太宰治のレビュー一覧
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乙女の本棚シリーズより、何年ぶりかに読み返した太宰の掌編「待つ」です。
すべての見開きページを飾る、今井キラさんの挿絵がぴったりすぎる。
それにしても、こんなに可愛らしくいじらしい話だったかしら?
自分がだれを、なにを待っているのかもさっぱりわからぬまま、それでもただ信じて冷たいベンチに腰かけている二十歳の少女を、期待と不安と覚悟をごちゃまぜに抱きしめながら信じるように待ちつづけている彼女を、はやく見つけてあげてほしい。
『女生徒』を彷彿とさせるような、心のうちから弾け飛ばんばかりの、行き場のない乙女の可愛らしい咆哮のようなものが好き。 -
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ネタバレ好きな作品とそうでない作品が入り乱れていた。でも、結局表題作の「グッド・バイ」で最後に盛大なコメディで締めくくられて、ああこれが太宰かと。遺作がグッド・バイで良かったなと思える、明るく軽快で未来を向いた作品だった。
もったいない、もったいない、続きが読めないなんて。でもなんだかこれを書きかけで逝ってしまうのはとても、喜劇みたいな、悲劇みたいな、人生。
戦後ずっと、世の中の変わらなさに絶望しつづけていた太宰が、この遺作でこんなことを言う。驚いた。
「けれども、それから三年経ち、何だか気持ちが変わって来た。世の中が、何かしら微妙に変わってきたせいか、...(中略)小さい家を一軒買い、田舎から女房 -
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ネタバレ太宰の随想が単行本として死後まとめられたもの。
随想ともなると作品以上に、より太宰治の直接的な思考の断片が見えるようでおもしろい。切れ味の良い言葉が沢山あった。
太宰作品をいくつか見たあとに読むととても良い。
「もの思う葦」というタイトルがあまりにしっくりくる。
「太宰治ほど生きるのに真剣でド真面目ひとはいない」というのが読み終えた今の一番の印象だ。ド真面目というか、嘘をつきたくない思いというか。
彼は、考えたことは実行し、また小説と生活は一致しなければならないという思いがとても強い。その思いの強さがある一方、圧倒的な批評能力が自分自身に向き、弱い自分とひたすらに真正面からむきあってしまうか -
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太宰によるフォークロア新解釈をたっぷり味わえる一冊。新釈諸国噺などは、西鶴の原文にちかいのだろうなという話と、『粋人』『遊興戒』『吉野山』など太宰節が滲み出ている話とに分かれている。
特に好きだったのが『竹青』と『浦島さん』。
こうも伸びやかな想像力、幻想的な世界を鮮やかにいきいきと書くことができる作家とは。戦時中の制限された中で、ひとびとを、そして自分自身を鼓舞させるような、そんな切実とした思いも裏に感じる。両者、あまりにうつくしい世界観で、もっと色んな人に読んでもらいたいなぁと思った。これを作者名を伏せて読んで、一体どのくらいのひとが太宰と気づくだろうかと。
そうした美しい描写のなかで、太 -
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ネタバレ好きなタイプの太宰作品が多い、良い短編集だった。
『一燈』、『庭』の雰囲気がすきだった。どちらも長兄とのエピソードなので、私はその2人の関係性が好きなんだろうか....
落ち着いていて、しおらしく、それでいてユーモアやあたたかさのあるこうした系統の太宰作品が好きだ。
『未帰還の友に』は取り残された太宰のやりきれないどうにも苦しい気持ちが全体に流れており、こちらも苦しくなる。「自分だけ生き残って、酒を飲んでいたって、ばからしい」なんて。
『チャンス』は前半の恋愛に関する御託が面白い。「『ふとした事』から異性と一体になろうとあがく特殊な性的煩悶、などという壮烈な経験は、私には未だかつてないのである -
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司馬遼太郎の「北のまほろば」を読み、そこに登場する太宰治、そして津軽に興味が湧き本著を読む。
太宰治自体読んだことがなかったので、その意味でも新鮮。
最後の「たけ」とのシーンが感動的。
この旅は、自分探しの旅。実際見る物理的な風景もそうなのだが、どのような人に囲まれて育ったのか、そして、それが人格を形成するうえでも、大切なことであることを改めて感じる。
文章も読みやすく、表現も巧い。
本著で触れられている津軽の歴史、それは日本の歴史でもあるのだが、も興味深い。
青森県は、行ったことがないので、司馬遼太郎の「北のまほろば」と、この「津軽」を携えて訪れたい。(よく調べると「津軽」をベースとし -
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わたしは太宰治の一読者にすぎず知り合いでもなんでもないが、この小説にあらわれているのは最も素に近い太宰ではないかと思う。不躾に他者を容赦なく批評するかと思ったら急に弱気になって自分を卑下したり、酒を飲みまくったり、だらしがないかと思えばしっかり土地のことを知っている。いつも一緒にいたくはないけどたまに旅行に行ったら楽しいだろう。しかもいく先々で暖かく迎えられるのである。
自分という存在を書くことに関しては太宰治の右に出るものはいないということがわかる。とくにたけと会うまでの気持ちのはやりや実際あったのちのなんとも言えない雰囲気には目頭が熱くなった。
この小説を読むと後ろに故郷を残してきた人間を -
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うあああ・・!
文庫でこの作品は事前に読んでいたけれど、やはりスゴい・・!
愛憎、思慕と幻滅、自己嫌悪と裏切り、推しを思う心と勝手?それとも的を得てる自己解釈。
人間の心情って決して単純ではない。移り変わる心は複雑。
でもなにか(小説などの作品や報道記事)を作るとついわかりやすくしてしまう。
煩雑、まとまらない気持ちを本当に丁寧に、しかししっかり描いているのはさすが文豪。
イラストのホノジロトオジ氏ははじめて読む人のために「私」が誰なのか、徐々にわかっていく過程を楽しんでもらうためにわかりやすいシンボルは最初は避けていたとのこと。
わかりやすい挿し絵ではないけれど、独特の雰囲気はすごい。
本 -
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ネタバレ2023/06/16
桜桃忌が近いため、以下の作品を読んだ。
『燈籠』
冒頭で語られる痛々しい思いと、強く虚しく眩しい終わり方がとても好きだった。
この作品を読んだときのどうしようもない気持ちは、言葉では言い表すことができない。
『満願』
夏の穏やかな日々に、ふと差し込む眩しい光。
そんな情景がラストで描かれる。
私はこの作品を読むたびに、爽やかな青と白を思い浮かべる。
『葉桜と魔笛』
姉と妹の間で繰り広げられる優しい嘘に、胸が締めつけられる。
あの口笛はもしかしたら父親なのでは……と私も思ったが、高齢になった姉自身から語られる昔話は、口笛の正体は分からないままでもいいと思わせてくれ -
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大好きな『女生徒』を乙女の本棚シリーズで再読。
朝の目覚めから夜の眠りにつくまで、多感で読書家な少女のとある一日を生きる。
光を集めてさまざまに模様をかえてゆく万華鏡のように、少女の脳内はくるくると忙しい。それらを可愛らしくかけがえのない喜怒哀楽、と思ってしまうのは、私がすっかり大人になってしまった証拠なのだろうね。〈いま〉が手をすり抜けていく不思議な感触をたしかに自分でみつけて知っていたのに。苦しくて苦しくて、いつまでも、恥ずかしいスッポカシをくらいながら、少女たちはいつだっていまを生きている。「わるいのは、あなただ」
読むたびに新鮮で、気づきがある。私はこの作品を好きすぎている。一言一句を