橋本治のレビュー一覧
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ネタバレ・そう思って、安心してください。この私のモットーは「”わからない”を認めない限り、”わかる”は訪れない」です。この章で、皆さんは「日本の古典はそもそもわからないものである」ということを認めました。「だったらわかるようになるかもしれない」というところで、次ですー。
・「無常感」の「無常」というのは、仏教の思想からきたもので、「常ということは無い」です。「いつまでも同じということはない」ーこれが「無常感」です。べつにどうってことのない話で、あたりまえです。でも、この「あたりまえ」に、ほんのちょっとなにかがくっつくと、ドキッとします。「いつまでも同じということはない。すべてのものには、いつか終わり -
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再読。
読むものがない時のつなぎでパラパラ読んでいたが、
間をどれだけ開けても、スッと入ってくる橋本さんの言葉がすごい。
ものごとを知る、分かっていく、作っていく、その過程を
橋本さん流のわかりやすいくどい言葉で追っていく。
何かを生み出すことに近道はなく、ひらめいたものを確かなものにするために、あとはただ進むだけ。
作品を作り上げるという大きな話だけでなく、
日常の中にある「わからないもの」を分かるようにするための筋道は同じものだ。
身体を信じている橋本さんの言葉は、しごくまっとうで、誰にでも届く。
わかりやすく、のためにえんえんと言葉を重ねる誠実さ。
橋本治の本は、もっと読まれないといけな -
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現代社会において「美男」が置かれている位置について考察をおこなっている本です。
著者はまず、オードリー・ヘップバーン主演の映画『パリで一緒に』を題材に、中年のシナリオライター役で登場するウィリアム・ホールデンと二枚目俳優のトニー・カーティスを対比しながら、若い美男に対抗意識を燃やす中年男と、そうした中年男の思惑とは無関係に「それ自体でバカかもしれない」美男との齟齬に注目しています。著者のまなざしは、中年男と美男の自己認識における相違に注がれています。すなわち、すでにロマンをうしなって現実に生きているという確信をもっている中年男と、この社会において美男としてのスタイルを引き受けざるをえないとい -
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今回の著作は秀逸、歴史物ではなく、「失敗の本質の検証」に対する想いが伝わる。
310万人が亡くなった太平洋戦争
大きな戦略が明確でないと最終的な勝利は覚束ない
戦場の指揮官ばかりではなく、陸海軍の枢要な部署にある連中の戦略構想が大事
太平洋戦争においては不思議なくらい日本の軍人さんは決断ができなかった
統制好き 上からの命令遵守の指揮官が多かった
しかし「組織の目的を明確に」することはなかなか難しい
真の目的を部下と共有すること、プロジェクトリーダーとして最も重要
それこそがリーダーシップ!
西南戦争が終わり、山県有朋は「統帥権の独立」を制度化した -
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口述という体裁もあってか今回もあっちこっちに話が飛ぶのに、最後に必ず元に戻ってきて、きちんと筋が通っているところが相変わらず凄い。またこの人の言葉の使い方、特に喩えが超絶に上手い。昭和=「復興経済」との表現もすごく腑に落ちる。
英EU離脱は成長、拡大を追求した経済飽和の象徴であり、もうこれ以上の拡大路線は無理でしょ?というのが骨子。
カワキタ氏やホヅミ君だけでなく、自分も含めてこう言う言い方をされると「じゃあどんどん縮小していく世の中が幸せなのかよ」という発想になりがちだが、著者はこのような0-1の二元論に陥るのを止めて、その中間の心地良い所を探しませんか、と言っている。まあそう言われればそう -
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ネタバレ・半年もたたぬ間に、総理大臣はもう二度代わっている。新しくなろうとしても、国の中枢はそうそう変われない。「これなら大丈夫だろう」と思われる人物を連れて来ても、国の中枢にふさわしいと思われる人物なら、なんらかの形で汚れている。「新しくなる」ということは、そう簡単なことではないのだ。
