橋本治のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この人の本は今までにも何冊か読んできているが、扱うテーマが結構幅広い。強いて言えば共通しているのは「人間とはどういうものか」といった所か。本書では日本人の性に対する価値観を歴史から紐解いている。オープンになったと思われる現代よりも昔(弥生時代~江戸時代)の方がよほどオープンで、その根底には「そういうもんだ」という考えがあったようだ。
西洋の話も聖書で紹介している。日本で言えば古事記のようなものか。元の内容(?)学校で習うよりも遥かに、性的だけでなく人間の本能をありのままにえぐるような表現が多い。
社会性、といった方がいいか、それを人間が獲得していく中で、性への考え方、道徳観、表現の仕方は変 -
Posted by ブクログ
老いについて、著者の経験を交えながらいろいろ考えた本。どこか他人事というか、楽観的な部分も大いにあったように思う。
若い→まだ若い→もうそんなに若くない→若くない→老人、という五段階変化は納得。物忘れが多くなるのは、脳がいっぱいになってきて、覚える気もなくなってくるからというのもなんとなく納得。そして、皆んな、自分の老いに対してはアマチュアだということも。きっと、いろいろ思い悩みながら、徐々に受け入れ、老いに慣れていくしかないのだと。人生ってそんなもの。でも年を取るのは皆んな同じで、老いを経験した諸先輩方はたくさんいると思えば、老いるのはそんなに恐いこともありませんね。とりあえず、いまは健康で -
Posted by ブクログ
下巻でも、アラン・ドロンや石原裕次郎、マイケル・ジャクソンなど、あちらこちらに議論を転じていきながら、「美男」とはなにかという問題が論じられています。
本巻の最後は、蜷川幸雄の舞台に出演している19歳の俳優との会話から、著者が少年と男の関係をめぐる考察を展開していますが、その下敷きになっているのが、男の「二段階変化」論です。著者は、自己認識をつくり変えなければならないと主張し、「成熟」がうしなわれてしまった現代人に対する批判をおこなっています。そのうえで、「強くなりたい」と思う人間は「弱さを自覚する」ことができている人間であり、それに対して「自分は主体性を持っている」と錯覚して「弱さを自覚す -
Posted by ブクログ
前作「浄瑠璃を読もう」を読んだのは、2012年9月。その後、6年半、大阪で単身生活の間、国立文楽劇場に通い、前作に掲載された演目の殆どに触れることが出来た。
観ていないのは「ひらかな盛衰記」のみ。「本朝二十四孝」は八重垣姫の諏訪湖渡りの「十種香の段」のみだけ鑑賞できた。
文楽理解と演目鑑賞の助けになった本。
続編の刊行を知り、読む。
前作と比べ、マイナーな演目についての論考。僕が観劇したのは「曾根崎心中」「双蝶々曲輪日記」「摂州合邦辻」。
説教節からの進化、近松門左衛門、竹田出雲達の作者チーム、近松半二、並木宗輔の作家性を明らかにしたいという意図があったのかと思う。
(引用)
団七と徳兵衛 -
Posted by ブクログ
2014年から50回にわたってPR誌『ちくま』(筑摩書房)に連載された著者の記事を、テーマ別に編成して収録している本です。そのときどきの世の中をにぎわしている出来事について、著者がみずからの感想をつづっています。
『「わからない」という方法』(2001年、集英社新書)以降の著者の本には、啓蒙的な性格が強く出ているように感じています。世界は無限に複雑な襞をもっており、その細部へとどんどん入り込んでいくことで真理に近づいていくというのが、元来の著者の議論のスタイルでした。その後、著者はそうしたみずからの思索のスタイルを、「「わからない」という方法」として、ハウツーものならざるハウツーものとでも呼 -
Posted by ブクログ
相談者全員に対してではないのだけど、ときにびっくりするくらい相手を斬る。斬るといっても、それは相手が相談してきた内容について、「あなたはそれを悩んでいるというけれど、私から見て悩んでいるようには見えない」という次元できびしく切り込んでいるという意味で、相手の人格を否定するとか、傷つけるという意味ではない。そこは整然と、ぶれず誤解を与えない直球で持って行っている。
それが実は難しいと思うんだよなあ。
