橋本治のレビュー一覧
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28歳で旅行会社に勤務する古屋倫子は、「卵子が老化する」という話を知り、にわかに結婚までのカウント・ダウンがスタートしたような気持ちに襲われます。しかしその後、還暦を迎えた父を囲んで旅行に出かけることになった彼女は、世間のどこにでもありそうな兄夫婦の家庭を目にして、あこがれをいだくことのできるような結婚のイメージが自分のなかにも世間にも存在していないことをたしかめます。
倫子の同僚である大橋花蓮は鴨志田という交際中の男からプロポーズを受けたことを倫子に相談します。しかし倫子は、現実に結婚生活へと入ろうとしている花蓮が背中を押してもらいたがっていることを理解できず、倫子にとっては現実感のない結 -
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短編6作品を収録しています。
「自作解説」には、本書に収められた作品のテーマは「女にとって、母とはいかなるものか。家とはいかなるものか」という問いであることが明かされていますが、いずれも女性たちの心のうちを冷徹に腑分けした小説になっています。とくに冒頭に置かれている「ふらんだーすの犬」は、児童虐待にいたった美加の心が鋭くえぐりだされていて、強い印象を受けました。
本書に登場する主人公たちは、もっとも若い「ふらんだーすの犬」の美加が23歳で、もっとも年上の「白菜」の孝子が57歳という設定になっています。「家」というテーマは近代日本文学の中心でしたが、著者はこのことを踏まえたうえで、本書では現 -
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「あとがき」には、雑誌『群像』から「三十年後の近未来」についての小説を執筆してほしいという依頼を受けて、1948年生まれの著者が98歳になったときのことを書くことにしたという本書誕生の経緯が語られています。
98歳になった橋本治は、
50歳の「ゆとり」世代の君塚をはじめとする周囲の人びとに対して、心のなかでぼやきながらも、繰り言めいてくる自分の愚痴にしだいにどうでもよくなっていく経緯などが追いかけられていて、とりあえずおもしろく読めました。
ところで本書には、著者の文庫本にはめずらしく、巻末に「解説」が付されています。執筆しているのは内田樹で、「「脱力」を推進力にしてグルーヴ感のある文章 -
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6人の登場人物やその親を含めて、意外なことに著者と同じ団塊の世代が描かれていない。常夫の親が団塊の世代に当たるのだが、実に存在感が希薄なのだ。陰画のように団塊の存在を浮かび上がらせる仕掛けかと思わせるほど。
逆に存在感が濃厚なのが夢夫の世代。実に色々な事件の当事者となっている。
とにかくこの本はインテリではなく、大衆目線、庶民目線の戦後史だ。なので衝動はあるが理屈はない。何故か都市に引き寄せられ、何故か女と暮らし、また別れる。とにかく人並にあらねばならぬと思い込み、手に入れた人並みは泡沫の中で消えて、あの豊かさとは何だったのかと振り返る。今と地続きの人々の感情の重なり、様々な世代のそれぞれの思 -
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ネタバレ・そう思って、安心してください。この私のモットーは「”わからない”を認めない限り、”わかる”は訪れない」です。この章で、皆さんは「日本の古典はそもそもわからないものである」ということを認めました。「だったらわかるようになるかもしれない」というところで、次ですー。
・「無常感」の「無常」というのは、仏教の思想からきたもので、「常ということは無い」です。「いつまでも同じということはない」ーこれが「無常感」です。べつにどうってことのない話で、あたりまえです。でも、この「あたりまえ」に、ほんのちょっとなにかがくっつくと、ドキッとします。「いつまでも同じということはない。すべてのものには、いつか終わり -
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再読。
読むものがない時のつなぎでパラパラ読んでいたが、
間をどれだけ開けても、スッと入ってくる橋本さんの言葉がすごい。
ものごとを知る、分かっていく、作っていく、その過程を
橋本さん流のわかりやすいくどい言葉で追っていく。
何かを生み出すことに近道はなく、ひらめいたものを確かなものにするために、あとはただ進むだけ。
作品を作り上げるという大きな話だけでなく、
日常の中にある「わからないもの」を分かるようにするための筋道は同じものだ。
身体を信じている橋本さんの言葉は、しごくまっとうで、誰にでも届く。
わかりやすく、のためにえんえんと言葉を重ねる誠実さ。
橋本治の本は、もっと読まれないといけな -
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現代社会において「美男」が置かれている位置について考察をおこなっている本です。
著者はまず、オードリー・ヘップバーン主演の映画『パリで一緒に』を題材に、中年のシナリオライター役で登場するウィリアム・ホールデンと二枚目俳優のトニー・カーティスを対比しながら、若い美男に対抗意識を燃やす中年男と、そうした中年男の思惑とは無関係に「それ自体でバカかもしれない」美男との齟齬に注目しています。著者のまなざしは、中年男と美男の自己認識における相違に注がれています。すなわち、すでにロマンをうしなって現実に生きているという確信をもっている中年男と、この社会において美男としてのスタイルを引き受けざるをえないとい -
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今回の著作は秀逸、歴史物ではなく、「失敗の本質の検証」に対する想いが伝わる。
310万人が亡くなった太平洋戦争
大きな戦略が明確でないと最終的な勝利は覚束ない
戦場の指揮官ばかりではなく、陸海軍の枢要な部署にある連中の戦略構想が大事
太平洋戦争においては不思議なくらい日本の軍人さんは決断ができなかった
統制好き 上からの命令遵守の指揮官が多かった
しかし「組織の目的を明確に」することはなかなか難しい
真の目的を部下と共有すること、プロジェクトリーダーとして最も重要
それこそがリーダーシップ!
西南戦争が終わり、山県有朋は「統帥権の独立」を制度化した -
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口述という体裁もあってか今回もあっちこっちに話が飛ぶのに、最後に必ず元に戻ってきて、きちんと筋が通っているところが相変わらず凄い。またこの人の言葉の使い方、特に喩えが超絶に上手い。昭和=「復興経済」との表現もすごく腑に落ちる。
英EU離脱は成長、拡大を追求した経済飽和の象徴であり、もうこれ以上の拡大路線は無理でしょ?というのが骨子。
カワキタ氏やホヅミ君だけでなく、自分も含めてこう言う言い方をされると「じゃあどんどん縮小していく世の中が幸せなのかよ」という発想になりがちだが、著者はこのような0-1の二元論に陥るのを止めて、その中間の心地良い所を探しませんか、と言っている。まあそう言われればそう -
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ネタバレ・半年もたたぬ間に、総理大臣はもう二度代わっている。新しくなろうとしても、国の中枢はそうそう変われない。「これなら大丈夫だろう」と思われる人物を連れて来ても、国の中枢にふさわしいと思われる人物なら、なんらかの形で汚れている。「新しくなる」ということは、そう簡単なことではないのだ。
・人にはそれぞれの背景がある。同じ時、同じ場所にあっても、それぞれに得るものは違う。違うものを得て、同じ「一つの時代」という秩序を作り上げて行く。一切が解体された「戦後」という時代は、新しい秩序という収まりを得ることに急で、その秩序を成り立たせる一人一人の内にあるばらつきを知らぬままにいた。
・誰に言いつけられた