今村翔吾のレビュー一覧
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内容(「BOOK」データベースより)
八朔の日、亥の刻。芝湊町の土蔵に、見知らぬ者の文で呼び出された男たちが、密かに集まってきた。骨董商の仁吉、役者の銀蔵、寄木細工職人の和太郎、浪人の右近、板前の壱助。文の差出人は果たして誰なのか?五人が呼び出された真の理由とは?一方、虚の一味、初谷男吏と榊惣一郎は仕事をしくじり、高尾山から江戸市中に戻ってきた。めくるめく展開に一瞬も目が離せない。まさかのラストに、驚愕すること間違いなし。最強の決闘あり、ミステリーあり、人情あり…無敵のエンターテインメント時代小説、熱望の書き下ろし第四弾。
令和3年2月13日~18日 -
Posted by ブクログ
<羽州ぼろ鳶組>シリーズ第10作(前作「黄金雛」はシリーズ0扱いらしい)は初の上下巻。
読み始めると序章は「黄金雛」の続き。『大学火事』の焼跡に入った「に組」頭の卯の助が見つけたのは、松永重内ー松永源吾の父ーの遺体。しかしそこに下手人である元尾張藩火消頭取・伊神甚兵衛の遺体はなかった。
そして十八年後の現在。徳川御三家尾張藩上屋敷で再び火事が起こる。火柱を上げて激しく爆発する家屋。伊神の復讐は終わっていなかったのか。
何らかの瓦斯が関係しているらしき、どうやって起こしているか分からない爆発事件に、源吾ら各頭取たちは若手火消たちを現場に出さないようにと通達する。それは奇しくも十八年前の「黄金雛」の事件と同じ構図だった。
上下巻にするだけあって、内容も色々と盛り込まれている。
この上巻を読んで気になるのは、伊神が本当にまだ生きていて十八年も経ってまた復讐を再開しようとしているのかどうかということ。
そして松永源吾は前作「黄金雛」で父親に対する反抗心、もっと言えば軽蔑するかのような気持ちを持っていたのだが、この事件を機に父の本当の思いや火消としての矜持を知るのか、そして父に対する思いに変化があるのかということ。
この二つがテーマの軸になっていくと思うのだが、もう一つの軸になりそうなのが新人火消の慎太郎と藍助コンビ。身体能力は高いが無鉄砲な慎太郎と身体能力は低いが炎の動きを視る能力に優れている藍助という対照的な二人がこの事件でどんな活躍を見せどう成長していくのか、注目したい。更に藍助と伊神甚兵衛には奇妙な縁もある。もう一度「狐花火」を読みたくなってきた。
そしてもう一人、二人を見守る立ち位置にいる進藤内記。若手は火事場に出てはいけないという通達を破って現場に出向く二人に、「菩薩花」のあの進藤内記は何故行動を共にしようとするのか。
進藤内記側からの「菩薩花」の振り返りが書かれていて、それを読むと内記には彼なりの思いがあってしたことやそれでも誤算や行き違いもあって思わぬ方向に行ってしまったことなどが分かった。
源吾側から見た内記の言動は許されないところばかりだが、内記のおかげで救われた命があることも確か。
人は善悪はっきり分けられるわけではないことが改めて分かる。
卯の助もかつては千羽一家として強盗を働いていた。慎太郎も鳶になる前は生きるためとは言え、人を殺めたこともあった。
主人公の源吾も父の真意を汲み取れず、父を傷つけていただろう。
人は人を傷つけることもある一方で助けることもある。
上巻終盤で再び尾張藩屋敷が襲われる。今度は中屋敷を中心に五箇所も爆発が起こる。
そこに現れたのは…伊神甚兵衛? 彼は下手人なのか? 最後のセリフの意味は?
そしてこの尾張藩爆破事件はまだ続くのか、火消たちはどうやってこの恐ろしい爆破事件を止めるのか。
気になって仕方ないまま下巻に続く。