かなり予想外の結末を迎えた。ラスト100ページあたりから展開されていたイプシロンプロジェクトの闇を暴く話のまま終結すると思っていたが、まさか最後で「クラインの壺」というタイトルが回収され、ゲーム内と現実の区別が読者にも分からなくなるとは…どんでん返しモノは嫌いだがこれは嫌な気がしない裏切りだった。
ラストが現実なのか、ゲームの中なのか、素直に考えると、2通りが考えられる。作中通して語られた上杉視点と、「偽パスポート屋」からは全てゲームと言う笹森視点だ。
上杉視点
作中書かれた通りだで、上杉がイプシロン事務所に潜入して捕まるあたりも現実だ。その後、薬品で意識を失い目を覚ました後にどちらの世界か分からなくなっているが、真相を暴く→口封じでK2に閉じ込められると考えると最後のシーンはゲームの中ということになる。
笹森視点
「偽パスポート屋(p142)」から全て虚構で、現実なのは偽パスポート屋に入る前とラスト数ページのクラインの壺から出た後だけ。強引にも見えるが一応説明はつく。読者もいつの間にかクラインの壺に入ってたという訳だ。
でどっちの結末と取るかはどちらとも取れるように書かれているので本当にどっちでも良いのだが、上杉視点を支持したい。笹森視点も面白いがこちらは「クラインの壺」を使ったギミック要素であり、ストーリーとしては上杉視点が実際に起こったのが本当の話という方が面白い。ただこれの面白いのはどちらの説でも筋が通る事だ。ピアスや姫田の名刺から本当の結末を導けそうな気もするがそれは難しい。丸ごとK2の中でしたという笹森の説明を覆せないのだ。
そして本当に最後、自殺を決意した上杉はどうなるか。笹森視点の場合、現実世界なので本当に死ぬだろう。一方上杉視点であれば自殺後はゲームから目覚めるのだろう。だが、目覚めた先が現実であるという保証はない。自殺して目覚めるところまでもゲームの一部と言うことも出来る。結局一度K2をプレイした時点でどこまでいってもクラインの壺からは抜け出せないのだ。
これが書かれたのは1989年初代ゲームボーイの発売年で、携帯もphsより10年前の見たことない古いやつだ。最近では脳波でPC操作を行ったり、見ている景色を映像化したり出来るので近づいて来ているのだろう。それが良いことなのかは知らないが。