太宰治のレビュー一覧
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斜陽館に行くにあたり、太宰が故郷について書いた『津軽』を初めて読んだ。
結論、やっぱりこの人の書く文章は本当に面白い。
卑屈さ、皮肉、悪口、故郷に対する深い愛情、友人・家族(育ての親や使用人すべて)への感謝が絶妙なバランスでミックスされていて、文章が生き生きしている。ユーモアを交えた軽快な台詞回しが読んでいて心地いい。
こんだけいろいろやらかしていても(笑)、憎めない愛されキャラだったんだろうなあと思う。
実際に斜陽館も、津軽読後だと2倍楽しめます。
このお部屋で蟹を食べたのかあ、とか、この洋室で中学生の頃寝っ転がっていたのかあ、とかとか。
ちなみに竜飛岬でN君とどんちゃん騒ぎしたお宿は、現 -
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なんだろう…。ものすごいものを読んでしまったというのが、率直な印象です。簡単に感想を書けないほど奥深く、著者がこの作品に人生を全振りしている、一種の覚悟のようなものを感じ取りました。
読んだあと、すぐに想起されたのは又吉直樹さんの『火花』でした。又吉さんが芥川賞を受賞された時に、当時話題になっていたので読んだと記憶しているので、もうかれこれ10年近く前に読んだものですが、どこかに『人間失格』との類似性を感じとり、頭に浮かんだのだと思います。調べると、又吉さんは『人間失格』を100回は読んでいるとか。「どおりで…。」となんだか勝手に納得してしまいました。
一回読んだだけでは、この作品の表層部 -
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学生時代に心酔していた太宰治、ちょうど読む本が尽きたので、本棚からふと手に取ってみて、うわ!やっぱりいい!と思った。
今回特に好きだったのは以下三編。
『燈籠』
口に出したくなる「言えば言うほど、人は私を信じて呉れません」というキラーフレーズ、
そして「それに違いはございませぬ。いいことをしたとは思いませぬ。けれども、ーーいいえ、はじめから申しあげます。私は、神様に向かって申しあげるのだ。私は、人を頼らない、私の話を信じられる人は、信じるがいい」という毅然としたスーパーキラーフレーズ、
極めつけのラスト、蔑まれていても別にわびしくない、逆に美しいと思うというカウンター。
世間的にどう思われ -
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売れない画家に惚れ込んだ奥さんが
富と名声を得た主人に別れをつげるなんてあり得ない。
しかしこの感情は意外と女性の中にある気はします。
パッっとしない男で自分だけが必要で手を尽くしている間は愛おしく、いざ自分から離れて独り立ちした男が憎らしくなる。
作中の奥さんは実は正直であるゆえに弱い人のように感じる。その弱さを不思議な感覚にできる作品でした。
人間の感情って我儘だとつくづく思うけど
その我儘さを自分なりに折り合いをつけて人と関わりを上手に形成出来るのが強い人間だと年を重ねる毎に感じます。
内容もきちんと理解できない学生の頃
太宰治作品を沢山読んでました。
人間の弱さやずるさの表現の仕 -
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昔の名作は小難しい感じがして避けがちだったけど、暇つぶしに読んでみたら夢中で読んでしまった。初めて太宰治を読む人にはぜひこちらをオススメしたいと思った。
現代の作家さんが書いた小説ももちろん素晴らしいけど、この作品には干した魚のように濃厚な旨味があった。
それは単に昔書かれた本だから現代の私はたまらなく風情を感じてしまうだけかのか、はたまた作者がものすごく偉大なのか。
その辺は謎ですが、昔の文豪の作品の良さがようやく分かってきたような気がして大人になった気分。苦手意識を少し取り去ってくれた。
人間の孤独や虚しさ、あらゆる感情がぎゅぎゅっと詰め込まれていた。
直治の遺書は、太宰自身の遺書だっ -
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人間の悩みのほとんどは、他人についてなのかもしれない。
太宰治の短編集を読み、そう思う。
以前『人間失格』を読んだときに、世間や他人に合わせた生き方ができない自分のことを「人間失格」と主人公の要蔵は言い表していた。
そのときにふと感じた、「じゃあ何が人間の合格なんだ?」という疑問は、ずっと胸にある。
世間に合わせ、他人にへつらい、自己を曲げて生きていくことが、人間としての正しい姿か?
そうは思えない。
私見だが、自分が自分らしくあることこそが生き方であると思っている。
この短編集の中でも、そうした周囲との不調和に関する話が多くある。
特に『東京八景』なんかは、ほぼ太宰治の自伝の -
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太宰治の『女生徒』と素敵なイラストがコラボする、乙女の本棚シリーズ第1段2冊中の2巻です。
14歳の女生徒の起床から就寝までが日記のような散文として綴られる小説です。
思春期の女の子ならではの不安定な内面が描き出されています。
その世代の女性らしく思いや考えが二転三転しますので、読者が大人の男性であると共感するのが難しいのではと思います(私がそうでした)。
そこで驚くのが、これを書いたのが太宰治という大人の男性であることです。
本シリーズは表紙や挿絵のイラストが秀逸で、今作は様々な情報や知識に染まりやすく安定しない年頃の女の子の儚さが表現されています。
美しい純文学を美しいイラストが彩り、世界