あらすじ
その岬には資産家の娘だけが入れる全寮制の女子大があった。衣服と食べ物は好きなだけ手に入るが、情報と自由は与えられない。そんな陸の孤島で暮らす4人の少女――高校で同性と心中未遂を起こした矢咲、母親に捨てられた小津、妾腹の子である三島、母親のいない都岡。孤独な魂は互いに惹かれあい、嫉妬と執着がそれぞれの運命を狂わせてゆく。胸苦しいほど切なく繊細な、少女たちの物語。
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Posted by ブクログ
19歳の女性4人のお話。 どこともわからないような学校の寮の中、情報がほぼ遮断されている中でのみそれぞれの心境や状況の変化で物語が綴られていきます。 宮木あや子さんが描く女性はとても繊細で綺麗な人物になるのが感心しながら見ていますが、特に少女はより以上なのかなと、この世界観に浸かっていたくなるのを感じましたら。
Posted by ブクログ
200ページ余なのにとてつもなく濃度が高かったです。そして静か。太平とは異なる静謐な文章と物語。だからこそ心の乱れが際立っているんだと感じました。
4人の少女はそれぞれ望む形で治るべき、治るべき結着を迎えたのだろうと思います。
手元に置きたい1冊です。
矢咲と小津が、ともに歩む未来を見たかった。
Posted by ブクログ
「作り物の空は、日の光を降らしてはくれないんだよ、小津。」
なんて、愛しいんだろう。
ねえ幕の下ろし方まで完璧なんて、そんなのは狡いよ。
作中に出てくる人物たちはみんな、どこか傷付いて痛々しい。
分類としては少女小説になるのかな。
私はこれを百合小説とは呼びたくないな、と思う。
愛しい、かなしい。と、そればかり思いながら読んだ。
三島が当然の様に要求する事を我儘だと思う人もいるだろうし、小津の斜に構えた思想が苦手な人もいるだろうな。偶像を押し付ける津岡の事も、優し過ぎる矢咲の事も、誰かは無責任だと言うのかも知れない。
行き場のない苦しみを抱えて、何も自分で決められず生きるしかないのに、だからこそ美しいなんて。
オススメしてくれてありがとう。
目を瞑って、螺旋階段を上る彼女達の事を考えると、堪らない気持ちになったよ。
スーッ……小津ーーーーーー!!!!!!(一番好きだった)
Posted by ブクログ
資産家の娘達がこの世の果ての塔に閉じ込められる、って設定だけでわくわくしてたけれど、実際は女の子の弱くて繊細で美しい描写がもりだくさんのお話で、胸がいっぱいになる。
ずっと側にいてほしい、どこにも行かないでほしい、って気持ち。捨てられた彼女達がそれを切に願う所が皮肉のようで苦しくなる。
香りが特徴的な小説。
シャンプーの桃の香り、煙草の香り、焼き上がったマフィンの香り、インスタントコーヒーの香り。香りが印象づいているのは魅力的。
ずっと小津はいつか海に帰るのだろうと思ってはいたけれど、凄く苦しい。矢咲は、帰ったらまた顔を合わせて話そうね、と未来を語れたけれど、そう考えられなかった小津のことを馬鹿だとは思えないし、子供の頃から大人びていて、リアリストだった彼女はそう考えるのが必然だったと思える。三島が止めていれば、と言うが、きっともう止められなかったんだろうね。
都岡が帰ってきてくれたシーンが苦しくて切なくて、何故帰ってきたのか分からないけれど、良かった。せめて三島だけでも救われてくれて、良かった。「また会おう、などと…」が1番胸に刺さった。
長々書いたけれど、結局ストーリーよりも、本のもつ雰囲気と香りが大好きでした。
Posted by ブクログ
もう何周したかわからない程読んでます。雨の季節になると開きたくなる世界。閉じてて潔癖で痛々しくて儚くて、大好き。雨の降る、美しい小説でした。
心のなかに、さくらしかいなかった矢咲、母親しかいなかった小津、お互いしかいなかった三島と都岡、4人の関係が交差していき、仲良くなったり嫉妬したり壊れたり愛したり。
逃げてきたり捨てられたりした彼女たちには、いつかはなくて今しかないから、余計に閉じていって相手しか見えなくなるのかも。
小津は一足先に世界から消えたけど、矢咲と三島と都岡は岬の学園を出てどう生きていくのかな。特に三島…後ろ盾が無い人は三島だけだから、1番強くならないといけないのが彼女な気がします。使われるにしても。
4人を取り巻くアイテムも好き…煙草は吸わないけど、特に彼女たちが食べてるものが食べたくなります。明日シュークリーム買ってこよう。。
Posted by ブクログ
2009年の初読以来。
はじめて読んだ宮木作品が本作で、わたしにとって、シリアス宮木さんと言えば雨の塔。
もう少女とは言えない10代終盤から20代前半くらいの大人女子、の、一部というか半数というか……が、強烈に憧れるだろう少女趣味な小道具群、
