見事に一本決められた一冊。
主人公の磯山香織と西荻早苗。この二人の正反対な「武士道」がとにかく面白い。
宮本武蔵を心の師とあおぎ、愛読書は『五輪書』。香織の武士道は「斬るか斬られるか」の真剣勝負。それはもはやスポーツとしての剣道ではなく、武士そのものだ。この時代錯誤な感じが私は好きだ。
一方の早苗は、勝ち負けにこだわらない「ゆるふわ系」のエンジョイ派。水と油のような二人が、ある試合をきっかけに出会い、ぶつかりながら成長していく姿が最高に熱かった。
特に試合のシーンは臨場感が凄い。香織のヒリつくような気迫、お互いの息づかい、一瞬の技の読み合い……。鋭い一撃とそれを受け流す独特のリズムが、まるで映像のように浮かび、一気に物語へ引き込まれる。
王道の展開だけど、二人が切磋琢磨して最高のライバルへと変わっていく過程には、本を置く間もないほどワクワク感が止まらない。
単なる部活モノではなく、壁にぶつかり、自分を見つめ直して人間として成長していく。その際に語られる師匠や父の言葉もまた、名言ばかりだ。
なかでも心に刺さったのは、早苗の父の言葉だ。
「好きなものにめぐり合えない人生の方が、もっと悲しいし、つらいよ。だから、お前は好きなものに出会えたことを、もっと喜ばなくちゃ。」
何かひとつに打ち込んでいる姿は美しい。
好きなものに時間も体力も、全霊を傾けられるのは学生時代の特権だよね。社会に出て、家庭を持つとそれがどれほど贅沢なことか痛感する……。
解説にもあった通り、本書は「ベタベタな青春物語」だ。だけど、もう二度と学生時代に戻れない大人には、そのベタさが眩しくて、たまらなく羨ましい。
続刊では二人がどんな「自分だけの武士道」を見つけていくのか楽しみだ。とても素晴らしいシリーズに出会えた。