橋本治のレビュー一覧

  • 「わからない」という方法

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    わからない人が抱える「何がわからないかがわからない」という点をうまく使って、何もかもをスポンジのように吸収してしまう方法論。
    気づきを得るためには、常にアンテナをピンと張る必要がある。加えて、これまでの蓄積とリンクさせれば、飛躍させることができる。
    知性する身体という擬タイトルに痺れた。

    0
    2019年03月17日
  • リア家の人々(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

     橋本治は19世紀も、20世紀も、江戸も、あれこれみんな総括して見せて、たぶん、最近の新書では「平成」も総括していたと思うが、おしまいには借金も総括して逝ってしまった。さびしい。
     1969年で終わるこの小説は、「昭和」というよりも、「戦後」を総括して見せているとぼくは思った。
     しつこく低いアングルで撮り続けながら、延々とナレーションを入れていく。ここで解説を入れているのは誰だと思っていると、細目の笑顔の作家の顔が浮かんでくる。笑うしかないようなものだが、そうは言いながら、という気分で、その世界へ引きずり込まれてしまう。いつもの橋本治だ。
     戦後史をこの角度で書いている人はそうはいない。小熊

    0
    2019年03月11日
  • 国家を考えてみよう

    Posted by ブクログ

    明治憲法への回帰を夢見るジジイに、この一節を贈りたい。

    >ファンタジーではないので、「この耀かしい鎧を着れば、たちどころに荒廃した国家は甦って、栄光の姿を現す」ということはないのです。

    自分たちが国に身を捧げるのは勝手だけど、若い世代を御伽話の世界に引っ張り込むのはやめなさい。

    これ以上、日本がおかしくならないためにはどうしたらいいのか、よーく考えよう。

    0
    2019年02月23日
  • 上司は思いつきでものを言う

    Posted by ブクログ

    身近にいる「思いつきでものを言う人」を分析したいと思って買った本。
    本の内容からいってその人にはまったくあてはまらなかったが、働く職場のことを考えながら読むと、非常に面白かった。

    0
    2019年02月11日
  • 無花果少年と桃尻娘

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    木川田くん、通称ゲンちゃんと別れた磯村君。何だか、「桃尻娘」の頃と遠く離れてきた感じが濃厚なんだけど、結構いいんですよね、寂しさが、ずっと漂っていて。講談社文庫で買えるのかな?

    0
    2019年01月30日
  • 窯変 源氏物語1

    Posted by ブクログ

    紫式部の源氏物語の筋は変えず、物語はすべて光源氏の一人称で語られるという、珍しいタイプの源氏物語です。この作品は、それだけで現代小説として成立しており、古文を忠実に訳した文章のような違和感がありません。源氏物語の現代語訳を読むのに挫折した人にもおすすめです。

    0
    2019年01月19日
  • これで古典がよくわかる

    Posted by ブクログ

    受験生を対象に書いているせいか、ふだんの橋本治の本に比べるとかなり読みやすい。兼好法師が徒然草を書きはじめた当初は若者だったにちがいない、という意見はおもしろかった。""

    0
    2018年11月06日
  • ちゃんと話すための敬語の本

    Posted by ブクログ

    10代向けに書かれた内容であるが敬語の成り立ちや違い(尊敬・謙譲・丁寧)がよくわかる.敬語は人と人には距離があることを前提とした言葉である.「距離がある」と好き嫌いや尊敬とは違うというのは納得.

    0
    2018年10月09日
  • 古典を読んでみましょう

    Posted by ブクログ

    ◇目次
    ○まえがき
    ○一:「古典」て、なんでしょう
    ○二:古典を読んでみましょう
    ○三:ちょっと意地悪な樋口一葉
    ○四:和文脈の文章と漢文脈の文章
    ○五:日本語は不思議に続いている
    ○六:はっきりとした説明をしない小野小町
    ○七:春はどうして「曙」なのか?
    ○八:分からないものを読んでもよく分からない
    ○九:亀の恩返し
    ○十:古典を読んだ方がいい理由
    ○十一:今とは違うこと
    ○十二:意外に今と同じこと
    ○十三:歴史はくるくると変わる
    ○十四:日本語が変わる時
    ○十五:人の声が言葉を作る
    ○十六:漢文の役割
    ○十七:『日本書紀』の読み方
    ○十八:王朝の物語を読んでみましょう
    ○あとがき

    一般に

    0
    2018年02月27日
  • たとえ世界が終わっても その先の日本を生きる君たちへ

    Posted by ブクログ

    序章,第一章まで読んだ.面白い!(2007年)再度読み始める.第6章にまとめの部分があり、全体の把握に最適だ.この先、どうしたらいいのか? の解答として、"まずは日本人が天動説から地動説に戻って、「自分たちが社会の上に乗っかって動いている」という謙虚な意識を取り戻さないと「心のある論理」は生まれてこない.(p217)" がエッセンスだと感じた.ここでいう天動説は、80年代以降の現象を要約した概念だ."もう豊かな社会が出来上がってしまっている.それが当然の環境で育った若い人は、自分たちが汗水垂らして社会を作ろうなんて意識はなくなる.自分の幸せのために社会があるってい

    0
    2019年08月16日
  • いま私たちが考えるべきこと(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    私達が瞬間的にたびたび考えることを言葉にしました、というような内容。これだけ巧みに言葉をつないで論理を形成していけるということに脱帽しました。

