどの戦いでありとても大変なのだとあります。僕は、本書を読むことでも、それにちょっとだけ近い体験をすることになると言いたい、少なくとも僕はそういう体験をしました。また、こういう達人(著者)って漫画とかじゃなくて実際にいるんだなあ、と居住まいを正したい気持ちになりました。大げさかもしれないですが、完成された宮本武蔵の本気の果し合いを観た、みたいな凄みが本書にはあります。ほんとうに濃い本なのです。

感情だとか、人間心理って魔物みたいなところがあります。無視したり抑えたりしていると強大になっていき、それが自我を脅かしていくことになっていく。コンプレックスが酷くなると、極めつけのひとつとして二重人格がでてくるともありました。ドッペルゲンガーなんていうものもコンプレックス由来の現象だと説明されています。

これ、たぶん、二重人格やドッペルゲンガーじゃなくても、二面性が強い人、なにかにつけすぐに我を忘れてしまい別人格的になってしまう人も、コンプレックスが強大に育ってしまったためなのだと思えます。自分と向かいあわないと、コンプレックスはどんどん強くなるみたいです。かといって、それなりに自我が強く成長している段階じゃないと、強いコンプレックスに向かい合ってそれを克服はできない。自我が育つまで待つ手段として僕が考えるのは、自分を責めず内容だけ吟味する「さらっとした反省」の仕方がベターじゃないだろうかということ。

とくに若い時分なんて反省という行為に感情が繋がっていて、また反省するごとにさらに後悔までをも呼び寄せてしまい、メンタルが持たなくなる人もいると思います。そういう人は、耐えうるくらいまで自我が育つまで、なんとかやり過ごすような「さらっとした反省」をやるといいのではないでしょうか。『スター・ウォーズ』に喩えれば、オビワン・ケノービのように、ジェダイが劣勢になってからは身を隠し、ルークを見守るというように、時が来るのを待つ姿勢でいるといいでしょう。でも、気を抜かずに。休息は別としてだけれど。

と、ここまで書いてきましたが、書いてあることを要約しようにも、書かれてある中身の枝葉ですらどれにも深い意味があって、なかなか端折れる部分がわからなくなります。幹も大事だけれども、枝葉に実践的な理解が望めるところがあり、こうやってまとめるように感想を書くのは僕にはちょっと難しいです。

最後、三点ほど、メモのように記して終わりにします。

その1。コンプレックスを抱えた者同士では、無意識の内にそのコンプレックスを感じ合って、お互いに感情が乱れたりする。これはいっしょに住む家族間など、距離の近さが引き金になっているようです。

その2。下に引用になりますが、「この人、ずいぶん、がんばるけれど、苦しんでいるな」というタイプの人に当てはまると思います。
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コンプレックスと同一化するとき(つまり、自我の力が弱いとき)、その人の勢は強い。それに、元型的な要素が背景において作用すると、その強さは当たるべからざる勢となって、偽の英雄ができあがる。換言すれば、これは自我の弱さのために、英雄的行為をとらされているにすぎない。(p211)
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その3。私たちはふだん、どのようにコンプレックスをまぎらしているか。他人に自分のコンプレックスを投影したり転嫁したりして、責め立てたりする。または、ノイローゼになるなど、があります。

以上です。これまで河合隼雄さんやユング、フロイトに興味がおありで、すこし齧ったことがある方へならば、つよくお薦めしたい本でした。そうではないなあという方にもモチベーションが強めならば、ぜひに。

はーっ、読んでよかったー。

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2023年03月22日

Posted by ブクログ

ユング派の心理学者、河合隼雄による、コンプレックスに関して現代人に対して強烈な示唆を与えてくれる一冊である。

コンプレックスと劣等感は同義でないことから始まり、自己実現に至る道筋を与え、締め括られる。

一般女性の体験から、神話まで、充実した事例を取り上げてあり、心理学初心者にも大変わかりやすい内容だった。

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2023年01月18日

Posted by ブクログ

50年前の本というのが驚き。
劣等感コンプレックス≠劣等性の認識という説明をしている章が面白い。その章で記されるソフトボールの例は、4年前の私の高校時代でも見られた光景である。50年後の若者が読んでも共感できる例が示されていることに凄みを感じた。
また、コンプレックスの解消が簡単なものではなく、爆発に近い形で起こるという部分は思い当たる節がある。
自己理解につながり、何度も読み返したくなる本。

