橋本治のレビュー一覧

  • 性のタブーのない日本

    Posted by ブクログ

    この人の本は今までにも何冊か読んできているが、扱うテーマが結構幅広い。強いて言えば共通しているのは「人間とはどういうものか」といった所か。本書では日本人の性に対する価値観を歴史から紐解いている。オープンになったと思われる現代よりも昔(弥生時代~江戸時代)の方がよほどオープンで、その根底には「そういうもんだ」という考えがあったようだ。

    西洋の話も聖書で紹介している。日本で言えば古事記のようなものか。元の内容(?)学校で習うよりも遥かに、性的だけでなく人間の本能をありのままにえぐるような表現が多い。

    社会性、といった方がいいか、それを人間が獲得していく中で、性への考え方、道徳観、表現の仕方は変

    0
    2021年03月18日
  • リア家の人々(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「橋」「巡礼」に続けて読みました。橋本治さんのエッセイ(評論)は、読んだことあるけれど、小説は初めて。評論も独自視点で思考の渦に巻き込まれるけど、小説も独自な設定で(ゴミ屋敷の主人、犯罪者、元戦犯の官僚と娘)昭和を描いていた。誰かに何かを話したくなるけど、それが簡単にまとまらない、橋本ワールド。

    0
    2021年02月13日
  • 福沢諭吉の『学問のすゝめ』

    Posted by ブクログ

    相手が古典レベルの書物故か、全体的に内容は難しく、終盤はなげっぱ(諭吉オマージュ?)な感じがしたが、学問のすゝめの要所について、それぞれの時代背景と合わせて解説や思想が書かれていた。学問のすゝめ関連の本を読むのは初めてだったので、やはり一発で理解は出来なかった…他の書籍と合わせて読むには良い本だったと思う。

    0
    2021年02月08日
  • いつまでも若いと思うなよ

    Posted by ブクログ

    老いについて、著者の経験を交えながらいろいろ考えた本。どこか他人事というか、楽観的な部分も大いにあったように思う。
    若い→まだ若い→もうそんなに若くない→若くない→老人、という五段階変化は納得。物忘れが多くなるのは、脳がいっぱいになってきて、覚える気もなくなってくるからというのもなんとなく納得。そして、皆んな、自分の老いに対してはアマチュアだということも。きっと、いろいろ思い悩みながら、徐々に受け入れ、老いに慣れていくしかないのだと。人生ってそんなもの。でも年を取るのは皆んな同じで、老いを経験した諸先輩方はたくさんいると思えば、老いるのはそんなに恐いこともありませんね。とりあえず、いまは健康で

    0
    2021年01月01日
  • リア家の人々(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    どこの家庭もそうとは言えないと思うけど
    女を子供に持つ父親の葛藤を
    見事に表していると思う
    少なくとも私の父親も同じように考えたであろな、
    というところが多々あった

    0
    2020年11月06日
  • 思いつきで世界は進む ──「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    世間のニュースに鋭い切り口で疑問を投げかけています。
    タイトルの通りバカを恥じないようになってしまっては成長できないことになるのでしょう。
    平成という時代を区切りに亡くなられたあたりは、本人が仰った通り、自ら体現したことになってしまいましたね。
    まだまだ生きて書いてほしかったです。

    0
    2020年10月31日
  • 美男へのレッスン(下)

    Posted by ブクログ

    下巻でも、アラン・ドロンや石原裕次郎、マイケル・ジャクソンなど、あちらこちらに議論を転じていきながら、「美男」とはなにかという問題が論じられています。

    本巻の最後は、蜷川幸雄の舞台に出演している19歳の俳優との会話から、著者が少年と男の関係をめぐる考察を展開していますが、その下敷きになっているのが、男の「二段階変化」論です。著者は、自己認識をつくり変えなければならないと主張し、「成熟」がうしなわれてしまった現代人に対する批判をおこなっています。そのうえで、「強くなりたい」と思う人間は「弱さを自覚する」ことができている人間であり、それに対して「自分は主体性を持っている」と錯覚して「弱さを自覚す

    0
    2020年10月23日
  • 蝶のゆくえ

    Posted by ブクログ

    題名が小説ではありません。フランダースの犬が苦々しい強い印象の内容でしたのでそれ以外は淡々とした内容に思いましたが、ふとしたところがそういう思いもあったなと感じさせてくれるものでした。もしかして深いのかもしれない。

