宮木あや子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
8人の語り手による短編集。
本を通して見た世界はこんなにも多く、こんなにも刺激的。
広がる世界の面白さを、あなたに。
『メアリー・スーを殺して』
メアリー・スーとは聞きなれない言葉だった。
一体それは誰?
この人物は、二次創作における、書き手の願望を一身に背負った自己愛の塊というべき人物。
つまり、イタいキャラクターであり、ご都合主義的な登場人物ということらしい。
ありがちな設定だ。
プロの作家なら、それらを上手く操れるのだろうが、残念ながら多くの書き手はそうではない。
自分の妄想とありがちな設定と底の浅さが露見する、書いている本人だけが満足できるという代物。
このことに気づいた主人公、如月ルカは彼女を徹底的に排除すべく努力を開始する。
それが彼女の扉を開けた瞬間だった。
好きなことをもっと上手くなりたいと熱望し、自らを客観的に眺め、己と戦った。
そして彼女はメアリー・スーと再会する。
その再会は、きっと彼女にとって、大切な瞬間だったことだろう。
『校閲ガール』
出版社の校閲部に配属された悦子は、この仕事が好きではなかった。
好きではなかったが、雑誌編集部に行くために彼女は真面目に、完璧に仕事をしていた。
今や、素人が好き勝手に情報を配信できる時代。
しかもその垂れ流す情報の多くはたった一人で書き、他人の目を通さぬまま世界中に発信される。
だから、変換ミスもおおいし、誤用も多い。
私も自分の文章を読み直しているかと問われたら、毎回はやっていない、というか、ざっと目を通すだけできっちり訂正をかけてはいない。
だが、出版物はそうはいかない。
一応、他人の目が入っているはずなのだ。
さて、嫌だけど、嫌だから、悦子はきっちり仕事をこなす。
言葉遣いはなってない、かもしれないが、意味もなく人を批判してくるわけではない。
ゆとりと言われようが、商売女っぽいと言われようが、その相手にあるだろう思い込みを壊す感じが好きだ。
実際にこんな人が後輩にいたら面倒だろうが、それはそれで面白いかもしれない。
ただ、私のような大雑把な人間に校閲が務まるかはかなり怪しげなところだが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【収録作品】「鯨と煙の冒険」中田永一…『百瀬、こっちを向いて。』番外編/「一服ひろばの謎」貴志祐介…「防犯探偵・榎本径」シリーズ番外編/「皇帝の宿」宮木あや子…『校閲ガール』番外編/「街で立ち止まる時」東直己…「ススキノ探偵」シリーズ番外編/「同窓会」垣根涼介…「君たちに明日はない」シリーズ番外編/「心の距離なんて実際の距離にくらべれば、」狗飼恭子…『遠くでずっとそばにいる』番外編/「平和と希望と」中山七里…『さよならドビュッシー』番外編/「ゴロさんのテラス」笹本稜平…『春を背負って』番外編/「雁首仲間」冲方丁…『天地明察』番外編/「落としの玲子」誉田哲也…「姫川玲子」シリーズ番外編/「オレンジの水面」貫井徳郎…『北天の馬たち』番外編/「多田便利軒、探偵業に挑戦する」三浦しをん…「まほろ駅前」シリーズ番外編
*知っている作品は楽しく読め、知らない作品は本編を読みたくなる。 -
Posted by ブクログ
それぞれの作品の番外編というか、タイトル通りサイドストーリーを集めた短編集です。
読んだことがあるのもちらほら。
名前だけ知ってて、気になってはいるけど〜というシリーズも結構収録されていて、良いきっかけになりました。
中田永一はやっぱり面白かった。脇役だった彼がいい味だしてます。
あとは中谷七里も。音楽シリーズしか読んでないけど、他にもいろいろミステリ出してるし、これを読む限りそっちも良さそうですね。
初めてのものだと、「校閲ガール」「君たちに明日はない」「北天の馬たち」「まほろ駅前」が読みやすくて惹かれました。
ぜひそのうち本編を読んでみたいとおもいます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ6編からなる、連作短編集。
29歳なのに、42歳くらいに見える笹島、物腰や動作がすばらしく美しい。
21歳なのに、35歳くらいにしか見えない、老け具合と落ち着き具合が評価されている妹尾。
年相応だけど、異常なくらい喪服の似合う木崎。
この3人を中心に物語は展開していく。
人のお葬式が絡んでくるので、暗くなりがちな話題なのに、登場人物の人間性の良さで、お互いに助けられて、前を向いていくところがさっぱりとした読後感になりました。
