宮木あや子のレビュー一覧
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今まで読んだ宮木さんの作品は痛快に困難を笑い飛ばして行くような、元気をもらうような作品ばかりだったので今回のテイストは初でした。
誰からの注意を惹きつけてしまうような美少女。守られるべき幼少時代に自分で自分を守るしかなかった。自分をただの子供として扱ってくれる数少ない人と巡り会えたことが唯一の救い。
それでも少女は大人になることなく人生を終えてしまった。ただ一人心を通わせた少年の復習を誓って。
現実離れしているところもあったと思う。そこまですべての人が欲望まみれで美男美女に対して接するとは思えないが、少女の周りのすべての男性は欲望の対象に、すべての女性は敵にという状況は生きにくかっただろうと思う。親がずっと傍に居られるわけにも行かないし、どうすればこの少女は普通に生きていくことができたのだろうか。
そればかりを考えてしまう。 -
Posted by ブクログ
全体的に上手くまとまっている雰囲気。
『選挙に絶対行きたくない(略)』はセクシャルマイノリティによるヘテロセクシュアリティへの反旗の話でもあると感じる。だって確かに選挙にも行かず期日前投票の日すらダラダラ過ごしてても、好きな人との日々を確約されてるなんて、それこそ""ずるすぎる""。二人をすれ違わせたのは結局信条の違いなんかじゃなくて、いつまでも同性婚を認めない政府の方針なんだなと思った。
ガッツリめのファンタジーが苦手なタイプで、ちょこちょこ挟まるファンタジー要素たっぷりのお話を読み進めるのが大変だったので、この評価。
宮木あや子さん目当てで買ったけど、やっぱり宮木あや子さんの書く愛の話は強烈で鮮烈で、それでいて儚く強く、最強だと思う。 -
Posted by ブクログ
うーん。こ、これは‥。こんなにレビューを書くのが躊躇われる作品は、そうそうないです。書きたくない、というよりは、どう書くのが適切かと考えてしまい、自分の価値観や感性が晒される(これはどの作品も同じか)ような気になります。
狂気と幻想‥。脳裏に浮かぶ言葉はこれで、読み手を軽々と非日常・非現実世界へ誘いました。
全編を貫く性暴力からは、性的感覚を享受するような「官能」は感じません。どちらかと言うと、美しさを最高価値とし、傾倒・陶酔する「耽美」なのかと受け止めました。
6つの章で語り手の視点が異なり、少しずつ物語が重なり合っていきます。読み手の心に浮かぶ謎が徐々に明かされる構成は、ミステリーとも見なされるに足る巧みさは感じました。
散り際の美しさ故に、万人から愛される桜。この春の描写が少女の美しさの背景に置かれることで、残虐性や絶望感が際立つような気がします。
個人的には苦しく疲れる読書体験で、ウラスジにある「美しき青春小説」とは思えませんでした。 -
Posted by ブクログ
狂気を孕む美しさは、猟奇を催す。
17歳の少女は、その美貌から、幼児期より男たちの欲望に穢され続けた。美少女を取り巻く狂気のサークルは、家庭から教室、学校へ。エネルギーを蓄えながら伝染していく。
坂口安吾「桜の森の満開の下」を読んだことも忘れていたのに、狂気と桜のキーワードで、思い出した。桜の満開の下を通ると気が狂う。そう信じている山賊。美しい旅の女を襲い妻にする。その美しい女がなかなか恐ろしく、最後は桜の満開の下で散っていくという短編。
美少女に狂っていく男達と、彼らの狂気に身を滅ぼしていく少女。その連鎖は幾つかの殺人にも至る。
各章の展開のつながりが面白い。最終章での少女の憑依が、彼女への救済なのか、残された者への残像なのか、掴みきれなかった。
久しぶりの、グロチック。
さてさてさん、ありがとうございました。
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Posted by ブクログ
宮木あや子さんは『官能と少女』から。恋愛小説としてはわりと露骨な性描写が特徴で、後ろめたくもくすぐったい感じになります。本作はいわゆる百合的な展開が主となっていて、同じく宮木さんの『ヴィオレッタの尖骨』とともに気になっていた一冊です。しかしまぁ、「あまいゆびさき」…このタイトルは甘美で、それでいて厳かな儀式を想起させますよね。
さて、冒頭主人公ふたりの幼少期(保育園児あるいは幼稚園児)から、チョコを口移ししたり触りっこをしたり結婚ごっこをしたりと、まあ見せつけてくれます…。「さすがここまでしないだろう!」とツッコミたくもなりますが、幼いふたりにとっては「楽園」を訪うがことき夢のじかん、読み進めていく上で鮮明にふたりの絆を象徴していく風景なので、導入としては納得させられるものがあります。このくらいがよい。正直この序盤の序盤こそ一番印象深かったような気がします。
そこからの展開は良くも悪くも真っ直ぐな恋愛物語です。すれ違いがあり、ベッドシーンがあり、ハッピーエンドで締めくくられます。ここまで真っ直ぐだとは…。もうちょっと背徳的というか、照乃ちゃんのためになら罪をも犯す(チョコをあげるために万引きをする)みたいな展開が続くと思っていただけに、私が思っていたような展開になることはありませんでした。二人とも真っ直ぐでとてもいい子でした(笑)。登場人物も、やけに悪人っぽく書かれた大人たちを除けば、みんな芯のあるいい人たちです。
ですから、本作は立派な成長譚あるいは青春小説としても読めるのではないでしょうか。特に後半のドラマチックな展開から緩やかに着地していくラストは良い余韻にひたれます。
まとめると、想像していたような薄暗さはあまりなかったものの、「ほんとうに」人を思う気持ちが美事に結晶した綺麗な一作でした。(因みに、私は映画なら『小さな悪の華』っぽい少女の交流が好きです。)
「大丈夫、ぜんぶ、ふたりで始めよう。何もなくてもきっと、一緒にいれば平気だから。これから怖いこともあるかもしれないけど、ふたりでいればきっと怖くないから」
こんなに小さな手なのに。こんなに小さな身体なのに。大きな黒い瞳から発せられる希望に似た光は、私たちの未来だけを映す。(本書より)