太宰治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「太宰治の作品を初めて読んだのは、多分、現代文でやった『羅生門』だと思う。
ロングスリーパーな私にとっては、ほとんど子守唄のような時間だったけれど、なんとなく、太宰治特有の人間のドロドロした部分を描いていたような気がする。
そう思っていたからなのか、今回の作品を太宰治らしくないかも?と思った。
でも、女生徒が毎日、何を思い何を見て何を感じ、悩み傷つき、悶々とひとりで考えているのか。そしてその一連の思考が、私も同じように感じていたことがあったことに懐かしく感じた。
10代だからといって、侮るなかれ。
彼女たち、現代ならば彼らたちは、我々大人より遥かに重く、解決しがたい悩みや葛藤を抱えている。
私たち大人もそういう時期を通過したのだと考えると、彼らに幸多からんことを私は、祈る。」 -
Posted by ブクログ
2025/11/04
p.23
この雑誌にも、「若い女の欠点」という見出しで、いろんな人が書いて在る。読んでいるうちに、自分のことを言われたような気がして恥ずかしい気にもなる。それに書く人、人によって、ふだんばかだと思っている人は、そのとおりに、ばかの感じがするようなことを言っているし、写真で見て、おしゃれの感じのする人は、おしゃれの言葉遣いをしているので、可笑しくて、ときどきくすくす笑いながら読んで行く。宗教家は、すぐに信仰を持ち出すし、教育家は、始めから終りまで恩、恩、と書いてある。政治家は、漢詩を持ち出す。作家は、気取って、おしゃれな言葉を使っている。しょっている。
2025/11/05
p.16
新聞では、本の広告文が一ばんたのしい。一字一行で、百円、二百円と広告料とられるのだろうから、皆、一生懸命だ。一字一句、最大の効果を収めようと、うんうん唸って、絞り出したような名文だ。こんなにお金のかかる文章は、世の中に、少いであろう。なんだか、気味がよい。痛快だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界を信じられなかった人間の話。
自分を大罪人のように捉えていて「世間」を酷く恐れているが、これは自分あるいは他者に対する期待値が高いことの裏返しのようにも思え、その価値観の頑なさはある種信仰のようにも見える。自分にも他者にも幻滅し裏切られているように感じられるのは、生来の性質か或いは理想を植え付けるだけして内実は混沌とした世であるからか。
真実の自分は醜く皆を騙していると話すが、マダムから見た「神様みたいないいこ」も一つの真実ではなかったか。
本来人間には失格も合格もないはずだが、その線引きは確かに存在しているように思え、その息苦しさは現代にも通ずる。 -
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ネタバレ## 感想まとめ
太宰は意外と家族のことを想っていたのだなあと思う。
家族を想い、仕事に苦しみ、そして家族との関係に苦しみ、自分を追い詰める。
それが作品にも滲み出る。
太宰治の作品は最近少しずつ読んできているが、『人間失格』の息苦しくて暗い雰囲気から、『富嶽百景』の爽やかな雰囲気まで、色々な作品が書ける素晴らしい作家さんだなと思う。
しかし、素晴らしい作品を生みだせる感性は他人とは違うものがあるからこそだと思うが、それがあるからこそ世間からは浮いてしまって生きづらさがあるはず。
そう思うと、素晴らしい作品を届けてくれる芸術家の皆さんたちの苦労には頭が上がらない。
そしてその作品を何十年経ってもこうして読むことができるのも、出版社をはじめ、たくさんの人の努力あってこそ。
たくさんの素晴らしい仕事の上に、世の中は成り立っている。
この本の解説の中で、「太宰治の作品は『罪悪感』を宿している」とあって、納得した。
太宰治の作品から私が感じた、家族への申し訳なさ、開き直り、だらしなさ、憤り、これらをまとめて、『罪悪感』と言えば腑に落ちた。
この短編集の中にある複数の短編から、『生きづらさ』を感じる。
生きている上で、人は誰しも何かしらの罪悪感を抱え、生きづらさを覚えるのかもしれない。
だから、太宰の作品には惹きつけられるものがあるのかもと思う。
## 親友交歓
突然やってきた親友を名乗る平田。
平田は太宰秘蔵のウイスキーをがぶがぶ飲み、妻を呼びつけお酌をさせ、迷惑をかけまくる。
こういう無遠慮な人、お酒で暴れる人はたくさんいるし、たくさん見てきた。
太宰の冷めた物言いが面白い。
高いウイスキーを惜しく思ったり、昔の偉人の忍耐伝説を思い出して「やっぱり俺には無理だわ」と考えたり、太宰の人間らしいところに共感できる。
私なら即座に追い返している。
## トカトントン
恐らく太宰宛てのファンからの手紙という文章。
こんな小説の書き方もあるのかと面白く思う。
途中、マラソン選手を見た男の語りがある。
マラソンを「無報酬の行為」と言う。
たしかに、職業になるほどのプロでない限り、誰から何を求められるでもなく走っている人は大勢いる。
みな、それでも走る。気持ちいいから。自分を試したいから。また理由はないかもしれない。
ただ楽しいからやる。報酬をもらえなくてもやりたいからやるということがあるのは豊かだと思う。
また、伯父に「人生とは何か」を聞いた返しの
> 「人生、それはわからん。しかし、世の中は、色と慾さ」(p62)
>
は、なかなか真理だと思った。
## 父
子がいながら浪費に走ってしまう男の胸の内が語られる。
たぶん太宰治本人の気持ち?