特に甘いものに没頭出来ない自分を感じて
すっかり大人になってしまった……とちょっとしょんぼりしたのはまあ前半(?)くらい。
大すきな作品だと記憶していたけれど、記録を辿ったら意外と三つ星で、だから今回、もしかしたら初読時よりも多くのものをがっちりとキャッチ出来たような気までする。
表層にやられない分、芯まで手を突っ込んだ感じ。というか昔は表層だけに耽溺したかった、らしい。
空気感がものすごくすき。
お人形みたいな、いちばん有機体じゃないと思える、人間離れした三島がすき。感覚がすっきりする。
逆に矢咲は物凄く人間らしいなあと思う。肯定と否定が、赦しと自責が入り混じる。読み手まで人間だ……。
ラプンツェルの塔
雨の塔を見上げた矢咲は
その小さな窓から
救いの髪が降りてくるのを願った。
窓から見下ろした小津は
垂らす事の出来ない
うなじで切り揃えられた髪の毛で
あがっておいでとただ願うのみ。
妄想を最大に働かせると
もうここで彼女達の命運は決まっていたように思える。
小津はもう限界だった。
母に捨てられた時。
鳴く事を知らない鳥は
骸となって鳥籠に横たわった。
父に捨てられた時。
鳴けない鳥は悲しみと共に
籠の底に切り捨てられ動かなくなった。
そして
矢咲を失う時。
鳴く事を知ってしまった鳥はもう
鳥籠には帰れない。
海を選んだのは
海流に乗って潮風に運ばれて
母のそばに矢咲のそばにいけるかもしれないなんて
微かな希望もあったのかもしれない。
それが不可能なのは
頭の良い彼女なら分かっていただろう。
一度求められる事を知ったら
もう知らない頃には戻れない。
矢咲は?
きっと彼女はもっと少年的だった。
だから追いかけられなかった。
黒川さくらから逃げて
背負いきれないものを拭い去るように
アルカトラズへたどり着き、
もう一度恋をした。
さくらとは似ても似つかない少女に。
皮肉にも小津の元を離れる事になって
初めて「今」ではない「未来」を
真剣に考えたんだろう。
だからこその去り際の明るさ、そっけなさ。
彼女は監獄を出て自分の人生を歩み、
小津と共に生きる道を
見つけられるという希望が見えたのだと思う。
矢咲が手を握ったらきっと
小津はその手を握り返すから。
三島は最後都岡に救われ
そしていずれ来る別れを思い髪を切る決意をする。
うなじに切り揃えられた黒髪と
さくらの面影を宿す顔で
彼女はその後何を望むのだろうか。
少女4人の視点から綴られる物語は
とてもとても耽美なもので
私にとって大切な一冊となりました。
Posted by ブクログ
友達に耽美系の本ない?って聞いたら貸してくれた本
久しぶりにドストライクすぎてつらい…!
常々可愛い女の子たちを可愛いものがいっぱいの部屋に閉じ込めたい、って思ってたから、世界観が本当にツボで幸せ
少女小説ってこんなにも素敵なんですね
Posted by ブクログ
好き。
匂いがしてくる小説だった。
タバコの匂い、マフィンの匂い、インスタントコーヒーの匂い、雨の匂い、桃のシャンプーの匂い、潮の匂い、終わりの匂い。
Posted by ブクログ
お金持ちの家庭の子だけが入学できる孤島の大学。
ドラマにできそうな話。
とりあえず設定が富豪過ぎて共感できる部分は少ない。
女子校の経験はないのだけど
こんな世界もあるのだろうか。
1人の友達を独占したくなるようなそんな気持ちは
理解できるかな。
結末はどうなるのか気になったけど
全部が不幸になるわけではなかったのが救い。
Posted by ブクログ
女性(学生)4人の繊細で脆く拗れる心理描写が細かい作品だと思いました。
うまく説明できないですが「女のこういうところが面倒くさい」みたいな人間関係が、美しく表現されていて、そのギャップに怖さも感じました。
作中のほとんどが4人のうちの誰かのシーンとなりますが、語り手が頻繁に変わります。
誰が誰の話をしてるのか混乱してしまいました。
現実の人間関係も誰が何を考えてるのかわからないですし「あの人はこういう人だと思ってたのに話してみたら違った」みたいな感じになり、何回も前のページに戻って確認しながら読み進めました。
Posted by ブクログ
宮木あや子が2007年に発表した長編小説の文庫版。最初期の作品の一つです。資産家の娘だけが入れる全寮制の女子大に「捨てられた」4人の少女の出会いと別れを描いた物語です。学校の敷地内、登場人物は4人という限られた舞台の中で濃密な時間が流れます。物語自体は淡々と進みますが、全体の雰囲気が素晴らしいです。ただし悲劇的な結末が苦手な人はご注意を。4人の行動や心情がかなり細かく描写されていて分かりやすいはずなのですが、誰が誰か分からなくなる瞬間があります。あえて人物の認識がしにくく書かれているのかな?
