• 雨の塔
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    ラプンツェルの塔

    雨の塔を見上げた矢咲は
    その小さな窓から
    救いの髪が降りてくるのを願った。

    窓から見下ろした小津は
    垂らす事の出来ない
    うなじで切り揃えられた髪の毛で
    あがっておいでとただ願うのみ。

    妄想を最大に働かせると
    もうここで彼女達の命運は決まっていたように思える。

    小津はもう限界だった。

    母に捨てられた時。
    鳴く事を知らない鳥は
    骸となって鳥籠に横たわった。

    父に捨てられた時。
    鳴けない鳥は悲しみと共に
    籠の底に切り捨てられ動かなくなった。

    そして

    矢咲を失う時。
    鳴く事を知ってしまった鳥はもう
    鳥籠には帰れない。

    海を選んだのは
    海流に乗って潮風に運ばれて
    母のそばに矢咲のそばにい

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    2020年09月13日
  • ガラシャ
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    明智光秀の娘のお話

    宮木あや子さんの文章はどれも本当に美しい。
    歴史としてざっくり知ってる程度の本能寺の変という出来事の裏に隠れた様々な人の苦悩を感じ、
    とても切なくなった。 

    歴史とは人が一瞬一瞬積み上げてきたもので
    堅く羅列してしまうと事象だけを飲み込んでしまう。
    少なくとも私は年号と場所と関わった人、というある種記号のような覚え方しかしてこなかった。
    その瞬間に多くの苦しみ戸惑い怒り悲鳴があったことなどつるんと覆い隠されてしまう。

    もう会えないかも知れないという思いで
    夫を戦地に送り出す

    我が子の未来に戦と死と絶望しか感じられない

    本当に愛した人とは決して結ばれる事は出来ない

    細川ガラシャだけでな

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    2020年09月07日