私も子を持つ父だが、父になったからといって、体に何かの変化があるわけではないし、一人の人間だから、自堕落な部分は大いにある。
親も万能ではない、ただの人間。
しかし、こうした昔の文芸作品を読むと、男は今の価値観で言えばかなり破天荒だ。時代が変われば良しとされる価値観は変わるものだなあとつくづく思う。
## 母
> 「わざと身をやうして行くのです。水戸黄門でも、最明寺入道でも、旅行する時には、わざときたない身なりで出かけるでしょう?そうすると、旅がいっそう面白くなるのです。遊び上手は、身をやつすものです」(p89)
>
わざと汚い服装で太宰を訪ねてくる小川新太郎の言葉。なんだか粋な雰囲気。
> 「日本の宿屋は、いいね」「なぜ?」
「うむ。しずかだ」(p101)
>
おしゃれな締め方。
若い帰還航空兵が電気を付けようとして女中が拒む。それを盗み聞きする主人公の先生。
この短編集は全体的に戦争の気配を感じさせるものが多い。
戦争が与えたのはただの経済的なダメージだけでなく、文化的にも大きな影響を与えている。
## ヴィヨンの妻
先にある『父』を読むと、その妻目線の話かなと思える。今は父親も家事育児を共同で行うのが当然というような価値観が作られつつあるけど、この時は破天荒な父親はたくさんいたし、それが格好いいとさえ思われていたかもしれない。
めちゃくちゃな飲み方をして周りを不幸にしていく大谷さん(太宰?)。とにかくモテるのか色々な女性と飲み屋に来てはただ酒を飲む。なかなかロクでもない。
> 「僕はね、キザのようですけど、死にたくて、仕様が無いんです。生れた時から、死ぬ事ばかり考えていたんだ。皆のためにも、死んだほうがいいんです。それはもう、たしかなんだ。それでいて、なかなか死ねない。へんな、こわい神様みたいなものが、僕の死ぬのを引きとめるのです」
「お仕事が、おありですから」
「仕事なんてものは、なんでもないんです。傑作も駄作もありやしません。人がいいと言えば、よくなるし、悪いと言えば、悪くなるんです。ちょうど吐くいきと、引くいきみたいなものなんです。おそろしいのはね、この世の中の、どこかに神がいる、という事なんです。いるんでしょうね?」(p138)
>
太宰治自身の胸の内なのかも、と思う言葉。
辛い、死にたい、でも死なない。
作品を書くことは止められないが、その評価は人が決めることで、自分ではどうしようもない。
そんな夫に妻が言う。
> 「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きたいさえすればいいのよ」(p145)
>
強い言葉だ。
どんなに辛くても、他人からどう思われようと、ただ生きていればそれでいいと。
この話に出てくる妻への私の印象は、強いところと弱いところが混ざっている。
夫が飲み歩く店で働き出すことを名案と言い喜んで働く姿はたくましい。
しかしその前の夫の仕事について書かれたポスターを電車で見かけたときに流した涙は、色々と辛いものが溜まりに溜まって、堪えきれなくなったのかも、と思う。
夫婦は違う人間同士が共に生活するのだから、相容れない時が必ずあるものと思う。
しかし、その中で折り合いをつけていくものでもある。
この妻の場合は夫は折り合いをつけてはくれなかったが、自分が変わることで、結果的に関係を変えられることになった。
お互いが歩み寄る姿勢が大切だ。
## おさん
> 男の人って、死ぬる際まで、こんなにもったい振って意義だの何だのにこだわり、見栄を張って嘘をついていなければならないのかしら。(p168)
>
妻と子どもを残して、「ジャーナリストだ」「革命だ」と手紙を残して愛人と心中した夫の手紙を読んだ妻の言葉。
「本当につまらない馬鹿げたこと」とバッサリ切り捨てる。
妻は、ただ夫が家にいてくだらないことや取り止めもないことで笑い合って生きていられればよかったのに、大義のためと嘯いて死んだ夫に呆れている。
ほんとうに大切なのは、近くにいてくれる家族だ。
## 家庭の幸福
> 家庭の幸福は、或いは人生の最高の目標であり、栄冠であろう。(p183)
>
と言っておきながら、最後には「家庭の幸福に全力を尽くす余り、知らぬうちに他人の不幸を招いてしまった」という短編のアイデアを出す。
恐ろしい。
誰かの幸せの裏には、誰かの不幸があるかもしれない。
## 桜桃
> 私は家庭に在っては、いつも冗談を言っている。それこそ「心には悩みわずらう」事の多いゆえに、「おもてには快楽」をよそわざるを得ない、とでも言おうか。いや、家庭に在る時ばかりでなく、私は人に接する時でも、心がどんなにつらくても、からだがどんなに苦しくても、ほとんど必死で、楽しい雰囲気を観る事に努力する。そうして、客とわかれた後、私は疲労によろめき、お金の事、道徳の事、自殺の事を考える。いや、それは人に接する場合だけではない。小説を書く時も、それと同じである。
