誉田哲也のレビュー一覧
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シンメトリー
姫川玲子シリーズ三作目。七編納めた短編集。
前編通して思っている以上に玲子は人間臭いんだなぁと実感してしまう。
東京
玲子がまだ二十五歳、品川署の強行犯捜査係にいた頃の話。とある学校で起きた女子高生がベランダから転落した事件。そして同じ係のデカ長である木暮。彼の人となりを通じ、合わせて若かりし玲子が描かれる。犯人が誰かというミステリ的な要素は当然ありながら、未成年である学生達が何を隠蔽し、企んでいるのか、それに対して玲子や木暮はどう対処するのか。最後、木暮の心の叫びが印象的であり、誰かを救うとはどういう事かを見せつけられた物語だ。
過ぎた正義
ある意味で探偵小説的な面白さがある。
玲子は何故、少年院に赴き、休日に時間を潰すのか。過去に事件を起こした未成年が次々と亡くなる。司法解剖含め事件性はないと判断されるが、玲子は何故か納得せず、当時、事件を担当していた二人の刑事を尋ねる。(相対する相手に対しての玲子の辛辣な評価が面白い)一人は既に警察を退職していて、原因は息子が殺人を犯してしまったからだと聞く。余りにも衝撃的な展開とダークヒーローをテーマにした様な面白い切口。玲子の警察官としての生き様を表した作品だ。
右では殴らない
未成年犯罪者に対する玲子の対応が意外。玲子の勝気な部分や未成年に向けてのやるせない怒りの様なものがありありと表示されている。子供に対して口喧嘩も負けない様子はさすが玲子と思いつつ、最後のオチについてもいかにも彼女らしい結末である。
未確認のドラックが事件全体に関わっており、発生の経緯についても社会的な問題を取り上げた様な内容である。シリーズ通して読んでいるが、一番玲子の人柄がわかる様な作品だ。
シンメトリー
何が正義で何が悪か。100人以上の死傷者を出した列車事故の被害者である駅員が、飲酒運転で事故の原因になった男に復讐する物語。男は死んで当たり前の様に思えるが、駅員自体もどこか陰があり、事故以降闇が深くなってしまった様だ。
玲子の気付き、駅員までたどり着いたプロセスはわからないが、最後、駅員の発言から彼が犯人であると特定する能力はさすがだ。
タイトルのシンメトリーの意味は、駅員の歪んだ復讐心が反映されたかの様な見事なネーミング。駅員のしたことは間違いかもしれないが彼の行動で救われた人達もいるだろう。
左だけ見た場合
マジシャンが殺害された事件の調査。現場から発見された携帯電話の履歴から玲子は目星をつけ犯人を逮捕する。殺害されたマジシャンはさながら超能力の様なトリックを使っていた。玲子はオカルト等一切信じないリアリストであるが、今回の事件解決に用いられた携帯電話からとある事実が発覚し玲子を驚愕される。
物語の最後に山場を持ってくる、短編としては王道の作品であるが、発覚した事実を鑑みれば彼女でなくとも「超能力」を信じざるを得ないかもしれない。
悪しき実
とあるマンションで住人男性がしんでおり、警察に女性から通報がある。警察が駆けつけると男性の遺体は見つかるが通報者はいない。
後日、姫川が怪しい人物を見つけ出し、彼女は住人男性の殺害を自供するが、玲子は発言に違和感をかんじる。
メロドラマじみた構成になっているが、変な捻りなど入れず真っ直ぐに描かれている為、読みやすく面白い作品だった。
手紙
玲子が過去に担当した事件関係者から手紙を受け取り、会いに行く。舞台は過去にうつり、まだ警部補になる前の玲子の様子が描かれる。のちに大きく関わる様な菊田や日下なども登場、日下はこの時点で彼らしさが満載(笑)。玲子が先輩を上手く撒きながら貪欲に手柄をたてる強かさを見る事ができる。 -
Posted by ブクログ
敏生 メニューの説明とさ、レジ教えてあげて
ダイニングバー「ピグノーズ」店長の張本宗男は稲澤に岸本綾への新人教育を丸投げするっ!