    0
    2020年09月30日
  • もう少し浄瑠璃を読もう

    Posted by ブクログ

    前作「浄瑠璃を読もう」を読んだのは、2012年9月。その後、6年半、大阪で単身生活の間、国立文楽劇場に通い、前作に掲載された演目の殆どに触れることが出来た。
    観ていないのは「ひらかな盛衰記」のみ。「本朝二十四孝」は八重垣姫の諏訪湖渡りの「十種香の段」のみだけ鑑賞できた。
    文楽理解と演目鑑賞の助けになった本。

    続編の刊行を知り、読む。
    前作と比べ、マイナーな演目についての論考。僕が観劇したのは「曾根崎心中」「双蝶々曲輪日記」「摂州合邦辻」。
    説教節からの進化、近松門左衛門、竹田出雲達の作者チーム、近松半二、並木宗輔の作家性を明らかにしたいという意図があったのかと思う。

    (引用)
    団七と徳兵衛

    0
    2020年08月14日
  • 思いつきで世界は進む ──「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと

    Posted by ブクログ

    2014年から50回にわたってPR誌『ちくま』(筑摩書房)に連載された著者の記事を、テーマ別に編成して収録している本です。そのときどきの世の中をにぎわしている出来事について、著者がみずからの感想をつづっています。

    『「わからない」という方法』(2001年、集英社新書)以降の著者の本には、啓蒙的な性格が強く出ているように感じています。世界は無限に複雑な襞をもっており、その細部へとどんどん入り込んでいくことで真理に近づいていくというのが、元来の著者の議論のスタイルでした。その後、著者はそうしたみずからの思索のスタイルを、「「わからない」という方法」として、ハウツーものならざるハウツーものとでも呼

    0
    2020年07月02日
  • 橋本治のかけこみ人生相談

    Posted by ブクログ

    相談者全員に対してではないのだけど、ときにびっくりするくらい相手を斬る。斬るといっても、それは相手が相談してきた内容について、「あなたはそれを悩んでいるというけれど、私から見て悩んでいるようには見えない」という次元できびしく切り込んでいるという意味で、相手の人格を否定するとか、傷つけるという意味ではない。そこは整然と、ぶれず誤解を与えない直球で持って行っている。

     それが実は難しいと思うんだよなあ。

     大学院で勉強し、資格を取り、一応は相談の仕事をしたことのある身としてはさ。問題は別のところにありそうだ、と思っても、直球ではなかなか切り込めないよ。そんなことしたら、引っ込んじゃうもの。

    0
    2020年06月02日
  • そして、みんなバカになった

    Posted by ブクログ

    懐かしい人に会いたいと思えるような人がもう少なくなってしまう現代。橋本治のように、全てを許してくれるおじいちゃんのような優しい人は今後少なくなっていくのだろう。
    その事を考えると、「みんないつまでも若いんだな」と思った。だから、橋本治を求めるんだと。
    もう誰も橋本治のようにはなれない。

    0
    2020年05月16日
  • 上司は思いつきでものを言う

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ・世の中が複雑になって、部下に指示を出す場合にも、押さえなければならない情報も膨大になっているので、上司も思いつきでものを言えない状況になっているのでは?勉強している部下もいますからね。

     会社には、通常、平社員の上に、マネージャー、チーフマネージャー、執行役員、経営陣がいるわけですが、マネージャー、チーフマネージャー、執行役員は、経営陣の「思いつき?」を想定して「もの」を言わなければならないので、決して「自分の思いつき」で「もの」を言ったりできないのです。トップは、よく「エンパワーメント」をしている。などと強調していますが、管理職のミーティングに出席していない平社員からは、目的や戦略を明確

    0
    2020年05月08日
  • 思いつきで世界は進む ──「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと

    Posted by ブクログ

    雑誌連載をテーマごとに (無理やり)再編集したものだが、こういう時事ネタを扱うものは時系列が前後していたり、連載時期が不明だと理解が妨げられる。明らかに編集は失敗。章タイトルも内容とリンクしておらず、センスがない。
    また橋本氏にしてはロジックでなく感情で書かれたものが多く、雑多なテーマの短い文章では真価を発揮しないようだ。
    それでも独特の世界観は読んでいて純粋に面白いし、絶妙な喩えも秀逸である。

    0
    2020年03月18日
  • マンガ哲学辞典

    Posted by ブクログ

    「辞典」とタイトルされているので、哲学の歴史や大家の考え方等をマンガで解説してくれるのかと思ったら大間違いで、橋本治の男女論や、自我論他を自身が描いたマンガで述べてる本だった。

