あらすじ
その岬には資産家の娘だけが入れる全寮制の女子大があった。衣服と食べ物は好きなだけ手に入るが、情報と自由は与えられない。そんな陸の孤島で暮らす4人の少女――高校で同性と心中未遂を起こした矢咲、母親に捨てられた小津、妾腹の子である三島、母親のいない都岡。孤独な魂は互いに惹かれあい、嫉妬と執着がそれぞれの運命を狂わせてゆく。胸苦しいほど切なく繊細な、少女たちの物語。
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Posted by ブクログ
200ページ余なのにとてつもなく濃度が高かったです。そして静か。太平とは異なる静謐な文章と物語。だからこそ心の乱れが際立っているんだと感じました。
4人の少女はそれぞれ望む形で治るべき、治るべき結着を迎えたのだろうと思います。
手元に置きたい1冊です。
矢咲と小津が、ともに歩む未来を見たかった。
Posted by ブクログ
「作り物の空は、日の光を降らしてはくれないんだよ、小津。」
なんて、愛しいんだろう。
ねえ幕の下ろし方まで完璧なんて、そんなのは狡いよ。
作中に出てくる人物たちはみんな、どこか傷付いて痛々しい。
分類としては少女小説になるのかな。
私はこれを百合小説とは呼びたくないな、と思う。
愛しい、かなしい。と、そればかり思いながら読んだ。
三島が当然の様に要求する事を我儘だと思う人もいるだろうし、小津の斜に構えた思想が苦手な人もいるだろうな。偶像を押し付ける津岡の事も、優し過ぎる矢咲の事も、誰かは無責任だと言うのかも知れない。
行き場のない苦しみを抱えて、何も自分で決められず生きるしかないのに、だからこそ美しいなんて。
オススメしてくれてありがとう。
目を瞑って、螺旋階段を上る彼女達の事を考えると、堪らない気持ちになったよ。
スーッ……小津ーーーーーー!!!!!!(一番好きだった)
Posted by ブクログ
資産家の娘達がこの世の果ての塔に閉じ込められる、って設定だけでわくわくしてたけれど、実際は女の子の弱くて繊細で美しい描写がもりだくさんのお話で、胸がいっぱいになる。
ずっと側にいてほしい、どこにも行かないでほしい、って気持ち。捨てられた彼女達がそれを切に願う所が皮肉のようで苦しくなる。
香りが特徴的な小説。
シャンプーの桃の香り、煙草の香り、焼き上がったマフィンの香り、インスタントコーヒーの香り。香りが印象づいているのは魅力的。
ずっと小津はいつか海に帰るのだろうと思ってはいたけれど、凄く苦しい。矢咲は、帰ったらまた顔を合わせて話そうね、と未来を語れたけれど、そう考えられなかった小津のことを馬鹿だとは思えないし、子供の頃から大人びていて、リアリストだった彼女はそう考えるのが必然だったと思える。三島が止めていれば、と言うが、きっともう止められなかったんだろうね。
都岡が帰ってきてくれたシーンが苦しくて切なくて、何故帰ってきたのか分からないけれど、良かった。せめて三島だけでも救われてくれて、良かった。「また会おう、などと…」が1番胸に刺さった。
長々書いたけれど、結局ストーリーよりも、本のもつ雰囲気と香りが大好きでした。
Posted by ブクログ
2009年の初読以来。
はじめて読んだ宮木作品が本作で、わたしにとって、シリアス宮木さんと言えば雨の塔。
もう少女とは言えない10代終盤から20代前半くらいの大人女子、の、一部というか半数というか……が、強烈に憧れるだろう少女趣味な小道具群、
特に甘いものに没頭出来ない自分を感じて
すっかり大人になってしまった……とちょっとしょんぼりしたのはまあ前半(?)くらい。
大すきな作品だと記憶していたけれど、記録を辿ったら意外と三つ星で、だから今回、もしかしたら初読時よりも多くのものをがっちりとキャッチ出来たような気までする。
表層にやられない分、芯まで手を突っ込んだ感じ。というか昔は表層だけに耽溺したかった、らしい。
空気感がものすごくすき。
お人形みたいな、いちばん有機体じゃないと思える、人間離れした三島がすき。感覚がすっきりする。
逆に矢咲は物凄く人間らしいなあと思う。肯定と否定が、赦しと自責が入り混じる。読み手まで人間だ……。
Posted by ブクログ
お金持ちの家庭の子だけが入学できる孤島の大学。
ドラマにできそうな話。
とりあえず設定が富豪過ぎて共感できる部分は少ない。
女子校の経験はないのだけど
こんな世界もあるのだろうか。
1人の友達を独占したくなるようなそんな気持ちは
理解できるかな。
結末はどうなるのか気になったけど
全部が不幸になるわけではなかったのが救い。
Posted by ブクログ
(2022-07-19 2h)
友だちに勧められて読みました。
耽美な雰囲気がたまらない…!!すき!
映画『京城学校』が好きな人は絶対沼る。女子校、寮、お嬢様…たまらない設定が詰め込まれている。
Posted by ブクログ
自由なようでありながら外界から完全に隔絶された舞台設定のせいか終始物語に息苦しさのようなものを感じながら読んだ。又、私の読解力の無さもあるだろうが、4人がなんとなく似たような闇(親との関係など)を抱えているせいか各々のイメージが掴みにくく、読んでいて今誰の視点で話が進んでいるのかわからなくなる場面が多々あった。架空の世界より現実世界の中でこの4人の感情を描いた方がより読者の心に届いたような気がする。
Posted by ブクログ
空の上をもとめて、地球の描く輪郭に向かって透明な球を投げ上げる。なんとか最高点が最外側まで届いても、その軌跡は地球の正円とちがってひどく急で、二つの焦点どうしが離れた楕円にしかならない。幾度も幾度も、丹念に投げ上げ空の上ばかり見つめすぎて、この世界はよりいっそう閉ざされていってしまった。塔の中に閉じ込められた四人の少女たちの営みには、そのような、みずからの執念でみずからを追い込んでいくような、世界が滅びても同じ動きをし続けるまばたきしないロボットのような、滑らかでぎこちない一心不乱さを感じる。
矢咲のように、都岡のように、塔を出て行くことはけっきょくできるのだ。それまでと方向をたがえたとき、透明な球は空にひびを入れる。ひびの外にある当たり前の日々のことは、この物語では語られない。語る価値を持たない。塔でみずからを完結させた小津だけが、塔の中で終わることを許される。
閉ざされた世界をつくることは、作家にとって、きっとオルゴール細工みたいなものなのじゃないかしら、と想像する。そのできばえは飛翔よりもむしろ緻密さに重きを置かれるように感じる。
ーーー
”いつか、は、ない。
私たちには、今、しかない。”
このような切迫感は、まだ私にものこっている。
ーーー
矢咲は、本当に追いかけるべきだった。
過ちで喪った側か、引き留められずいってしまった側か、自分に近いのはどちらだろう。渾然となって舌の上が苦い。