Posted by ブクログ
外からの情報を遮断された全寮制の女子大
その中で4人の少女たちは互いに依存し共鳴し壊れていく
甘いお菓子や可愛らしいアイテムで彩られた甘い世界に少しずつ毒が回っていく
前に読んだ時よりも文章が入ってくる
自分も宮木あや子という甘い毒に侵されているかもしれない
Posted by ブクログ
(2022-07-19 2h)
友だちに勧められて読みました。
耽美な雰囲気がたまらない…!!すき!
映画『京城学校』が好きな人は絶対沼る。女子校、寮、お嬢様…たまらない設定が詰め込まれている。
Posted by ブクログ
柚木麻子さん、角田光代さんあたりが好きな方は好きだと思う。これも一種のガールミーツガールになるのかな?ほぼガールしか出てこないしな、、。
設定がしっかりしてるけど、その説明は少なくて。彼女たちの世界の狭さが表れているのかもしれない。
バナナマフィン食べたい。
Posted by ブクログ
ずっと読みたい本リストに載っていたのですが、やっと読めました。
資産家の娘だけが入れる、岬の学校。
学生証をかざせば、キャッシュレスでブランドものからスイーツまで何でも手に入る。手に入らないのは、情報と自由だけ。読ませる設定で、独自の世界観を描いているのが、さすがです。
耽美な世界に溜息がでそうになりながら、それでいてあまりに閉鎖的な世界に息を詰めながら読み切りました。
宮木さんの本はいろいろと読んできましたが、その中でもこの作品の個性は特に強いですね。リアリティがどうとか、そんなの関係なしに、引き込まれます。
この少女たちの年齢特有の潔癖さとか、視野の狭さとか、美しさとか・・・なんでこうも如実に描けるんでしょう。
当たり前ですが、私にもこんな年齢の頃があって、こんなに美しい世界ではないものの、女子校に通っていたから感じる似たようなにおいみたいなものがありました。
あの頃は、生きにくかったなぁ。
大人になればもっと楽になることもあると今ならわかるけど、当時は常に刹那的で余裕がなく感じていた気がします。
ガラスの結晶に閉じ込めたかのような、この美しくも儚い世界は、今にも壊れそうな危うさを孕んで人を魅了しますね。
既読ですが、再び太陽の庭を読みたくなってしまった。
それにしても、宮木さんは一体なんて世界を作り上げるんだろう。雨の日に読んだせいか、なかなか現実に戻ってこれなかったです。
Posted by ブクログ
宮木さんの日本語が好き。 あえかな とか初めて現代小説で見かけたのではないだろうか。綺麗で、柔らかで、的確で。すごいなぁ。
隔絶された大学に住まう、訳ありで裕福な四人の少女たちがたおやかに惹かれあい傷つけあうお話。
地の文で気になったのは他者の存在感。確かに学校の在り方として人との接触を極力減らすようになっているんだろうなぁ。と読める描写をしているのだけど、それでも不自然なほど他人が細かく描かれない。興味のない人間はいないと同じ、というある意味当然な感覚なんだけど、その中に気遣いと残酷さと自己愛がない交ぜになったような歪みを感じて、なんだか少し怖い。
愛しいから近づかれたくないみたいな相反する描写がやっぱり巧いなぁ。震えるね。
軽やかに逃げ出せた子、誰からも選ばれなかった子、何も知らず弱く幼い子、どこまでも優しい子。最後に思いを馳せるのは誰ですか。
Posted by ブクログ
それぞれ事情がある4人の美しい少女。
人里離れた岬にある全寮制の女子校で出会い‥
端正な文章で淡々と描かれるムードのある世界です。
大変な資産家の娘だけが入ることの出来る特殊な学校。
学生証をかざすだけで、広大な敷地内にあるテーマパークのような店でブランド物の洋服も流行のスイーツも手に入れられるが、出て行くことは出来ず、新聞もテレビもない。
自由と情報はないのです。
卒業すれば、どこの大学の卒業証書も手に入れられるという。
提携している高校では「島流し」と称されていました。
