砥上裕將のレビュー一覧

  • 線は、僕を描く

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    読んでて内容がこんなにスッと入ってくる小説は久しぶりだった。
    チャイコンとかラフマのピアノ協奏曲とか、そんな感じの一つのクラッシックの名作聴いたあとみたいなボリュームと心の洗われ方をした。
    とりあえずやってみる、心を自然にする、これはどんなものにも共通しそう。

    解説が「視覚芸術である水墨画と、書き手の所作や心情をここまで丁寧に的確に描写できる書き手がいることに、読者は驚かされるのでは無いか」から始まるが、間違いない。びびった。

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    2026年04月23日
  • 一線の湖

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    第1章 西山くんは大学3年生だが、あまり就職活動を頑張っていない。揮毫会の一番バッターは西山だ。一枚の画面に4人の絵師が同時に描く。揮毫会は失敗した。
    轟清水小学校で小学1年生に水墨画を教える。墨をする。西濱さんは竹を描く。湖山邸でラーメンを作って食べる。西濱さんにもらった椎茸にバターと醤油を垂らして焼いて食べる。来週も小学校で教えてほしいと言われる。

    第2章 友人の古前くんは警察官になるために柔道を頑張っているが、下手すぎる。小学生に教えることになった。指で椎茸を描くと、「指で描いてもいいの?」と訊かれる。子供達は梅を描き、沢蟹を描いた。どの子もきちんと仕上げた。小学生の作品展を催すことにした。

    第3章 大学の理事長室に呼び出された。小学校で行った揮毫会のことだ。大学祭での揮毫会と展覧会を頼まれる。2週間しかない。同門の人たちや小学生の作品も借りることにした。どんどん仕事が増える。花まで届き始めた。場所を確保しなければならない。ふいに倒れた。
    入院していた。2日間眠り続けていたらしい。右手の感覚がなくなっていた。もう一度揮毫会をやろうと湖山先生がいう。

    第4章 湖山先生の山小屋に行くことになった。なぜか登山用具が必要な場所らしい。温泉もあるらしい。山荘に兄弟子の斉藤さんがいた。右手の感覚が戻ってきた。筆を取り、描くことができた。先生は引退するなら春だとごねる。

    終章 湖山先生の引退式にみんなで春の絵を描く。

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    2026年04月14日
  • 龍の守る町

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    登場人物が優しい。皆それぞれ傷を抱えながら懸命に生きている人々たち。傲慢にならず、もっとこうできたのでは?と後悔しながらも、ゆっくり前に進んでいる様を読んで、自分は生きてるけどただ生きてるだけかもなぁと思ったり。だんだんと5年前に何が起こったかが分かっていく順番も良かった。

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    2026年04月04日
  • 線は、僕を描く

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    美しいの一言。
    殻に閉じこもっていた少年だから見える世界の美しさ、そこから始める世界とのつながり。
    主人公を通して生まれる絆。葛藤、感動。
    何より水墨画の世界はこんなにも複雑で、こんなにも奥が深く、心を反映するものなのかと驚かされました。
    水墨画を絶対に見たくなる、そして自分もやってみたくなる、そんな小説です。
    もう少し、頑張ってみよう、もう少し、考えてみよう、そう思わせてくれる作品に本当に感謝です。
    描写の美しさ、心情の豊かさ、水墨画への深い愛。
    こんなにも瑞々しく、静かなのに心を打つ作品は久しぶりでした。出会えたことに感謝です。

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    2026年04月03日
  • 龍の守る町

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    川沿いの街を守る消防士の話
    能登実話もベースにしている様子

    人と人が繋がり、街を守る、代々町長だったり、司令室だったり、人が繋がり思い合って助け合っている。
    作者の優しさなのか、いつも登場人物が優しく心のある人柄なのが読んでいて心地よい
    最後は泣けた…

    お父さんは消防士じゃない!って司令室の人の話はドラマでもあった。どんな仕事にも多面性があり、それぞれに役割があるが子どもにはわかりにくい。そんなところをついていて、たくさん取材されて書かれたのだろうな、と想像する。

    消防士を腕立てや懸垂に命かける筋肉バカの様に描きつつも職員同士のパティシエ以上に菓子作りに長けた樋口、司令室の要、真面目一辺倒に見えてかなりの細マッチョな立石、女性で内勤の三田、それぞれの個性が生きていて良い関係性

    心にグッと来る良い作品を読めてよかった!
    文句なし星5つ!


