太宰治のレビュー一覧

  • 津軽(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    斜陽館に行くにあたり、太宰が故郷について書いた『津軽』を初めて読んだ。
    結論、やっぱりこの人の書く文章は本当に面白い。
    卑屈さ、皮肉、悪口、故郷に対する深い愛情、友人・家族(育ての親や使用人すべて)への感謝が絶妙なバランスでミックスされていて、文章が生き生きしている。ユーモアを交えた軽快な台詞回しが読んでいて心地いい。
    こんだけいろいろやらかしていても(笑)、憎めない愛されキャラだったんだろうなあと思う。

    実際に斜陽館も、津軽読後だと2倍楽しめます。
    このお部屋で蟹を食べたのかあ、とか、この洋室で中学生の頃寝っ転がっていたのかあ、とかとか。
    ちなみに竜飛岬でN君とどんちゃん騒ぎしたお宿は、現

    0
    2025年09月14日
  • 人間失格

    Posted by ブクログ

    なんだろう…。ものすごいものを読んでしまったというのが、率直な印象です。簡単に感想を書けないほど奥深く、著者がこの作品に人生を全振りしている、一種の覚悟のようなものを感じ取りました。

    読んだあと、すぐに想起されたのは又吉直樹さんの『火花』でした。又吉さんが芥川賞を受賞された時に、当時話題になっていたので読んだと記憶しているので、もうかれこれ10年近く前に読んだものですが、どこかに『人間失格』との類似性を感じとり、頭に浮かんだのだと思います。調べると、又吉さんは『人間失格』を100回は読んでいるとか。「どおりで…。」となんだか勝手に納得してしまいました。

    一回読んだだけでは、この作品の表層部

    0
    2025年09月11日
  • 斜陽

    Posted by ブクログ

    美しい退廃を挙げるなら、迷いなくこの作品を選ぶ。
    「沙羅双樹の花の色 盛者必衰のことわりをあらわす」とはまさにこのこと。必ず傾く陽の光をしなやかな色彩で描く傑作。痛みと切なさが入り混じった上質な余韻が残る。

    0
    2025年09月10日
  • ヴィヨンの妻

    Posted by ブクログ

    太宰治の魅力、色気はなんなんでしょう。
    人に迷惑をかけて、だらしがなくて、弱くて、自意識過剰。

    でもそんなダメな人が生きていくパワーが、太宰のようには生きられない自分にとって、燦然と輝いて見える。

    「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」

    0
    2025年09月04日
  • 乙女の本棚 女生徒

    Posted by ブクログ

    こんな女の子が、昔にもいたんだと思うとなんだか嬉し。家庭環境も、考えることやることなすこと、わたしとそっくりなのだもの。このおはなしは、淑、という少女の日記を太宰が小説にしたもの。そして、私以外のたくさんのひとが、私のことがかかれてある、と思うのだろう。なんて、おかしいんだろう。にんげんには、なにかしら、ひとにはいえないことがあり、じつはそれはどこか似通っていて、万巻の書の片隅で文学になっていたりするのかもしれない。

    0
    2025年08月26日
  • きりぎりす(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    学生時代に心酔していた太宰治、ちょうど読む本が尽きたので、本棚からふと手に取ってみて、うわ!やっぱりいい!と思った。
    今回特に好きだったのは以下三編。

    『燈籠』 
    口に出したくなる「言えば言うほど、人は私を信じて呉れません」というキラーフレーズ、
    そして「それに違いはございませぬ。いいことをしたとは思いませぬ。けれども、ーーいいえ、はじめから申しあげます。私は、神様に向かって申しあげるのだ。私は、人を頼らない、私の話を信じられる人は、信じるがいい」という毅然としたスーパーキラーフレーズ、
    極めつけのラスト、蔑まれていても別にわびしくない、逆に美しいと思うというカウンター。
    世間的にどう思われ

    0
    2025年08月24日
  • きりぎりす(乙女の本棚)

