フレドリック・ブラウンの描く12の短編が収録された作品。日本の有名なSF作家である星新一が訳した作品という時点で、面白くないわけがない! と胸を躍らせて読書開始。
キャッチーな話から陰鬱な雰囲気の漂う話まで多種多様で、表題作に連なり、短編集の中には狂気を強く意識した作品が多かった印象です。そして何
...続きを読むよりも、そのキレ味鋭い展開とオチに舌を巻くばかり。
作品の中では『みどりの星へ』『雷獣ヴァヴェリ』『ユーディの原理』辺りが好みでした。
特に『雷獣ヴァヴェリ』は、未知の生物の襲来によって世界から電気が失われていく過程とその後を描いた作品なのですが、人類の強さと電気が失われた世界の美しさを短い物語のなかで上手く表現しているなと感じました。
書物が禁制品とされたディストピアを描くブラッドベリの『華氏451度』と比較してみると、あちらとは対照的に便利だったものが失われてしまった世界にもかかわらず、非常に幸福そうな人々の姿が印象的でした。
訳者であり稀代のSF作家でもある星氏からブラウン氏へのリスペクトをふんだんに感じることができただけでなく、”星新一らしさ”が作品全体から滲み出ており、翻訳小説を読んだことのない人や、苦手意識を持っている人にこそ読んでほしいと思いました。