【感想・ネタバレ】クリーンミート 培養肉が世界を変えるのレビュー

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Posted by ブクログ 2022年08月28日

畜産が環境に多大な負荷をかけていること、畜産が動物に苦痛を与えていること、畜産肉はどうしても不衛生であること等、もう少し社会に広く認知されたら良いのにと思う。コストの問題を早く解決して、社会に培養肉が広まってほしい。そのための研究にお金が集まってほしい。

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Posted by ブクログ 2021年08月31日

SDGsが叫ばれている中で、工業的畜産の現状による環境破壊等は今に響く内容で面白かった。
今後は、培養肉等がこれまでの牛肉や牛乳、卵、鶏肉にとって変わる世界になることを期待したいと思う。

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Posted by ブクログ 2021年02月16日

この本を読んで衝撃を受けたこと:
肉牛を育てるためには大量の水と牧草が必要なため、環境負荷が高い。

この本を読んで実行すること:
牛肉を食べるのは2週間に1回程度にする。

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Posted by ブクログ 2021年02月06日

自分の世界を広げてくれたという意味では、ここ1〜2年でもトップクラスに面白かった。

動物の肉を食べるためには、
・家畜が機械のように、量産され虐待とも取れる扱いを受けなければならない
・そのために広大な土地が必要で、森林が伐採されている
・その家畜の排泄物などによる土壌、水質汚染や、温室効果ガスの...続きを読む増加も伴う
・大量の家畜のための大量飼料が必要で効率が悪い
と言った多くの問題がある。

そんなことほぼ考えたことなかったが、人口が増え続ける今、これらの問題は向き合わなければならない課題なんだと痛感した。
そしてそれを解決しようと立ち上がっている人が増えてきていて、技術的にもかなり実現が近づいている。
そういう人たちは本当にカッコいいし、様々な問題を解決しうるテクノロジーの発展にワクワクした。

僕はそう言った企業に投資するお金を持っているわけでもない。
だからせめて、
肉はたまの贅沢にすることと、
クリーンミートが市場に出回ったら、積極的にそれらを選ぶこと、
またその存在や価値を1人でも多くの人に知らせること、
くらいはしたい。

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Posted by ブクログ 2020年08月09日

細胞を培養して畜産品を作るベンチャー企業たちのお話し、医療の世界ではすでに皮膚移植等に使われている技術を、食品や装飾用レザーに使うらしい。

細胞を培養する際に使用する酵素は、遺伝子を操作する必要があるらしいのだが、実は今でもチーズの発酵に不可欠なレンネットという物質は、遺伝子操作により作られている...続きを読むそうだ。

現在の酪農には問題点が多く、畜産動物が排出するし尿や二酸化炭素による環境汚染、飼料を大量に栽培するために森林を伐採している事、生産効率重視のための劣悪な飼育環境、そして何より人間の欲望のために、日々たくさんの動物が殺されているという事だ。

食肉培養にはコスト削減や消費者心理など、まだまだ多くの課題が残っているが、現在の酪農が本当に持続可能なのかを考えた時に、有力な選択肢になるのは間違いないと思う。

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Posted by ブクログ 2020年05月17日

試験管で作られるクリーンミートに関して、それに関わるベンチャー起業家を何人もとりあげ、その産業の立ち上がりを描いた本。著者アメリカの動物愛護団体の代表を務める。

感想としてはクリーンミートのメリットも分かり、近未来的なものとして食べてみたくなった。正直、平凡な日本人としてはこの本に出てくる起業家の...続きを読むような、家畜の動物虐待を真剣に受け止める感性を持っていない。しかし、逆を言えば、不自然な食品というものに対する抵抗もないわけで、自分自身が特に気にしない人間だということがわかった。

最後の方のフランクリンの話やケロシン、車の発明の話にあるように、信条を変えるよりは行動を変えてしまうのが一番なのだと思った。日本も食料自給という点から、このクリーンミートに投資を進めるべきだというのは間違いなく、わたしもアンテナを張って、クリーンミートを食べてみたくなった。

