太宰治のレビュー一覧

  • 津軽(新潮文庫)

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    司馬遼太郎の「北のまほろば」を読み、そこに登場する太宰治、そして津軽に興味が湧き本著を読む。
    太宰治自体読んだことがなかったので、その意味でも新鮮。

    最後の「たけ」とのシーンが感動的。
    この旅は、自分探しの旅。実際見る物理的な風景もそうなのだが、どのような人に囲まれて育ったのか、そして、それが人格を形成するうえでも、大切なことであることを改めて感じる。

    文章も読みやすく、表現も巧い。
    本著で触れられている津軽の歴史、それは日本の歴史でもあるのだが、も興味深い。

    青森県は、行ったことがないので、司馬遼太郎の「北のまほろば」と、この「津軽」を携えて訪れたい。(よく調べると「津軽」をベースとし

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    2023年10月01日
  • きりぎりす(新潮文庫)

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    電子書籍『きりぎりす』を読む。
    短編ですぐに読めてしまう。

    お金が入ってくると、別のものを失っていく寂しさ、悲しみ。もう戻ってこないのだなと思った妻はお別れする。
    きりぎりすの声が聞こえてくるようだ。

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    2023年09月19日
  • 惜別(新潮文庫)

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    ふるさと文学全集の宮城編で読んだ。魯迅の藤野先生の日本語版である。魯迅のオリジナルよりもはるかに丁寧に書いている。どこまで取材したのかがよくわからないが、より詳細により分量も多く書いているので、読みごたえがある。魯迅のオリジナルと一緒に東北大学に行く前に読むとよい。高橋源一郎の紹介である。

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    2023年09月14日
  • 津軽(新潮文庫)

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    ラストの、自分に文学の素養を身につけてくれたと言っても過言ではない使用人の女性との再会は、感慨深い。

    蝦夷地とも言われていた頃からの津軽の歴史に言及することにも多くのページが割かれている。

    辺境の地としての津軽を、そこよりも南の地域とは区別して人が都会化していないとして、時には愛情を持ってさげずむ。

    古い友人と津軽半島東側をを大酒をくらって旅する姿と、後半は一人で黙々と西側を行き来する対比は対照的である。

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    2023年09月03日
  • きりぎりす(新潮文庫)

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    ネタバレ

    表題作、「きりぎりす」を聴き読書。最近暑すぎて散歩ではなく自転車なので自宅で。わたし(24歳の女性)は19歳の時にとある画家と結婚した。絵を見て身震いがするほど絵に共感する。しかし夫は口下手で展覧会など興味を持たず好き勝手な絵を描く画家だった。そんな夫との結婚生活が心地よく、貧乏でもハリを感じた。しかし、個展を開いてから、夫は人が変わる。お金に固執し、成功者と一緒にいるようになり、夫への魅力、関心が無くなる。このわたしの寂寥感が夫には伝わらず、別れることを決意する。妻が思う過去の夫への未練が伝わった。⑤

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    2023年09月03日
  • グッド・バイ(新潮文庫)

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    戦時中から戦後に移って、変わったかと思えばそうではない、そんな自分の中の期待の裏切りを登場人物の赤裸々な感情を通して描いているような作品。人のあり方が大人らしく、自分もいずれそんな世の中をそんなふうに過ごしていくのかなぁと少し悲しくもなった。

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    2023年09月02日
  • 駈込み訴え(乙女の本棚)

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    もう絵が最高です。
    としか言えない。

    ストーリーは元あるものとして、
    それに掛けた絵がもう見てて飽きない。
    どんな意図でこの絵を描き込んだのか、
    細かく見ているのが楽しい。

    文豪の好きな短編と好きなイラストレーターのコラボ。

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    2023年07月24日
  • 津軽(新潮文庫)

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    わたしは太宰治の一読者にすぎず知り合いでもなんでもないが、この小説にあらわれているのは最も素に近い太宰ではないかと思う。不躾に他者を容赦なく批評するかと思ったら急に弱気になって自分を卑下したり、酒を飲みまくったり、だらしがないかと思えばしっかり土地のことを知っている。いつも一緒にいたくはないけどたまに旅行に行ったら楽しいだろう。しかもいく先々で暖かく迎えられるのである。
    自分という存在を書くことに関しては太宰治の右に出るものはいないということがわかる。とくにたけと会うまでの気持ちのはやりや実際あったのちのなんとも言えない雰囲気には目頭が熱くなった。
    この小説を読むと後ろに故郷を残してきた人間を

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    2023年07月23日
  • 待つ(乙女の本棚)

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    戦争の時代、彼女は何を待ったのか。
    この短い文章に太宰さんの中の乙女から見た世界が濃くみえる。
    そういえば、私も何かをずっと待っている気がしてくる。

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    2023年07月05日
  • グッド・バイ(新潮文庫)

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    この作品を読んで初めて、太宰治はラブコメのライトノベル作家だと思った。
    未完であることが残念でならないけれど、先の展開や結末を想像するのも楽しい。大好きな作品。

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    2023年06月23日
  • 駈込み訴え(乙女の本棚)

