誉田哲也のレビュー一覧
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ルージュ ガラスの太陽
姫川シリーズ。誉田哲也の新しい試みとして「ジウ」シリーズの「ノワール」と同時発売された作品。今作だけでも十分に面白いが、ジウシリーズも知っていれば更に楽しめたのだろう。
自分は姫川シリーズを通し読みしているのでまだジウシリーズを読んでいないのだが、「ノワール」も面白そうだしいずれジウシリーズや歌舞伎町セブンのシリーズも読んでみたい。
地下アイドル一家の惨殺事件。中々進展する事がなく玲子達もお手上げ状態だったが、とある別の殺人事件をきっかけに二つの事件が一気に動き出す。玲子達も途中からもう一方の事件捜査チームに編入され、そこでガンテツの嫌がらせを受けながら捜査を進めていく。
物語は犯人と思われる人物の回想がはいり、彼は兵士として戦争に参加し、過去に日本にいた時に猟奇的な殺人を犯してしまう。回想内では彼の反省は見受けられないが、戦争が終わり、妻や息子と暮らす様になり、そして息子が日本人女性と結婚し、にほに移住しと彼の人生の追体験を挟まれる。
地下アイドル一家の惨殺事件が20年以上前に発生した未解決の一家惨殺事件と繋がり、それらの事件を追いかけていた雑誌記者も殺害され、となんとも壮大な時間軸の物語で、20数年前の事件を風化させぬ様に当時の事件捜査の関係者達が繋いできた「バトン」が玲子によって紡がれる流れはとても面白い。
反面、結末は衝撃的で、あまりにも悲しい結びであり、玲子の慟哭がたの班員達との関係性も変えていくのではと思う。
ガンテツは終始ガンテツだったが、流石の彼もこりごりだったのだろう。不気味なまでに玲子から遠ざかっていく様子が印象的だった。まさか自身が仕組んだ「毒」をモノにされるとは思わなかったのだろう。 -
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ネタバレ短編集。初っ端から『ノーマンズランド』の続きの話でした。
姫川だけでなく、中松・日野・小幡視点での話もあります。中松、日野に関しては元々姫川と距離がある中で少しずつ距離が縮まっていくのを感じ嬉しく思ってました。なのに日野さんそろそろ異動なんですね...。
ジウシリーズもまだ呼んでないのに、魚住シリーズも読まなければ。
『正しいストーカー殺人』だけは以前読んだことがあったため、再読です。前はインビジブルレイン直後に読んでしまい色々とショックでしたが、今回は時系列に沿って再読できたためストーリーを深掘りしながら読むことができました。 -
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インデックス
姫川玲子シリーズ七作目。短編集。
アンダーカヴァー
玲子が捜査一課から外れて間も無くの事件。
玲子が取調べしている男はどんな質問にも反応が鈍くどことなく自分ごとでは無い様にみえる。
とある町工場の社長が首吊り自殺。彼の会社の契約書を調査せると詐欺被害にあっていたことが判明する。玲子は上司に頼み、自身でお金をかけて品の無い何処かのバイヤーに扮し、詐欺犯を炙り出す為の行動を開始する。
善と悪は色々とあるが、私たちが社会という海原でしか生きられない魚の様に思えてしまった作品だ。
女の敵
ストロベリーナイト事件で殉職した大塚巡査と姫川の出会いのきっかけになった事件についての回想。
玲子が主任となった当時は女性は主任は珍しく、嫌味など言われる事も多い。姫川班のメンバーとも当時はまだ顔合わせ程度だったが、菊田の気概などが頼もしい。とある男性の死体が発見され、彼の死の真相を捜査する際に玲子とペアを組んだのが大塚であり、捜査を通して姫川班の結束や関係性が構築されていく過程が読み取れる。
彼女のいたカフェ
目線がとある本屋と併設したカフェ店員の回想から始まる。彼女はいつも難しい本を抱えて来店する「カッコいい」女性に興味をもち、彼女が時折り見せる可愛らしさにときめいたりしている。いつしか彼女の来店も減り、自身も配店や出世を繰り返したが、池袋の店舗に戻る事になり、そこで偶然、例の「女性」を見つける。
違った人の目線から玲子を見るのは新鮮であり、また少しノスタルジーを感じる作品だ。
インデックス
ブルーマーダー事件直後の話。