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Posted by ブクログ 2020年05月10日

米国における細胞農業のノンフィクション。人口爆発と肉食する人類増加に向けた対策をフードテックで取り組む人たちの紹介。
試験管で作られる「肉」を非現実的と思うことなかれ。まだ普通の畜産よりは高いけど、いずれ解決されると思った。
市場に受け入れられるイメージを作るには、畜産品には肉1kg作るのに、9倍の...続きを読むエネルギーが必要なこと、サルモネラ等の汚染リスクがあること(だから必ず完全に火を通さないと食べれない)、過剰な抗生物質が使われていることを訴求することが重要。それと畜産動物の扱われ方の紹介して、ショックを与えてから、クリーンミートの安全性をアピール!
かつ、最終的には値段が下がらないとダメだが。

日本のベンチャーの内容はなかったが、食料自給率が低いわが国でこそ取り組むべき研究と思った。
細胞農業は今後もウォッチする。

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Posted by ブクログ 2020年04月11日


何かを変えたいなら、新しいモデルを築いて、既存のモデルを時代遅れにするしかない。
バックミンスターフラー


誰を巻き込むか、
そのために、何を大義にするか

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Posted by ブクログ 2020年02月06日

食肉、乳製品、皮革など、本来は動物由来で作られる畜産物を、特定の細胞を人工的に培養することにより、科学的に全く同じものを作り出す「細胞農業」の最前線と、商用化に向けた課題をまとめた一冊。

今日の多くの工業的畜産は、大量の飼料を消費する非効率性、それら飼料作物の栽培に伴う資源の浪費、「牛のげっぷ」な...続きを読むどによる環境汚染、食肉加工における細菌汚染、家畜が強いられる劣悪な飼育環境といった深刻な問題を抱えている。世界人口が爆発的の増加する中、これらの問題に対して植物由来のフェイクミートとともに有力な解決策となり得るのが細胞農業であり、動物を飼育するのに比べて、必要な部分(肉や乳など)のみを培養して作れる効率性の高さや環境への負荷軽減に加え、動物を「殺して食べる」という倫理上の問題も解決できる。

著者は、まだ黎明期である細胞農業の商用化に向けた課題として技術の向上やコスト低減に加え、消費者の受容性、つまり遺伝子組み換え食物に対する抵抗感のような、消費者の感情面のハードルが最も克服が困難であると指摘する。それでも本書では、熱意ある研究者や起業家が、将来の食糧難の回避や環境保護、動物愛護といった使命感から、既得権益や規制の壁に直面しながらも、志を同じくする仲間や先見性のある投資家との出会いによって着実に歩みを進める姿が臨場感たっぷりに描かれる。社会問題解決やR&D、起業や投資など、様々な切り口から学びが得られる良書。

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Posted by ブクログ 2022年12月19日

将来、所得が上がってきている中国等で肉食が進むと日本産の肉が輸出され国内で消費が出来ない未来は想像できる。
肉の取り合いだよ、困ったね。
早いところ培養肉の生産頼みます。
大豆ミートなどもあるけどね。

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Posted by ブクログ 2022年11月17日

自分達の食事のために、家畜を部屋に押し込め、屠殺するために育て、取り分を極力増やすために太らせ、管理し易いような種に選別する。殺される事が理解できる家畜は、恐怖で鳴き、糞尿を漏らす。しかし、その工程が美味しいステーキやハンバーグを齎すのだ。ベジタリアンやヴィーガンの気持ちが少し分かる。他方、肉食動物...続きを読むは直接追い回し、食らいつくではないか。生きる為の摂理。何が正しいのか。ただ、人間は変われるのなら、自分たちの得失だけを考えたって、変わるべきだと思った。

食肉を細胞から培養する方が、動物を飼育した上で同じ量の食肉を取るよりもはるかに効率が良い。倫理的な面だけでなく経済的環境的にも意味があるし、温室効果ガスの排出量にも効果がある。アメリカで使用されている抗生物質の80%は畜産動物に投与されている。糞便も問題。こうした問題が解決できるのだ。フェイクミートではなくクリーンミート。ジャックウェルチや、ビルゲイツなども投資しているらしい。人工牛乳などもあり、既に人工ハンバーグは出来上がっている。