    後ろの方にある、「個性を伸ばす教育」のあたりは自分とほとんど考えていることが同じでびっくりしました。

    本当は「前から思っていたこと」なんじゃなくて、「「前から思っていた」と思っていたこと」なんでしょうね。優れた作家には「おれも同じこと考えていたよ」というような錯覚を促す力があります。

    他のレビューにあるように、確かに回りくどくて、抽象的な表現も多いのですが、自分の場合は橋本治に対する信頼が強いので、無理なく楽しく読めました。

    0
    2017年11月01日
  • いつまでも若いと思うなよ

    Posted by ブクログ

    これは、若い女性に向かって言った言葉ではなく、老いに向かっていく自分に対しての言葉。
    体は確実に老いていくのに、そして体は何度もその信号を送っているのに、脳がそれを認めない。

    人間というのは幼いころから成長曲線が右肩上がりで、いざ下り始めると、新しい出来事を記憶しにくくなってしまう。
    だから、若かったころの、できたときの自分の感覚で考えるから、齟齬を生じるらしい。
    子どもの運動会に参加して転ぶのは、若いころにスポーツをしていたお父さんが多いのもそのせいだと聞いたことがある。
    頭は若い時の感覚で指令を出すけれど、体は全然追いつかないのだそうだ。

    “「自分」とは、アクのようなものだ。
    アク

    0
    2017年10月27日
  • いとも優雅な意地悪の教本

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    前著「知性の顛覆」で知性とモラルの関係について語り、今回も「暴力」と「意地悪」の違いから始まり、いつもの通りどんどん脱線しながら簡単に結論に行き着かない。この過程そのものが「巨大なる知性・思索」の結晶なのだけれど、自分にとっても、発達障害などの外来で子どもの行動分析にもとても役に立つ考察になっている。

    「言葉がなくなるとキレて暴力に走る」はその通りで、学校で友達に手を出してしまう子の多くは、言語性のIQが低い。人を罵倒する言葉は得てして2文字で、短い言葉の方が衝撃度が高いからなんてのは独特の思考回路で面白い。だから、暴力を避けるための知恵は、なるべく言葉を長くすること、なるほど! 「死ね」→

    0
    2017年09月24日
  • 知性のテン覆 日本人がバカになってしまう構造

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    とても大事なことが書かれている一冊である。
    一読では消化できないので、メモとする。

     日本の伝統芸能では自分を「消す」ものなのに対し、SNS時代の自分とはまず「出す」ものであるという変化。この変化が石原慎太郎の太陽の季節による「肉体=性欲の肯定」あたりにあるという話を見ると、今の後期高齢者の「マッチョな思想」が見えてくる。一方で、アプレゲール以前の近代日本文学は「自己主張できない」という現実を前にした苦悶を描いた。

    みんなが自己主張する時代に、自分のあり方が揺らいでしまうと、人は不機嫌になる。上昇志向はないが、優越性が「崩される」と考える。中流こそが差別を生む。自己主張を肯定する共和制はエ

    0
    2017年09月15日
  • 性のタブーのない日本

    Posted by ブクログ

    明治以前の日本社会には、性的モラル(道徳的規範、価値観)はあったが、性的タブー(許されない、非難されるべきこと)はなかった。

    題材として、『古事記』『源氏物語』や絵巻物、春画などが取り上げられ、それらが今風の言葉で冗談交じりに解説される。

    0
    2017年09月01日
  • 大江戸歌舞伎はこんなもの

    Posted by ブクログ

    歌舞伎だけでなく、「物語」を考える上で重要ですね。『江戸にフランス革命を』と共に考察したいがところですね。著者の作品に通していえることですが、読んでいる時は、わかった気がするのですが、深いので何回も読まないと残ってこないのが、現在の素直な感想ですね。知識、知見があればなとつくづく反省しますよ。

    0
    2017年02月23日
  • これで古典がよくわかる

    Posted by ブクログ

    源実朝のくだりが面白かった。
    古典というとどうしても私達とは遠い存在に思うけれど、当時の人々も同じように悩んだり喜んだりしながら書いていたのか、という当たり前だが見落としがちなことを再発見できた。
    とても読みやすい。
    入門に最適。

    0
    2017年02月04日
  • これで古典がよくわかる

    Posted by ブクログ

    平安時代の古典が現代日本人にわからないのは当たり前。かな漢字混じりの文章表現は長い年月をかけて男女の役割の垣根を超えて作り上げられてきたもので、ようやく鎌倉時代に徒然草で形になってきたもの。その途上で和歌はものすごく退廃的なまでの美を表現してみたり(新古今集)それを自己否定して万葉ぶってみたりする。

    0
    2017年01月01日
  • 巡礼(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    最初はゴミ屋敷の主人と近所の住民とのトラブルの話かと思ったら、ゴミ屋敷の一家の歴史が描かれていく。どんな人間にもそれまでに至る当然の過程があるのだが、普段見えない部分を掘り下げて、読者もそのストーリーに引きずり込まれていく。読み終わった後で読む前とは違う自分に気づかされる。

    0
    2016年12月22日
  • あなたの苦手な彼女について

    Posted by ブクログ

    自分はどこかに所属している。だからこそ自分の思いは受け入れられるはずだと思うからこそ、人は孤独を感じるのです。
    孤独とはつまり、自分はどこかに所属しているはずなのに、その所属が見つからないという思いだからです。
    我こう思うゆえに我あり。お前こう思うゆえに我なし

    0
    2016年11月10日