    Posted by ブクログ

    売れない画家に惚れ込んだ奥さんが
    富と名声を得た主人に別れをつげるなんてあり得ない。
    しかしこの感情は意外と女性の中にある気はします。
    パッっとしない男で自分だけが必要で手を尽くしている間は愛おしく、いざ自分から離れて独り立ちした男が憎らしくなる。

    作中の奥さんは実は正直であるゆえに弱い人のように感じる。その弱さを不思議な感覚にできる作品でした。

    人間の感情って我儘だとつくづく思うけど
    その我儘さを自分なりに折り合いをつけて人と関わりを上手に形成出来るのが強い人間だと年を重ねる毎に感じます。

    内容もきちんと理解できない学生の頃
    太宰治作品を沢山読んでました。
    人間の弱さやずるさの表現の仕

    0
    2025年08月22日
  • タナトスの蒐集匣 -耽美幻想作品集-(新潮文庫nex)

    Posted by ブクログ

    豪華すぎやろがい。この一冊でいろんな文豪の文章に触れられて楽しかった〜!百年ぶりに読んだ谷崎潤一郎が良すぎて大興奮。そしてはじめて読んだ泉鏡花が激ムズすぎてひっくり返った。文章が独特でわけわからんくなりながら、描写がきれいなことだけは伝わってくるのが不思議でなおさらわけわからんくなっていたような。いや、でも、でも、やっぱり江戸川乱歩すきですァ〜!しかも「芋虫」って。何回読んでもウワァ…ってなる。たまらない。

    0
    2025年08月12日
  • きりぎりす(乙女の本棚)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    理想とする、人に見えない月桂樹の冠をつけたような、天使のような美しい男性に(わたしはキリストを想像しながら読んだ)、主人公がいつか出会えたらな。アリとキリギリス のキリギリスの美しさは、人には理解されづらいのかもしれないけど、わたしも信念をもった芸術家の美しさは尊いと思うので、そういう人に主人公がほんとうに出会えたらないいなと思った。

    あと主人公が貧乏暮らしを好むのは理想の男性をお支えする副産物を好むだけなのであって、夫の性格が俗にならなければ裕福な暮らしを受け入れたと思うのだけど……

    0
    2025年08月04日
  • 津軽(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    太宰作品の中で一番好きかも。なんかの節目で数年ぶりくらいにあった親戚のおじさんが、酒を飲みながら自分の話をしてくれる感じがして良かった。

    0
    2025年07月30日
  • ろまん燈籠

    Posted by ブクログ

    秋風記は私が人生で1番好きな小説。
    私の解釈の仕方が正しいかはわからないが、なんとなく、近くにいる人間の心に触れるのが怖いのだと思った。それでもKは太宰に生きていて欲しいし、太宰はKと一緒に死んで苦労しないで欲しい。太宰はKを愛しているが、Kにはずっと思っている、10歳になる前に見てしまった、この世で最も美しいものをまだ忘れられていない。この短い小説の中にいくつも考察の余地があり、そして本当に愛している人の心に、身近な人の心に触れられない焦ったさみたいなのが、読んでいて自分と重なって胸が苦しくなる。この小説、本当に大好きです。

    0
    2025年07月29日
  • 斜陽 アニメカバー版

    Posted by ブクログ

    昔の名作は小難しい感じがして避けがちだったけど、暇つぶしに読んでみたら夢中で読んでしまった。初めて太宰治を読む人にはぜひこちらをオススメしたいと思った。

    現代の作家さんが書いた小説ももちろん素晴らしいけど、この作品には干した魚のように濃厚な旨味があった。
    それは単に昔書かれた本だから現代の私はたまらなく風情を感じてしまうだけかのか、はたまた作者がものすごく偉大なのか。
    その辺は謎ですが、昔の文豪の作品の良さがようやく分かってきたような気がして大人になった気分。苦手意識を少し取り去ってくれた。

