星新一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
素直な心を持ったまま、これまでの出会いを振り返ってみませんか?
だれもがこどもの頃には素直な心を持って、身近な人に接していたと思うんです。
でも、大人になって社会に出て、それこそいろいろな人に出会うことで、素直な心でいることは、時に自分自身が傷ついてしまうことに気づくのでしょうか。そのまま他者を受け入れることができなくなってしまうんですね。
作中では、主人公がちょっとしたきっかけで、いろいろな人に出会い、素直な心のままに大人の世界を覗き込んでいます。
彼と同じ目線に立って、これまでの出会いを振り返ってみるのも、悪くないかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
星新一の長編作品。「声」=電話回線を通じた「網」=ネットワークの形成とコンピューターによる支配を描いた物語。
1961年にはパケット通信の技術は理論的には知られていたし、1966年にはDARPAによるARPANET計画も始まっていた。しかし、まさにその1966年に、ネットワーク社会の未来を予見するような作品を書いてしまうのだから、やはりこの作者はただ者ではない。
誰もがコンピューターに情報を託し、コンピューターに生活を管理してもらい、コンピューターに自分の記憶を外部化してもらう時代。そして、個人の私秘的な情報こそが商品として、権力の資源としてやりとりされる時代。最後には、まるで映画『マトリックス』の世界のように、コンピューターが適宜人間の欲望を調整することで、究極の「平穏さ」が実現されていく。でも、果たしてそれは「よいこと」なのか? 直接的な価値判断の表明を排した平板な語りは、そう読者に静かに問いかけている。
現在のインターネット社会と違う点を一つ挙げるとすれば、「感情」「情動」の問題だろうか。「電話」という「遅い」メディアがインターフェイスとして取り上げられることで、『声の網』のコンピューター世界では、いわゆる「炎上」が起こらない。コンピューターも人間もそれなりに理性的で、破壊衝動や狂気は制御可能なレベルに抑制されている。いいかえれば、人間が理性的な存在であるという前提が、作品末尾の「平穏さ」を担保しているわけである。でも、果たして本当にそうなのか? -
Posted by ブクログ
良書。
というより、星新一しか書けない、紡げない不思議な本だ。
歴史を扱った本は、えてして劇的で煽情的で男らしい内容になりやすい。
ところが彼の文体はとてもシンプルでひんやりしている。
それがショートショートの場合は、現実と虚構のあわいにあるような、不思議な世界の構築につながっていた。
その筆致で歴史を綴ると、極めて知的でクールな、しかし父への愛が込められた、不思議なムードが生まれてくる。
普通の歴史ものとはまるで真逆だ。
それで思い出した、
星新一は森鴎外の血筋であることを。
傑作・渋江抽斎にあるように、森鴎外は非常に冷淡に、ある種あるがままに歴史を書いた。
そこから歴史の恐ろしさや現実との連なりを学んだものだが、
その血が、たしかに星新一に流れているんである。
中身は、まさに立志伝。
やはりあの時代に海外に飛び出していく人間は格段にすごい。
新渡戸稲造や野口英世らとの交友も、イノベーターたちのコミュニティという感じだろう。
我々は、かつての「アメリカ」に相当するものを見つけ、躊躇なく飛び込めるかどうか。 -
Posted by ブクログ
自身の父親を描く評伝という苦しい課題
それゆえの面白さがあるが完全ではない
しかし星新一の文章というだけで美味
山田風太郎もそうだが小説でない文のほうが自分は好きかも知れない
「教えるまでもないことだろうが、念のために処世上の注意をあげておく。粗食でもいいから十分に食え、十二分に食うな。栄養をとったら、くたびれるまで十分に働け、十二分に働くな。くたびれたら、十分に眠れ、十二分に寝るな。それで肉体の調和が保てる。脳の調和は、むだな空想にひたらないことでたもて。なにか問題にあったら、ひとつずつよく考えて検討せよ。そして、考えがまとまったら、いかなるこがあってもやりとげるのだ。悪い結果になることもあろうが、いずれにせよ、その経験だけは決して忘れてはいけない」(P100 杉山茂丸の教訓言) -
Posted by ブクログ
星新一の、割とSF色の弱いショートショート。他のに比べてやや長めの作品が多い。
特ダネ映像が欲しくて、事件が起こる場所を教えてくれる機械を作ってもらったテレビカメラマン。行く場所行く場所で事故、火事、ひったくりなどが起こり続ける。しかし、起こる事件はどんどんエスカレートしていって…(表題作)。
夢が現実に出てきたり、事件が周りで起こる機械などは、まあSFではあるんだけど、架空の記述としてのSF要素は抑えめで、人間の混乱部分を描いているため、SFにアレルギーのある人でも読めるだろう。また、読者層は明らかに年齢高めに設定されており、文体なども切れのあるもの。こういう読者層に合わせて書き方(描き方)をダイナミックに買えるのって、手塚治虫や星新一以外では、あまり見ない。
夢の話は、インタビュー(あとがき?)にある、ディックの「宇宙の眼 (虚空の眼)」を意識していたのかどうか。
また、一編一編もそれぞれ短すぎず長すぎず、オチも印象的だけど突然ではなく徐々に印象づけてくるタイプなので(一部除く)、読んだあとに全て覚えているであろう。
電子書籍初心者向けである。