星新一のレビュー一覧
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ネタバレショートショートの名手、星新一さんのエッセイ集。書かれたのはショートショート1001篇を書き上げた後とのこと。
自由に定めたテーマを元に、奔放に気の向くままに自分のアイデアや想いを文章に綴っているという感じで、時折、「どう思いますかね」などと読者に呼びかけているようなところもある。文体がすべて口語調ということもあり、まるで本を介して著者と会話しているような錯覚を覚える。
星新一さんは、もう20年以上前に亡くなっているわけだが、こういう「普段の口調」の作品が遺されていると、時間と空間を超えて著者と交歓することができて、本好きとしてはとても楽しい。エッセイであればどんな作品でも著者と話しているような気分になる、というわけでもなくて、この本のように絶妙なタイミングで「私はこう思うんだけど、あなたはどうでしょうかね」というように呼びかけてもらえないと、「著者との対話」は始まらない。そんな筆運びの妙と著者の技巧とを楽しめる本でもある。 -
Posted by ブクログ
本作では正に星新一氏の原点とも云うべき、宇宙や仮想科学趣向のショートショートが満載で、星作品に初めて触れたときの事を思い出せてくれた。
前に読んだ『天国からの道』が玉石混交の作品集であったのに対し、今回は外れが無く、いずれも水準作であるのが特に嬉しい。つまり非常に解りやすいのだ。
いつも夢に出てくる謎の少年の正体を語る表題作。
謎の青い光を放つ宇宙船の謎を追うスペースジュヴナイル「謎の星座」。
催眠術で男を異次元に送る実験を行う「新しい実験」、街中に突然現れた複数の突起物が生えた球体の正体を探る「奇妙な機械」。
自らを宇宙人と語る精神病院での話「病院にて」。
世にはびこるヒズミという得体の知れない物体の話「エフ博士の症状」。
年の離れたカップルを軸に新しい星の探索譚を語る「憎悪の惑星」。
世間を騒がせる真っ暗になる現象の正体の謎を追う「黒い光」。
月に基地を作りに来た先発隊の一部始終を描いた「月の裏側基地第1号」。
火星に突然訪れた宇宙人の正体を探る「謎の宇宙船」。
そして最後は土星探索隊に送った物資が誤ってある星に届くことで起こる騒動を描いた「ピーパ星の騒ぎ」。
どうだろう?
全て初期の星新一氏を髣髴とさせる内容ではないか?
今回は長めの作品が多く、少年が活躍するジュヴナイルとなっている「謎の星座」、「黒い光」などは私が少年ならばわくわくして読んだだろう作品だ。
そして作者特有の、物語を正面から受け止めずに、少し斜めに構えて落とす物語の閉じ方も健在。それが功を奏している表題作は少しジーンと来るし、「憎悪の惑星」のアッケラカンとした物語の結末は正直唖然とした。
「奇妙な機械」は私の星新一原初体験である作品「友好使節」を想起させる。
初めて星作品に触れるのに絶好の作品集であると云える。
しかし、こちらもあの頃からは倍以上の年齢を重ね、またかなりの量の読書をこなしていることもあり、純粋にあの頃のように没入できたかと云えばそうではない。
しかし、一服の精神安定剤になり得る星作品の魅力は十分堪能できた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読後、決していい気分にはなりません。
今は当時より政治腐敗は少ないであろうかとは思いますが、官吏というものは数年ごとに役職が変わるものであり、“多忙のため“引き継ぎもずさんに行われている現状があるかと思います。
その上、本作では、当時の日本の発展に尽力し、新しい薬剤等の自給自足等苦慮した主人公。
それを、政府方とズブズブの関係にある日本の製薬会社にあの手この手で、行政の権力を持って剥奪されていくものです。
主人公の無念さが心に染みてなりません。
国家権力による、1個人への虐待のお話です。
残念ながら下っ端の公務員は上層部の意図を知らされず動きます。
正論をかます主人公に、政府高官はいい顔をしません。
そして主人公に対する悪意が芽生えていきます。
なんともやるせない気持ち。
誠に“日本の発展“を望むのであれば、合理的には主人公の事業を積極的に応援すればいいはず。
やるせないです。 -
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星新一さんといえば、SFのイメージがありますが、本書はそんな星さんの珍しい(?)時代モノ短編集です。
5編が収録されていますが、どの話も展開の絶妙さといいますか、持っていき方が上手くて、皮肉の効いたオチとなっております。
第四話「すずしい夏」は、内容的に結構残酷で、正直、地獄なのですが、展開の仕方が巧みなので、こんなに酷い話をサラっと読ませてしまうというところに不思議と感心してしまった次第です。
個人的には、表題作「城のなかの人」が好きでした。戦国最後の貴公子・豊臣秀頼の生涯が描かれているのですが、秀頼の特殊な育ち方故の繊細さが、淡々とした描写だからこそ伝わってくるものがあって、秀逸だと思いました。