    竜神様が大事というのは、そういうことだ。みんなが大事にしているものは、お前にとっても大事なんだ。お前が生きてる世界を作ってるものだ。俺の言っていることが今は分からんでも、いつか分かるようになる。目を凝らしてみろ、頭を使って考ろ、心を使って感じてみろ。大事なものはいっぱいあるぞ。ほら、見えるか」


    二十歳になったばかりの若者に、たった数分を与えられない程、俺たちの仕事は狭量ではなかった。そしてどんな言葉も今はまだ彼には届かないことが分かっていた。人の死を忌避してこの仕事を続けることはできない。命を救うということは、その指から滑りぬけていく命がいくつも通過した後に、ようやく手にできる奇跡だ。あらかじめ定められているかのように救える命と、救えない命が目前に突きつけられる。


    自分でも思いもしなかった瞬間や、忘れかけた過去が首をもたげてくる時は誰かを必要としている時だ。孤独は記憶と結びつくが、『いま』は誰かと結びつく。
    大水害を経験した後、俺たちはあらゆるものと結びついた。普段出会うことのない誰かと出会い、話し、助け合った。『いま」と『これから』はその方法でしか生み出せなかった。悲惨な町の情景や、途方に暮れた日々が記憶の中で痛みを伴うにしろ、妙に淡く感じられるのは多くの人と結びついていたからかも知れない。
    無理やりに立ち上がり、歩き続けた日々の後遺症が思いもよらぬ形です現れてくることも、だからこそ理解できる。その思わぬ形の繋がりや仕組みを俺たちは理解することはできない。理解しなくてもいいのだろう。傷口をいやすのは、瘡蓋と温もりだ。だから、たった一度、誰かと過ごせたことが思いもよらない瞬間に変わることもある。とりあえず、一緒に何かに向かっていれば、何かが変わるかもしれないと思えたのだ。

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    2026年04月02日
  • 龍の守る町

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    今年読んだ本の中で一番泣いた本かも。
    悲しい涙でも嬉しい涙でもないのだけれども、命に向き合うひたむきさ、真面目さに感動しました。
    5年前に大水害で町が流されて、多くの人がまだ悲しみを乗り越えきれていない街で、1番の消防士だと言われている達朗。
    彼はあの日以来、水が怖く、それをまわりに隠しながら現場の仕事を続けていたが、通報を受け付ける司令室に異動になる。司令室の新しい仲間、街の人、そして家族。龍郎自身も、そしてそれぞれの人たちも、一歩ずつ前に進もうとしている。
    あの日の正解を探しているのか。それと向き合うと自分が壊れてしまうかもしれない。でも少なくともやれることはやったと、胸は張れなくても言える、そんな人々の生活を丁寧に書いてある良作だと思いました。

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    2026年03月29日
  • 線は、僕を描く

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    ただただ美しい小説だった。素人にも水墨画の魅力がとても伝わってくる描写はもちろん、生の本質に迫る素敵な言葉の表現が散りばめられて心に迫るものがあった。

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    2026年03月24日
  • 線は、僕を描く

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    水墨画の世界を描いた物語ですが、専門的な知識がなくてもすっと読めてとても引き込まれました。

    主人公が水墨画と出会い、少しずつ心を動かしていく姿が印象的で、墨と線だけで世界を表現する水墨画の静かな美しさが、物語の雰囲気にもぴったりで心に残ります。

    読み終わったあと、「水墨画やってみたい!」と思うくらい世界観に惹き込まれました。今まで読んだ本の中でもトップ3に入るくらい面白かった一冊です!

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    2026年03月23日
  • 龍の守る町

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    実に繊細で丁寧な描写が胸を打つ。191の司令室が舞台なのも新鮮。自分のトラウマを克服するには現場。その直向きさもいいなあ。

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    2026年03月21日
  • 一線の湖

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    特に心に残ったのは、子どもたちが指で花を描いていく場面です。
    教えられることなく心のままに描き、自由に広がっていく表現の中で描かれる花は、整った形ではなく乱れた線でありながらも、不思議な美しさがあることが伝わってきます。
    上手さではなく、今この瞬間を描いているような表現だからこそ、生きているものとして強く伝わり、心を動かされました。

    また、霜介が過去や未来ではなく今を見つめ、一歩ずつ進んでいこうとする姿に成長を感じました。
    大きな変化ではなくても、一歩を積み重ねていくこと自体に意味があり、それが線を引くことにつながっているのだと思います。
    母に花を捧げたいという想いと、それに応えるように子どもたちが花を描いていく場面からは、人の想いが他者へと受け継がれていくことの尊さを感じました。
    そして、両親へのさよならがやっと訪れたのだと感じられた場面も強く心に残りました。霜介の葛藤と成長が描かれた、心に深く残る作品でした。

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    2026年03月17日
  • 一線の湖

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    『線は、僕を描く』の続編となります。私自身、水墨画という世界に触れたり、実際に絵を見たりする機会はほとんどありませんでした。しかし前作同様、実際に読み進めていけば、知らぬうちに水墨画の世界へ入り込んでいる自分がいました。
    墨を擦る音、画仙紙の紙質、筆が紙の上を自由自在に動いていく様が繊細な文章のなかにあって、色を感じ取りました。確かに生きているのです。
    主人公、青山霜介の心の変化に一喜一憂し、良い意味で感情の渦へと飲み込まれてしまいました。霜介の師匠、湖山先生の言葉にハッとさせられたりして気づきも多かった。そんな有意義な読書時間でした。