本著は、こうしたクリーンミート界隈の米国での話だ。日本では?日本にもスタートアップ企業が増えている。ただ、この国で不安なのは、畜産における既得権益。遺伝子組み換え作物GMOのように、なりはしないだろうか。こんな事を思いながらも、自らの既得権と欲望は正当化し、クリーンミートに期待しつつ、気持ちは切り替え、美味しく肉を頂こうと思う。

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Posted by ブクログ 2022年07月17日

今まで代替肉に目を向けていたけれど、培養肉(クリーンミート)の可能性の大きさを感じた。持続可能な世界を構築したい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年02月23日

今、代替肉としてメジャーなのは植物由来のフェイクミートで、すでにスーパーなどでも売られている。本書で扱われるのは動物の筋肉組織を培養してできるクリーンミートの話題。

畜産業によって生み出される食肉は骨や羽毛など、大量の無駄が出るし温室効果ガスの排出量も運輸部門全体のそれに匹敵する。アメリカで使用さ...続きを読むれている抗生物質の80%は畜産動物に投与されている。目的は病気の治療ではなく、過密な飼育環境による病気の予防と成長の促進だ。世界で生産される大豆もその大半は動物の資料になっており、その栽培のための土地開発は熱帯雨林の森林伐採の最大の原因になっている。(クリーンミートに反対している業界の代表的なものは大豆農家で、畜産業がなくなった場合に大きな打撃を受ける)

食肉のうち、もっとも効率が良いのが鶏肉だが、これでさえ1キロカロリーの肉を得るのに9キロカロリーの餌がいる。くちばしの成長や呼吸、消化などの生物学的プロセスのために消費される。牛肉の場合は23キロカロリーを費やしてやっと、1キロカロリーの肉が作られる。

培養肉であるクリーンミートの場合、ウシであれば筋繊維2万本でハンバーグ一個ができる。これは肉牛の飼育期間24ヶ月に対して3ヶ月程度にすぎない。

2013年に最初のクリーンミート試食会が行われたが、これは「25万ユーロのクォーター・パウンダー」として知られる。そのあと「In Vitro Meat Cookbook」というレシピ本も出されており、有名人や自分の肉を食べよう、というレシピも紹介されている。

今の技術では立体的な肉を作ったりするのはまだ難しいが皮革はそれほどでもない。クロコダイルなどのみならず、現存しない動物の革製品も作ることができる。MODERN MEADOWなど、商業的な製品を販売している会社もある。

・2016年後半、環境保護団体からの支援を得るために、パーフェクト・デイは資金を投じてライフサイクル分析を行い、自社の人工牛乳と一般の牛乳とを比較した。結果は目覚ましいものだった。パーフェクト・デイが生産するのは牛乳だけで、牛のそのほかの部分には関与しない。そのため(査読なしの)分析の結果、同社の人工牛乳の生産に必要な資源量はエネルギー量で24~84パーセント、水の使用量で98パーセント、土地の使用面積で77~91パーセント、そして温室効果ガスの排出量でも35~65パーセント、一般的な牛乳のそれを下回ることが判明した。

・いま、世界にはライオン4万頭と家畜化された豚10億頭、象50万頭と家畜化された牛15億頭、ペンギン5000万羽と鶏500億羽が暮らしている。2009年の個体数調査では、ヨーロッパには全種合計で16億羽の野鳥がいることが確認された。同じ年にヨーロッパの養鶏場で飼育された鶏の数は70億羽近くにのぼる。地球上の脊椎動物の大半は、もはや自由には生きられなくなっている。ホモ・サピエンスというただ1種類の動物に所有され、支配されているのだ。

・工業的畜産は投資家にとって大きなリスクだ。工業的畜産には私が「黙示録の4騎士」と呼んでいる4つの不都合な真実がある。人間の健康を損なっていること、気候変動の原因になっていること、食料安全保障上の問題があること、地球の資源を損なっていること、この4つだ。工業的畜産による食肉生産は、世界最大量の真水と抗生物質を消費し、最も広範囲に森林を破壊しているうえ、人間の食料供給方法としても効率が悪い。いまや人間よりも畜産動物のほうが多くの穀物を消費している。この狂気の沙汰を、止める必要がある。

