砥上裕將のレビュー一覧
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川沿いの街を守る消防士の話
能登実話もベースにしている様子
人と人が繋がり、街を守る、代々町長だったり、司令室だったり、人が繋がり思い合って助け合っている。
作者の優しさなのか、いつも登場人物が優しく心のある人柄なのが読んでいて心地よい
最後は泣けた…
お父さんは消防士じゃない!って司令室の人の話はドラマでもあった。どんな仕事にも多面性があり、それぞれに役割があるが子どもにはわかりにくい。そんなところをついていて、たくさん取材されて書かれたのだろうな、と想像する。
消防士を腕立てや懸垂に命かける筋肉バカの様に描きつつも職員同士のパティシエ以上に菓子作りに長けた樋口、司令室の要、真面目一辺倒に見えてかなりの細マッチョな立石、女性で内勤の三田、それぞれの個性が生きていて良い関係性
心にグッと来る良い作品を読めてよかった!
文句なし星5つ!
竜神様が大事というのは、そういうことだ。みんなが大事にしているものは、お前にとっても大事なんだ。お前が生きてる世界を作ってるものだ。俺の言っていることが今は分からんでも、いつか分かるようになる。目を凝らしてみろ、頭を使って考ろ、心を使って感じてみろ。大事なものはいっぱいあるぞ。ほら、見えるか」
二十歳になったばかりの若者に、たった数分を与えられない程、俺たちの仕事は狭量ではなかった。そしてどんな言葉も今はまだ彼には届かないことが分かっていた。人の死を忌避してこの仕事を続けることはできない。命を救うということは、その指から滑りぬけていく命がいくつも通過した後に、ようやく手にできる奇跡だ。あらかじめ定められているかのように救える命と、救えない命が目前に突きつけられる。
自分でも思いもしなかった瞬間や、忘れかけた過去が首をもたげてくる時は誰かを必要としている時だ。孤独は記憶と結びつくが、『いま』は誰かと結びつく。
大水害を経験した後、俺たちはあらゆるものと結びついた。普段出会うことのない誰かと出会い、話し、助け合った。『いま」と『これから』はその方法でしか生み出せなかった。悲惨な町の情景や、途方に暮れた日々が記憶の中で痛みを伴うにしろ、妙に淡く感じられるのは多くの人と結びついていたからかも知れない。
無理やりに立ち上がり、歩き続けた日々の後遺症が思いもよらぬ形です現れてくることも、だからこそ理解できる。その思わぬ形の繋がりや仕組みを俺たちは理解することはできない。理解しなくてもいいのだろう。傷口をいやすのは、瘡蓋と温もりだ。だから、たった一度、誰かと過ごせたことが思いもよらない瞬間に変わることもある。とりあえず、一緒に何かに向かっていれば、何かが変わるかもしれないと思えたのだ。
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今年読んだ本の中で一番泣いた本かも。
悲しい涙でも嬉しい涙でもないのだけれども、命に向き合うひたむきさ、真面目さに感動しました。
5年前に大水害で町が流されて、多くの人がまだ悲しみを乗り越えきれていない街で、1番の消防士だと言われている達朗。
彼はあの日以来、水が怖く、それをまわりに隠しながら現場の仕事を続けていたが、通報を受け付ける司令室に異動になる。司令室の新しい仲間、街の人、そして家族。龍郎自身も、そしてそれぞれの人たちも、一歩ずつ前に進もうとしている。
あの日の正解を探しているのか。それと向き合うと自分が壊れてしまうかもしれない。でも少なくともやれることはやったと、胸は張れなくても言える、そんな人々の生活を丁寧に書いてある良作だと思いました。 -
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特に心に残ったのは、子どもたちが指で花を描いていく場面です。
教えられることなく心のままに描き、自由に広がっていく表現の中で描かれる花は、整った形ではなく乱れた線でありながらも、不思議な美しさがあることが伝わってきます。
上手さではなく、今この瞬間を描いているような表現だからこそ、生きているものとして強く伝わり、心を動かされました。
また、霜介が過去や未来ではなく今を見つめ、一歩ずつ進んでいこうとする姿に成長を感じました。
大きな変化ではなくても、一歩を積み重ねていくこと自体に意味があり、それが線を引くことにつながっているのだと思います。
母に花を捧げたいという想いと、それに応えるように子どもたちが花を描いていく場面からは、人の想いが他者へと受け継がれていくことの尊さを感じました。
そして、両親へのさよならがやっと訪れたのだと感じられた場面も強く心に残りました。霜介の葛藤と成長が描かれた、心に深く残る作品でした。 -