・人にはそれぞれの背景がある。同じ時、同じ場所にあっても、それぞれに得るものは違う。違うものを得て、同じ「一つの時代」という秩序を作り上げて行く。一切が解体された「戦後」という時代は、新しい秩序という収まりを得ることに急で、その秩序を成り立たせる一人一人の内にあるばらつきを知らぬままにいた。
・誰に言いつけられた -
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橋本治(1948~2019年)氏は、東大在学中に、「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」という東大駒場祭のポスターで注目され、その後イラストレーターを経て、文筆業に転じ、様々なメディアでも活躍した小説家、評論家、随筆家。
本書は、「わかる」ために、セーターの編み物の本まで書いてしまった著者が、「わからない」が全ての出発点である、ということについて、繰り返し、著者独特の(くねくねした)文体で書き綴ったものである。2001年出版。
著者も述べているように、方法論を書いたハウツー本ではない。
なるほど!と思った点をいくつか引用すると、以下である。
◆「「わからな -
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橋本治の本を読んだのは3冊目である。
1冊目は『知性の転覆』、2冊目は『上司は思いつきでものを言う』で、この2冊で橋本治のファンになった。
橋本治は面白い。
面白さの一つは「等身大」である。
橋本治は等身大でものを言う。背伸びをしていないから合点がいく。それは本書では「身体性」である。
二つ目は「地を這う」である。
ものの言い方には「帰納」と「演繹」の2種類がある。「帰納」=「地を這う」で、「演繹」=「天を行く」に対応するのだが、橋本治の書き方は極めて帰納的である。
なるほど、ここまで書いてみてようやく分かった。
橋本治の文章は帰納的であり身体的なのだ。
「分かる」には、
①作業を通して言葉 -
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・多分、人はどこかで自分が生きている時代と一体化している。だから、昭和の終わり頃、実に多くの著名人が死んでいったことを思い出す。
・「戦争法案だから反対だ」というスローガンは分りやすい。でもその分りやすさは、「日本の安全保障をどうするのか?」という問題をたやすく吹っ飛ばしてしまう。反対するべきは、その法案の一歩も二歩も先を読んだ「戦争法案だから」ではなくて、「我々のやることだから余分なことは言わずに受け入れろ」という政府の態度に対してであるべきはずなのに、「戦争法案反対」の声はそこを素通りする。
「その説明は説明になっていない。説明ではない、ただの押しつけだ」ということが、重大なる徳目違反を -
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聞き書きの本。
50代と30代のライターを相手に、話ながら進めていく。
橋本治さんが育った時代の、目に見える世界の変わりよう、
生活や人が変わっていくのを肌で実感し、
そこから大事なことを抽出すると
ちゃんと世界を見るものさしができあがる。
橋本さんの中で、イギリスのEU離脱のお題は、
遠くローマ帝国の時代にまでさかのぼりながら、
ロシア崩壊や日本のバブル期、今の世の中にあふれる物言いにまで
経済というキーワードですべてつなげていく。
決してアクロバティックな論理ではなく、ごく普通にたどっていくだけで
物事がシンプルに見えてくる。
今のビッグデータなんてものに振り回されなくても、
橋本治という -
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解説がたくさん載っているので古典文学初心者にとっては、歴史の勉強にもなり読み易い。
「古事記」上、中、下の3巻の上の巻の分のみ。
日本はイザナミが最初に淡路島を産んで次々と国土ができていった。神々は人間は作らない。
あとがきに「神様は人間ではない。しかしいつの間にか、神様は人間になっていく」と。
神様は完璧な存在と思っていたが、人間と変わらず人の良い方、意地悪な方、やんちゃな方という神様もたくさん登場して親近感が湧く。
先祖を辿れば近所の人も皆親戚のような気がしてくる。
子供の頃絵本で読んだオオクニヌシノミコトがウサギを助けた話やヤマタノオロチの話もある。