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Posted by ブクログ 2020年11月17日

あまり考えずに大豆ミートなど代替肉の話かなと思って手にとってみみのだけれどもう少し先を行っていて培養肉のベンチャーの話が中心だった。つまり生きている牛や鶏から屠殺することなく細胞だけを摂取してそれを培養し、本物の肉を作り出そうという試み。畜産という産業が環境に与えるダメージは一般的に思われているより...続きを読む大きいらしく、かわいそうな動物たちを救うことはもとより地球の環境を改善する効果があるらしい。肉だけならばすぐに増殖させることは可能なのだけど血管を作ることが難しいらしく血管がないと塊肉ができない、という技術的な制約があって基本的には挽肉しかできないらしいがいくつかの部位だとか皮革が現在も科学的に作り出されているらしい。確かにこういう技術が発達すれば普段感じながら食事しているかは別として罪悪感なしに肉を食べることができるし鯨や鰻だって何も気にせず好きなだけ食べられるのでは、と思った。少し気になったのはこの本が数年前に書かれたものらしいのだけどまだ培養肉を市場で見かけないことと培養肉がもし一般的になった時に今の家畜たちがどれくらい生き残れるのか、ということかな。幸せかどうかは別として牛や豚や鶏って家畜として殺されるが故に種として存続しているという面もあるような気がしているので…。また遺伝子組み換えみたいなものへの嫌悪感も根強いので培養肉にも同じような反応が見られるのではないか、という気もした。とはいえ幸せにのびのび暮らしている動物たちからちょっとだけ細胞を拝借してなんの罪悪感もなく肉食を楽しめる、というのは魅力的。すごく興味深い内容でした。

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Posted by ブクログ 2020年09月27日

理論的には可能である培養肉の、商品化に向けたスタートアップ企業の動きをまとめている。
ただ、これが本当に世の中に普及していくかどうかは、まだわからない。それほど人間の食に対するこだわりは強いから。

本書を読んでとりわけ気になったのは、食肉に対する考え方についてである。
環境破壊や経済性を理由に語る...続きを読むのであれば理解はできるが、それと同等かそれ以上に語られるのが、動物愛護の観点だ。
たしかに、動物にとってはよい環境ではないし、人間に置き換えたらと思うと胸も痛くなる。が、そこまで思うか?という疑問も同時に起こる。

捕鯨の議論もそうだが、英米ではさんざん食肉を広めてきた歴史とそれに対する嫌悪が共存している。だからこそなのだろうか。
翻って日本や東洋では、なぜそのような言説が多くないのか。
むしろそちらの方に興味がわいた。

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Posted by ブクログ 2020年08月13日

培養肉の現状の取り組みと可能性を書いた本。

【メリット】
・動物虐待(殺傷)の減少
・食糧難の解決
・ヘルシーな為、病気の削減
・牛のゲップ、家畜削減によるco2削減

これができれば温暖化と食糧難の問題が解決する。あとはこのクローン肉をどのようにブランディングするか?

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年03月15日

 クリーンミートは代替肉ではなく、本物の肉である。現代のバイオテクノロジーを使って細胞を培養し、動物を殺すことなく、必要な本物の肉を生産していく。そのスタートアップ企業で夢と理想を追う人々を追う。

 クリーンミートがこの地球に及ぼす影響は甚大である。それは道徳から環境問題、公衆衛生まで「正」の革命...続きを読むを引き起こす。工業的畜産によって生産=殺される動物がなくなる。現在の畜産による温室効果ガスの放出は車、バス、電車、飛行機、船・・・など運輸部門全部合わせたものより多いが、それが大きく削減される。畜産物の糞便による食中毒がなくなるばかりでなく、家畜- ヒトへの新たの感染症が発生するリスクが極小化される。


 2013年にはクリーンミートハンバーグはすでに作られ、すでに人の口に入っている。そして今、「細胞農業」によって様々な畜産品が生産可能になってきており、一部ではスーパーにも供給され始めているという。

 あと10年もすれば、世界は変わっているかもしれない。ワクワクする本。

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Posted by ブクログ 2021年03月01日

【感想】

「いただきます」
それは日本文化特有の言葉であり、全ての生命とそれを調理した人に感謝の気持ちを伝えるあいさつである。

しかし、この本を読んだ後で、「いただきます」の意味を今まで通り受け止められるだろうか?