大丈夫 平和台まで有楽町線で行って、あと…歩くから
持田園実は賢太に言う
賢太は いいよ、泊まっていけよ
こんなものだろうと思っていたっ!
賢太は徐若晴(シュルオチン)殺害容疑で星野刑事にたいーほ
神妙にお縄をちょうだいしなさいっ!
賢太、あいつぁいい奴でね 肚ん中はグッチャグチャだったろうにそれでも二人を応援するみたいなさ
ピグノーズの店主張本はせつせつと語る
あんたみたいな下手くそは黙ってな
そこは言わずに勘弁してやる
「武士の情け」というやつさっ!
佐島は私を抱くことで稲澤に勝とうとした
私は佐島に抱かれることで綾と園美に勝とうとした
嘘もたくさんついたっ!
面白かった
おすすめします -
Posted by ブクログ
誉田哲也『姫川玲子』シリーズ第10弾。
ひさしぶりの『姫川玲子』シリーズ。
魚住久江の登場。
楽しみでしかないのだが、ひさしぶりぶりすぎて、過去を忘れている自分が…
人形町の空き家から身元不明の腐乱死体が発見される。
警視庁捜査1課第11係主任・姫川玲子は、姫川班に新たに加わった魚住久江とともに捜査を進める…
捜査中に身元不明の入院患者がおり、その正体が意外な人物であることが…
姫川玲子と魚住久江。
どう化学反応を起こすのか⁇
正反対の2人、動の姫川と静の魚住。どちらかというと男っぽい姫川と女性的な魚住…
うまく回っていきそうな。
突っ走っていく姫川を魚住がうまく抑えてくれそうな。菊田とは違った視点で。
これなんだろうな、今泉が魚住に求めたのは…
姫川は魚住といることで変わっていくんだろう。
『マリスアングル』、『悪意のある視点』。
従軍慰安婦問題を悪意を持った視点で書くとそうなるのか…
週刊誌ならともかく新聞でも…
そんなことは考えたこともなかった。
真実に、自らの視点、切り口を入れたものだと。
普通は加害者への復讐で終わるんだろうが…
それを引き起こした新聞に矛先を向けるなんて。
ちょっとしっくりこない…
『姫川玲子』シリーズはまだまだ続く。
魚住久江を加えて、パワーアップした姫川班のこれからの活躍が楽しみだ。
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『妖の華』『妖の掟』からさらに時代を遡り、紅鈴と欣治の出会いを描く物語。
父親は借金を残して消え、母親は吉原へ売られ、幼い妹を守りながら生きる欣治。 一方の紅鈴は、現代以上に人間を殺すことへの躊躇がなく、圧倒的な力で江戸の世を生きている。
そんな二人が出会い、後の長い長い関係へと繋がっていく。
『妖の掟』まで読んでいるので、欣治が闇神になることも、その二人がその後どうなるのかも知っている。 だから展開そのものよりも「どうやってあの二人になったのか」という答え合わせとして楽しんだ。
その中で一番感情移入したのは吉平。 ただ紅鈴に惚れただけなのに、なんでこんなことになっちまったかな……。
そしてシリーズ4冊を一気に読んで冷静に考えると、根っこにあるのは「不老不死の吸血鬼が人間の血を吸い、圧倒的な力で殺戮していく」という、とてもシンプルで、ある意味では幼稚ともいえる設定。
そこへ人間と妖のドラマ、エロ、グロ、警察、ヤクザ、長い年月を生きる者の孤独や愛情をこれでもかと詰め込んで、ここまでの物語にしてしまう。
やっぱり誉田哲也が好きだな、と思ってシリーズ一気読み終了。 -
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『妖の華』から三年前を描く前日譚。
評価は、『妖の華』を読んでいるからこその★4。
すでに結末を知っている物語なので、新しい事件の行方を追うというよりは答え合わせに近い。 紅鈴と欣治、そこに圭一が加わった三人の生活から、組長三人殺しへと至る過去が描かれていく。