    とにかく言ってることが難しいのと、橋本治って絵うまいな~が主たる感想。加えて、内容を理解できない自分の理解力のなさもあらためて感じさせられ、著者の天才ぶりをあらためて感じた次第。

    0
    2020年02月01日
  • 幸いは降る星のごとく

    Posted by ブクログ

    女芸人不毛の時代から、女芸人ブームがやってくるまで。
    その時代を生き延びていった女芸人たちの物語。

    帯に、椿鬼奴さんが
    「主人公の女性芸人に、あの芸人に似てるな、
    あの後輩こういうとこあるな、わかる!と
    フンフン共感しました。」
    とコメントを寄せています。
    で、読んでいると、最後の方に
    「阿蘭陀おかね」という女芸人が登場するんですけれども、
    これは椿鬼奴さんをベースにして書いているんじゃないのかな、
    というキャラクターでした。

    主人公コンビのモンスーンパレスにしても、
    なんとなくですが、オアシズの二人が連想されて、
    まあ、もっと過剰にキャラクターを作り込んでいる感じですが、
    現実のお笑い業

    0
    2020年01月07日
  • 雨の温州蜜柑姫

    Posted by ブクログ

    シリーズ最終巻。今回の主人公は醒井凉子で、彼女の人生を逆にたどることによって、「自由」を求めて格闘する彼女の「青春」がえがかれています。

    第2章は、26歳の凉子がお見合いで高階悠吉という男性に出会い、一目見たときから彼に強く魅かれながらも、母親の縫子によってセッティングされたお見合いという様式のもとで人生の一大事である結婚相手をきめてしまうことへの葛藤をおぼえる凉子の姿がえがかれます。

    第3章は、23歳の凉子がイギリスのオックスフォードに留学し、デビッド・ブラウニングという男性に出会うとともに、大学で学ぶことが自分にとってどのような意味をもつのかという問いに直面する凉子の苦闘が示されていま

    0
    2019年12月18日
  • 帰って来た桃尻娘

    Posted by ブクログ

    シリーズ第三弾。

    一年の浪人生活を経て、みごと早稲田大学に入学した玲奈が、ふたたびメイン・キャラクターを務めることになります。

    短い交際期間を経て破局となった松村唯史や、滝上圭介との恋によって高校時代とはまったくちがう女になった醒井凉子に対する玲奈の容赦のない啖呵は、著者のそれを思わせます。そんな彼女も、源一と磯村の関係を知ってショックを受け、その余波も収まらないあいだに大学で出会った「野草の会」というサークルの美少年・田中優の心の闇をのぞき込むような出来事に巻き込まれてしまいます。

    はじめはすこし読みづらいと感じた文体でしたが、さすがに三巻にもなるとすっかり慣れて、スピーディでアクロバ

    0
    2019年11月28日
  • 桃尻娘

    Posted by ブクログ

    シリーズ第一弾。

    橋本治のデビュー作で、女子高生の「桃尻娘」こと榊原玲奈をはじめ、「無花果少年」磯村薫、「瓜売小僧」木川田源一、「温州蜜柑姫」醒井凉子といった登場人物たちのリアルな語りと思考をトレースした文章でつづられており、著者の奇才っぷりがいかんなく発揮されている作品です。

    同時代の風俗をあつかった作品は賞味期限が短いのがつねで、本書も「だってサァ」「ほんとにィ」といった表記と登場人物のキャラクター造形に、ややつらいものを感じてしまうのも事実です。ただし、著者のエッセイでもしばしば語られる発想がゲイの源ちゃんの口から語られたり、高校三年生の文化祭での出来事に著者の実現できなかった夢を見

    0
    2019年11月28日
  • 勉強ができなくても恥ずかしくない

    Posted by ブクログ

    小学校に入学したケンタくんという少年が、学校での勉強や体育の授業になじむことができず、悩み苦しみながらも、自分で考えて自分の居場所を見つけていく物語です。

    著者の自伝的小説であり、著者の本をある程度読んでいる読者にとってはなじみのあるエピソードを多く見つけられるのではないかと思います。もちろん本書は小説であり創作ではあるものの、「橋本治」という知性がどのようにしてつくられたのかということに関心のある読者にとっても、おもしろい本です。元来は「ちくまプリマ―新書」で刊行された本なので、学校にどこかなじめないでいる中学生や高校生の読者にとってもたのしんで読める作品だと思います。

    0
    2019年11月28日