橋本治のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2018年の作品。当時70歳になろうとしていた橋本治が、その約30年後、2046年頃の世の中を舞台に、98歳になろうとしている自分自身を語り部として独り語りをする異色の小説。
東京大震災で首都圏は壊滅し、科学者の暴走により甦らされたプテラノドンが野生化していることを除けば、社会のありようは今とそれほど変わっていない。この辺の設定は近未来っぽくって絶妙。
主人公は、社会や若者(といっても「ゆとり世代」が50歳くらいになっているのだが)に対して毒づき、思うようにならない自身の身体、記憶力の低下、至るところの不調に悩まされながら、それでもなかなか死ねないという境遇を愚痴りまくる。
このあたりは -
-
Posted by ブクログ
128
『枕草子』を書いた清少納言が「時代の中に生きた美の冒険者」であるのに対して、『徒然草』を書いた兼好法師が、「時代の中に生きなかった美の傍観者」であるという違いです。
だから、兼好法師は出家してしまう。
→徒然草=「隠者の文学」はつまんねぇ
146
『徒然草』は「王朝の美学」を語ることに挫折した男による、日本で最初の「人間世界」を語るエッセイ集です。気がつけば「王朝の美学」はもう遠くに去っていて、自分の目の前には「美」を欠いた雑な「人間世界」があった。つまり、「現実に目を向けた」です。
→出家=世を捨てることの意味
245
批評に必要なのは、「終わってしまった領域の確定」で、だから -
-
Posted by ブクログ
夫は「ああ、そうだな」、妻は「がんばりなさい」しか言わず、子供は何をがんばればいいかわからないままゲームばかりしている。そんな描写が、すごく真実をとらえているなと。
多くの人物が戦前から順に登場するが、名前が憶えられないようなクセのある書き方をしている。
人物相関図を書こうかと思ったが、面倒なのであきらめた。
それでも最後まで読めた。そう人物相関図は不要。親子関係だけでOK。
時代を生きる人々の生活と苦悩が淡々と書かれている。
近代社会のドキュメンタリー。
ただ、近年の猟奇的な殺人事件などが書かれているが、昭和の時代にもあったので、そこが書かれていないのが物足りない。 -
Posted by ブクログ
ウェブマガジン「幻冬舎plus」で著者に寄せられた人生相談に対する回答をまとめた本です。
著者はかつて『青空人生相談所』(ちくま文庫)という本を刊行しており、そこで同様の企画をおこなっていたのですが、本書はその約三十年後におこなわれた企画で、年をかさねて以前より多少はやさしくなった著者の回答を読むことができます。といっても、「ストレートに言ってしまうと、あなたのご主人は「他人のことなんかよく分からないスポーツバカ」です」といったように、遠慮のないことばが記されています。ただそのばあいでも、相談者の文面を読めば、相談者自身がたしかにそのように考えているであろうことが浮かびあがってくるので、まず -
Posted by ブクログ
「自分の頭でじぶんなりに考えるということ」をめぐって、著者特有の堂々めぐりをつづける議論を展開している本です。
著者は、「“自分のことを考える”がそのまま“自分のことを考える”になる人」と、「“自分のことを考える”が不思議にも“他人のことを考える”になってしまう人」という二つの類型を立てたうえで、前者が「近代」、後者が「前近代」に相当すると主張します。そのうえで、現代において「不幸な女の子を救ってあげたい」と考える男の恋愛の問題性や、西洋にならって近代化をめざすも組織の論理が根強く存在する日本社会の性格についての考察など、さまざまなテーマに著者の筆はおよんでいきます。
さらに著者は、上の二 -
Posted by ブクログ
1990年代の「女芸人ブーム」を担うことになった、四人の女性たちをえがいた小説です。
著者のエッセイ作品を連想させる、過剰なまでに饒舌な文体で、お笑いコンビ「モンスーンパレス」を結成する金坪真名子(かなつぼ・まなこ)と安井貴子(やすい・たかこ)という二人の女性の青春時代を中心に、ともざわとみこ、阿蘭陀(おらんだ)おかねの二人を加えて、芸能界でそれなりの地歩を得た女芸人たちの三十代が活写されています。
本作が小説でありながらエッセイに近いような印象をあたえるのは、登場人物たちの身に起こった出来事がストーリーとして語られるというよりも、彼女たちが時代と状況のなかでどのような位置を占めることによ -
Posted by ブクログ
短編小説五編を収録しています。
「文庫版のあとがき」によると、本書は『生きる歓び』『つばめの来る日』『蝶のゆくえ』につづく作品で、本書を含むこれらの短編集では「バブルがはじけた後の騒々しい焼け跡のような時代の中から「寂しさ」を拾い出そう」というねらいで書かれたものです。とくに本書では、「自分で見ることが出来ない男の背中」をえがくことがめざされており、このことは「男の根本にある不透明さ、曖昧さ」と言い換えられています。
前作『蝶のゆくえ』と同様、ストーリーのなかで登場人物たちの心情がたどるプロセスについて著者がくどいほどに説明を加えるというスタイルが採用されています。著者は、「百人分くらいの -
-
Posted by ブクログ
橋本治氏は70年代の「桃尻娘」、80年代の「桃尻語訳枕草子」で話題になった。特に後者の作品が出たときには、ちょっとした日本古典ブームも起きたと思う。
そして90年代には「窯変源氏物語」が出た。
この作品が出た頃、新刊の1巻を購入して読もうとしたのだが、数ページを読んで挫折した記憶がある。
今回はそのリベンジ。歳をとると(?)、昔挫折してしまった本に改めて挑戦したくなってしまう。
実は学生時代は古典が嫌いで、源氏物語も枕草子も徒然草もほとんど読まなかった。源氏物語といえば「あさきゆめみし」という大和和紀さんの漫画が有名だが、それも読まなかった。なので全くの初見でよむ橋本治版「源氏物語」。
他を読