橋本治のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
橋本治は19世紀も、20世紀も、江戸も、あれこれみんな総括して見せて、たぶん、最近の新書では「平成」も総括していたと思うが、おしまいには借金も総括して逝ってしまった。さびしい。
1969年で終わるこの小説は、「昭和」というよりも、「戦後」を総括して見せているとぼくは思った。
しつこく低いアングルで撮り続けながら、延々とナレーションを入れていく。ここで解説を入れているのは誰だと思っていると、細目の笑顔の作家の顔が浮かんでくる。笑うしかないようなものだが、そうは言いながら、という気分で、その世界へ引きずり込まれてしまう。いつもの橋本治だ。
戦後史をこの角度で書いている人はそうはいない。小熊 -
Posted by ブクログ
◇目次
○まえがき
○一:「古典」て、なんでしょう
○二:古典を読んでみましょう
○三:ちょっと意地悪な樋口一葉
○四:和文脈の文章と漢文脈の文章
○五:日本語は不思議に続いている
○六:はっきりとした説明をしない小野小町
○七:春はどうして「曙」なのか?
○八:分からないものを読んでもよく分からない
○九:亀の恩返し
○十:古典を読んだ方がいい理由
○十一:今とは違うこと
○十二:意外に今と同じこと
○十三:歴史はくるくると変わる
○十四:日本語が変わる時
○十五:人の声が言葉を作る
○十六:漢文の役割
○十七:『日本書紀』の読み方
○十八:王朝の物語を読んでみましょう
○あとがき
一般に -
Posted by ブクログ
序章,第一章まで読んだ.面白い!(2007年)再度読み始める.第6章にまとめの部分があり、全体の把握に最適だ.この先、どうしたらいいのか? の解答として、"まずは日本人が天動説から地動説に戻って、「自分たちが社会の上に乗っかって動いている」という謙虚な意識を取り戻さないと「心のある論理」は生まれてこない.(p217)" がエッセンスだと感じた.ここでいう天動説は、80年代以降の現象を要約した概念だ."もう豊かな社会が出来上がってしまっている.それが当然の環境で育った若い人は、自分たちが汗水垂らして社会を作ろうなんて意識はなくなる.自分の幸せのために社会があるってい
-
Posted by ブクログ
私達が瞬間的にたびたび考えることを言葉にしました、というような内容。これだけ巧みに言葉をつないで論理を形成していけるということに脱帽しました。
後ろの方にある、「個性を伸ばす教育」のあたりは自分とほとんど考えていることが同じでびっくりしました。
本当は「前から思っていたこと」なんじゃなくて、「「前から思っていた」と思っていたこと」なんでしょうね。優れた作家には「おれも同じこと考えていたよ」というような錯覚を促す力があります。
他のレビューにあるように、確かに回りくどくて、抽象的な表現も多いのですが、自分の場合は橋本治に対する信頼が強いので、無理なく楽しく読めました。 -
Posted by ブクログ
これは、若い女性に向かって言った言葉ではなく、老いに向かっていく自分に対しての言葉。
体は確実に老いていくのに、そして体は何度もその信号を送っているのに、脳がそれを認めない。
人間というのは幼いころから成長曲線が右肩上がりで、いざ下り始めると、新しい出来事を記憶しにくくなってしまう。
だから、若かったころの、できたときの自分の感覚で考えるから、齟齬を生じるらしい。
子どもの運動会に参加して転ぶのは、若いころにスポーツをしていたお父さんが多いのもそのせいだと聞いたことがある。
頭は若い時の感覚で指令を出すけれど、体は全然追いつかないのだそうだ。
“「自分」とは、アクのようなものだ。
アク -
Posted by ブクログ
ネタバレ前著「知性の顛覆」で知性とモラルの関係について語り、今回も「暴力」と「意地悪」の違いから始まり、いつもの通りどんどん脱線しながら簡単に結論に行き着かない。この過程そのものが「巨大なる知性・思索」の結晶なのだけれど、自分にとっても、発達障害などの外来で子どもの行動分析にもとても役に立つ考察になっている。
「言葉がなくなるとキレて暴力に走る」はその通りで、学校で友達に手を出してしまう子の多くは、言語性のIQが低い。人を罵倒する言葉は得てして2文字で、短い言葉の方が衝撃度が高いからなんてのは独特の思考回路で面白い。だから、暴力を避けるための知恵は、なるべく言葉を長くすること、なるほど! 「死ね」→ -
Posted by ブクログ
ネタバレとても大事なことが書かれている一冊である。
一読では消化できないので、メモとする。
日本の伝統芸能では自分を「消す」ものなのに対し、SNS時代の自分とはまず「出す」ものであるという変化。この変化が石原慎太郎の太陽の季節による「肉体=性欲の肯定」あたりにあるという話を見ると、今の後期高齢者の「マッチョな思想」が見えてくる。一方で、アプレゲール以前の近代日本文学は「自己主張できない」という現実を前にした苦悶を描いた。
みんなが自己主張する時代に、自分のあり方が揺らいでしまうと、人は不機嫌になる。上昇志向はないが、優越性が「崩される」と考える。中流こそが差別を生む。自己主張を肯定する共和制はエ -
-