ユヴァル・ノア・ハラリのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ今、代替肉としてメジャーなのは植物由来のフェイクミートで、すでにスーパーなどでも売られている。本書で扱われるのは動物の筋肉組織を培養してできるクリーンミートの話題。
畜産業によって生み出される食肉は骨や羽毛など、大量の無駄が出るし温室効果ガスの排出量も運輸部門全体のそれに匹敵する。アメリカで使用されている抗生物質の80%は畜産動物に投与されている。目的は病気の治療ではなく、過密な飼育環境による病気の予防と成長の促進だ。世界で生産される大豆もその大半は動物の資料になっており、その栽培のための土地開発は熱帯雨林の森林伐採の最大の原因になっている。(クリーンミートに反対している業界の代表的なものは大豆農家で、畜産業がなくなった場合に大きな打撃を受ける)
食肉のうち、もっとも効率が良いのが鶏肉だが、これでさえ1キロカロリーの肉を得るのに9キロカロリーの餌がいる。くちばしの成長や呼吸、消化などの生物学的プロセスのために消費される。牛肉の場合は23キロカロリーを費やしてやっと、1キロカロリーの肉が作られる。
培養肉であるクリーンミートの場合、ウシであれば筋繊維2万本でハンバーグ一個ができる。これは肉牛の飼育期間24ヶ月に対して3ヶ月程度にすぎない。
2013年に最初のクリーンミート試食会が行われたが、これは「25万ユーロのクォーター・パウンダー」として知られる。そのあと「In Vitro Meat Cookbook」というレシピ本も出されており、有名人や自分の肉を食べよう、というレシピも紹介されている。
今の技術では立体的な肉を作ったりするのはまだ難しいが皮革はそれほどでもない。クロコダイルなどのみならず、現存しない動物の革製品も作ることができる。MODERN MEADOWなど、商業的な製品を販売している会社もある。
・2016年後半、環境保護団体からの支援を得るために、パーフェクト・デイは資金を投じてライフサイクル分析を行い、自社の人工牛乳と一般の牛乳とを比較した。結果は目覚ましいものだった。パーフェクト・デイが生産するのは牛乳だけで、牛のそのほかの部分には関与しない。そのため(査読なしの)分析の結果、同社の人工牛乳の生産に必要な資源量はエネルギー量で24~84パーセント、水の使用量で98パーセント、土地の使用面積で77~91パーセント、そして温室効果ガスの排出量でも35~65パーセント、一般的な牛乳のそれを下回ることが判明した。
・いま、世界にはライオン4万頭と家畜化された豚10億頭、象50万頭と家畜化された牛15億頭、ペンギン5000万羽と鶏500億羽が暮らしている。2009年の個体数調査では、ヨーロッパには全種合計で16億羽の野鳥がいることが確認された。同じ年にヨーロッパの養鶏場で飼育された鶏の数は70億羽近くにのぼる。地球上の脊椎動物の大半は、もはや自由には生きられなくなっている。ホモ・サピエンスというただ1種類の動物に所有され、支配されているのだ。
・工業的畜産は投資家にとって大きなリスクだ。工業的畜産には私が「黙示録の4騎士」と呼んでいる4つの不都合な真実がある。人間の健康を損なっていること、気候変動の原因になっていること、食料安全保障上の問題があること、地球の資源を損なっていること、この4つだ。工業的畜産による食肉生産は、世界最大量の真水と抗生物質を消費し、最も広範囲に森林を破壊しているうえ、人間の食料供給方法としても効率が悪い。いまや人間よりも畜産動物のほうが多くの穀物を消費している。この狂気の沙汰を、止める必要がある。 -
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いまから振り返れば2020年3月ならびに4月時点で「未知のウィルス」に対するInsightとしてハラリ氏のインタビューは特筆すべきものがある。Post COVID-19の世界を冷静かつ的確に見詰める頭脳レベルの高さが窺える。他方で理想論を唱えるあまり実現性と具体性に欠ける面も否めない。理想なくして実現なしではあるが。暗に(明に?)トランプ大統領を批判しているが、米国が「世界の警察」を名乗るのが良いのかは多分に疑問(COVID-19対応では恐ろしく悪手続きだったがトランプ大統領の在任中に戦争が起こらなかったのは事実だ)。
それはそれとして、有事は緊急の名のもとパラダイムシフトが起こりやすくニューノーマルが定着する一方で、プディング令のような有名無実むしろ悪制も残りやすいのは事実。ハラリ氏の言うように、ニューテクノロジーを脅威として排除するのではなく、国際間で連携し民衆が自らの意思でチェックすることが大切だろう。 -