本書は、フードテックの最前線に迫るバイオルポルタージュだ。様々な問題を解決する...続きを読む夢の食糧、「クリーンミート」の実現を目指すスタートアップ企業の実績と課題を追う。

「培養肉」というものの存在は知っていったが、それが目指す理念がここまで多岐に渡って展開されているとは、全く想像だにしていなかった。

本書では、培養肉のメリットとして、
①環境にやさしい
②動物たちを傷つけない

の2点を強調して語っている。そしてここが驚くべきポイントなのだが、理念を掲げる人々が、これらを実現する「ために」価格を安くしようと研究開発している。なんと、環境を改善することが第一目標で、利益がその後なのだ。

そう、培養肉はコストとの戦いを重きに置いているわけではない。「道徳との戦い」を目指すのである。

道徳と戦っている代表的な人物がヴィーガンだ。ヴィーガンは肉が嫌いな人ではなく、動物を傷つけてまで肉を食べたくない人である。そのため、動物を介しない培養肉ならば喜んで口にする。
人間は「われわれが生きるため」ということを口実に、残虐非道な畜産工場を営んでいる。そこで飼育される動物には幸福に生きる権利は無く、ただ人間の食欲のために肥え生まされていく。そして、人間が生きていくためには、その命の殆どが必須ではなく、殺された動物の肉が何万トンと廃棄されていく。「いただきます」の裏では、こんな欺瞞が平然とまかり通っているのだ。

本書の凄いところは、こうした「動物の不幸」から更に踏み込む点だ。
「もし傷つけられる動物がいなくなったら?」という、クリーンミートが普及した先の世界まで物事を考えている。「家畜はもはや人間抜きでは生きられず、そして生きている限り苦しみを味わいつづける。ならば、彼らを絶滅してあげることこそが幸福ではないのだろうか?」
何とここで「反出生主義」が出て来るのだ。動物の幸福という視点を持つだけでも先進的なのに、その先の「真の幸福」の地点にクリーンミートはいるのだ。
何という長いスパンで物事を捉えているのだろうか。

今話題となっている培養肉を、環境負荷軽減の面で後押しする人は多いと思うが、こうした道徳の視線があるなんて思いもよらなかった。ただただ驚きだ。

みなさんも是非手に取り、「いただきます」の意味を考えてみてほしい。


【本書のまとめ】

1 培養肉(クリーンミート)の可能性
インド、中国といった途上国でのライフスタイルの欧米化によって、食肉需要は何倍にも膨れ上がっている。地球の人口は2050年までに90~100億人になると予測されているが、利用できる資源の量はその増加に見合うほど増加しない。

そこで注目されているのが、試験管の中で作られる「培養肉」だ。

従来のやり方で肉を育てるのには大量の水がいる。スーパーに並んでいる鶏肉を作るのに、それぞれ3.8リットル入りの水のボトルが1000本以上も費やされている。畜産業界のCO2排出量は運輸業界と釣り合うレベルに高い。

また、肉を育てる過程で動物を奴隷化する。農場を工場にし、自由を奪い、効率的に身体を大きくするために薬品や合成餌を与え続けている。「動物の権利」を尊重する目的から、肉食からヴィーガンに転身する人が大勢生まれているほどである。

植物ではなく動物を飼育して食糧とすることは非常に効率が悪く、畜産物の受容が急増すれば、地球はとうてい持ちこたえられない。そうした状況下においては、ますます牛や豚、鶏への動物虐待が横行する。
これら環境・倫理面からの打開策になり得るのが、畜産品を細胞から作り出す「細胞農業」である。細胞農業は、動物には手を触れず、ほんの少し採取した動物の筋細胞から、生体外で筋組織を作る。本物の肉や畜産品を研究室で作りながら、広大な農地をより自然な生息地として動物たちに返すことができるのだ。

