あらすじ
記憶喪失のふりをしていた男の意外な正体と驚異の顛末が衝撃的な表題作、遠い惑星に不時着した宇宙飛行士の真の望みを描く「みどりの星へ」、手品ショーで出会った少年と悪魔の身に起こる奇跡が世界を救う「おそるべき坊や」、ある事件を境に激変した世界の風景が静かな余韻を残す「電獣ヴァヴェリ」など、意外性と洒脱なオチを追求した奇想短篇の名手による傑作12篇を、ショートショートの神様・星新一の軽妙な訳で贈る。
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Posted by ブクログ
意外性と洒脱なオチを追求したフレドリック・ブラウン×ショートショートの神様、星新一という最高コンビによるSF短編集。12編収録。
最後の最後に想像と違う方向に進む読み心地が癖になる。これは面白い〜!!!
好きな作品は以下5編。
緑色がない星へと不時着した男が救助を待つ「みどりの星へ」
宇宙人に侵略された地球の最後の男が聞くノックの音とは?「ノック」
人類とは?と思わず考え込む「不死鳥への手紙」
→
音は誰も聞いていない時にも存在するか否かを考える「沈黙と叫び」(これは「真っ白な嘘」にも収録されている。
記憶喪失のふりをしていたはずの男は実は……「さあ、気ちがいになりなさい」
カラリ、ザラリと渇いた読み心地が気持ちよく、読み始めたら止まらないブラウンの短編集、好きすぎる〜!!
Posted by ブクログ
題名がおもいっきり放送禁止用語なんですが、翻訳者が星新一だなんて絶版にならない欲しい!
星新一が翻訳したSFに興味をお持ちになりましたら絶版にならないうちに是非お読みください。
『みどりの星へ』
5年前に宇宙船の遭難で未開の惑星に不時着したマックガリーは、以前この惑星に不時着したはずの別の宇宙船を探している。その部品でここから脱出するのだ。
この惑星の動物を相棒に、いや別れた恋人のように連れて話しかける。それがなければ彼は気が狂っていただろう。なんとしても緑の地球に帰るのだ、この惑星にはない緑色に囲まれたい。
そんな彼の前に、救助の宇宙船が現れ…
『ぶっそうなやつら』
異常犯罪者を収容している病院から殺人者が脱走した。たまたま駅の待ち合わせ室で同席したジョーンズ氏とベルフォンテーン氏はお互いに「こいつが脱走した殺人狂に違いない!自分を守らないと!」と、相手に悟られないように武器を隠し持つ。
と、そこへ本物の殺人者が入ってきたのだ。彼は考える。二人くらいなら殺れる。そして銃を出そうとした時…
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二人がお互いを疑うあたりは緊迫感も増して、このままだと酷いことになるかも…と思いながら読んで行ってたのに、その後の展開がコントかーー笑・笑
『おそるべき坊や』
ハービー少年は奇術ショーを楽しみにしていた。今日こそ舞台に上がって助手役を勝ち取るぞ。
ところがその奇術師は本物の悪魔だったのだ。ハービー少年が舞台に上がったときにその正体を表す。
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なんかすっとぼけた面白いお話だったなあ。
アメリカの奇術ショーを楽しみにする少年の話から、いきなりチベットの悪魔封印の話に飛び、そして悪魔奇術師による地球の大ピンチ! この展開の速さがなんともすっとぼけた感じ。
そしてこの悪魔退治のスピード感も楽しい。
しかしこの地球を救ったおそるべき坊やは、それを誰も(自分自身も)記憶しなかったため、いたずらっ子が受ける罰を受けたのでしたとさ。
『電獣ヴァヴァリ』
ラジオの電波に乱れが生じたことから、地球には電気を食う生命体が来たってことが分かる。
地球は電気のない生活に戻る。慣れればそれなりにうまく行く。電話も、電波も、原子力も無くなった。人々は失業もしたけれど団結して蒸気機関車を動かし自転車移動を楽しむ。
これだって静かで美しい世界ではないか。
でもたった一つ、稲妻が懐かしいなあ。
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緊張感あるんだかないんだか(^_^;)
『ノック』
星新一ショートショート集『ノックの音が』はこの冒頭に出ている小話から取っています。
「地球で最後に残った男が、一人で部屋にいると、ノックの音がした」ってやつ。果たして相手は何者なのだ!?
