橋本治のレビュー一覧

  • 九十八歳になった私
    2018年の作品。当時70歳になろうとしていた橋本治が、その約30年後、2046年頃の世の中を舞台に、98歳になろうとしている自分自身を語り部として独り語りをする異色の小説。

    東京大震災で首都圏は壊滅し、科学者の暴走により甦らされたプテラノドンが野生化していることを除けば、社会のありようは今とそれ...続きを読む
  • 大江戸歌舞伎はこんなもの
     読み進めていってもさっぱりわからなかったが、あとがきで作者が、江戸の歌舞伎というのはなんだかわからないものなのだ、と書いていて少し安心した。
     そのなんだかわからないものに橋本はせまろうとしているわけだが、こちらは数えるほどしか歌舞伎を見ておらず、理解はしにくい。

    p70:曾我兄弟は関東の人間な...続きを読む
  • 「三島由紀夫」とはなにものだったのか(新潮文庫)
    代表作ぐらいは読み込んでおかないと、この本を味わうことはできない。当然。
    それにしても著者の聡明ぶりが伝わってくる。
  • 人はなぜ「美しい」がわかるのか
    128
    『枕草子』を書いた清少納言が「時代の中に生きた美の冒険者」であるのに対して、『徒然草』を書いた兼好法師が、「時代の中に生きなかった美の傍観者」であるという違いです。
     だから、兼好法師は出家してしまう。
    →徒然草=「隠者の文学」はつまんねぇ

    146
    『徒然草』は「王朝の美学」を語ることに挫...続きを読む
  • これで古典がよくわかる
    これで古典がよくわかったかは???だけど、「和漢混淆文とはなんで、それはどのようにしてうまれたか」ということは何となく理解できた。「古典をわかるうえで必要なのは教養をつけるためではなく、行き当たりばったりで"へ〜"と言って感心していることだ」というのは共感できた。月を見てせつないな、花を見て綺麗だな...続きを読む
  • 古事記
    初めてちゃんと読んでみた。知っている話も多かったが、なかなか面白かった。このシリーズを読破しようと思う。
  • 上司は思いつきでものを言う
    本所自体が思いつきで書かれているような印象で、理路が整然じゃないので読みにくい。またデータや調査があるわけではないので鵜呑みにするのもアレ。
    たまにハッとするようなことが書いてあるんだけどいかんせん読み続けるのがしんどくてもったいないような気がした。
     上司をバカにせず、馬鹿な可能性を踏まえて、提案...続きを読む
  • 性のタブーのない日本
    まぐわうって、目合うで、目が合うとそれは性交するという日本の古代に、タブー謎なかった。それは、ただの自然な生理で過ぎなかったわけで。
    ただしフリーではなく、モラルやルールはあったというのを、古典や絵画から描き出す。
    源氏物語なんか凄いな。これ、よく子供たち読ませようてって思う。当時の女流文革なんか、...続きを読む
  • マルメロ草紙 -edition courante-
    19世紀のパリ。金持ちの夫と見初められたうぶな田舎娘の妻、女優を夢見る妻の妹、欲と愛情、矜恃が芸術の花開く舞台で繰り広げられる。幸せや真実は置き去りにして。めくるめく耽美の世界。
  • 草薙の剣(新潮文庫)
    長さを測るのに定規を使う。長さは同じでも起点が違えば、同じ長さのところにある位置は変わる。これは透明の紙に生まれてから死ぬまでのイベントを書いて、年表に載せて作られた小説である。定規の役割を担う年表はセンチや尺やインチみたいに、微妙にメモリが異なっている。あらすじみたいを書き連ねた細切れな小説を、定...続きを読む
  • 上司は思いつきでものを言う
    この不景気(賃金引き上げがない、税金が増える、諸物価が高くなる)状況では、まさに上司は「思いつきで物を言う」が散漫するはずだ。現代、55歳以上は日本の景気が良い時に育ち、何もしなくとも(語弊があるかもしれないが)会社を大きくできた。だが、昨今の「利潤追求」「コスト削減」が支流で、「不況」経験のない上...続きを読む
  • 乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない(橋本治流ビジネス書)
    自分の持つ「欲望」は幻想かもしれない。
    不要な物を必要と感じさせ、欲望を喚起させることが果たして本当に求められているのか?
    消費活動によってしか自己を表現できないような生き方はしたくない。
  • 草薙の剣(新潮文庫)
    夫は「ああ、そうだな」、妻は「がんばりなさい」しか言わず、子供は何をがんばればいいかわからないままゲームばかりしている。そんな描写が、すごく真実をとらえているなと。

    多くの人物が戦前から順に登場するが、名前が憶えられないようなクセのある書き方をしている。

    人物相関図を書こうかと思ったが、面倒なの...続きを読む
  • 橋本治のかけこみ人生相談
    ウェブマガジン「幻冬舎plus」で著者に寄せられた人生相談に対する回答をまとめた本です。

    著者はかつて『青空人生相談所』(ちくま文庫)という本を刊行しており、そこで同様の企画をおこなっていたのですが、本書はその約三十年後におこなわれた企画で、年をかさねて以前より多少はやさしくなった著者の回答を読む...続きを読む
  • 幸いは降る星のごとく
    1990年代の「女芸人ブーム」を担うことになった、四人の女性たちをえがいた小説です。

    著者のエッセイ作品を連想させる、過剰なまでに饒舌な文体で、お笑いコンビ「モンスーンパレス」を結成する金坪真名子(かなつぼ・まなこ)と安井貴子(やすい・たかこ)という二人の女性の青春時代を中心に、ともざわとみこ、阿...続きを読む
  • いま私たちが考えるべきこと(新潮文庫)
    「自分の頭でじぶんなりに考えるということ」をめぐって、著者特有の堂々めぐりをつづける議論を展開している本です。

    著者は、「“自分のことを考える”がそのまま“自分のことを考える”になる人」と、「“自分のことを考える”が不思議にも“他人のことを考える”になってしまう人」という二つの類型を立てたうえで、...続きを読む
  • 夜

    短編小説五編を収録しています。

    「文庫版のあとがき」によると、本書は『生きる歓び』『つばめの来る日』『蝶のゆくえ』につづく作品で、本書を含むこれらの短編集では「バブルがはじけた後の騒々しい焼け跡のような時代の中から「寂しさ」を拾い出そう」というねらいで書かれたものです。とくに本書では、「自分で見る...続きを読む
  • 掌篇歳時記 春夏
    二十四節気をさらに三等分した七十二候をもとに、年末から夏にかけて、それぞれ人気作家がつづる短編集。
    季節がテーマで、純文学系の作家が中心ということで、その表現を楽しむ小説であることは間違いない。
    でも、その反面、連想で思考があちこちに飛んでしまうので、集中できないのも確か。
    寂聴氏の作品を初めて読ん...続きを読む
  • 桃尻娘
    40年ほど前の作品のため、芸能人の名前や、言葉の選択に時代を感じたが、人の根幹は変わらないなぁと。
    主人公の心の動きに重点をおいた文章の記載方法で、言葉が洪水のように溢れ出していった。
  • 性のタブーのない日本
    この人の本は今までにも何冊か読んできているが、扱うテーマが結構幅広い。強いて言えば共通しているのは「人間とはどういうものか」といった所か。本書では日本人の性に対する価値観を歴史から紐解いている。オープンになったと思われる現代よりも昔(弥生時代~江戸時代)の方がよほどオープンで、その根底には「そういう...続きを読む