もし培養肉が実現すれば、
・加工過程での糞便汚染
・食品添加物が含まれた餌の人体への悪影響
・抗生物質が投与された動物を食べることで、抗生物質が人間に効かなくなること
・過密化した牧舎での伝染病の流行
・飼料生産(大豆)による熱帯雨林などの環境破壊
などを防ぐことができる。
つまり、地球環境と動物を一挙に救いたいなら、食べる肉の量を減らさなければならないということだ。細胞農業のスタートアップ各社が成功すれば、私達の食糧生産方法に、約一万年前の農業革命以来最大の変革が起こるだろう。


2 「安価」というインセンティブ
鯨脂が石油に、馬が自動車に取って代わったように、動物たちの苦痛を取り除いたのは、人間の慈悲心でも環境への懸念でもなかった。新たに誕生したより安価な代替品だった。

2005年に、医学雑誌に掲載されたマシーニの論文「培養肉の試験管内生産」は、またたく間に注目を集める。
培養肉は臓器再生とは違い、ただ筋肉量を増やすだけで事足りる。それならば筋細胞を採取し、単離し、細胞増殖のよりどころとなる足場に接着させるだけでいい。核となる細胞は「筋サテライト細胞」と呼ばれ、牛や人間の筋肉が傷ついたとき、その筋肉を修復するのに使われるのと同種の細胞である。

ポストの考えでは、ハンバーグ1個をつくるのに必要な牛の筋繊維は約2万本だ。増殖のスピードから計算すると、たった3か月しかかからず、牛を育てて解体する(14か月)よりはるかに速い。
また、生産に必要な資源もはるかに少ない。肥育場では未だに、牛1頭に対して1日に9キロ以上の飼料が必要である。

ポストの計算によれば、この培養手法なら、1頭の牛から小さじ1杯の組織片を取るだけで、理論的には肉牛40万頭以上分にあたる牛肉を生産できると見込んでいる。
ポストはグーグル創業者からの支援を取り付け、培養肉の試食会兼記者会見を行った。1枚33万ドルもするパテで焼いたハンバーグは、試食者が言うには「普通の肉に近く、ジューシーさは足りないが歯ごたえは完璧」とのことだった。
記者会見は大成功に終わり、培養肉産業は一躍投資産業へと変化した。

ポストとフェアストラ―タの培養肉ハンバーグの商品化には、まだ乗り越えなければならない壁がいくつかある。その筆頭がコストだ。
現在の技術であれば、もう少しで1キロ65ドルから70ドルというところまで下げられそうである。(ちなみに、現状ではひき肉以外を作るのは技術的に難しい)
もう一つの問題は、肉好きな人がクリーンミートを食べてくれるかどうかだ。動物無しで育つ肉に、多くの人は本能的に嫌悪感を抱く。それは「得体の知れないものは食べたくない」「自然に近いものを食べたい」という安全意識が根底にあるからだろう。しかしながら、そもそも現代社会の食物は品種改良されたものばかりであり、それのどこが自然と言えるのだろうか?

結局のところ、人間の食肉欲求はなくならない。動物由来の肉を人々が止めるかどうかはモラルにかかっているのではなく、味と値段にかかっている。培養肉がそれを満たせば、肉がどうやって出来たかなんて気にしなくなるだろう。


3 培養レザー
細胞業界は、食肉ともうひとつの動物由来の繊維組織、「培養レザー」の可能性を追求している。
毛皮を持つ哺乳動物は、人類史の大部分において、人間の防寒のための主要な手段であり続けた。しかし、一頭の牛から取れる牛皮は身体ぜんぶの経済価値の10%程度。であるならば、革を取るために牛をまるまる育てるのは非効率的ではないだろうか?

アメリカの皮革業界は世界的な巨大産業であり、1年で30億ドル――牛3500万頭分――の牛革を輸出している。
懸念すべきは動物への虐待だけではない。皮をなめす過程で、様々な化学物質が使われ、労働者と周辺環境に深刻なダメージを与えているのだ。
これに比べ、モダンメドウで作るレザーには毛も肉も脂肪分もないため、皮なめしの工程は従来の第2段階だけで済み、ずっと環境に優しい。

培養肉よりも簡単で実用性に富むため、フォーガッシュはもっぱら培養レザーに力を入れ、大量生産化を目指している。すでに高級品として一部実用化されたものもある。


4 アメリカのクリーンミート
モダンメドウがすでに皮革だけに舵を切り始めた一方で、クリーンミートの商業化に目的を絞った世界初の企業「クレビー・フーズ」(のちにメンフィス・ミートに社名を変更)が、2015年後半に誕生した。