セレモニー黒真珠という名前や本の装丁が素敵なのも、イメージをとっても素敵に上げてます。
ただ、社長がやっぱり老け顔で、「干からびたマンドラゴラ」みたい・・・ってどんな顔?マンドラゴラ知らないから、全然想像できませんでした(^^ゞ
妹尾のが幸せになる短編含めた続編が出たらとっても嬉しいかも(^_-)-☆ -
Posted by ブクログ
タイトル通り、本にまつわる短編のアンソロジー。
中田永一の作品が読みたかったのと、他の作家が著作を読んだことのない名前ばかりだったので、新規開拓のため読みました。
表紙のイラストを見るに若い読者がターゲットかと思いましたが、話のキーとなる本は二次創作の同人誌から戦争に関わるものや官能小説まであり、全体として不思議な一冊。
お目当ての中田永一「メアリー・スーを殺して」に関しては、メアリースーという言葉は知っていましたので、オタク趣味で中高生の時分そういった部活に所属こそしなかったものの周囲に部員の友人がたくさんいた自分としては、なんかもう胃が痛かったです。創作活動は簡単なことじゃないぞという内容を十代でデビューした著者が書いたんだから、なんだかな、という感じ。あと乙一の描く女子は何故「実は美人」ばかりなんだろう。わざとやっているんだろうけど、メアリースーそのもの。男子は等身大に見えるキャラクターが多いのに。まさか、女の子は誰だって本当は可愛いのよ、という考えの持ち主なのか?男子の実態は女である私には想像するしかない部分も大きいので、等身大と感じるのが間違いなだけなのかもしれない。
他の作品に関しては、言葉選びや運びが面白かった小手鞠るい「ページの角の折れた本」、言い回しは好みではないが頭の中にはっきり風景の浮かぶ描写とストーリーが良かった小路幸也「ラバーズブック」、キャラクターが立っていて爽快な宮木あや子「校閲ガール」が気に入りました。それぞれ他の著作も読んでみようと思う。「校閲ガール」は連作短編集になる予定とあるので既に出ているのかな。 -
Posted by ブクログ
本をテーマとしたアンソロジー。
それぞれ「本」「読書」に対するアプローチが様々なので、飽きずに楽しんで読みました。
中田永一「メアリー・スーを殺して」は、オタク趣味の少女が二次創作小説を書くようになるが、いわゆる『メアリー・スー』(ファンが二次創作の中に登場させた自己投影したキャラクターのこと)に悩まされ・・・という話。
小説を書くことで現実と向き合った結果、小説から離れてしまった少女が、世界を広げていったその先でまた小説と出会うという、本好きにはたまらない素敵なお話でした。
小路幸也「ラバーズ・ブック」はノスタルジックな雰囲気が印象的。
この世界観でもっと続きを読んでみたい。
宮下奈都「旅立ちの日に」は短いけれど好感の持てる話だったし、
原田マハ「砂に埋れたル・コルビュジェ」も整理されていない感情を
うまく表現している、センスが感じられるお話でした。
他の作品を読んでみたい作家が増えてしまうので、アンソロジーは困ります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ空の上をもとめて、地球の描く輪郭に向かって透明な球を投げ上げる。なんとか最高点が最外側まで届いても、その軌跡は地球の正円とちがってひどく急で、二つの焦点どうしが離れた楕円にしかならない。幾度も幾度も、丹念に投げ上げ空の上ばかり見つめすぎて、この世界はよりいっそう閉ざされていってしまった。塔の中に閉じ込められた四人の少女たちの営みには、そのような、みずからの執念でみずからを追い込んでいくような、世界が滅びても同じ動きをし続けるまばたきしないロボットのような、滑らかでぎこちない一心不乱さを感じる。
矢咲のように、都岡のように、塔を出て行くことはけっきょくできるのだ。それまでと方向をたがえたとき、透明な球は空にひびを入れる。ひびの外にある当たり前の日々のことは、この物語では語られない。語る価値を持たない。塔でみずからを完結させた小津だけが、塔の中で終わることを許される。
閉ざされた世界をつくることは、作家にとって、きっとオルゴール細工みたいなものなのじゃないかしら、と想像する。そのできばえは飛翔よりもむしろ緻密さに重きを置かれるように感じる。
ーーー
”いつか、は、ない。
私たちには、今、しかない。”
このような切迫感は、まだ私にものこっている。
ーーー
矢咲は、本当に追いかけるべきだった。
過ちで喪った側か、引き留められずいってしまった側か、自分に近いのはどちらだろう。渾然となって舌の上が苦い。