磯山さんはもう一匹オオカミではない。チーム全体、剣道部全体のことを考えられる。でも、試合になると違う。
そうだ。あたしは怖いぞ。お前が半歩出たら、その手首を叩き落すぞ。脳天をかち割るぞ。腹を真っ二つに掻っ捌くぞ。喉を貫くぞ。
って、変わっていません。でも、どんどん成長します。剣道だけでなく、人と
...続きを読むしても。ライバル?のレナについても、勝ち負けを超えていきます。
本作では、いろいろな人の目線から語られます。
早苗のお姉さん・緑子、恋人の巧との本意ではない別れ。モデル業での葛藤。そして、巧からみた緑子についても。吉野先生の過去は・・・結構重い。
個人的に一番好きなのは、美緒のお話。磯山さんにあこがれ、磯山さんの剣道に近づきたいと願う。でも、ある時、自分らしさに悩む。そして、自分に合った新しい型を目指す。守破離かあ。いい言葉。自分は今どの段階なのだろう。考えさせられました。
本作では磯山さんと早苗の剣道での決着もありますが、磯山さんは既に無敵。決着というより、ある意味、決別。
わたしたちは、もう迷わない。
この道をゆくと、決めたのだから。
急な上り坂も、下り坂もあるだろう。
枝分かれも、曲がり角もあるだろう。
でも、そんなときは思い出そう。
あの人も、きっと同じように、険しい道を歩み続けているのだと。
そう。すべての道は、この武士道に通じている。
がんばれ磯山さん!がんばれ早苗!
<最後に>
本筋とは関係ありませんが、本作(文庫版)のあとがきが秀逸です。書き手は有川浩先生。この武士道シリーズを読んでてて、有川先生の青春小説、例えば「キケン」とか、の男性版(?)だなあ、とか思っていたので。このあとがきでは、有川先生が誉田先生を褒めまくり、ある種嫉妬のような表現もあるけど、案外本心なのでは、とも思ってしまいます。