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『線は、僕を描く』の続編となります。私自身、水墨画という世界に触れたり、実際に絵を見たりする機会はほとんどありませんでした。しかし前作同様、実際に読み進めていけば、知らぬうちに水墨画の世界へ入り込んでいる自分がいました。
墨を擦る音、画仙紙の紙質、筆が紙の上を自由自在に動いていく様が繊細な文章のなかにあって、色を感じ取りました。確かに生きているのです。
主人公、青山霜介の心の変化に一喜一憂し、良い意味で感情の渦へと飲み込まれてしまいました。霜介の師匠、湖山先生の言葉にハッとさせられたりして気づきも多かった。そんな有意義な読書時間でした。 -
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「自らの命や、森羅万象の命そのものに触れようとする想いが絵に換わったもの、それが水墨画だ。」
「描くこと」の本質に迫る素晴らしい話だった。
多くの人がモチーフの形をとることや技法に目が行きがちだけど、それだけでは人の心に残るような作品にはならない。水墨画は心を描く絵画、命を描く絵画なのだ。主人公が水墨画を通じて自分の心に触れ、外との繋がりを見出す姿や、森羅万象において自分もまた命の一つなのだと気づく境地には心が震えた。
千英の生き方を表すような水墨画も好き!強くて繊細だが、奥底には勇気がある。
この境地に至るには、眺めているだけではわからない。実際に手を動かして、つまずいてみないとわからない。青山くんが、スランプに陥った時にあえて描かずに花を観察し、問いかけていた姿が印象に残った。
きっと何事もそうで、自分も、夢中になれるものに向き合い続けたい。それを通じて得た経験はきっと人生を満たしてくれる。
この作品を読んでいる際、筆ペンで自分の名前を描く機会があり、一本の線がとても重要なのだと実感した。少しでも気が緩んだり、心が乱れると全部線に出る。母に、「今適当な気持ちで書いたでしょ」と言われた時は、自分が自覚していない心を読まれたようでびっくりした。心の様子がそのまま線に表れるというのは本当だと思う。
この作品でも、「線を引くこと」が究極の技法であることや、絵師の心の様子が線に表れている様子を述べており、日常でついこの本を思い出した。
読者は文字を通して文中の水墨画を想像するしかないが、生き生きと伝わってする文章力が素晴らしかった。文章からこんなに鮮明で瑞々しい水墨画を想像できるなんて思わなかった。
実際の水墨画を見たくなった。 -
Posted by ブクログ
2026/03/05
「線は、僕を描く」の続編に当たる話で、主人公は青山霜介。書家の湖山会というグループに属している。
水墨画を描く才能に自分自身が気づいていないのは前作に引き続きなのだが、霜介自身が色々な人と接する中で自分の描く水墨画のいいところについて考えてそこに気がついていく。
水墨画自体がとても繊細な絵だなぁとは素人ながらに思っていたけど、この作品は最初から最後まで水墨画で作品を生み出される過程が本当に繊細にかつ丁寧に描かれていて、この作品を読み進めていくことで読者も水墨画を一緒に書き上げている人の一員になれる感覚に没入できるような気がしました。
主人公の霜介もだいぶネガティブだよなぁと思った時もありましたが、そこがこの本の良さなのだと思います。 -
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ネタバレまさかの続編から読んでしまったのですが面白かったです。作者さんの他の作品でも思いましたが子供の描き方が良いですね。子供のパワーを感じます。
野宮さんはきっと前作でもミスを多くしてしまっていたのでしょうが、成長していき家族に褒められているところはこちらもほっこりしてしまいました。
さて、今回は斜視の女の子を治療していくお話でしたが、病院の実情と親の事情、子供の治療の難しさなど困難に向き合いながらも諦めない野宮さんに私自身も励まされました。
途中の看護師さんの糖尿病の話だったり漫画家さんの話だったりで病気の時に1人じゃないこと、命を簡単に諦めないこと、といったところが凄く良かったです。 -
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「7.5グラムの奇跡」の続編。
視能訓練士、野宮恭一の成長と、彼と出会ったことで瞳に光を取り戻していく患者さん達との物語。
少女の訓練について悩んでいた野宮君が、教師と話すことでヒントを得て、打開策を見つけていく所で、それぞれの分野のプロとしてのかっこよさをすごく感じて私も仕事に対してその道のプロとして自信が持てるような自分になりたいと強く感じた。
誰しも悩みや不安を抱えているけれど、1人じゃない。寄り添ってくれる人はきっといると温かい気持ちにもなった。
こんな素敵な眼科が近くにあったらいいのになぁ。
自信を持ってお薦めできる大好きな小説になった。