砥上裕將のレビュー一覧
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短編なのでサクサク読めた。
今回の書き出しテーマは『だから捨ててと言ったのに』…だいたい恋愛絡みか、夫婦関係こじらせ系が多かったように思う。
誰に対して言っているかで、作者ごとに思い付く話が違い、個性があって面白い。
アンソロジーは、知らない作家さんを知って、見つける機会にもなる。
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↓読んだ中で印象に残ったもの。
●良い話
砥上裕將『母の箪笥』
金子玲介『恋文』
●じわじわ来る系
潮谷験『無理解』
五十嵐律人『累犯家族』
背筋『こわくてキモくてかわいい、それ』
●設定の世界観が独特
黒澤いずみ『捨てる神と拾う神』
舞城王太郎『食パンと右肘』
多崎礼『海に還 -
Posted by ブクログ
「7.5グラムの奇跡」の続編。
今回もとっても面白かった、そして怖くなった。
私は目は悪くない。年齢とともに老眼にはなっているが視力そのものは悪くない。多分正常に見えているのだろう。
特に若い頃は物が見えにくいという感覚が分からなかった。
しかし、世の中には目に関する様々な疾患があるものなのだ。
この小説の最初に出てくる幼児は斜視なのだが、斜視がこれほど大変な症状だということを知らなかった。
糖尿病で視力が失われかけた漫画家の話は読んでいて怖くなった。自覚のないまま進行する病気、失明しかけていても、目先の仕事にこだわる漫画家、恐ろしくなった。自分は大丈夫なんだろうか、と。
野宮恭一という主人 -
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両親を二年前に突然交通事故で二人とも亡くした青年霜介。
あまりのことで何も考えられなくなって 自分の世界、何もない世界に閉じこもってしまっていた。
ひょんなことから 水墨画の世界に導かれる。
彼の純粋な心が水墨画の世界と響き合い 自分だけの世界から外の世界へ抜け出し 生きることの意味を見いだす。
水墨画を通して描き手の所作、心情を 丁寧に描写していく。自分が 描き手や水墨画をあたかも目の前にするように感じられた。
水墨画のことはあまり良く知らないが、ここに登場する湖山先生、湖峰、千瑛先輩ら、そして主人公霜介の絵をぜひ見てみたいと思った。
もちろん これは小説なので見れないけれど どこか水墨 -
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難病で視野の多くが欠けている小学1年生の男の子が、クラスメイトに自然な形で助けられながら明るく楽しく生活している場面を読んで、ああそうだ、こんなふうに障害を持つ人と接することができるのが理想だと思った。彼は与えられるだけではなく、クラスメイトに多くのものを与えていた。担任の先生の「未知のものに出会い、自分たちで工夫すること。手を差し伸べ、感謝されて、同じように自分たちも助けられること。」…という言葉が尊い。斜視で世界を立体的に見ることができない4歳の女の子、視野が欠けている小学生の男の子、糖尿病網膜症の若い女性など様々な事情の患者さんが訪れる北見眼科医院。視能訓練士の青年が不器用ながらも真摯に
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第59回メフィスト賞
第3回ブランチBOOK大賞2019大賞
第17回 本屋大賞 第3位
花を見る目が変わると思った。
花は水墨画の重要なモチーフであり、花を描くことは、命が刻々と姿を変えている瞬間を線で表現するということ。花は今この瞬間を生きていて、同じ姿は二度と見られないのだと理解したら、より美しいものに思えてくる。
白と黒だけで描かれた花が真っ赤に見えたり、余白さえも彩りとなるという水墨画の魅力を知り、興味がわいたし、線一つ描くことへの重みが伝わってきて芸術の世界はすごいなと感じた。
さっそく水墨画を生で観てみたい気もするけど、素人の私がなにかを感じ取れる自信が全くない。
絵画だっ -
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ネタバレ視能訓練士の野宮が、斜視をもつ4歳の少女(灯)を主として、いろんな目の障害をもつ人々と交流し、患者とどう向き合っていくかを描いた作品。
灯がつらい訓練に向き合う姿がメインになっており、ほかにも糖尿病網膜症や網膜剥離のように聞き覚えのあるものから、スマホ内斜視のような現代病まで出てくる。
視能訓練士とは検査をしたり、その名のとおり視機能の訓練を行う仕事。しかし実際には訓練をしているのは一握りで、ほとんどの視能訓練士は検査のみを担当していることが多いという。
作中では4歳の灯のために、野宮が悪戦苦闘している様子が描かれている。最初はつらい訓練を嫌がっていた灯も、野宮やまわりの人たちに助けられ、し -