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Posted by ブクログ
多摩川土手に放置された車から、血塗れの左手首が発見される。近くの工務店には大量の血痕。しかし、肝心の遺体は見つからない。姫川玲子ら捜査一課が、死体なき殺人事件の真相を追う。
前作『ストロベリーナイト』とは、まるで真逆と言っていいほど異なる物語だった。
エンターテインメント性では前作の方が強いと思う。けれど、どちらが上ということではない。本作は、前作にもあった人間の内面を描く部分をさらに深く掘り下げた、重厚な人間ドラマだった。この振り幅こそが、シリーズ2作目にして姫川玲子シリーズの幅と深みを大きく広げている。
特に考えさせられたのは、父と子、家族、そして「守る」ということ。
誰にでも守りたいものがある。自分自身、家族、所属する組織、価値観や信念。しかも、それは一つとは限らない。
守るものができる。
それは人を強くする一方で、時に弱さにもなる。
何かを守ろうとする思いが生きる支えになることもあれば、その思いに縛られ、判断を誤ることもある。そして、あるものを守ろうとした結果、別の何かを傷つけてしまうことさえある。
家族を守る正しさ、組織を守る正しさ、信念を守る正しさ。それぞれの立場にそれぞれの正しさがあるから、単純な善悪では割り切れない。守りたい気持ちは理解できる。それでも、選んだ手段は正しかったのか。では、どうすればよかったのか。
読み終えても答えは出なかった。
その一方で、警察小説としての面白さもしっかりある。捜査官それぞれで捜査方法は違う。地道に証拠を積み重ね、それぞれのやり方、それぞれの執念で真相へ迫っていく。ばらばらに見えた点が少しずつ結びつき、一つの線となって真相へ収束していく過程には強く引き込まれた。人間ドラマだけでなく、「この事件の裏に何があるのか」を追うミステリーとしての面白さも最後まで失われない。
前作では姫川との対比もあって、冷静沈着で、感情より事実を積み重ねていく日下は、どこか捜査マシンのようにも見えた。しかし、彼にも守るものがあると分かった途端、一気に人間味が増した。シリーズものだからこそ味わえる、人物の見え方が変わっていく面白さでもある。
真相が明らかになれば事件は終わる。しかし、失われたものまで元に戻るわけではない。その「解決しても救われきらない」感覚が、ずっしりと残る。
守りたいものがあるから、人は強くなれる。
けれど、その思いが強くなるほど、それ自体が自分を縛る「檻」にもなってしまう。
もしかすると、それこそが『ソウルケイジ』なのかもしれない。
守るものがあり、何かを守ろうとした経験がある人ほど、この物語の選択や迷いを自分自身に引き寄せて考えてしまうのではないかと思う。読み終えてからも「どうすればよかったのか」が残り、タイトルの意味まで考えたくなる。事件の真相だけではなく、その先にある人間の選択まで心に残る、重く、深く、余韻の残る一冊だった。
Posted by ブクログ
ソウルケイジ
姫川玲子シリーズ2作目長編。
河川敷に放置された車の中から血塗れの左手首が発見される。近くの工務店のガレージが血塗れであり、被害者は工務店の主人である事が場判明する。
姫川は「ストロベリーナイト事件」で殉職した部下を思い出しつつ捜査に望む。菊田との関係も曖昧なまま。彼女の弱さ、強さなど、人間的な魅力がさらに増した作品である。
今回も日下といった新しい警部補が登場し、何故か姫川は日下のやり方含め相入れない様相だが、一方日下はロボットの様な人物かと思いきや、家族の問題に葛藤したり、姫川の捜査方法を危うく感じながらも一部認めている部分もあり、彼の魅力も充分に伝わる。
今までの登場人物は相変わらずだが井岡についてはますます存在感をましている(笑)
手首が発見されて以降、中々残りが発見されず、更には被害者、被疑者共に足取りが掴めない。工務店主人の高岡の過去を探る中、とある糸口が見つかり、そこから驚愕の事実が判明して行く。
実は再読になるはずだが詳細は忘れていた。読み進めるうちに思い出しつつ、結末に驚愕はしてしまう。起承転結がとてもはっきりとしていてトリックしかり、どんでん返ししかり最後まで怒涛の如く物語が展開される。前作では愛情を得られなかった人物がおぞましい殺人に関わる様になってしまったが、今作では反面、父親の愛情、想いがどれほど強いかという事を突きつけられる、ある意味感動的な作品だ。
最後、結末としてはあまりにも悲しい結果だが、何故かとても温かい気持ちになる物語だった。
Posted by ブクログ
以前読んだ本を再読。なんとなく読みたくなって。
父性をフューチャーした話。父性、いまだとあまり言わないのかもしれない。けど母性とはまた違う尊いものであるなあと思う。子どものためなら親はどんなことでもする。それが正しいのかどうかとは一概に言えないけれど、美しいものであるのは確か。それにどんなことでもするとはいえここまでできるのは並大抵ではないと思う。ほんとうに強い。けど、子どもからしたらそんなことしないでこれからも一緒に生きてほしかっただろうなとも思うから苦しい。蟻地獄を抜け出すにこれしかなかったんだろうか。ほかの道もあったと思いたいよ。
最新まで読んでから戻ってこの巻を読むとみんな若く見える。菊田と姫川さんの関係って改めて読んでもすげーな。日下さんの捜査の方法が正しいと思うしそうすべきだと思う。姫川さんとても生き急いでて見ててつらいな…若さゆえか…。
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