重松清のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「見張り塔からずっと」
家族の終焉。
重松清さんと言えば、心情を描くのが抜群に上手い。だから心があったまるものは、普通の小説よりももっとあったまる。が、決して暖かいものだけではない物語になると、より辛い気持ちになったり、悲しくなったりしてしまう。本作は、間違いなく後者に該当する中編集です。収録されているのは、以下です。
1.カラス
発展の夢を断たれた住宅地ツインヒルズ・ニュータウンの住人たちの鬱屈と歪んだ「復讐」を描く中編。
土価が天井知らずの高騰を見せるバブルに購入したマンションがあっという間に価値が下がり、売ったとしても赤字確実。住人たちは、何故このマンションを買ってしまったのか鬱屈を溜め込んでいた。そんな中、転居してきた榎田家族のある言葉が、住人たちに火をつけてしまう。
非常に辛くなる物語。何気なく言ったかも知れない言葉がたまたま聞かれてしまい、それが広まり、嫌がらせになり、そして関係のない子供が巻き込まれる。何より怖いのがそんな状況の中、主人公夫婦がある種生き生きしていくことです。妻は自治会を立ち上げ、生活にハリが出るようになり、夫はそんな妻に性欲を覚える(というか回復する)。生々しいリアリティです。
なによりもカラスの存在が抜群。主人公たちの気持ちを代弁するかのようにクエッと鳴く。そして、陰湿な復讐を住人たちの代わりにしてやったかのような攻撃。抜群でした。
2.扉を開けて
幼い息子を亡くした夫婦の癒されぬ哀しみと苦悩が詰まった物語。
無くした息子と同じ名前の健太という少年は、いつも部屋の近くでサッカーボールを蹴っている。その音がうるさく注意しようとするがなかなか出来ない。一見住人トラブルに発展して行くかと思いきや、夫婦の哀しみと苦悩にフォーカスされていきます(大体マンションの隣で朝っぱらからボール蹴ることを注意しないダメ親に腹が立ちますが)
最後の描写が凄い気になります。これも辛い中編です。
3.陽だまりの猫
妻として母親として誰にもまともに扱ってもらえない若妻《みどりさん》の人生を賭けた決断が辛い。
みどりは、15歳から付き合いだした伸雄(当時22歳)と結婚した。幸せか、不幸かと聞かれたら幸せ。しかし、幸せか、不幸か、どちらでもないか、と聞かれたらどちらでもないと答える。それが、みどりの真実である。
ちょっと気を遣えない、ちょっと分からない、色々ちょっと〇〇な部分をそこまで言うお前はなんやねん!と言いたくなる伸雄 with 伸雄母。もしかしたらざらに良くあることなのかも知れないが、辛いものは辛い。
全部読むと気を落とす可能性大です。次は、とんびにしよう。。。 -
Posted by ブクログ
本篇の登場人物である作者を通して、この世の苦しみから逃れるために、物語の中に登場し、話が進められてゆく。
現実なのか、物語の世界なのか。
現実であるなら、あまりにも悲しく、物語の世界なら物語の世界だけにしてほしい。
再度に、自らの命を絶とうとする少女がおもう「一番」を踏み二次られたことの絶望に対して、同行していた少年の父親は
「君に思う一番である『夢』、『希望』、『正義』、『優しさ』、『思いやり』は一番ではない。本当の一番は『生き続ける事』。
明日を考えると怖くなる。しかし明後日はどうだ、一年後はどうだ。生きているということは何かを信じる事なんだ」という。
大切に思うことを踏みにじられ、いじめられることは本当につらい事だと思う。
いつになったら、そのようなことのない世の中になるのだろう。
重松清のテーマであろう。いつも考えさせられる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
質的には高い作品です。物語の中にどんどん引き込まれていきます。しかし、怖いですね。
「カラス」はニュータウンのマンションで起こる現代版村八分、大人のいじめを加害者の立場から描いた作品です。陰湿な喜びを感じながら、一方でいつか自分が被害者になることを恐れる、そういった加害者心理を上手く描き出しています。
「扉を開けて」は5年前に赤ん坊を亡くした夫婦と生きていればその位になっただろう子供の係わりを描いた作品です。子供の幻影を見る奥さんの侘ない精神状態と、それを援け、繋ぎとめようとする夫。精神の危うさが上手く描き出されます。
「陽だまりの猫」はマザコンの夫と19で結婚した「何も出来ない」妻と姑の話です。これも一種の陰湿ないじめの物語です。妻は意思を持つ《あたし》と物語の登場人物である《みどりさん》を使い分け、夫や姑の仕打ちをかわそうとします。しかし、自分の存在自身を否定された時に、妻は復讐を企てます。
重松さんの作品は初めてです。上手いと思います。直接表現ではなく、回りどんどん状況を作り上げて行き、きっちり一つの世界を作り上げていきます。そういえば、元々ノンフィクションライターでもあった様なので「架空の世界のノンフィクション」という感じもします。
しかし、読後に暗くのしかかる物はあっても、爽やかさはありません。再び手にするかどうか。
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Posted by ブクログ
最近、私が買った本を娘が先に読むことがチョクチョクあります。
この本もそう。受験勉強から逃避したい娘が半日で読みきってしまいました。
読後の彼女の感想は「さわやかな青春小説、違った。。。みどりの日だった。」とのこと。確かにね。
舞台は多分、広島県福山市。時代は大阪万博の頃。
私にとって、近い場所、近い時代の小説です。今はあまり聞かなくなった方言(広島弁)も随所に出てきます。
主人公のヒロシやライバルでガキ大将のヨッさん。運送屋の社長のおじさんと娘の優子ちゃん、社員のシュンペイ。みんなが色んな悩みを持ちながら生き生きと描かれています。
なんだかとても懐かしい。そして爽やか。そんな読後感の小説でした
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