玲子に捜査一課へ戻るチャンスが訪れるが、池袋署との一時兼任という激務。そんな事に悩まされつつ運もない事に井岡とペアになり、ブルーマーダー事件後の発覚しない失踪者達の調査を行う。
調査の中、とあるヤクザの組長が行方不明になっている件の調査を進めるが、組長の人となりを調べていく中で玲子は組長の秘密を知る事になる。
井岡が大活躍するが、読者としてまだ彼のキャラクターを読み取れずにいる事がもどかしい(笑)。
お裾分け
玲子の本部移動について紆余曲折。警察組織の煩わしさがわかる。和田や今泉の様に温かい上司達もいて、彼らの期待に答える為にも結果を出し続けなければならない。その中で、金持ちの地主が殺害された事件が発生。新生姫川班の一癖も二癖も見えるメンバーと何故か姫川あるところに必ず現れる井岡とコンビをくみ、事件の解決にいたる。
結末まで読むと少し切ないストーリー。人が人を守りたい為に発生してしまった事件だ。
落としの玲子
少し笑ってしまう物語。今泉が玲子の沸点に触れてしまい、居酒屋で問い詰められしどろもどろとまではいかないまでも手に負えない様子は読んでいて面白い。玲子は身内にも容赦ないなぁと思う反面、今泉が言いたい事もわかるにはわかるが、相手が悪い(笑)
夢の中
街中での殺傷事件が発生。無関係の人が巻き込まれて死亡してしまう悲しい結末。犯人も自殺を図るがなんとか一命を取り留める。彼は身元を証明するものが何もなく、正体不明のまま。姫川と小幡は、被害にあった女性に話を聞きに病室を訪れるが、彼女の後ろめたい様子に何か裏があると感じ取る。
闇の色
夢の中の続き。被害者である峰岡の周辺を調査していき、彼女が過去に生活していたアパートに行き着く。今はもう使われていない廃れたアパートに残る事実を見つけ出し、未だ招待がわからない犯人と峰岡の過去が暴き出される。あまりにも残酷なストーリーで誰も救われないだろう悲しい結末。
ラスト、姫川班に過去のチームから誰が復活するのか、彼が復活してチームがどねように変わるのか。続編が楽しみだ。 -
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姫川玲子シリーズ第10作。
前巻で魚住久江の合流が予告されてから、「ドルチェ」も「ドンナビアンカ」も読んで、この本が文庫になるのを待ってました。
『民家で男性の死体が発見された。証拠は徹底的に隠滅され、捜査の糸口はない。謎に包まれた事件に、捜査一課主任・姫川玲子と、姫川班新入りのベテラン・魚住久江が挑む!』ってお話。
二人と犯人(?)の視点で進む話は、複雑な構図をうまく捌いてサクサクと読める。玲子をはじめとしたお馴染みのメンバーに対する久江の視点がなかなか鋭くて面白い。
玲子と久江、もしや個性がぶつかりやり合うかと思っていたが、いやいや、どちらも相手に対するリスペクトを持って互いに良い影響を与えながら捜査が進む様子がgood。
玲子の直感的圧倒的な捜査能力(今回も遺憾なく発揮されたが)の危なっかしさが久江の存在によって薄まって、「姫川玲子シリーズ」と言いながら、終わってみれば、久江が中心の話だったという印象。
佐田さんのことを思い出した玲子がどう変化していくのか、二人の相乗効果がどのように発揮されていくのか、まだまだ続きが楽しみ。
朝日新聞やら慰安婦問題やら、作者さんの言いたいことが分かり易く表に出てくるところは以前からもそうだが、ちょっと疲れる。 -
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誉田哲也さんにこういった作品のイメージがなく、ちょっと意外に思いながら手に取りました。泥臭くも爽やかなお仕事小説でありながら、日本の農業の問題提起もされていて、読み応えありました。
無気力で鈍臭くて要領悪くてマイナス思考(言い過ぎ)な、今どきの若者っぽい梢恵ちゃんに勝手ながらシンパシーを抱き、事務からいきなり現場に放り出されて文字通り泥臭く働くことになる展開にこちらも不安を覚えつつ……
出会った人たちと与えられた仕事に向き合い、その中で確かな自分の居場所を見つけて、農業やエネルギーの問題、自分自身や社長達との関わり方も変わっていく姿が素敵でした。見習いたい。
浅学にして、食料自給率はカロリーベースなので当てにならないという話を知らず生きていました。