この短篇でウォルターが「地球最後の男」になったのは、地球がザン星人に侵略されたから。ザン星人は地球生物を全滅させる前に、地球生物研究・動物園として動物を一匹(一羽・一頭)ずつ収集した。人間の男として収集されたのがウォルターだというわけ。
物語としてはウォルターが収集された地球生物と、ザン星人の生態の違いに気がついてうまい具合に彼らを追い返す、って流れです。
『ユーディの原理』
友達の科学者チャーリーがなんでも願いを叶う機械を発明した。彼は「ユーディという小人がやってくれるのさ」と説明した。「私」が問い詰めると、その機械を装着した人は自己暗示に掛かって超加速で、自分が言った願いを自分で実行する、のだそうだ。
物語は「それって本当に自分で超加速で動いたの?本当にユーディっていう小人が存在してるんじゃないの?」というような話になります。
でももう確かめようも取り返しようもなくなってます。この二人、凄いものを発明したのかも知れないけど粗忽なんだよなあ。
『シリウス・ゼロ』
「私」は女房と娘のエレン、そして操縦士のジョニーと共に宇宙船で惑星を回っている。ある時地図にない惑星に不時着した。しばらく歩いてみると、地球の生物を元にしたなんともヘンチクリンな生物が歩いている。もう少し行ってみたら表だけの町があり、昔の知り合いのサムがいた。サムは「ここは未公表の惑星で、映画撮影セットを作ってるのさ」と言う。
どうにも説明がつかないような妙な感じ。セットにしても中途半端、そんななかで地球の油虫そっくりの虫だけがとっても現実的すぎるのだ。
『町を求む』
ボスである町の顔役を裏切って取って代わろうとした男が、顔役と話をつけて自分がトップになれる別の町へ移住することになった。
あんたの街はどんなだい?ほお、おれはまさにそんな町を探してるんだ。さっそく行かせてもらうぜ。
『帽子の手品』
若者四人が部屋で喋ったり飲んだり手品を見せたり。最初は仕掛けが分かるようなものだけど、一つだけ説明がつかない手品を見せた。
一人がふという。「別の世界から生命がやってきて、人間の振りをしているって話があるよな…」
『不死鳥への手紙』
ものすごい長寿となってしまった語り手が、何度も経験した地球の文明の発達と崩壊ことや、そこを生き延びている人間のことを語る。
人間は自分の作り上げたものを壊す狂気だからこそ、これほど長く存在してるんだよな。
『沈黙と叫び』
「誰も聞いていない森の奥で木が倒れたら、音がしたことになるのか?」問題で始まります。それから「では耳が遠い人がいたら、音はしたことになるのか?」それから「では、その場にいた人は耳が悪いのか悪くないのかわからないが聞こえていないという場合は、音がしたことになるのか?」
この議論は何のためにしているかというと、ある”死”を招いた男は耳が遠いので無罪になったんだけど、死んだ人の遺族は、本当に彼は耳が遠いのを疑っている。そこでその男に罪をささやき続ける。もしも男に聞こえているなら、そろそろ良心に耐えきれなくなるだろう。(そしてどうやら聞こえてるんじゃないの、っていう仄めかしが…すると自分の罪を何度も何度も聞いている男にもゾッとする)
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殺人方法(これが殺人なら)も、それに対する復讐もなかなかゾッとするお話。
『さあ、気ちがいになりなさい』
出版社勤務のジョージ・バインは編集長に呼ばれ、「ある精神病院で妙なことが起きているとのタレコミがあった。君は精神病患者の振りをして内部調査してくれないか」と言われる。偽る精神病の内容は「ナポレオン妄想がちょうどいいだろう」。
バインはちょっと困った。だって彼は本当にナポレオンなんだ。編集長が自分を騙して精神病院にいれるつもりじゃないだろうな。
考えた末バインは精神病院に潜入する。その晩「さあ、真実を知るのだ」という声に起こされる。
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冒頭はすっとぼけてるんだかなんなんだか。
それが正気だと退院できないけど狂気だとやっぱり退院できないみたいな「なんかのパラドックス」のような論調になり、最後はやたらにスケールが大きい、かと思ったらストンと小さな世界に帰ってきた不思議な感じ。