『妖の華』から続けて読むと何より感じたのが、作者の緩急の付け方の変化。 設定も展開も重いのに、紅鈴と欣治は男子中学生みたいなやり取りをするし、圭一もすんなり二人の中に入っていく。 長距離ドライブをしたり、くだらない会話をしたり。そんな一見何でもない場面が無駄に感じずスルッと入ってくる。
そしてタイトルにもなっている「掟」。
闇神のような人外は、そもそも人間の世界で生きていい存在なのか。 そう考える一方で、「ここは人間の世界だ」と思っていること自体、人間が絶対的な存在として根付いた、あるいは根付かせたと錯覚しているだけなのかもしれない。
最後に残ったのは、紅鈴は本当に自ら一人になる必要があったんだろうか、という気持ち。 掟に従って、闇神として仲間たちと暮らす道だってあったんじゃないだろうか。
結末を知っているからこそ何気ない日常が重くなる。 『妖の華』を先に読んでおいてよかったと思える前日譚だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレハードボイルドですね!誰も救われてなくねぇかこれ?
特に一番気の毒なのは園美さんと娘さんだと思います。佐島がハニトラに引っかからなければいつまでも幸せに暮らしましたとさ、となっただろうに。そしたら物語は始まらないのだが。
そして佐島は処罰されるのだろうが、執行猶予はつくのだろうか。まぁ永久に公安にマークされるんだろうな。自業自得。
全体的に思想が強く見えるような作品だった、何せ陰謀論と親和性が高そうな話だ。無条件に信じると現実社会を生きる時に差し障りが出そうなほど。だからこそ、ハードボイルドな雰囲気が強く出るのだが。まぁ現代日本でスパイ物やろうと思えばこうなるよな。
話自体は短編集のように見えて、1話毎に前話の結末がひっくり返される形で、立ち上がりこそ読むのに時間がかかったけど、途中からは最後まで一気に読めた。
しかし、普通園美みたいに浮気相手のご自宅訪問一人でするかね? どんな人間なのか分からないし浮気相手が一人じゃない可能性もあるし、普通は第三者随行して外で会いませんか?
男性の登場人物たちは格好良かったけど女性の登場人物はなんだかな…ってところがあったな。
あと、タイトルはどう解釈するか謎。
佐島が仕事人間で家庭を放置していたから孤独だったけど実は大切さに気付いた、家庭があるからこそ孤独ではなかった、という嘘か。
それともスパイの女の子が孤独を感じていたけどその孤独を隠れ蓑に嘘をついたということなのか。
最後まで分からずであった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ姫川玲子シリーズの10作目。
第1作の映画化もされた『ストロベリーナイト』の刊行が2006年だから、単行本は2003年の刊行であるが、もう20年も続いているのは改めて凄いなと思う。
単に犯罪捜査をトリックも含め描くだけではなく、伏線も回収しつつ、姫川を初めてと捜査する側の人物の感情や犯罪者や被害者の心理描写を丁寧に描くところが飽きさせない人気シリーズにしているのだろう。
本作では姫川の部下であるが先輩刑事の魚住久江が新たに登場する(魚住は、同じ作者の『ドルチェ』等に主役として登場しているのだが、あまり記憶に残っていない)。
忘れられない過去とトラウマによって、元上司の今泉をして危険な存在と言わしめた姫川を、この新登場人物が救うことになるのが、10作目のエポックとなっている。シリーズの節目になる作と後書きにあるのはこのことを意味している。
突っ走って傷つく姫川を魚住がどうサポートしていくのか、次作以降の新しい展開の予兆となる作品である。