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2022年02月13日

Posted by ブクログ

かなり噛み砕いて書いてあり、様々な事例とともに紹介されているため、とても分かりやすい。
コンプレックスとはマイナスの要素だけでない。それを乗り越えた先に人格の発展があると考えれば、かなり救われるものがある。

(人間の心の中は無意識の領域がかなり大きくあると考えられるが、それらをいちいち意識していたら正常な意識、思考など保てないだろう。意識的な自我をメインとして据えながらも、それらを補うものとして無意識領域があり、その中で何らかの感情によって結合されている心的内容の集まりがコンプレックス(複合体)である。)

自我を自分で作り上げること、自分自身を冷静に見つめることが日本人は苦手である。ゆえに自我が弱くなり、コンプレックスに飲み込まれやすいのだろう。コンプレックスによる精神症の解消のためには、自分自身を見つめ自我を強くするか、コンプレックスを受け入れて自我に統合していくかの作業が必要。

私は母親が好きだが、昔から外出先では些細なことで母親の粗が見えてしまうことが多かった。家では結構べったりだったのだが、外では嫌な面が目につき冷たくしてしまい、後でそんな態度を反省するということが多々あった。今思うと、これもコンプレックスなのだろう。母親が好きで、一緒にいたいと思う反面、自立しなければという気持ちも働いている。親からうまく自立できなかったために、こういった態度を取ってしまうのだろうか。

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2021年12月02日

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先日、長らく外見で悩んでいたコンプレックスの一つが解決に向かう出来事があった。その時、コンプレックスの解消がここまで心を軽くするものかと感動し、同時に、他のコンプレックスも解消していけば人生はもっと快適になるのではと考えた。
そこで、そもそもコンプレックスって何だっけを知りたく手に取った一冊。
コンプレックスの定義等は本書参照だが、自分の中でも抱えていた内面のコンプレックスを考えるいい機会になった。家族との関係性、結婚に対する束縛感、苦手な同僚に対する嫌悪感と言ったものがどこから来ていたのか。
最終章の元型の話はあまり理解出来無かったが、全体通して、本を置きながら自問自答出来る良書だと思う。

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2020年11月16日

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無意識に認めたくない劣等感を持っている状態をコンプレックスと呼び、劣等であってもそれを認められていればコンプレックスとは言わない。
その様々なコンプレックスの形についての解説。それを打ち破る為には、大きな犠牲、破壊的な局面を乗り越えなくてはならない場合がある。
『仲間が集ってソフトボールをしようというとき、「僕は下手だから」というので応援にまわったり、ボールひろいをしたりして楽しく共に時間をすごす人は、ソフトボールについて「劣等」であり、それを認識しているが、劣等感コンプレックスをもっていない。この場合、下手なくせに無理にピッチャーになりたがったり、失敗したことで何時までもぶつぶついったりする人の方が、むしろコンプレックスをもっているといえる。つまり、この人達は劣等であることを認めていないのである。』p58

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2016年10月30日

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コンプレックスというと、ネガティブなイメージを抱きがちだが、本書を読むことによって、ポジティブな面もあるということを知った。
また、私たちは日頃他人の行動を評してコンプレックスから来てるだのなんだの言いがちだが、コンプレックス自体はそんなに単純なものではなく、複雑な要因からきているものであるということを知った。

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2013年12月16日

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コンプレックスとどう付き合っていくかを考えるヒントが得られたことと、コンプレックスは必ずしも悪いものではなく、成長のきっかけになるものだということが理解できたのが良かったです。