私は、悲しい時に、かえって軽い楽しい物語の創造に努力する。自分では、もっとも、おいしい奉仕のつもりでいるのだが、人はそれに気づかず、太宰という作家も、このごろは軽薄である、面白さだけで読者を釣る、すこぶる安易、と私をさげすむ。
人間が、人間に奉仕するというのは、悪い事であろうか。(p192)
>
太宰治の本心が滲んでいる気がする。
芸術家と自身を称する短編もあったが、作品を生み出すという仕事においては苦しみもがきながら奉仕の気持ちで取り組み、家庭においては必死に楽しい雰囲気作りに努める。
そうして、いわば自身を犠牲にしているうちに擦り減ってしまうのかもしれない。
> ヤケ酒というのは、自分の思っていることを主張できない、もどっかしさ、いまいましさで飲む酒の事である。いつでも、自分の思っていることをハッキリ主張できるひとは、ヤケ酒なんか飲まない。(女に酒飲みの少いのは、この理由からである)(p195)
>
辛さから酒に逃げる太宰治の、酒に対する考え方。自分の思っていることを主張できる人はヤケ酒なんか飲まないというのは、なんだか納得できる。
## 知らない言葉
- 空空漠漠(くうくうばくばく)
- 上州(じょうしゅう)
- 寸善尺魔(すんぜんしゃくま) -
Posted by ブクログ
斜陽館に行くにあたり、太宰が故郷について書いた『津軽』を初めて読んだ。
結論、やっぱりこの人の書く文章は本当に面白い。
卑屈さ、皮肉、悪口、故郷に対する深い愛情、友人・家族(育ての親や使用人すべて)への感謝が絶妙なバランスでミックスされていて、文章が生き生きしている。ユーモアを交えた軽快な台詞回しが読んでいて心地いい。
こんだけいろいろやらかしていても(笑)、憎めない愛されキャラだったんだろうなあと思う。
実際に斜陽館も、津軽読後だと2倍楽しめます。
このお部屋で蟹を食べたのかあ、とか、この洋室で中学生の頃寝っ転がっていたのかあ、とかとか。
ちなみに竜飛岬でN君とどんちゃん騒ぎしたお宿は、現在観光案内所として現存しているそう!
ぜひ見てみたい。
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Posted by ブクログ
学生時代に心酔していた太宰治、ちょうど読む本が尽きたので、本棚からふと手に取ってみて、うわ!やっぱりいい!と思った。
今回特に好きだったのは以下三編。
『燈籠』
口に出したくなる「言えば言うほど、人は私を信じて呉れません」というキラーフレーズ、
そして「それに違いはございませぬ。いいことをしたとは思いませぬ。けれども、ーーいいえ、はじめから申しあげます。私は、神様に向かって申しあげるのだ。私は、人を頼らない、私の話を信じられる人は、信じるがいい」という毅然としたスーパーキラーフレーズ、
極めつけのラスト、蔑まれていても別にわびしくない、逆に美しいと思うというカウンター。
世間的にどう思われていようが、明るい電灯の下で仲良くしているのだけで特に何もなしとげていなかろうが、幸せでいいし、誇りを持っていいのだと晴れやかな気持ちになる。
『皮膚と心』
女の、気分でころころ移り変わる感情の解像度が高すぎる。思ったことを思ったまま、その場で書いているようですごい名人芸。
吹き出物でどんどん大袈裟に落ち込んで、勝手に鬼や悪魔になった気分になり、もはや「私は、お化けでございます」「このまま死なせて下さい」とまで思うのは滑稽で、でも共感できる。
『佐渡』
太宰のギャグセンスが爆発している作品だと思う。
自分をさむらいに例えるくだりがすごく好き。
美化せず、佐渡のつまらなさをそのまま書いている正直さがいい。 -
Posted by ブクログ
売れない画家に惚れ込んだ奥さんが
富と名声を得た主人に別れをつげるなんてあり得ない。
しかしこの感情は意外と女性の中にある気はします。
パッっとしない男で自分だけが必要で手を尽くしている間は愛おしく、いざ自分から離れて独り立ちした男が憎らしくなる。
作中の奥さんは実は正直であるゆえに弱い人のように感じる。その弱さを不思議な感覚にできる作品でした。
人間の感情って我儘だとつくづく思うけど
その我儘さを自分なりに折り合いをつけて人と関わりを上手に形成出来るのが強い人間だと年を重ねる毎に感じます。
内容もきちんと理解できない学生の頃
太宰治作品を沢山読んでました。
人間の弱さやずるさの表現の仕方が
妙に惹きつけられる作家さんですよね
30年ぶりぐらいに読んだ太宰治作品ですが…やっぱり何となくいいんですよ〜