農業、エネルギー、自然災害。私は知らないことばかり、知ろうともしていなかったことばかりだなと痛感しました。 -
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ブルーマーダー
姫川玲子シリーズ六作目。
まとめて読むとかなり面白いが、組織図が欲しい(笑)
今回はヤクザの親分が殺害され、半グレ集団や中国系のマフィアの様な連中も次々と消されていく。
冒頭では犯人は得体の知れない人物で、聞いた事がない様な武器をつかい、人をぐちゃぐちゃにして椅子の様に丸めてしまう。余りの恐怖にヤクザからも恐れられ、ヤクザや半グレの活動量が小さくなるほど。
前作にも登場していた下井さんが今作のキーマンとして再登場。警察とヤクザの関係、立場わ全く正反対に見えるが、組織や個人の野心は似ている部分があると痛感。下井の刑事としての生き様というか、彼らが生きた時代を証明している様な活躍がある。
玲子はインビジブルレインの事件により捜査一課から池袋署へ移動しており、今回は池袋周辺を舞台にしている。以前の仲間たちとの関係や、菊田との再会など初期からシリーズを読んでいるとわかる人間模様の面白さを感じつつ、菊田については衝撃の事実が発覚し、彼の上司でなくても彼の首を絞めてやりたいと思う(笑)
ブルーマーダーという見えない恐怖感が中々序盤には読み取れないが、女性外国人が、日本は怖いところ、そして「ブルーマーダー」の名前を打ち明けてから一気に物語がすすむ。たくさんの人間が残酷に凄惨に殺害されているが描写が少なく、もっと読者が読みたくなくなるくらいにグロテスクな表現でも良かったように思うが淡々と殺人は進んでしまう。今先ではブルーマーダーの異常性、残虐さがストーリー上の見どころだったのでそのくらいやってもよかったと思う。
犯人の孤独性もあるが、仲間が増え、ブルーマーダー自体ももしかすると変化があったのかも知れない。特におやっさんとの関係は、恐怖によるものだけではなく何処か信頼感も感じられた。
今作では玲子の関わる人達も変化していて、彼女を認めてくれる人達もだいぶ増えている。ガンテツは相変わらずだが、玲子がかれの扱いに慣れてきたせいか、少しではあるがガンテツも玲子と嫌味なく話す場面も出てきた(一割程度)
終盤のガンテツの活躍は見事だし、玲子の緊迫したシーンは手に汗を握る。メタ的に主人公が死ぬことは無いと思うが、大切な仲間がまた犠牲になってしまうのではとドキドキした。玲子が自分の弱さを曝け出し犯人と対峙しているシーンや、その後、事件収束後の展開を読みつつ、玲子には幸せになって欲しいなぁ等と考えているところに、まさかの井岡から電話のシーン。作者に完全に思考を読まれたと苦笑いしてしまった。 -
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感染遊戯
姫川玲子シリーズ五作目。玲子の活躍というよりもガンテツが中心のスピンオフ。姫川のもと部下だった葉山、そして以前短編で登場した倉田を主人公にした短篇から、最終的に大きな事件の核心に集約していく。ガンテツ、倉田、葉山目線があるため、彼らの深掘りがされており、より感情移入ができる様になる。
それぞれ短篇が一話完結になっているが、過去、現在がつながり、現在発生している元官僚殺しに集役する。一見、其々の事件の犯人は独立しており、共通点も見出せないが、とあるミッシングリンクをきっかけに真相が発覚していく。
それぞれの事件は復讐や正義を掲げている犯人や登場人物達が描かれるが、一様に正義とはなにか、悪とはどういった事かを考えさせられる。
倉田の事件について、玲子は必ず彼の息子を守ると言っていたが死んでしまう。玲子は倉田を疑っているが、読者は真相を知っている。倉田の現在の行動規範や、ガンテツと出会ったことによる変化とこれからの登場は楽しみであり、ダークヒーローたり得るのかが実物である。葉山についても、玲子の元を離れたが、チームメンバーとは交流もあり、またガンテツにまで気にいられている様子で、今後も更に活躍しそうだ。
発表当時ののネット環境やリテラシー、そして何者かわからない恐ろしさは懐かしいと思う反面、今の時代に読むと少し大袈裟に、滑稽に見えてしまう。
最後のガンテツと玲子のやりとりがとても面白い。ガンテツも疲れる事があるんだなぁと思いつつ、おそらくわざわざそんな時に電話する玲子もさすがだし、玲子の口喧嘩もガンテツと遜色なくなってきたなぁと愉快に思ってしまった。 -