謎の声が「さあ、気ちがいになるのだ、忘れるために気ちがいになるのだ、いや気ちがいになってもらわなければ困る」などと連呼するのも、恐ろしいんだけどどこか付きけてるような感じもしちゃう。
Posted by ブクログ
フレドリック・ブラウンの短編集で訳者は星新一。
短編なのでサクッと読み終わりますし、どれもハズレなしの面白さでした。
中でも好きなのは
「みどりの星へ」
孤独の中でずっと生き延びてきた主人公。肩に乗せている相棒と、何より地球の緑の美しさを想うことが彼を生かしていたんだなぁ…。星新一っぽさも感じました。
「おそるべき坊や」
風が吹けば桶屋が…的な展開、みんな好きなヤツ。
「さあ、気ちがいになりなさい」
何度か、え?今どっち?結局どっち?となりながら読みました。結末がちょっと意外。
「電獣ヴァヴェリ」
これが一番好きでした。ある侵略者になすすべもない地球人、と思いきや。スムーズに適応していくところ。逆に豊かになってるんじゃないの?と思わせる静かな余韻。
Posted by ブクログ
訳者はSFのショートショートで有名な、星新一。
この短篇集を読んでいると、不思議と星新一が脳裏に浮かんできて、訳していて楽しかっただろうなと、ほくそ笑んでしまいました。
11の短篇の後に、タイトルの中篇で終わるのですが、最初の『みどりの星へ』から狂っています。
他にもサスペンス、ミステリー、SF、ファンタジーやコメディなど多岐にわたっていますが、どれも文章にキレがあり、また発想からして面白い。短篇は、短いだけにオチが重要と思いますが、どれも一捻りしてあって、とても楽しい読書体験でした。
ところで『ノック』の書き出し部分について、星新一自身の短篇『ノックの音が』の「あとがき」で、タイトルを付けるにあたって参考にした旨が書かれています。『ノックの音が』は、内容をまったく覚えていないので、再読してみようと思いました。
サンリオ版の出版希望
ブラウンさんと星さんが組んで作った作品で、日本語読めるなら、
面白いに決まっています。
実はこの組み合わせ、
サンリオ版からも出ていて、長らく絶版になっているので
版権の問題もあるのでしょうが、是非、切に、
電子化をお願いしたい。千葉なら、2021時点で
公立図書館で閲覧可能ですが、紙の本にも寿命があるので。
お好みで。
Posted by ブクログ
さあ、気ちがいになりなさい。フレドリックブラウン先生の著書。奇妙だけれどとても面白くて最後までハラハラドキドキしながら楽しめる短編小説の数々。翻訳はショートショートで有名な星新一先生。星新一先生のファンの皆様には、ぜひ読んでほしい一冊です。
Posted by ブクログ
星新一翻訳のSF掌編小説
随所星新一や筒井康隆が影響受けたであろう話が多いが、両者と違ってわかりやすく結論が明白なオチが少なく結論を読者に委ねるような余韻を残す話が多い印象
また随所ロジカルな要素を含んだ話も多くウィットに富んだインテリな印象も見受けられる
ただしそういった部分が要因である事からか翻訳に苦労した部分もあるようで星氏が創作した作品より読みづらい箇所も多くそこが難点と言える
各作品の感想
みどりの星へ
表題に便乗してる事もあってなのか主人公は正気か狂気か曖昧な話であった
叶えられぬ夢がある故に希望を望み続けたいと思うのは狂気か正気か
ぶっそうなやつら
日本の掌編小説にもありそうな話で作中で最もわかりやすい話だった
誤解が誤解を生み最終的に・・となるがそこからさらに一捻りある話
おそるべき坊や
世界を救ったヒーローが・・というオチ
子供のした事といえばそれまでだがそれにしても余りの仕打ち
割と最初から展開は想像できる仕様になっている
電獣ヴァヴェリ
もし現代文明に電気が奪われたら?のIFストーリー
この手のジャンルは大体バッドエンドで終わりそうではあるが、この話だと文明が衰退した事でかえって人類が豊かになり心暖まる話になっている
読後感も牧歌的でいい余韻にしたれる
ノック
ノックの音がしたら・・?というよくあるテンプレート文から想像される話
ラストは普通に考えたらハッピーエンドになりそうだが、捻くれて考えると後味が悪くなるのでは?と思うのは自分だけか?