財閥の愛人の娘・三島敦子は、小柄で長い黒髪。
愛人の娘の中では早くから三島翁に認知され、可愛がられてきたが、学校はここになった。
都岡(つおか)百合子は母を知らない。母は名家の娘だったらしく、めったに会うこともない父は外国人。都岡はすらりとした西洋の人形のような外見だ。
やはり資産家の娘だが、三島ほどではなく、都岡をそばにおきたがる三島に気に入られている限り続く関係だった。
ひと気の少ない海沿いの寮に、新入りが入ってくる。
男の子のように短い髪の矢咲(やざき)実。
クラスメートだった黒川財閥の娘さくらと心中未遂を起こし、周囲の視線から逃れるようにここに来た。
少し早く来ていた小津ひまわりは、母が中国人のデザイナーで、リルファンという名も持つ。
少女の頃には人気モデルだったが、母は娘を一時的に利用しただけで本当の関心も愛情もなかった。
閉鎖された空間で、可愛いもの綺麗なものに囲まれつつ、物憂げに日々を過ごす娘達。
都岡はモデルだったリルファンのことを知っていた。
矢咲は、さくらに似ている三島に惹かれ始める‥
互いに少しずつ触れ合い、興味を抱き、人間関係が交差していきます。
そのはかなさ、ほんのひとときの熱さ、動きの取れない切なさ。
嫉妬も愛情も感じるけれど、どう生きたらいいかをまだ知らない脆さ。
大学1年にしては無抵抗で幼い気もするけれど‥
もともと孤独がちな育ち方もあり、こんな場所に入れられてしまったら気力も衰えるだろうか。
しかし、こんな非現実的な4年間を過ごして、家が使う駒としてであっても、役に立つ大人になれるのかな?
現実味はあまりないのですが、さらさら綴られる物語に酔いしれていたくなります。
恩田陸の作品や、萩尾望都の作品を思い出しますね。
もうあれは古典?
宮木あや子が書くと、こうなるのですね。
こうなる必然性はないのではと思う結末も、影響を受けた作品の雰囲気とモチーフの変形という観点からすると、わかるような気もするのです。
Posted by ブクログ
この世の果てにある岬の学園。最新のファッションも、パティシエのスイーツも、何でも手に入るが情報は遮断された、豪奢な島流し。様々な事情を抱えた資産家の令嬢たち。
グミベア。焼きたてのバナナマフィン。パフスリーブのベビードール。イチゴの指輪。桃の香りのシャンプー。ジンジャースパイス入りの甘い紅茶。シャコ貝の灰皿。
同性と心中未遂を起こした矢咲、母に捨てられた小津、妾腹の子 三島、三島に捕らわれている都岡。
外界と隔離されたラプンツェルの塔で、独占欲と満たされない想いの行き着く先は…。
Posted by ブクログ
陸の孤島と言われる、外界から隔絶された全寮制の女子大を舞台に、四人の少女の関係性と、それぞれの揺れ動く繊細な想いを綴った物語。
ちょっと浮世離れした設定ではありますが、儚さや美しさが際立つ世界観に惹きつけられました。
シャンプー、マフィン、煙草など、香りを連想させるアイテムの用い方が効果的で、甘さと苦さ、救いと諦めが共存する物語に、彩りを与えているように思います。
Posted by ブクログ
題名のごとく、シトシトとした塔の中の
ワケあり4人の少女の耽美的刹那的な物語。
少女漫画が好きな人はハマりそう。
最後全て悲しい結末になるのかと思いましたが
救われたような結末でなんとかよかったです。
久しぶりにマフィンでも買ってきて食べようかな。。。
Posted by ブクログ
自由なようでありながら外界から完全に隔絶された舞台設定のせいか終始物語に息苦しさのようなものを感じながら読んだ。又、私の読解力の無さもあるだろうが、4人がなんとなく似たような闇(親との関係など)を抱えているせいか各々のイメージが掴みにくく、読んでいて今誰の視点で話が進んでいるのかわからなくなる場面が多々あった。架空の世界より現実世界の中でこの4人の感情を描いた方がより読者の心に届いたような気がする。
Posted by ブクログ
んー?