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    2026年03月17日
  • 線は、僕を描く

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    この本を読むと、これまで水墨画に興味が無かった人もきっと水墨画を見に行きたくなる、描いてみたくなる、そんな作品だった。
    湖山先生の言葉の一つ一つが心に刺さり、出来るかどうかは関係ない、とにかくやってみようという気持ちになれるから、水墨画に関係なく、何かに挑戦しようとする人に勧めたい本。

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    2026年03月15日
  • 一線の湖

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    2026/03/05
    「線は、僕を描く」の続編に当たる話で、主人公は青山霜介。書家の湖山会というグループに属している。
    水墨画を描く才能に自分自身が気づいていないのは前作に引き続きなのだが、霜介自身が色々な人と接する中で自分の描く水墨画のいいところについて考えてそこに気がついていく。
    水墨画自体がとても繊細な絵だなぁとは素人ながらに思っていたけど、この作品は最初から最後まで水墨画で作品を生み出される過程が本当に繊細にかつ丁寧に描かれていて、この作品を読み進めていくことで読者も水墨画を一緒に書き上げている人の一員になれる感覚に没入できるような気がしました。
    主人公の霜介もだいぶネガティブだよなぁと思った時もありましたが、そこがこの本の良さなのだと思います。

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    2026年03月06日
  • 一線の湖

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    前作「線は、僕を描く」から2年後の話

    霜介の苦悩
    新たに見つけた夢

    ありきたりの言葉だけど
    人は出会いで人生変わるんやね

    霜介と千瑛
    2人の関係はこれからどうなるんだろう

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    2026年02月12日
  • 一線の湖

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    「線は、僕を描く」の続編。
    前作に匹敵する感動作。青山霜介は失意の中。水墨画と出会い運命が大きく変わる。その中、大学卒業後の進路。水墨画家での挫折。小学生との出会い。亡くなった母が繋げてくれた出会い。そして師匠の引退。
    翡翠、カニ、湖、余白。
    霜介の絵が頭に描かれた(見えた)瞬間と師匠の思いが
    目を潤ませてくれる。至極の一冊。

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    2026年01月24日
  • 一線の湖

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    前作に引き続き面白ろかったな。
    涙するシーンも多く、なぜこの様に面白いのか?を非常に考えられた。人間性がいい、登場人物で愛着が湧くのかな〜

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    2026年01月16日
  • 11ミリのふたつ星~視能訓練士 野宮恭一~

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    前作より引き続き主人公の成長ぶりが手に取るように伝わってきます!
    技術はもちろん、人対人のやり取りも主人公を見ながら見習わないとなと大事な事を再確認できました。

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    2026年01月13日
  • 一線の湖

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    砥上裕將さんという作家さんの作品を読むのは3作目になる。ホントどれも好き。

    これは『僕は、線を描く』の続編というか、完結編なのかな。
    亡くなった母が主人公の母同様に小学校の教師だったので、色々リンクしてグッと来てしまったところもあった。電車の中で読んでたのでヤバかった。

    そして今回も、文章なのに絵が見える気がするのがすごいなぁ。

    私も湖山先生みたいな人になりたい。
    文庫の帯にあった『龍の守る町』も物凄く気になっている。

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    2026年01月09日
  • 11ミリのふたつ星~視能訓練士 野宮恭一~

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    ネタバレ

    まさかの続編から読んでしまったのですが面白かったです。作者さんの他の作品でも思いましたが子供の描き方が良いですね。子供のパワーを感じます。
    野宮さんはきっと前作でもミスを多くしてしまっていたのでしょうが、成長していき家族に褒められているところはこちらもほっこりしてしまいました。
    さて、今回は斜視の女の子を治療していくお話でしたが、病院の実情と親の事情、子供の治療の難しさなど困難に向き合いながらも諦めない野宮さんに私自身も励まされました。
    途中の看護師さんの糖尿病の話だったり漫画家さんの話だったりで病気の時に1人じゃないこと、命を簡単に諦めないこと、といったところが凄く良かったです。

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    2025年09月14日
  • 11ミリのふたつ星~視能訓練士 野宮恭一~

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    私自身も生まれつきの弱視というものを抱えて生まれてきて、矯正すら叶わない目で学生時代を過ごしたので、見えないことへの辛さは、他人事ではないのです。こういう親身になっています貰える眼科医さんや訓練士さんに出会っていたら、もっと違ったのかなと思えます。眼科医さん監修のもとに作られたお話なので、モデル的な人も存在するのかなと思いながら読みました。みんながこんなに優しい世界に暮らせたら良いのになと思います。一人一人の真心でそういう世界は不可能ではないと思うのですが、現実はかなり違うかなと悲しいですね。

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    2025年09月02日