大学院で勉強し、資格を取り、一応は相談の仕事をしたことのある身としてはさ。問題は別のところにありそうだ、と思っても、直球ではなかなか切り込めないよ。そんなことしたら、引っ込んじゃうもの。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ・世の中が複雑になって、部下に指示を出す場合にも、押さえなければならない情報も膨大になっているので、上司も思いつきでものを言えない状況になっているのでは?勉強している部下もいますからね。
会社には、通常、平社員の上に、マネージャー、チーフマネージャー、執行役員、経営陣がいるわけですが、マネージャー、チーフマネージャー、執行役員は、経営陣の「思いつき?」を想定して「もの」を言わなければならないので、決して「自分の思いつき」で「もの」を言ったりできないのです。トップは、よく「エンパワーメント」をしている。などと強調していますが、管理職のミーティングに出席していない平社員からは、目的や戦略を明確 -
Posted by ブクログ
女芸人不毛の時代から、女芸人ブームがやってくるまで。
その時代を生き延びていった女芸人たちの物語。
帯に、椿鬼奴さんが
「主人公の女性芸人に、あの芸人に似てるな、
あの後輩こういうとこあるな、わかる!と
フンフン共感しました。」
とコメントを寄せています。
で、読んでいると、最後の方に
「阿蘭陀おかね」という女芸人が登場するんですけれども、
これは椿鬼奴さんをベースにして書いているんじゃないのかな、
というキャラクターでした。
主人公コンビのモンスーンパレスにしても、
なんとなくですが、オアシズの二人が連想されて、
まあ、もっと過剰にキャラクターを作り込んでいる感じですが、
現実のお笑い業 -
Posted by ブクログ
シリーズ最終巻。今回の主人公は醒井凉子で、彼女の人生を逆にたどることによって、「自由」を求めて格闘する彼女の「青春」がえがかれています。
第2章は、26歳の凉子がお見合いで高階悠吉という男性に出会い、一目見たときから彼に強く魅かれながらも、母親の縫子によってセッティングされたお見合いという様式のもとで人生の一大事である結婚相手をきめてしまうことへの葛藤をおぼえる凉子の姿がえがかれます。
第3章は、23歳の凉子がイギリスのオックスフォードに留学し、デビッド・ブラウニングという男性に出会うとともに、大学で学ぶことが自分にとってどのような意味をもつのかという問いに直面する凉子の苦闘が示されていま -
Posted by ブクログ
シリーズ第三弾。
一年の浪人生活を経て、みごと早稲田大学に入学した玲奈が、ふたたびメイン・キャラクターを務めることになります。
短い交際期間を経て破局となった松村唯史や、滝上圭介との恋によって高校時代とはまったくちがう女になった醒井凉子に対する玲奈の容赦のない啖呵は、著者のそれを思わせます。そんな彼女も、源一と磯村の関係を知ってショックを受け、その余波も収まらないあいだに大学で出会った「野草の会」というサークルの美少年・田中優の心の闇をのぞき込むような出来事に巻き込まれてしまいます。
はじめはすこし読みづらいと感じた文体でしたが、さすがに三巻にもなるとすっかり慣れて、スピーディでアクロバ -
Posted by ブクログ
シリーズ第一弾。
橋本治のデビュー作で、女子高生の「桃尻娘」こと榊原玲奈をはじめ、「無花果少年」磯村薫、「瓜売小僧」木川田源一、「温州蜜柑姫」醒井凉子といった登場人物たちのリアルな語りと思考をトレースした文章でつづられており、著者の奇才っぷりがいかんなく発揮されている作品です。
同時代の風俗をあつかった作品は賞味期限が短いのがつねで、本書も「だってサァ」「ほんとにィ」といった表記と登場人物のキャラクター造形に、ややつらいものを感じてしまうのも事実です。ただし、著者のエッセイでもしばしば語られる発想がゲイの源ちゃんの口から語られたり、高校三年生の文化祭での出来事に著者の実現できなかった夢を見 -
Posted by ブクログ
小学校に入学したケンタくんという少年が、学校での勉強や体育の授業になじむことができず、悩み苦しみながらも、自分で考えて自分の居場所を見つけていく物語です。
著者の自伝的小説であり、著者の本をある程度読んでいる読者にとってはなじみのあるエピソードを多く見つけられるのではないかと思います。もちろん本書は小説であり創作ではあるものの、「橋本治」という知性がどのようにしてつくられたのかということに関心のある読者にとっても、おもしろい本です。元来は「ちくまプリマ―新書」で刊行された本なので、学校にどこかなじめないでいる中学生や高校生の読者にとってもたのしんで読める作品だと思います。