ユーディの原理
メタフィクションの要素がある話
現代のプログラミングやAIにも通ずるような発明品でリアルでも高速自動化が出来るのは非常に便利ではあるが実際それらの作業を行ったのが小人かそれとも暗示にかかった自身かで印象が変わる話
シリウス・ゼロ
星氏の著作でもよく書かれる惑星着陸のストーリー
ユーモラスな出だしから一転してスリリングな展開になるのは見所
町を求む
最後の最後で読者に呼びかけるとは思わなかった
意外な展開も薄くこのまま終わるかと思った、まさかの展開
帽子の手品
ホラー映画を鑑賞後に起こる不可解でかつ不気味な出来事の話
結末が少しわからなかったが、手品やっていた友達は擬態された地球外生物という事か?
不死鳥への手紙
人類は何度か滅亡しかかってもその度に何度も不死鳥のように再生するという話
都市伝説でも古代遺跡は文明が栄えた核戦争後の跡地とも言われてるのでそれもあり得ないとも言えない話
沈黙と叫び
ロジカルな要素がありつつもサスペンスタッチな話
気ちがいとか狂気を描いてる割に本作品集では残酷描写が少ないが、この作品は想像すると割と残酷な話でもあった
この話もラストは読者に委ねる形で終わる
さあ、気ちがいになりなさい
最後になるまで主人公が正気か狂っているかハッキリとしなかった
オチとして壮大で哲学的な話となったが、職場の上司の思惑など明らかになっていない謎もありより一層訳がわからなくなった
ちなみに作中で集合知が言及されているが、人類補完計画の元ネタはこの集合知であろうか?
Posted by ブクログ
星さん訳なのでそのテイストは感じながら、人物の描写や話の切り口が違っていて、面白かった。
「電獣ヴァヴェリ」が特に印象に残ったかな。
読み始めは少しピンと来なかったが、設定が面白く、読後感も良い。
生命体?というものを前提や先入観なく受容できるのか。
幸福感と利便性の相関性は、どのくらいが適当なのか。
Posted by ブクログ
フレドリック・ブラウンを星新一訳で読めるなんて幸せ。
今回も予想のつかない展開とオチが癖になる。
自分にはちょっとわかりにくい作品もあったけど、この4作品は特に好きだった。
『みどりの星へ』
第三惑星に不時着した男。数年後、ようやく念願の助けが現れる…。
こういうのがやっぱり好きだわー。
『おそるべき坊や』
オチでなるほど〜と唸ってしまった。
1番わかりやすくて楽しい。
『ノック』
地球上で最後に残った男。すると、ドアにノックの音が…。
ノックをしたのは一体誰なのか…。
『さあ、気ちがいになりなさい』
自分をナポレオンだと思い込む異常者を装い、精神病院に潜入入院するが…。
読んでるうちに自分もおかしくなる。3回読んだけどよくわからない。でもそれが良い。
先日読んだ『真っ白な嘘』(越前敏弥訳)にも入っていた3作品が、星新一訳でも入っていた。
タイトルだけで比べても少し違うのが面白い。
『危ないやつら』は星新一訳だと『ぶっそうなやつら』
『町を求む』は同じタイトル。
『背後から声が』は『沈黙と叫び』
星新一訳は、特にセリフの部分に星新一らしさが出ていて、星新一の作品を読んでるみたいな感覚になる。
どちらの訳もそれぞれ良かった。
フレドリック・ブラウンももっと読みたいし、星新一もまた読みたくなってしまった。
ポワロとホームズのドラマももっと観たいし、時間が欲しい〜(´~`)
Posted by ブクログ
フレドリック・ブラウンの描く12の短編が収録された作品。
日本の有名なSF作家である星新一が訳した作品という時点で「面白くないわけがない!」と胸を躍らせて読書開始。
キャッチーな話から陰鬱な雰囲気の漂う話まで多種多様で、表題作に連なり短編集の中には狂気を強く意識した作品が多かった印象。そして何よりも、そのキレ味鋭い展開とオチに舌を巻くばかり。
作品の中では『みどりの星へ』『雷獣ヴァヴェリ』『ユーディの原理』辺りが好み。
