誉田哲也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
見事に一本決められた一冊。
主人公の磯山香織と西荻早苗。この二人の正反対な「武士道」がとにかく面白い。
宮本武蔵を心の師とあおぎ、愛読書は『五輪書』。香織の武士道は「斬るか斬られるか」の真剣勝負。それはもはやスポーツとしての剣道ではなく、武士そのものだ。この時代錯誤な感じが私は好きだ。
一方の早苗は、勝ち負けにこだわらない「ゆるふわ系」のエンジョイ派。水と油のような二人が、ある試合をきっかけに出会い、ぶつかりながら成長していく姿が最高に熱かった。
特に試合のシーンは臨場感が凄い。香織のヒリつくような気迫、お互いの息づかい、一瞬の技の読み合い……。鋭い一撃とそれを受け流す独特のリズムが、まるで映像のように浮かび、一気に物語へ引き込まれる。
王道の展開だけど、二人が切磋琢磨して最高のライバルへと変わっていく過程には、本を置く間もないほどワクワク感が止まらない。
単なる部活モノではなく、壁にぶつかり、自分を見つめ直して人間として成長していく。その際に語られる師匠や父の言葉もまた、名言ばかりだ。
なかでも心に刺さったのは、早苗の父の言葉だ。
「好きなものにめぐり合えない人生の方が、もっと悲しいし、つらいよ。だから、お前は好きなものに出会えたことを、もっと喜ばなくちゃ。」
何かひとつに打ち込んでいる姿は美しい。
好きなものに時間も体力も、全霊を傾けられるのは学生時代の特権だよね。社会に出て、家庭を持つとそれがどれほど贅沢なことか痛感する……。
解説にもあった通り、本書は「ベタベタな青春物語」だ。だけど、もう二度と学生時代に戻れない大人には、そのベタさが眩しくて、たまらなく羨ましい。
続刊では二人がどんな「自分だけの武士道」を見つけていくのか楽しみだ。とても素晴らしいシリーズに出会えた。
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Posted by ブクログ
初めての誉田哲也作品でしたが、その圧倒的なスピード感に引き込まれました。血生臭く、時にグロテスクでありながら、極上のミステリーとしても楽しめる一冊です。
物語は、連続組長殺害事件を追う警察の視点から始まります。それと並行して描かれるのは、極道の恋人に手を出して窮地に陥った青年・ヨシキと、彼を救った妖艶な美女・紅鈴の運命。二つの軸が交差するなかで、紅鈴が「闇神(吸血鬼)」という呪われた血を引く一族であることが明かされていきます。
闇神としての奇妙な運命に翻弄されるヨシキと、一族の掟を頑なに守り、彼への「血分け」を拒み続ける紅鈴。二人の心の交流は、バイオレンス・ホラーの枠を超え、人間と吸血鬼の間に芽生えた切なくも胸を打つ純愛物語として心に残りました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ磯山香織は、消化試合だと思って挑んだ中学最後の大会で、無名選手の西荻早苗に負けてしまう。その後、敗北の悔しさを胸に、早苗のいる東松学園高校に進学を決めた。予想に反し、早苗は、勝利に拘らないお気楽な女の子だった。正反対の二人は、青春を剣道に懸ける。
磯山香織がすっごく嫌い。
ストイックに勝利に執着するという言葉では生ぬるい。もはや凶暴な獣である。いつも刺々しい態度で、部の雰囲気を悪くするので、明確に好きじゃない。剣道をやらない母を素人と呼んで見下している姿勢なんて本当に子供っぽい。身の回りの世話を母親にしてもらっておいて、剣道に打ち込める環境を与えてもらっていることには気が付かない。子供由来の傲慢さが鼻についた。
剣道初心者に優しくない。
私は、剣道の細かいルールはよく分からない。試合もほとんど目にしたことがないのもあって、文章で読んでも試合展開はよく分からなかった。アニメやドラマで見たらちょっと違うのかも。お仕事小説や部活小説は、知らない世界を垣間見せてくれるのが楽しくてよく読むジャンルだ。どれもエンタメに寄せるために少々ドラマチックな展開が盛り込んであることが多い。それ故に、私のような初心者でも楽しく読めるのだが、本作にはその派手なドラマチックさはない。現実の剣道は、このように地味なものなのかもしれないし、香織の協調性の無さが、余計に団体戦の熱量を削いで、面白くなくしているのかもしれない。
香織が人間的な成長をを遂げて物語は終わる。
勝手に負けて、勝手にガルガルして、勝手に丸くなって…香織の独り相撲に終始する。そしてその成長した姿で何かを成すのは、おそらく続編や続々編なのだろう。香織の成長に伴う不快感のみを味わわされて、気持ちのいい少女の織りなす物語には至れなくて消化不良感がある。それを取り返すためにも、続編は読んでみたいと思う。