メンフィス・ミートは、
①動物を苦しめずに畜産物を収穫すること
②より健康的な肉による成人病を防止すること
をミッションとしている。

また、メンフィス・ミートは、世界初の培養ミートボールを作り上げた。コストは33万ドルからぐっと下がり、わずか1200ドルだ。着実に実用化に近づいている。その後は培養肉のフライドチキンと鴨肉のオレンジ風味を作り、キロ当たりのコストをより割安にした。この功績が投資家の眼に止まり、巨額の投資の提案も舞い込んで来た。

クリーンミートは人類史上最高に清潔で安全な肉と言えるかもしれない。糞便汚染の危険がなく、今ある肉よりもずっと消費期限が長持ちする。流通に革新が起こるのは間違いないだろう。


5 プロジェクト・ジェイク
ハンプトン・クリークが立ち上げた「プロジェクト・ジェイク」は、鶏と鶏卵にターゲットを向けている。環境に最もダメージを与えるのは、アメリカで年間3500万頭が解体される牛だが、動物の福祉の観点から見れば、年間90億匹が殺されている鶏を救うほうが先決だからだ。

そして幸運なことに、牛や豚よりも鶏や七面鳥のサテライト細胞のほうが、取り扱いがずっと簡単である。
理論的には、一羽の七面鳥から採取したたった1つのサテライト細胞が、3ヶ月間で75回の分裂を繰り返し、1つの細胞からターキーナゲット20兆個分以上の筋肉が取れる。

テトリックが技術を進歩させることで目指しているのは、単に新たな食品を生み出すことだけではない。他社にも新たな食品を生み出す力を与え、食料システム全体を改革することを目指している。


6 遺伝子組み換え
パーフェクト・デイとクララ・フーズは、分子レベルから牛乳と卵白を作っている。
これらが培養肉と違うところは、培養肉は細胞「が」食品を作るのに対し、牛乳と卵白は細胞「で」食品を作ることである。ビール酵母がアルコールを作る様に、酵母を遺伝子操作によって組み換え、牛乳や卵白を作り出すように設計し、ゼロから食品を「醸造」しているのだ。
しかしながら、培養畜産物の市場への導入は、コストや規制など導入期の障害を克服したとしても、一筋縄ではいかない。それは遺伝子組み換えというテクノロジーに対しての、消費者の受容度の低さが原因だ。

調査によれば、アメリカ人の51%が「自然」と表示された食品を選ぶと言明している。その一方で、何が「自然」かという疑問への定まった回答は無い。私達が食べている家畜や多くの野菜は、成長が早くなるよう意図的に育種されたものだ。とても「自然」とは言えないが、消費者が食べ物を買うときにそれを問題視しているようには見えない。

ギボンズは消費者の態度について重要な点を指摘している。小規模なオーガニックの畜産に戻れと主張する人々はしばしば、工業的畜産が生まれる以前の「古き良き時代」を思い描き、大規模か小規模かという二元論に陥る。だが、現実は、工業的畜産が標準的になる以前から、ギボンズが列挙したような多くの虐待が蔓延していたのだ。

結局のところ、本書に登場する各スタートアップは、自らの食品が完全に安全であり、ほかの食品の生産方法と変わらないことを消費者に明示する責任があるのだ。


7 倫理と道徳
もしクリーンミートが世界に普及して、現在不幸を味わっている動物を必要しなくなった場合はどうなるのか?彼らは人間無しではもはや生きられない。そして、彼らは生まれて来なければよかったと思うほどの苦痛を味わっている。であれば、彼らを絶滅させて、農地を森や草原に戻るに任せて、本来の野生動物に返すのが望ましいやり方なのではないか?これは非常に難しい倫理的問題である。

すべての畜産動物を大切に思えるようになるためには、私達の多くが、まず口にする肉の量を減らさないといけないのかもしれない。まずまずの代替肉がいまより簡単に手に入り、頻繁に口にされるようになって初めて、徐々に、畜産動物を、知性を持った個々の存在として見られるようになるのかもしれない。

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