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警視庁捜査一課・姫川玲子を主人公に、本編では描ききれない事件や過去のエピソードを収めた全7編の短編集。
東京:若手時代の玲子が事件に挑む一編。
過ぎた正義:強い正義感を持つ元警察官と、相次ぐ不審死をめぐる物語。
右では殴らない:薬物が絡む男性の連続変死を追う中、玲子が一人の女子高生と対峙する。
シンメトリー:多数の犠牲者を出した列車事故を背景に、復讐と司法が交錯する表題作。
左だけ見た場合:不可解な死と謎めいた手がかりを、玲子が独特の視点で追う。
悪しき実:男性の死を通報した後に姿を消した女性と、その背景をめぐる物語。
手紙:若き日の玲子が捜査に挑む一編。
短編集だからこそ、長編の本編では流れを止めてしまいそうな細かな人物像や出来事まで知ることができたのが楽しかった。そうした断片が積み重なることで、姫川玲子だけでなく、その周囲まで少しずつ輪郭が増していく。シリーズの世界が深まっていく感覚がうれしい。
中でも好きだったのが「右では殴らない」。相手が女子高生でも一切手加減せず、徹底的にやり込めてしまうあたりに、玲子の負けん気の強さと容赦のなさがよく表れていて、実に彼女らしい。
表題作「シンメトリー」も印象深い。短編で終わるのが惜しいほど題材に厚みがあり、長編としてもっと掘り下げて読んでみたくなった。特に印象に残ったのが、なぜ玲子がその場に現れたのかを語る場面。犯人に共感したのではなく、その心理を自分の中でなぞり、自分ならどこへ向かうかを追った結果としてそこに辿り着く。そんな玲子独特の捜査感覚と、それを語るセリフの格好よさが際立っていた。
一方で、短編集という性格上、姫川側、犯人側、周囲の人物たちも含めて、感情が大きく揺れ動くまでの積み重ねはどうしても少ない。感情や背景が重なり、散らばっていた点が最後に一本の線へつながっていく醍醐味は、やはり長編ならではだと思う。
ただ、どちらが優れているということではない。短編には、一つのエピソードを切り取る面白さがあり、本編では拾いきれない人物や出来事にも光を当てられる。これだけの短編だけで一冊が成立するほど、このシリーズの人物や世界が細部まで作り込まれていることも感じられた。長編と短編、どちらが欠けても寂しい。
目次にも、ちょっとしたお楽しみがある。
長編とは違う角度から姫川玲子の世界を楽しめた一冊。シリーズへの理解がまた一段深まり、次作への期待も一層高まった。 -
Posted by ブクログ
インビジブルレイン
姫川玲子シリーズ四作目。
とあるヤクザの構成員の殺人事件を皮切りに過去に起きた女性の殺人事件が動き出す。
物語の進み方が面白く、警察側である玲子の視点、ヤクザ側である牧田の視点、そして謎の人物である柳井の視点で構成されており、玲子と牧田はそれぞれの目線からお互いの描写、感情がわかる様に表現される。
玲子の心が揺れ動く場面、悪い事だと理解していても牧田に引かれていく心境であったり、牧田側でも警察である捜査員の女に焦がれていく様は妙に生々しい部分があり、今作の結末に大きく余韻を残す。
今までは曲者揃いであった捜査一課だが、今回のメンバーはかっこいい人達ばかり。姫川班の活躍は限られているが、上司である今泉や新しく登場した下井、そして相変わらず下品なガンテツも全てがチームとしてかっこよく描かれる。保身に走る官僚を尻目に真実に向き合う様がとても良かった。
今回、事件の部分については捻りが少なく、中盤以降のチグハグな具合の意味が結末でわかるが、何故そうなっていたのかは途中から推理できてしまう。ただ、物語がどうしても玲子、牧田に主軸を置いている為、トリックやどんでん返しの部分が少し物足りない。柳井目線は告白メモ程度の描写が多いが、中盤以降、もっと描写されれば、彼の発言の違和感に読者が気付き、更に作品を楽しめた様に思う。
玲子は感情的な部分を持ち合わせているが、今回は制御出来ないくらいに内面的な部分が出ている様に思う。本人は「裏切り」と言ってしまっているが、人間の本質的な感情であり、彼女の想いがどの様に昇華されていくのかも読み応えがあった。真犯人は誰かという部分が結果あっさりしてしまったが、群像劇的な構成に魅力を感じた作品だった。