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    うあああ・・!
    文庫でこの作品は事前に読んでいたけれど、やはりスゴい・・!
    愛憎、思慕と幻滅、自己嫌悪と裏切り、推しを思う心と勝手?それとも的を得てる自己解釈。
    人間の心情って決して単純ではない。移り変わる心は複雑。
    でもなにか(小説などの作品や報道記事)を作るとついわかりやすくしてしまう。
    煩雑、まとまらない気持ちを本当に丁寧に、しかししっかり描いているのはさすが文豪。
    イラストのホノジロトオジ氏ははじめて読む人のために「私」が誰なのか、徐々にわかっていく過程を楽しんでもらうためにわかりやすいシンボルは最初は避けていたとのこと。
    わかりやすい挿し絵ではないけれど、独特の雰囲気はすごい。

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    2023年06月20日
  • 太宰治全集(2)

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    ネタバレ

    2023/06/16
    桜桃忌が近いため、以下の作品を読んだ。

    『燈籠』
    冒頭で語られる痛々しい思いと、強く虚しく眩しい終わり方がとても好きだった。
    この作品を読んだときのどうしようもない気持ちは、言葉では言い表すことができない。


    『満願』
    夏の穏やかな日々に、ふと差し込む眩しい光。
    そんな情景がラストで描かれる。
    私はこの作品を読むたびに、爽やかな青と白を思い浮かべる。


    『葉桜と魔笛』
    姉と妹の間で繰り広げられる優しい嘘に、胸が締めつけられる。
    あの口笛はもしかしたら父親なのでは……と私も思ったが、高齢になった姉自身から語られる昔話は、口笛の正体は分からないままでもいいと思わせてくれ

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    2023年06月19日
  • 新ハムレット(新潮文庫)

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    舞台化にあたり、シェイクスピアの『ハムレット』を読んでから読みましたが、初っ端から太宰節がとまらず愉快でした。
    ハムレットに登場する人物たちがイキイキと描かれ、太宰お得意の人間臭い描写が全開。『駈込み訴え』『走れメロス』といい、太宰の古典テーマの話は魅力的な作品が多いですね。

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    2023年05月28日
  • 乙女の本棚 女生徒

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    大好きな『女生徒』を乙女の本棚シリーズで再読。
    朝の目覚めから夜の眠りにつくまで、多感で読書家な少女のとある一日を生きる。
    光を集めてさまざまに模様をかえてゆく万華鏡のように、少女の脳内はくるくると忙しい。それらを可愛らしくかけがえのない喜怒哀楽、と思ってしまうのは、私がすっかり大人になってしまった証拠なのだろうね。〈いま〉が手をすり抜けていく不思議な感触をたしかに自分でみつけて知っていたのに。苦しくて苦しくて、いつまでも、恥ずかしいスッポカシをくらいながら、少女たちはいつだっていまを生きている。「わるいのは、あなただ」
    読むたびに新鮮で、気づきがある。私はこの作品を好きすぎている。一言一句を

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    2023年05月20日
  • 乙女の本棚 女生徒

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    『女生徒』の素晴らしいところは、感情の描写のリアリティさにあると思う。
    本当に繊細に、丁寧に伝わる。美しい。
    実際に共感できるし、なるほどこの子ならそう言語化するのかと関心する。
    ヒロインの名前が最後まで明かされないミステリアスさも魅力。太宰作品は、苗字か名前どちらかでも明かされることが多い気がするので、なんとなく気になる。どんな名前なのか想像してみるのも結構楽しい。
    (元ネタは有明淑という太宰ファンの日記らしいので、少女の名前は「シズ」とかかもしれないなぁ。と思ったり。ちなみに元ネタの資料は青森近代文学館で販売されているのでぜひ!)

    ヒロインの行動は時に才女で、時にあどけなく、急にしょげた

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    2023年05月06日
  • 待つ(乙女の本棚)

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    物語の儚さや寂しさとイラストが合っており大変読みやすかった。そしてこの主人公の感情は現代の人でもわかるとこがあるかもしれません。

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    2023年04月29日
  • 乙女の本棚3 葉桜と魔笛

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    表紙をみて男性と女性かと思っていたら、どちらも女性、しかも姉妹。太宰の少女目線の話は、読むと心がきゅっとする。なんでこんなことわかるんだろ。

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    2023年04月22日
  • 人間失格 グッド・バイ 他一篇

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    ネタバレ

    『人間失格』と『グッド・バイ』の温度差が激しすぎて『グッド・バイ』の話がよく分かりませんでした。そのため7年の時を経て再チャレンジ。

    改めて読み返すと、『グッド・バイ』は完全なギャグでした。ギャグ漫画として世に出ても不思議じゃないぐらいです。愛人全員と別れたあと、キヌ子さんはどうするのか、本当の奥さんはどうなったのか生きて最後まで書いてほしかったです。

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    2023年04月21日
  • 待つ(乙女の本棚)

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    どこか官能的で退廃的な太宰治の文章に今井キラさんの作風がとてもマッチしている。
    文章も勿論だけど、今井キラさんのイメージ力が素晴らしいなと感じた。

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    2023年03月09日
  • パンドラの匣

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    「パンドラの匣」は二十歳の主人公が親友へ宛てた手紙形式になっていて読みやすかった。手紙を読んでいくので不思議と主人公を近くに感じる。

    こじれた恋愛と笑いもあって、ちょいちょい挟んでくる「新しい男」というワードが、昭和の厨二病感むき出しで面白かった。

    主人公が結核患者なので、病み系かな……と思いきや。
    匣を開けてみると、様々な絶望があるけれど希望もちゃんとあるという終わり方が非常に好みで印象に残る。
    「人間失格」とは対照的な読後感が味わえた。

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    2023年03月08日