【感想・ネタバレ】雨の塔のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年02月18日

トップ3に入る小説のひとつ。
上流階級でいわくつきになった女子が「捨てられる」岬の学校。

「彼女、高校を卒業した頃に「使われた」よね。私そんなに似てる?」

庶子だとか、同級生と心中騒ぎを起こしてしまった子とか。
捨てられた少女たちの儚い学園生活。
そんな場所でも彼女たちはふつうに食事をしたり買い...続きを読む物をしたりを楽しんでいて、その儚い日常があっという間に指の隙間からこぼれ落ちていくような、これほど儚い小説を読んだことがない。

☆追記
「百合小説コレクションwiz」という短編集に、続編(過去編?)が掲載されています
何も知らずに読んでいたら都岡と三島が出てきてびっくり。小津に「都岡は三島の奴隷」と言われていたのが嘘のように、ピアニスト都岡の専属運転手として周りに食って掛かっている赤毛の美女、あっこちゃんが可愛い。ぜひ、こちらも読んでほしいです。

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Posted by ブクログ 2024年01月30日


資産家の娘達がこの世の果ての塔に閉じ込められる、って設定だけでわくわくしてたけれど、実際は女の子の弱くて繊細で美しい描写がもりだくさんのお話で、胸がいっぱいになる。
ずっと側にいてほしい、どこにも行かないでほしい、って気持ち。捨てられた彼女達がそれを切に願う所が皮肉のようで苦しくなる。

香りが特...続きを読む徴的な小説。
シャンプーの桃の香り、煙草の香り、焼き上がったマフィンの香り、インスタントコーヒーの香り。香りが印象づいているのは魅力的。

ずっと小津はいつか海に帰るのだろうと思ってはいたけれど、凄く苦しい。矢咲は、帰ったらまた顔を合わせて話そうね、と未来を語れたけれど、そう考えられなかった小津のことを馬鹿だとは思えないし、子供の頃から大人びていて、リアリストだった彼女はそう考えるのが必然だったと思える。三島が止めていれば、と言うが、きっともう止められなかったんだろうね。

都岡が帰ってきてくれたシーンが苦しくて切なくて、何故帰ってきたのか分からないけれど、良かった。せめて三島だけでも救われてくれて、良かった。「また会おう、などと…」が1番胸に刺さった。

長々書いたけれど、結局ストーリーよりも、本のもつ雰囲気と香りが大好きでした。

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Posted by ブクログ 2020年10月14日

2009年の初読以来。

はじめて読んだ宮木作品が本作で、わたしにとって、シリアス宮木さんと言えば雨の塔。
もう少女とは言えない10代終盤から20代前半くらいの大人女子、の、一部というか半数というか……が、強烈に憧れるだろう少女趣味な小道具群、
特に甘いものに没頭出来ない自分を感じて
すっかり大人に...続きを読むなってしまった……とちょっとしょんぼりしたのはまあ前半(?)くらい。

大すきな作品だと記憶していたけれど、記録を辿ったら意外と三つ星で、だから今回、もしかしたら初読時よりも多くのものをがっちりとキャッチ出来たような気までする。
表層にやられない分、芯まで手を突っ込んだ感じ。というか昔は表層だけに耽溺したかった、らしい。

空気感がものすごくすき。
お人形みたいな、いちばん有機体じゃないと思える、人間離れした三島がすき。感覚がすっきりする。
逆に矢咲は物凄く人間らしいなあと思う。肯定と否定が、赦しと自責が入り混じる。読み手まで人間だ……。

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Posted by ブクログ 2022年07月19日

(2022-07-19 2h)

友だちに勧められて読みました。

耽美な雰囲気がたまらない…!!すき!
映画『京城学校』が好きな人は絶対沼る。女子校、寮、お嬢様…たまらない設定が詰め込まれている。

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Posted by ブクログ 2013年10月24日

甘酸っぱいラズベリー、もしくは蛇苺。
甘く、切なく、どろどろとしていて
けれど癖になる。それが体に毒だとわかっていても。

この人の描く女性は、人を惹きつけるのが本当に上手い。
完璧でないからこそ惹かれる、
咽せかえるような「女」と孤独。

マフィン、苺の指輪、空の写真。
桃の香りとシャコ貝。
女の...続きを読む子の大好きなものは溢れているのに、本当に欲しいものだけ手に入らない。

**

我侭な三島は自分に似ていて、ずっと嫌いだったけど
最後の最後は心底ほっとした。
少しずつ、前に進め。がんばれ。

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Posted by ブクログ 2021年12月11日

自由なようでありながら外界から完全に隔絶された舞台設定のせいか終始物語に息苦しさのようなものを感じながら読んだ。又、私の読解力の無さもあるだろうが、4人がなんとなく似たような闇(親との関係など)を抱えているせいか各々のイメージが掴みにくく、読んでいて今誰の視点で話が進んでいるのかわからなくなる場面が...続きを読む多々あった。架空の世界より現実世界の中でこの4人の感情を描いた方がより読者の心に届いたような気がする。

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Posted by ブクログ 2014年06月24日

空の上をもとめて、地球の描く輪郭に向かって透明な球を投げ上げる。なんとか最高点が最外側まで届いても、その軌跡は地球の正円とちがってひどく急で、二つの焦点どうしが離れた楕円にしかならない。幾度も幾度も、丹念に投げ上げ空の上ばかり見つめすぎて、この世界はよりいっそう閉ざされていってしまった。塔の中に閉じ...続きを読む込められた四人の少女たちの営みには、そのような、みずからの執念でみずからを追い込んでいくような、世界が滅びても同じ動きをし続けるまばたきしないロボットのような、滑らかでぎこちない一心不乱さを感じる。
矢咲のように、都岡のように、塔を出て行くことはけっきょくできるのだ。それまでと方向をたがえたとき、透明な球は空にひびを入れる。ひびの外にある当たり前の日々のことは、この物語では語られない。語る価値を持たない。塔でみずからを完結させた小津だけが、塔の中で終わることを許される。

閉ざされた世界をつくることは、作家にとって、きっとオルゴール細工みたいなものなのじゃないかしら、と想像する。そのできばえは飛翔よりもむしろ緻密さに重きを置かれるように感じる。

ーーー

”いつか、は、ない。
私たちには、今、しかない。”

このような切迫感は、まだ私にものこっている。

ーーー

矢咲は、本当に追いかけるべきだった。
過ちで喪った側か、引き留められずいってしまった側か、自分に近いのはどちらだろう。渾然となって舌の上が苦い。

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