話題は、そもそもコンプレックスとは何か?から始まり、コンプレックスが人の心(自我)にいかに影響を与えているのか?コンプレックスをいかに乗り越えるか?と徐々に深まっていきますが、専門的な内容も平易な言葉で、具体例を多く挙げ説明されているので、興味深く読み進められました。

本の内容からは離れますが、文章の端々から河合隼雄さんの強い探究心と、自身の能力が有限であることへの自制の念が感じられます。見習いたい姿勢です。

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2012年06月10日

Posted by ブクログ

読むたびに考えさせられる一冊。
「われわれが、誰かに対して「虫が好かない」とか、毛嫌いするなどの場合、われわれはその人が自分のコンプレックスを人格化したものではないかと考えてみるとよい。」

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2013年09月14日

Posted by ブクログ

友人に進められた本。
河合さんの本は初めて読んだが、
とても読みやすかった。

実際の臨床の例などもあり
わかりやすい内容だった。

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2012年01月16日

Posted by ブクログ

孤立と自立は違いについて、引用したいんだけど付箋をはるのを忘れちゃった。
自立しているひとは周りと関係が作れるけども、孤立しているひとは作れないから、そこは区別して考えるべきということだったように思うけども。
コンプレックスというのは一般に思われているような「劣等感」というよりは、実際はもうひとりの自分、的な存在なんだろうなと漠然と思った。

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2011年05月01日

Posted by ブクログ

自我の行動を阻害し、感情的な感覚を感じさせる自己の中のもう一つの存在がコンプレックスである。本書のようにコンプレックスのような、曖昧な感覚を言語化すること自体が克服や共存のために大切なのだと感じた。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

心理学初心者の自分としてはすごく難しくて、なんなら途中ちょっと理解が追いつかなかった部分もあるけれど、とにかくこんなにも視覚的にも見えず触れることの出来ない内界というものの一角(コンプレックス)をこんなにもその輪郭を露にするように一つひとつ書き上げていることがただただすごい。しかも50年前に。名著だと言われていることも納得。絶対にまた読み返してより理解出来るようにしたい。

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

2章 4心の相補性 より抜粋

ユングは、人間の心は全体として、つまり意識、無意識を包含して、全きひとつの存在であるという考えを早くから持っていた。

コンプレックスをもつことは、何か両立しがたい、同化されていない、葛藤をおこすものが存在していることを意味しているだけである。

第4章 4儀式の意味より抜粋

コンプレックスの解消に、死の体験が伴うとのべたが、このような体験が容易なことではなく、危険に満ちたものであることは想像に固くない。

自我が、コンプレックス内の内容とエネルギーとを、自分のものとするために必要な水路づけの機能を果たすものとして、儀式というものがある。

(感想)
臨床心理士が様々な文学作品や実際の治療の過程からコンプレックスについて説明をしており、豊富な例と筆者の実感を伴った文書で最後まで興味をもって読み通せた。

2章の自我と自己の図がとても示唆に富んでおり、コンプレックスは意識に隣接した無意識の領域であること。自我に統合されようとする時に障害となって表出することがあること。コンプレックスは自我の一面性を補うもの。など新たな視点が得られた。
4章ではコンプレックスの解消について、決して容易なことではなく苦しさを伴うこともあるということを実感した。



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2025年08月23日

Posted by ブクログ

主体性をおびやかすもの(やりたいと思ってもできない。)

アドラー……「人間にとってもっとも根源的な欲望『権力への欲求』であることを主張した」

p58失敗したことでいつまでもぶつぶついったりする人の方が、むしろコンプレックスを持っていると言える。つまり、この人達は劣等であることを認めていないのである。

「劣等感の悪循環」

平気で自分がソフトボールのできないことを認めた人は、それを認めることによって、その人の人格の尊厳性が失われないと感じているからである。つまり、そのことについての劣等の認識は彼の自我の中に統合されており、何も安定を揺さぶられないからである。