特に『雷獣ヴァヴェリ』は未知の生物の襲来によって世界から電気が失われていく過程とその後を描いた作品なのだが、人類の強さと電気が失われた世界の美しさを短い物語のなかで上手く表現していた。書物が禁制品とされたディストピアを描くブラッドベリの『華氏451度』と比較してみると、あちらとは対照的に便利だったものが失われてしまった世界にもかかわらず、非常に幸福そうな人々の姿が印象的な終わり方だった。
訳者であり稀代のSF作家でもある星氏からブラウン氏へのリスペクトをふんだんに感じることができただけでなく、”星新一らしさ”が作品全体から滲み出ており、翻訳小説を読んだことのない人や、苦手意識を持っている人にこそ読んでほしい。
Posted by ブクログ
アメリカの作家「フレドリック・ブラウン」の短篇SF作品集『さあ、気ちがいになりなさい(原題:Come and Go Mad and other stories)』を読みました。
ここのところSF作品が続いていますね。
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ショートショートの神様による名訳
記憶喪失のふりをしていた男の意外な正体と驚異の顛末が衝撃的な表題作、遠い惑星に不時着した宇宙飛行士の真の望みを描く『みどりの星へ』、手品ショーで出会った少年と悪魔の身に起こる奇跡が世界を救う『おそるべき坊や』、ある事件を境に激変した世界の風景が静かな余韻を残す『電獣ヴァヴェリ』など、意外性と洒脱なオチを追求した奇想短篇の名手による傑作12篇を、ショートショートの神様「星新一」の軽妙な訳で贈る。
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1940年(昭和15年)から1951年(平成26年)に発表された以下の12篇が収録されている短篇集です、、、
「星新一」の翻訳は、とても読みやすかったし、表現が絶妙で、愉しく読めましたね… 1962年(昭和37年)の訳文とは思えない、新鮮さのある作品でした。
■みどりの星へ(原題:Something Green)
■ぶっそうなやつら (原題:The Dangerous People)
■おそるべき坊や(原題:Armageddon)
■電獣ヴァヴェリ (原題:The Waveries)
■ノック (原題:Knock)
■ユーディの原理 (原題:The Yehudi Principle)
■シリウス・ゼロ (原題:Nothing Sirius)
■町を求む (原題:A Town Wanted)
■帽子の手品(原題:The Hat Trick)
■不死鳥への手紙(原題:Letter to a Phoenix)
■沈黙と叫び (原題:Cry Silence)
■さあ、気ちがいになりなさい(原題:Come and Go Mad)
■訳者あとがき
■解説 フレドリック・ブラウンの幸福 漫画家・坂田靖子
着想が奇抜な作品ばかりで、どの作品も愉しめましたが… その中でも印象に残った作品は、『みどりの星へ』、『ぶっそうなやつら』、『おそるべき坊や』、『電獣ヴァヴェリ』の4作品かな。
『みどりの星へ』は、赤い森や紫の空等、緑色の無い惑星に墜落した男「マックガリー」は、その星で30年間を生き延び、緑に囲まれた地球に思いを馳せる… そこに宇宙パトロールの「アーチャー中尉」が姿を現す、、、
「アーチャー中尉」から、地球は滅亡しているが、一緒に火星か金星に戻ることができると聞いた「マックガリー」の選択した行動は!? 狂気的なエンディングでしたね… 絶望的な現実よりも、希望のある幻想を選んだってことですかね。
『ぶっそうなやつら』は、SFではなく、ミステリ仕立ての作品… 疑心暗鬼に陥った二人の男の緊迫感が生々しく描かれており、本作品の中ではイチバン好きな作品ですね、、、
田舎町の小さな駅の待合室で一緒になった、弁護士の「ベルフォンテーン」と、塗料会社の帳簿係「ジョーンズ」… その夜は、殺人狂の犯罪者が病院から脱走しており、二人はお互いを殺人狂ではないかと疑い始める。
