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Posted by ブクログ
警視庁捜査一課・姫川玲子を主人公に、本編では描ききれない事件や過去のエピソードを収めた全7編の短編集。
東京:若手時代の玲子が事件に挑む一編。
過ぎた正義:強い正義感を持つ元警察官と、相次ぐ不審死をめぐる物語。
右では殴らない:薬物が絡む男性の連続変死を追う中、玲子が一人の女子高生と対峙する。
シンメトリー:多数の犠牲者を出した列車事故を背景に、復讐と司法が交錯する表題作。
左だけ見た場合:不可解な死と謎めいた手がかりを、玲子が独特の視点で追う。
悪しき実:男性の死を通報した後に姿を消した女性と、その背景をめぐる物語。
手紙:若き日の玲子が捜査に挑む一編。
短編集だからこそ、長編の本編では流れを止めてしまいそうな細かな人物像や出来事まで知ることができたのが楽しかった。そうした断片が積み重なることで、姫川玲子だけでなく、その周囲まで少しずつ輪郭が増していく。シリーズの世界が深まっていく感覚がうれしい。
中でも好きだったのが「右では殴らない」。相手が女子高生でも一切手加減せず、徹底的にやり込めてしまうあたりに、玲子の負けん気の強さと容赦のなさがよく表れていて、実に彼女らしい。
表題作「シンメトリー」も印象深い。短編で終わるのが惜しいほど題材に厚みがあり、長編としてもっと掘り下げて読んでみたくなった。特に印象に残ったのが、なぜ玲子がその場に現れたのかを語る場面。犯人に共感したのではなく、その心理を自分の中でなぞり、自分ならどこへ向かうかを追った結果としてそこに辿り着く。そんな玲子独特の捜査感覚と、それを語るセリフの格好よさが際立っていた。
一方で、短編集という性格上、姫川側、犯人側、周囲の人物たちも含めて、感情が大きく揺れ動くまでの積み重ねはどうしても少ない。感情や背景が重なり、散らばっていた点が最後に一本の線へつながっていく醍醐味は、やはり長編ならではだと思う。
ただ、どちらが優れているということではない。短編には、一つのエピソードを切り取る面白さがあり、本編では拾いきれない人物や出来事にも光を当てられる。これだけの短編だけで一冊が成立するほど、このシリーズの人物や世界が細部まで作り込まれていることも感じられた。長編と短編、どちらが欠けても寂しい。
目次にも、ちょっとしたお楽しみがある。
長編とは違う角度から姫川玲子の世界を楽しめた一冊。シリーズへの理解がまた一段深まり、次作への期待も一層高まった。
Posted by ブクログ
シンメトリー
姫川玲子シリーズ三作目。七編納めた短編集。
前編通して思っている以上に玲子は人間臭いんだなぁと実感してしまう。
東京
玲子がまだ二十五歳、品川署の強行犯捜査係にいた頃の話。とある学校で起きた女子高生がベランダから転落した事件。そして同じ係のデカ長である木暮。彼の人となりを通じ、合わせて若かりし玲子が描かれる。犯人が誰かというミステリ的な要素は当然ありながら、未成年である学生達が何を隠蔽し、企んでいるのか、それに対して玲子や木暮はどう対処するのか。最後、木暮の心の叫びが印象的であり、誰かを救うとはどういう事かを見せつけられた物語だ。
過ぎた正義
ある意味で探偵小説的な面白さがある。
玲子は何故、少年院に赴き、休日に時間を潰すのか。過去に事件を起こした未成年が次々と亡くなる。司法解剖含め事件性はないと判断されるが、玲子は何故か納得せず、当時、事件を担当していた二人の刑事を尋ねる。(相対する相手に対しての玲子の辛辣な評価が面白い)一人は既に警察を退職していて、原因は息子が殺人を犯してしまったからだと聞く。余りにも衝撃的な展開とダークヒーローをテーマにした様な面白い切口。玲子の警察官としての生き様を表した作品だ。
右では殴らない
未成年犯罪者に対する玲子の対応が意外。玲子の勝気な部分や未成年に向けてのやるせない怒りの様なものがありありと表示されている。子供に対して口喧嘩も負けない様子はさすが玲子と思いつつ、最後のオチについてもいかにも彼女らしい結末である。
未確認のドラックが事件全体に関わっており、発生の経緯についても社会的な問題を取り上げた様な内容である。シリーズ通して読んでいるが、一番玲子の人柄がわかる様な作品だ。
シンメトリー
何が正義で何が悪か。100人以上の死傷者を出した列車事故の被害者である駅員が、飲酒運転で事故の原因になった男に復讐する物語。男は死んで当たり前の様に思えるが、駅員自体もどこか陰があり、事故以降闇が深くなってしまった様だ。
玲子の気付き、駅員までたどり着いたプロセスはわからないが、最後、駅員の発言から彼が犯人であると特定する能力はさすがだ。
タイトルのシンメトリーの意味は、駅員の歪んだ復讐心が反映されたかの様な見事なネーミング。駅員のしたことは間違いかもしれないが彼の行動で救われた人達もいるだろう。
左だけ見た場合
マジシャンが殺害された事件の調査。現場から発見された携帯電話の履歴から玲子は目星をつけ犯人を逮捕する。殺害されたマジシャンはさながら超能力の様なトリックを使っていた。玲子はオカルト等一切信じないリアリストであるが、今回の事件解決に用いられた携帯電話からとある事実が発覚し玲子を驚愕される。
物語の最後に山場を持ってくる、短編としては王道の作品であるが、発覚した事実を鑑みれば彼女でなくとも「超能力」を信じざるを得ないかもしれない。
悪しき実
とあるマンションで住人男性がしんでおり、警察に女性から通報がある。警察が駆けつけると男性の遺体は見つかるが通報者はいない。
後日、姫川が怪しい人物を見つけ出し、彼女は住人男性の殺害を自供するが、玲子は発言に違和感をかんじる。
メロドラマじみた構成になっているが、変な捻りなど入れず真っ直ぐに描かれている為、読みやすく面白い作品だった。
手紙
玲子が過去に担当した事件関係者から手紙を受け取り、会いに行く。舞台は過去にうつり、まだ警部補になる前の玲子の様子が描かれる。のちに大きく関わる様な菊田や日下なども登場、日下はこの時点で彼らしさが満載(笑)。玲子が先輩を上手く撒きながら貪欲に手柄をたてる強かさを見る事ができる。
Posted by ブクログ
うっかり『感染遊戯』を読んでしまい、「倉田を知るにはこっちが先でしょ」と思い直して読み始めたシリーズ第3弾。やはりこっちが先だった。
短編集で全体的にあっさりしていて、いつもの猟奇的な部分も少ない。
前作で「姫川玲子にカリスマ性がない」と感じていたのが、本作ではガラッと変わって、まるで刑事コロンボのような執拗さ。狙った犯人は絶対に逃さないという、犯人側からしたら鬱陶しいほどの付き纏いを見せる。
洞察力も増したようで、その分「可愛げ」は無くなったかな。
しかし、今回は玲子が怒りをハッキリ表したり、罪を犯してしまった者に情を示したりと、人間くさい面が多数あった。
まさに「人間・姫川玲子」を堪能する作品だった。
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