コンプレックスは自我によって経験されていない感情によって成立している……p60

そこに優越感が微妙にいりくんでいる

「先ず救われるべき人は、他人なのか、それとも自分なのか」と。(私は、専ら自分が救われる為に心理学を学んでいるかな)

p66「(略)……同化されていない、葛藤をおこすものが存在していることを意味しているだけである」

他人に対する愛情を意識する前に反動形成が生じることは多い。

コンプレックスと同一化した人間は強力である。(他人に貶された時、劣等感コンプレックスが刺激されて気が強くなる性質が私にはある)

感応現象……同種のコンプレックスは影響し合うp96

「コンプレックスの投影が集団として生じるとき、いわゆるスケープゴートの現象となる」p99

コンプレックスの共有現象p101

コンプレックスの発現条件が整う……「布置」(『他人と関わらなければ不幸にはならない』という文言があるが、布置の視点から考えれば……そうかもな)p104

(略)……それは孤立であっても自立ではない。自立したものは他人との関係を持つことができる。孤立したものは関係を拒否している。それは自立コンプレックスに自我が乗っ取られているのであって、自我が自立を獲得した姿ではない。p113

裸の王様に出てくる少年もトリックスターだね。

ひとりの人間の成長には、何らかの意味の「死の体験」が伴うということである。p128

コンプレックスの「解消」は、何らかの意味で死の体験を伴っている。

直観ってスキーマなの?

睡眠中には、自我の力が弱まるので、コンプレックスの活動が活発となり、その動きを自我は夢として把握することになる。

兄弟というものは、「もう一人の私」としての役割をもつことが多い。

争いの多いことは両者が分離していることを示すとは限らない。p173

他人に対して、誰でも同じように暖かく育ててくれるグレートマザーのイメージをすぐに投影してしまうのが「甘え」である。p193

西洋……プロメテウスが火を盗む
日本……イザナミが火を盗む

ハシッシュ ライトモチーフ つんぼ 相補性 水路付け ディアナコンプレックス アニマ アニムス 結跏趺坐(けっかふざ)

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2024年12月15日

Posted by ブクログ

コンプレックスとは、無意識にある感情を伴った心的複合体で、意識・自我に様々な影響を及ぼす。それは個人の経験や外的環境に左右されており、自我と対をなし、抑圧されたり暴走したりする。意識されない領域が存在するということ、一定の統一により安定している自我に対し、影としてあるコンプレックスを意識し統合することで、より高次元の自己実現を促す構造は、人の成長にとって重要。人が成長する過程で親や性別は条件として存在しているし、地母などの元型・普遍的無意識についても、人間という根本的な構造がある限り、普遍的に共通する何かがある、という考察はその通りだと思う。

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2021年09月21日

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めちゃくちゃ面白い。心理学専攻だったのに河合先生の本は初めて読みました。

コンプレックスとは無意識下に存在しており何らかのきっかけで自我に影響を与える。もう1人の自分と言っても過言ではない。
コンプレックスは必ずしも悪ではなく、自我とうまく統合することができたら、今までよりもっと自我は成長する…。

言葉が難しくなくてわかりやすく、都度患者さんの事例が出てくるので面白くてどんどん読んでしまう。夢の事例がとても面白くて、これから自分も夢を見た時に分析したいなと思った。

コンプレックスは悪だと思っていて、解消されないものだとも思っていたが、自分で苦しみながらも受け入れることができれば少しずつなくなっていくかもしれない。
多分わたしは多くのコンプレックスが入り混じっている。紐解いていけるようになりたい。

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2021年07月05日

Posted by ブクログ

その後の心理学の発展のために、またその後の社会のあり方の変容のために、内容が古くなってしまっているところも多いのだが、それでもこの本が今なお臨床心理学の名著として輝きを放つのは、河合先生の臨床心理の専門家としての矜持、クライアントに対する真摯な姿勢と暖かい眼差しが随所にちりばめられているからなのだと思う。励まされる内容がとても多かった。折りに触れて読み返していきたい。

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2020年11月05日

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15年ぶりくらいに再読。ふたたびの感動。

91pから始まる船と船長に例えてコンプレックスを説明するくだり。
そして78pの、自分の本当の感情に気がついた時の描写は何度読んでも素晴らしい。

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2017年07月08日

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河合隼雄先生の本は読んでみたいと思っていて、ようやく読んだ初めての一冊。
さぞかしお話の上手な方だったのだろうなぁと思いました。古い本だけど、古さを感じさせない。とても面白くて、分かりやすくかった。