鳩山郁子さんつながりで辿り着いたんだけど、んー?
耽美・・・だけどなんか物足りない。
設定はステキなんだけど、大学生にもなったら自分で何とかして欲しいって思ってしまう。
Posted by ブクログ
ひとつひとつの設定、小物、食べ物にときめく。
なにもかもが現実離れしてるのに、
どこか惹き付けられる不思議なお話だった。
みんな病的に痛くて美しい。
Posted by ブクログ
少女といえど女性は女性で、その心理は男である僕には難しいと感じました。
あらすじ(背表紙より)
その岬には資産家の娘だけが入れる全寮制の女子大があった。衣服と食べ物は好きなだけ手に入るが、情報と自由は与えられない。そんな陸の孤島で暮らす4人の少女―高校で同性と心中未遂を起こした矢咲、母親に捨てられた小津、妾腹の子である三島、母親のいない都岡。孤独な魂は互いに惹かれあい、嫉妬と執着がそれぞれの運命を狂わせてゆく。胸苦しいほど切なく繊細な、少女たちの物語。
Posted by ブクログ
岬にある全寮制の女子大に入学した4人の少女たち。そこでは資産家の訳ありの娘たちが生活していて、授業に出るのも出ないのも自由、ダウンタウンと呼ばれるエリアにある店で日用品も好きなだけ手に入るが、家族からの電話や宅配便はチェックされ、外の世界からは孤立している。そんな鳥籠の中のような環境で、 惹かれあい、嫉妬し、少しずつ病んでいく少女たち。濃密で綺麗な文章は堪能できたけど、私にはちょっと少女趣味的な感じがして合わなかった。小道具はお洒落だし、退廃的で耽美な世界が好きな人には楽しめるかと思われます。
Posted by ブクログ
2016年、18冊目はR-18文学賞のタイトルホルダー、宮木あや子!
岬の女子大は全寮制。ソコに集まるのは、少々ワケありの資産家の令嬢。そして、今年、入学した新入生の四人も……。
メイン・キャストの四人、それぞれの設定、少しずつわかってくることは悪くなかった。一方、全体的に(特にクライマックス&オチ)は好みとは少し違った。それでも、この限定世界の空気感は名作(個人的に)『花宵道中』に通じるモノを感じた。
オッサン向けでないのは、百も承知。ただし、耽美派女子向けと思っていると、足元掬われるかもしれません。
そして、次なる(?)、『太陽の庭』がソコには控えているのであった。
Posted by ブクログ
耽美的かつ繊細で濃厚な文章に惹きつけられました。それはある種、純文学のような雰囲気もありました。けれども、百合が嫌いな私にはどうしても受け付けない部分がありました。また、これは私が重苦しい小説が好きなのもあると思いますが、ページ数から想像していた通り設定の割に浅く感じました。
Posted by ブクログ
空の上をもとめて、地球の描く輪郭に向かって透明な球を投げ上げる。なんとか最高点が最外側まで届いても、その軌跡は地球の正円とちがってひどく急で、二つの焦点どうしが離れた楕円にしかならない。幾度も幾度も、丹念に投げ上げ空の上ばかり見つめすぎて、この世界はよりいっそう閉ざされていってしまった。塔の中に閉じ込められた四人の少女たちの営みには、そのような、みずからの執念でみずからを追い込んでいくような、世界が滅びても同じ動きをし続けるまばたきしないロボットのような、滑らかでぎこちない一心不乱さを感じる。
矢咲のように、都岡のように、塔を出て行くことはけっきょくできるのだ。それまでと方向をたがえたとき、透明な球は空にひびを入れる。ひびの外にある当たり前の日々のことは、この物語では語られない。語る価値を持たない。塔でみずからを完結させた小津だけが、塔の中で終わることを許される。
閉ざされた世界をつくることは、作家にとって、きっとオルゴール細工みたいなものなのじゃないかしら、と想像する。そのできばえは飛翔よりもむしろ緻密さに重きを置かれるように感じる。
ーーー
”いつか、は、ない。
私たちには、今、しかない。”
このような切迫感は、まだ私にものこっている。
ーーー
矢咲は、本当に追いかけるべきだった。
過ちで喪った側か、引き留められずいってしまった側か、自分に近いのはどちらだろう。渾然となって舌の上が苦い。