    人間の孤独や虚しさ、あらゆる感情がぎゅぎゅっと詰め込まれていた。
    直治の遺書は、太宰自身の遺書だっ

    0
    2025年07月27日
  • 津軽(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    太宰治が愛した津軽の様子が鮮明に描かれている。故郷嫌いなのかと思いきや実は愛していた太宰治が生まれた津軽にいつか旅行に行ってみたいと思った。

    0
    2025年07月24日
  • きりぎりす(乙女の本棚)

    Posted by ブクログ

    木綿のハンカチーフをしんみり聴きたくなる話でした。遠くで変わってしまう恋人へ変わらないでと歌う曲と、誰よりも近くで変わっていく夫に嫌いですと嘆く妻。変わった人だなあと少し思いながら読んでいましたので、私は奥様が嫌う側の人間のようです。でもね奥さん、私も人の悪口を簡単に言う人は嫌いなのですよ。

    0
    2025年07月22日
  • 富嶽百景・走れメロス 他八篇

    Posted by ブクログ

    人間の悩みのほとんどは、他人についてなのかもしれない。

    太宰治の短編集を読み、そう思う。

    以前『人間失格』を読んだときに、世間や他人に合わせた生き方ができない自分のことを「人間失格」と主人公の要蔵は言い表していた。

    そのときにふと感じた、「じゃあ何が人間の合格なんだ?」という疑問は、ずっと胸にある。

    世間に合わせ、他人にへつらい、自己を曲げて生きていくことが、人間としての正しい姿か?

    そうは思えない。

    私見だが、自分が自分らしくあることこそが生き方であると思っている。

    この短編集の中でも、そうした周囲との不調和に関する話が多くある。

    特に『東京八景』なんかは、ほぼ太宰治の自伝の

    0
    2025年07月17日
  • 人間失格

    Posted by ブクログ

    高校生のときに初めて読んで、この度31歳で読み直した。だいぶ印象変わった。高校生のときはなんでこの人生が人間失格なんだ?とさえ思った。女にもてて楽しそうじゃん。読み直したとき、自分を隠して生きることは辛いよなぁと思えるようになっていた。

    0
    2025年07月14日
  • 乙女の本棚 女生徒

    Posted by ブクログ

    太宰治の『女生徒』と素敵なイラストがコラボする、乙女の本棚シリーズ第1段2冊中の2巻です。
    14歳の女生徒の起床から就寝までが日記のような散文として綴られる小説です。
    思春期の女の子ならではの不安定な内面が描き出されています。
    その世代の女性らしく思いや考えが二転三転しますので、読者が大人の男性であると共感するのが難しいのではと思います(私がそうでした)。
    そこで驚くのが、これを書いたのが太宰治という大人の男性であることです。
    本シリーズは表紙や挿絵のイラストが秀逸で、今作は様々な情報や知識に染まりやすく安定しない年頃の女の子の儚さが表現されています。
    美しい純文学を美しいイラストが彩り、世界

    0
    2025年07月12日
  • 斜陽 アニメカバー版

    Posted by ブクログ

    人間失格に続きこちらも呼んでみた。こっちは主に4人の人物にスポットを当てて物語が進んでいった。太宰治は暗い雰囲気だけどその分人間の感情の奥深いところまで言葉に表していることすごいと思う。私もこんな文章力が欲しいです。

    0
    2025年07月07日
  • 乙女の本棚3 葉桜と魔笛

    Posted by ブクログ

    美麗イラストと文豪作品コラボの乙女の本棚シリーズ。
    短い物語の中に多くのテーマと軸があって、何処に重きを置くかで印象の変わる作品だなと驚きます。
    乙女軸らしいイラストも可愛くて、悲しさと儚さの中に夢と理想が垣間見えました。

    0
    2025年07月03日
  • 斜陽

    Posted by ブクログ

    時代的な背景も相まって、登場人物の切実さに胸が打たれる小説だった。それでいて所々でハッとするような名文が出てくるのだから夢中にならないはずがない。

    0
    2025年06月30日