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あまり考えずに大豆ミートなど代替肉の話かなと思って手にとってみみのだけれどもう少し先を行っていて培養肉のベンチャーの話が中心だった。つまり生きている牛や鶏から屠殺することなく細胞だけを摂取してそれを培養し、本物の肉を作り出そうという試み。畜産という産業が環境に与えるダメージは一般的に思われているより大きいらしく、かわいそうな動物たちを救うことはもとより地球の環境を改善する効果があるらしい。肉だけならばすぐに増殖させることは可能なのだけど血管を作ることが難しいらしく血管がないと塊肉ができない、という技術的な制約があって基本的には挽肉しかできないらしいがいくつかの部位だとか皮革が現在も科学的に作り出されているらしい。確かにこういう技術が発達すれば普段感じながら食事しているかは別として罪悪感なしに肉を食べることができるし鯨や鰻だって何も気にせず好きなだけ食べられるのでは、と思った。少し気になったのはこの本が数年前に書かれたものらしいのだけどまだ培養肉を市場で見かけないことと培養肉がもし一般的になった時に今の家畜たちがどれくらい生き残れるのか、ということかな。幸せかどうかは別として牛や豚や鶏って家畜として殺されるが故に種として存続しているという面もあるような気がしているので…。また遺伝子組み換えみたいなものへの嫌悪感も根強いので培養肉にも同じような反応が見られるのではないか、という気もした。とはいえ幸せにのびのび暮らしている動物たちからちょっとだけ細胞を拝借してなんの罪悪感もなく肉食を楽しめる、というのは魅力的。すごく興味深い内容でした。
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Posted by ブクログ
理論的には可能である培養肉の、商品化に向けたスタートアップ企業の動きをまとめている。
ただ、これが本当に世の中に普及していくかどうかは、まだわからない。それほど人間の食に対するこだわりは強いから。
本書を読んでとりわけ気になったのは、食肉に対する考え方についてである。
環境破壊や経済性を理由に語るのであれば理解はできるが、それと同等かそれ以上に語られるのが、動物愛護の観点だ。
たしかに、動物にとってはよい環境ではないし、人間に置き換えたらと思うと胸も痛くなる。が、そこまで思うか?という疑問も同時に起こる。
捕鯨の議論もそうだが、英米ではさんざん食肉を広めてきた歴史とそれに対する嫌悪が共存している。だからこそなのだろうか。
翻って日本や東洋では、なぜそのような言説が多くないのか。
むしろそちらの方に興味がわいた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ各学術界の著名人と著者である大野氏とのオムニバス形式の対談記事を1冊にまとめた当著。
歴史学者であるハラリ氏が述べた「役立たず階級」というワードが大変印象的で、他の登壇者が述べたようにAIの台頭によって私達の仕事・生活・生き方が大きく様変わりするだろうという警鐘が伝わってきました。
ダニエルコーエン氏が述べているように「ただ一生懸命に働けばよい」というのは単なる幻想で、リンダ・グラットン氏が提唱する「人生の目的」と「人生の意味」を組み合わせた、「積極的な選択」を自らしていくことが、これからの混迷を極める時代において重要となってくるのだと思いました。
これは即ち、「生きたいように生きることが許される時代」でもあり、「積極的な選択」を好む人にとっては大変なメリットであり、一方で「消極的な生き方」、例えば誰かに依存して自らの意志決定を放棄する生き方を望む人には厳しい時代が待っていることを示唆している風に読み取れました。
これからの10年・20年(もしかしたらすぐ目の前?)を思考するのにおすすめの一冊です。 -
Posted by ブクログ
ー たとえば、お金というものには客観的価値は何もありません。お金の価値は、多くの人がドルや円について同じストーリーを信じているという事実から出てくるのです。ほとんどの経済学者はそのことをわかっています。
私は決して「これらは虚構だ。信じるのをやめようではないか」と言っているのではありません。もし信じることをやめれば、経済システム全体が崩壊します。そして他人同士はお互いに協力できなくなります。しかし、注意しなければならないのは、われわれは虚構の奴隷になるのではなく、虚構がわれわれのために機能するようにしなければならない、ということです。
人間は長い時間の中で、目の前にあるものが現実なのか、それとも誰かが作ったストーリーなのか、区別する能力を失いました。結果、多くの人が、国家や会社や神という想像上のものに自分を捧げて戦争に行き、何百万人という人を殺戮したのです。こうした事態を回避するためには、まずは目の前にあるものが、現実か虚構なのかを区別し、その上で利用する方法を考えることです。 ー
ジャレド・ダイヤモンド、ユヴァル・ノア・ハラリ、リンダ・グラットン、と重要な方々との対談集。
コロナ前の作品だが、今読んでも十分にリアリティがある。
信じているストーリー(虚構)の崩壊、あらゆる格差が生み出す社会的歪みと崩壊なんて、まさに今考えるべきテーマかと。