橋本治のレビュー一覧
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この人の描く登場人物ではない話者の第三者的視点みたいなものが知ったかぶりっぽいというかどうもしっくり来なくて、あまり好みではなかったのだが、こういう書き方だからこそ描ける物語もあるのかもしれない。震災というテーマは個人的な経験だが俯瞰で見なければ描けないものもあると思うので。
「無能」という言葉が心に残った。あの時物資を送ろうと街へ出たとき、自分のできることのあまりの小ささに呆然とした記憶がある。もちろん「無能」な自分に思考停止して皆が何もしなかったら事態は動かないのであり、「無能」を抱えながらも必死で動いてくれた人たちがいたからこそ今があり、これからがあるのだが、あの時「無能」を感じなかった -
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4~5年前のベストセラーを再読。
“「上司は思いつきでものを言う」ということが、なぜ起こってきたのかを、儒教の伝来にまで遡り、とてもスリリングに解剖していく。「現場」の声を聞く能力の復活に向けて、懇切丁寧な今後の道中案内の書。”―あらすじより。
第一章:上司は思いつきでものを言う
第二章:会社というもの
第三章:「下から上へ」がない組織
第四章:「上司でなにが悪い」とお思いのあなたへ
『上司は思いつきでものを言う』をテーマに、日本のサラリーマン社会を考察。
ビジネス書というよりはサブカル本って感じですね。
読み物としては面白いけど、簡潔にまとめれば、これほどページ数 -
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ネタバレ時代が下るほどに取り上げることが卑小になる。最後はミッチーサッチーなんて、ワイドショーレベルの事象が20世紀の1999年に起こったこととして、記録される。
(上)では世界史を扱おうとして大上段に構えていた感があるが、(下)では開き直って著者本来の世界に戻ってきた感じだ。殆ど日本の出来事オンリーの、それも週刊誌的発想の出来事回想録としか思えない(下)だが、悪いことばかりではない。戦後の日本人の振る舞い、あるいは戦争責任論として読むべき文章も散見される。
それにしてもこの人から「」を取ったら一行も文章を書けないのではないか?心配になる。 -
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ネタバレ20世紀といっても別に欧米と中国、そして日本だけが世界の全てではない筈なのに、そこには中南米や中東、アフリカ、南・東南アジアへの視点は完全に欠落している。のみならず、文化史的な記述も(作家なのに)少なすぎ。キュビズムも未来派もゼセッションもCIAMもロストジェネレーションも一切言及なし。全体への目配りがないのに反比例して自説は強硬に押し捲るからやたらと反復が多く途中で「もうわかったから」とうんざりする。(第一次世界大戦の終結が第二次世界大戦に直結しているとの説は別に個性的な見解でもなんでもないが、それにしても本書には何度でてくることか)箇条書きにすれば多分10行くらいにまとまる内容だ。
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フォトリーディング後、高速を交えて熟読。
「桃尻娘」と言う小説を書いた作家の、自分の幅を広げる方法についての書。「わからない」と言う事を原動力に進む事を示している。
著者を知っている人はもっと楽しめたのだろう。なるほどと納得する部分も多くあったが、著者を知らないので「セーターの本」について半分くらいを割いて説明されてもちょっと戸惑ってしまう。
その他には「エコールドパリ」のなんたるかを知らずにそれをドラマ化するに至った話や、「枕草子」を桃尻語訳(現代少女訳)した話。
それぞれの中に著者の世界観があって面白かった。ただ、著者を知っている人向けなのでは?と思わされた。
星は三つ。 -
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さっぱりわからない。
この本は「わからない」ことを肯定的に捉えて、行動を起こす原動力にすることについて述べた本である。
それは良くわかる。
理系(に限らないのだろうが)の美談には、必ずその手のエピソードが含まれる。
時には偉大な発明・発見に繋がることもある。
だが、この本に登場する「わからない」エピソードは、筆者の「男性向けセーターの本を書いたこと」「エコールドパリをドラマ化したこと」「枕草子を翻訳したこと」が、なぜそのエピソードに繋がるのかがどうもわからない。しかも本の6〜7割はセータ本の話である。はっきり言って筆者のエッセイである。
ただ、それらエピソードを通じて、「わからない」を利 -
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これまでを否定して、改めようとする若手と、これまでの誤りを認めたくない上司の間で、それでも「現状はだめだ」という認識が共有された時、上司の突拍子もない「思いつき」が生まれる、という話。
後半は、歴史的な観点からの日本文化論。
上に立つ人ほど徳があることになっている日本的儒教受容が、「上司はもしかしたらバカかもしれない」という前提のもと、上司を立てながらものをいう必要がある、という話。
日本は「遅れた国」というコンプレックスから、努力により軍事的脅威を与えずにものを売ることに成功するようになった、という議論が終盤にあった。
この歴史観は・・・どうなのだろう?若干疑問が残る。
内容には全面的に同 -
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この本は『橋本治という行き方』『橋本治という考え方』に続くもので、
タイトルはすでに考えられていたものだというけど
実際に難病を患って、立ち止まらざるを得なくなったというのが凄いというか。
前半は政治的な話が多く、途中から病気が発覚し、
入院して治療を受けながら書いたもので
時事的な話の中にも、他に様々な個人的な背景が影響してたのがわかる。
病院にいて「病人として生き方を変える」となるところが橋本さんだなと思う。
終わりの方にある「自明の理は自明の理でしょう?」という文章が
もっと普通に通らなければいけないなと思う。
あえて問いただして解剖するまでもないものまで
フラットな場所に置いてつつきま -
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題名を見て想像されるようにシェークスピアの「リア王」になぞらえて書かれた小説です。舞台は戦後の日本、主人公は妻を40代で亡くした帝大出の文部省の官僚の砺波文三という設定です。
彼には3人の娘がいますが、リア王に登場する娘たちと同じような配役になっており、末娘の静との二人の生活が中心となりお話は進みます。4部構成の章の最初に「リア王」から引用された台詞が入り、その話を象徴します。砺波家の人々を追いながら、実は敗戦後の日本の在り方や世の中の動きや、それに伴う人々のものの考え方、行動の変化に焦点があてられた構成になっています。
小説ながら、橋本さんならではの言葉の使い方の説明があるので、舞台を見なが -