この二人の心情の移り変わりの描き方が絶妙… そして、そこに殺人狂が現われ!? 皮肉なラストへ導く手腕は見事でしたね。
『おそるべき坊や』は、両親と一緒に奇術ショーを観に行った「ハービー坊や」が世界の平和を守ることになる物語、、、
「ハービー坊や」が我儘を言って買ってもらった水鉄砲… その水鉄砲には「ハービー坊や」により聖水が入れられており、これが悪魔を撃退して、世界を地獄の炎から救うとは、誰も予見できませんよねー それも、誰もが気付かないうちに。
二番目に気に入った作品でした。
『電獣ヴァヴェリ』は、波動に依存する謎の生命体の侵略により、ラジオやテレビといった電波を使う機器が利用できなくなり、さらに電気が全て使えなくなってしまうという物語、、、
侵略とはいえ、直接的に人類が襲われるわけではなく、電気が利用できず生活が困難にはなるものの、その生活を楽しみ、生き延びようとする人々が牧歌的な雰囲気で描かれており、豊かな生活って、何なんだろうなぁ… と考えさせられる作品でした。
これが1945年(昭和20年)の作品ですからね… 電気への依存度が格段に拡大した現代に置き換えると、恐ろしいパニック作品に仕上がりそうですね。
70年くらい前に描かれた作品たち… 描かれている背景に古くささはあるものの、テーマは新鮮で、現代に置き換えても愉しめそうな作品ばかり、、、
面白い作品って、時代を越えて愉しめるものですね。
Posted by ブクログ
フレドリック・ブラウン初めて読んだけど内容と星新一の文章の相性がよすぎる、めちゃくちゃ贅沢だし天才の組み合わせだった。
特に子どものいたずらが思わぬことに発展する「おそるべき坊や」が好き。
Posted by ブクログ
“星新一”訳ってだけで、もう読む気満々。
“村上春樹”訳の“サリンジャー”なんて目じゃない(…ごめんなさい)。
20世紀を代表するフレドリック・ブラウンの切れ味鋭い短編集を、これまた20世紀日本を代表する「ショートショート」の名手が訳した。
「狂気」が「滑稽」であるがゆえの「不気味さ」を切り取る。
地面に書いた円を示して「どちらが内側、外側?」と問いかける。
〇の中と思いきや、地球規模で見れば内・外の区別はない(森博嗣「笑わない数学者」)。
早い話、赤道で区切られた北と南に内と外はないということ。
表題作「さあ気ちがいになりなさい」は、そんな「ヒトの勝手な思い込み」を覆す。
「おそるべき坊や」は目に見えている状態には、とんでもないことが隠れており、目に見えないのは「偶然」であったことに思いが飛ぶ。
「電獣ヴァヴェリ」は、ついこの前まで電気がなかったことをすっかり忘れていたのに気がつかせる。
「沈黙と叫び」は、言葉遊びであるかのようで実は背筋が凍る。
天下のフレドリック・ブラウンに対して、星新一自作のショートショートより切れに乏しいと感じてしまうのは、贔屓のなにものでもない。
ところで「ノック」は競作?元ネタ?
「ノックの音が…」(ギ~ィ、扉が開き…)
Posted by ブクログ
フレデリックブラウンものは実は生涯初めてだった。 星新一や筒井康隆や、SF 関係の文献で本当に度々登場する基本中の基本であるというようなことは認識していた。 感覚としてはショートショート的な切れ味の良い作品を想像していたのだが、設定こそ奇抜なのだが、話のひねり自体は論理的ととは行かず、イメージ的に落としたり馬鹿馬鹿しい方向に持っていくというような手法が多く見られた。 そういう意味ではカッティングエッジ感に乏しかったものの、 SF として楽しむことができた。 でもかと言ってこれが古典にして最高峰とは思えない。 感心して感動して思わず読後に声が出てしまうような作品は今まででも沢山あったが、本作の中ではこうした驚愕は一度もなかった。 SF 全集2長辺が2編載っているのでこれらを消化してから正しく評価したいとは思う。
Posted by ブクログ
表紙買いしてから、大昔中学生の頃読んだ「火星人ゴーホーム」の著者だと知ってびっくり。
戦前戦後くらいのSFなのに、古さを全く感じないのは星新一の訳のせいかな?
