あらすじ
クリーンミートとは――動物の細胞から人工培養でつくる食肉のこと。
成長ホルモン、農薬、大腸菌、食品添加物に汚染されておらず、一般の肉よりはるかに純粋な肉。培養技術で肉をつくれば、動物を飼育して殺すよりも、はるかに多くの資源を節減できるうえ、気候変動に与える影響もずっと少なくてすむ。そして、安全性も高い。2013年に世界初の培養ハンバーグがつくられ、その後もスタートアップが技術開発を進めている。
これはもはやSFではない。
シリコンバレー、ニューヨーク、オランダ、日本など世界の起業家たちがこのクレイジーな事業に大真面目に取り組み、先を見据えた投資家たちが資金を投入している。
フードテックの最前線に迫る!
ユヴァル・ノア・ハラリ(『サピエンス全史』著者)序文で推薦!
「希望にあふれる魅力的な本書で、著者は『細胞農業』と呼ばれる食品・衣料品の新たな生産方法の可能性を生き生きと描き出している」
エリック・シュミット(グーグル元CEO)絶賛!
「クリーンミートの革命をリードする科学者、起業家、活動家について学ぶには、説得力があり、前向きな本書を読むといい」
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Posted by ブクログ
今、代替肉としてメジャーなのは植物由来のフェイクミートで、すでにスーパーなどでも売られている。本書で扱われるのは動物の筋肉組織を培養してできるクリーンミートの話題。
畜産業によって生み出される食肉は骨や羽毛など、大量の無駄が出るし温室効果ガスの排出量も運輸部門全体のそれに匹敵する。アメリカで使用されている抗生物質の80%は畜産動物に投与されている。目的は病気の治療ではなく、過密な飼育環境による病気の予防と成長の促進だ。世界で生産される大豆もその大半は動物の資料になっており、その栽培のための土地開発は熱帯雨林の森林伐採の最大の原因になっている。(クリーンミートに反対している業界の代表的なものは大豆農家で、畜産業がなくなった場合に大きな打撃を受ける)
食肉のうち、もっとも効率が良いのが鶏肉だが、これでさえ1キロカロリーの肉を得るのに9キロカロリーの餌がいる。くちばしの成長や呼吸、消化などの生物学的プロセスのために消費される。牛肉の場合は23キロカロリーを費やしてやっと、1キロカロリーの肉が作られる。
培養肉であるクリーンミートの場合、ウシであれば筋繊維2万本でハンバーグ一個ができる。これは肉牛の飼育期間24ヶ月に対して3ヶ月程度にすぎない。
2013年に最初のクリーンミート試食会が行われたが、これは「25万ユーロのクォーター・パウンダー」として知られる。そのあと「In Vitro Meat Cookbook」というレシピ本も出されており、有名人や自分の肉を食べよう、というレシピも紹介されている。
今の技術では立体的な肉を作ったりするのはまだ難しいが皮革はそれほどでもない。クロコダイルなどのみならず、現存しない動物の革製品も作ることができる。MODERN MEADOWなど、商業的な製品を販売している会社もある。
・2016年後半、環境保護団体からの支援を得るために、パーフェクト・デイは資金を投じてライフサイクル分析を行い、自社の人工牛乳と一般の牛乳とを比較した。結果は目覚ましいものだった。パーフェクト・デイが生産するのは牛乳だけで、牛のそのほかの部分には関与しない。そのため(査読なしの)分析の結果、同社の人工牛乳の生産に必要な資源量はエネルギー量で24~84パーセント、水の使用量で98パーセント、土地の使用面積で77~91パーセント、そして温室効果ガスの排出量でも35~65パーセント、一般的な牛乳のそれを下回ることが判明した。
・いま、世界にはライオン4万頭と家畜化された豚10億頭、象50万頭と家畜化された牛15億頭、ペンギン5000万羽と鶏500億羽が暮らしている。2009年の個体数調査では、ヨーロッパには全種合計で16億羽の野鳥がいることが確認された。同じ年にヨーロッパの養鶏場で飼育された鶏の数は70億羽近くにのぼる。地球上の脊椎動物の大半は、もはや自由には生きられなくなっている。ホモ・サピエンスというただ1種類の動物に所有され、支配されているのだ。
・工業的畜産は投資家にとって大きなリスクだ。工業的畜産には私が「黙示録の4騎士」と呼んでいる4つの不都合な真実がある。人間の健康を損なっていること、気候変動の原因になっていること、食料安全保障上の問題があること、地球の資源を損なっていること、この4つだ。工業的畜産による食肉生産は、世界最大量の真水と抗生物質を消費し、最も広範囲に森林を破壊しているうえ、人間の食料供給方法としても効率が悪い。いまや人間よりも畜産動物のほうが多くの穀物を消費している。この狂気の沙汰を、止める必要がある。
Posted by ブクログ
クリーンミートは代替肉ではなく、本物の肉である。現代のバイオテクノロジーを使って細胞を培養し、動物を殺すことなく、必要な本物の肉を生産していく。そのスタートアップ企業で夢と理想を追う人々を追う。
クリーンミートがこの地球に及ぼす影響は甚大である。それは道徳から環境問題、公衆衛生まで「正」の革命を引き起こす。工業的畜産によって生産=殺される動物がなくなる。現在の畜産による温室効果ガスの放出は車、バス、電車、飛行機、船・・・など運輸部門全部合わせたものより多いが、それが大きく削減される。畜産物の糞便による食中毒がなくなるばかりでなく、家畜- ヒトへの新たの感染症が発生するリスクが極小化される。
2013年にはクリーンミートハンバーグはすでに作られ、すでに人の口に入っている。そして今、「細胞農業」によって様々な畜産品が生産可能になってきており、一部ではスーパーにも供給され始めているという。
あと10年もすれば、世界は変わっているかもしれない。ワクワクする本。