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2014年02月27日

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ネタバレ

コンプレックスとは何か?について、一歩踏み込んだ考察が書かれている本。人間誰しも持っているコンプレックスが、家族や人生、思考にどのように絡んでいるのか、どこにその源泉があるのか、、どのように解消していくのか、がよく分かると思います。
若干、言い回しや文言が専門的なため読みにくいと感じるものもあるし、一読では頭に入ってこないところもあるけれど、それほどコンプレックスというものが複雑で多層構造を持っていることの裏返しでもある。
コンプレックスを船・船長・交渉係にたとえてる部分は秀逸。コンプレックスの動きがよく分かりました。

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2013年11月29日

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私が変わり始めたせいか
とってもおもしろかった。

少し大学の頃よりも理解できることが増えた
…ような気がする(笑)

でもまだまだ読み足らないと思うから何回か読み直したい。

普遍的無意識について、今まで本能と何が違うのかなと思っていたけど
これを読んだら少し違いが見えてきた気がする。
けどまだまだだなぁ。

これを読んだら自分にはまだまだ想像力が足らない
ってことがわかったから
なんとかしよう。


ただ私には影とコンプレックスの違いがイマイチわからない…

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2012年05月20日

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心理学者としてこんなにもバランス感覚の取れた人は珍しいのではないか。自身の学派、心理学自体の価値を過信することなく、冷静に、適切に、解説を書いているように思う。
個人的には、就職活動の前に読んでおきたかった気がする。

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2012年03月06日

Posted by ブクログ

今まで読んできた河合隼雄の本の中では最も学術的な著書だった。彼独特の語り口調などはなく、ユング派の一人としてユングが提唱した「コンプレックス」の解明から男女について、その背後の元型にまで及んで述べている一冊。
日常的に「コンプレックス」という言葉を耳にするようになり、私個人も意味をよく考えずに「〇〇がコンプレックスだ。」などと用いてきたが、その語源は「inferiority complex」にあり、最初に使用したのはユングであったことなど知らないことも多かった。コンプレックスから派生して、私たちの中にある「自己」や「自我」との関わり、またそこから一体どうやって主体性がおびやかされるか、など非常に深く知ることの出来る一冊だった。浅学なため、理解が浅い部分が多かったので、筆者があげられている多くの参考書の中からまた派生して読んでいきたいと思う。

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2011年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
「コンプレックス」という言葉は日常的に用いられるが、その意味を正確に理解している人は少ない。
それは、現代なお探険の可能性に満ちている未踏の領域、われわれの内界、無意識の世界の別名である。
この言葉を最初に用いたユングの心理学にもとづいて、自我、ノイローゼ、夢、男性と女性、元型など、人間の深奥を解き明かす。

[ 目次 ]
第1章 コンプレックスとは何か
第2章 もう一人の私
第3章 コンプレックスの現象
第4章 コンプレックスの解消
第5章 夢とコンプレックス
第6章 コンプレックスと元型

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月24日

Posted by ブクログ

 香山リカさんが、「最近、鬱病ですといって会社を休んでおいて趣味のことには元気に出掛けていく人がいる」
 と言っていたが、この本の中で、鬱だと言っていても趣味のことは楽しくできる人はいる、というようなことが書いてあった…
・・昔から似たような人いるようです!

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2010年11月18日

Posted by ブクログ

大学時代、いくつかの講義の後、自分なりにサブテキストと成り得る本を買って
いろいろ補ってみよう……と、手を出したうちの1冊を思い出したのでメモ。
一般人が日常的に様々な場面で口にする「コンプレックス」という言葉の
本来の意味(=「劣等感」ではない)と、
それを最初に用いたユングの心理学について書かれた本。

■complex=感情を担った表象の複合であり、抑圧されて無意識下に存在するもの。

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2013年07月09日

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