静かな狂気、引き込む物語、読後の満足感。買ってよかった。
Posted by ブクログ
フレドリックブラウンはSFでもミステリでも一流な人だが私はエドハンターシリーズが好きだ。こちら、彼の代表的な短編集は奇妙な味の短編であり、星新一訳となると読みたくなる。自分がナポレオンだと思い込んだ男の話。何が真実で何が虚構なのか、この応用がどれだけ多くのパターンを作って小説や映画で展開されていることか。胡蝶の夢。わからないものだよね。
Posted by ブクログ
あれ、読んだことがあるような……。
と思って調べてみたら、単行本ですでに読んでいた(汗)。
つまり、単行本で持っているのに改めて文庫を買ってしまったことになる。
うーん、後書きまで一緒じゃないか……。
こういうことがないように、こうしてネット上に読んだ本や購入した本を登録しているのに、全く活用していないなぁ。
まぁ、仕方ないか。
以下の感想は、単行本を読んだ時のものをそのまま引用しました。
フレドリック・ブラウン初体験。
星新一が影響を受けた作家の一人にあげていたが、その星新一自身が翻訳をしている。
確かに星新一が作るようなショート・ショート・タイプの作品が多いが(星新一が作るような、というよりも、ブラウンが作るような作品を星新一が書いた、といった方が正しいのだろう)、星新一よりもドライな感じがするし、SFの度合いも強いように思う。
意外でシニカルなオチには、思わず唸らされるものもあるが、なんだかんだでハッピー・エンドに近い終わり方をしている作品が多い。
表題作である「さあ、気ちがいになりなさい」なんて、サイコ的な展開になるかと思いきや、とんでもない方向に向かっていって……という感じ(「……」を書いちゃうとネタばれになるので自粛)。
そうそう、ネタばれといえば、本編よりも後書きを最初に読む捻くれた人(僕もその一人だ)もいるだろうが、本書に関してはやめたほうがいい。
なにしろネタばれが堂々と書かれているのだから。
しかも本書には収録されていない作品のネタばれも行っており、これから他の作品を読もうとしている人(僕もその一人だ)にとっては、迷惑な話だ。
もう少し気を使って欲しいな、と切に思う。
Posted by ブクログ
20世紀アメリカのSF作家フレドリック・ブラウン(1906-1972)の短編集。星新一訳。
星新一は、自分が影響を受けた作家としてしばしばブラウンの名を挙げている。物語の展開・オチの付け方とその余韻の残り方・作中の雰囲気に加えて、文体も(当然のことながら)星新一そのものなので、彼のショートショート作品を読んでいるようなテンポが思い出されて懐かしく、楽しめた。彼の無駄を排した乾いた静かな世界観と文体が好き。小中学生のころ彼の作品集を読みあさりそのテンポが沁みついていまの好みが作りあげられてしまったのかもしれぬ。
「ぶっそうなやつら」「電獣ヴァヴェリ」「シリウス・ゼロ」「町を求む」「帽子の手品」 ・・・ 星新一の作品といっても通じると思う。「沈黙と叫び」 ・・・ どこかで読んだことがあると思うのだが思い出せない。「さあ、気ちがいになりなさい」 ・・・ 正常/狂気の物語は、座標軸が何処に設定されているのか分からなくなりついに根を下ろす場所を見出せず宙ぶらりんのまま・・・と思っていたら予想外の壮大さに戦慄。
「ノック」 ・・・ この冒頭の二文について、星新一がその名も『ノックの音が』(新潮文庫)というショートショート集のあとがきでラストも含めて紹介されていたのだが、それを知ったうえでも十二分に楽しめる。構成が巧い。確か他のエッセイでも触れていたと思う、よほど気に入っていたのかな。「ユーディの原理」 ・・・ 読んでいて最も面白く興奮した作品。声を出して笑ってしまった。紋中紋というのか。「みどりの星へ」 ・・・ 雰囲気が一番好きな作品。荒れた褐色の星、肩の上の相棒。ふと思ったが星新一の短編「処刑」の雰囲気に似ている。
Posted by ブクログ
星新一が好きなので読んでみた。
同じショートショートでも読後感は全く違っていて、どの話も主題を咀嚼するためにかけた時間が長かった気がする。
読み終わってすぐ次の話いこう!とはならずに、一度本を閉じたくなる感じ。
Posted by ブクログ
昔、評論家向井敏の「文章読本」(良い本です)の作家のもつ文体の説明で、翻訳者による文体の違いの例として、ブラウンの星新一とほかの人の翻訳文章例があったのを思い出し、本屋で翻訳者をみて思わず買ってしまった。
計12編、最後の表題作のみ90ページと長い。
星新一訳が特に良いとは思えず、その点では期待が高すぎたようだ。
ミステリ系では「ぶっそうなやつら」「町を求む」、SFでは「みどりの星へ」「ユーディの原理」が面白かった。
むかし創元SF(&推理)文庫でブラウンの短編集を読んできた者にとっては、相変わらずの、期待通りのブラウンでした。