橋本治のレビュー一覧

  • 失楽園の向こう側(小学館文庫)

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    私は、人生に行き詰まったら、この本を読んでいます。
    平易なエッセーですが、日本の問題点とその本質を見事に語っているような気がします。

    この本は決して「ああしろ」「こうしろ」という指南本、マニュアルではありません。

    「いや、もう日本ってこれから先何も良い事ないよ、でも生きていこうね」
    と、さらりと言っているようです。

    しかし、氏のスタンスには、厳しさと、そして、優しさがあります。
    それらの混ざり具合が、私なんかは、絶妙というか天才的だなと感じています。

     「人それぞれ」、「あなたには関係ない」、これらの言葉が巷に溢れているような気がします。
    今の社会状態は、相当な病を抱えていると思います

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    2017年06月06日
  • たとえ世界が終わっても その先の日本を生きる君たちへ

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    最近、「話す」人が増えて、「聞く」人が減った。
    「聞く」人は、「話す」人の話しを、ニーズだと思うようになった。
    自分にとって、利益があるか、ないか、その功利性が、「話し手」と「聞き手」、
    「私」と「他人」の境界を分ける要素となった。

     橋本氏は、本当に不思議な人で、「まぁ、とりあえず、俺の話しを聞いてよ、意味ないと思うけど」
    と相手に予め言っておいて、相手のために、自分に与えれた知性と獲得した知性をフル活用して、
    聞き手や読み手に、贈り物をしてくれる。
    その贈り物は、お金を儲ける方法とか人間関係を解決する方法ではなくて、
    人間のあり方から生まれる「心のある論理(五章参照)」である。

     こう

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    2017年06月06日
  • 「わからない」という方法

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    私が、何度も読み返してしまう本です。
    出版されて結構年数が経ちましたが、内容は全く古びてありません。

    それは、読者に対して、橋本氏の一連の著作のメッセージが、「現在の自分は、どこにいるか?」を
    考えさせるものだからだと思います。

    橋本氏は、この本できっぱりと、「正解がある時代は、終わったよ」とさらり言っています。
    これは、私自身を振りかえっても、痛い一言です。
    なぜなら、どこかに「正解」があると思って、
    「ノウハウ」や「理論」や「考え方」を、私自身が探しているからです。

    橋本氏は、「そんなのないよ」と言ってのける。
    もちろん、橋本氏は、根拠がなく言っているわけではありません。
    日本そして

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    2017年06月06日
  • これも男の生きる道

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    私が何回も定期的に読み返してしまう本です。
    男はどう生きるべきか、という「生き方」に関しての本ですが、
    「生き方」自体が、ほぼ死語となっている中で、
    こういうテーマで書けること自体が凄いことです。

    橋本治氏のような「知性」が、もっと日本にいたらいいのにと、
    個人的には思いますが、後にも先にも、出てこないでしょう。

    出版されたのは20年前以上も前ですが、
    今見ても、全く遜色ありません。
    また、氏の著作の多くは、今見ても、
    なるほどな、思わせます。
    『貧乏は正しい!』など、90年代初頭の作品で
    もうすでに、資本主義は終わりましたと指摘していますから、
    その慧眼には脱帽です。
    20年以上の未来の

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    2017年06月06日
  • 貧乏は正しい!(1)(小学館文庫)

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    個人的には、橋本治氏は、業績に比べて、
    日本で一番過小評価されている作家だと思います。
    作家という枠に、入れてしまうのも、どうかなと思うぐらい、
    創造的仕事をしています。
     この『貧乏は正しい!』も91年に書かれたとは、
    思えないほど、氏の日本に対する批評は当たっています。
    この一連の著作では、氏は「資本主義という制度は終わった」と、
    昭和が終わって平成になる時に言及しています。

     昭和64年そして平成元年と言えば、プラザ合意からバブル崩壊までの間の、
    ちょうど絶頂期です。その時期に「資本主義はもう終わってる」と言うこと自体
    並外れた知性と分析力、そして創造性を持っていると思います。
    出版さ

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    2017年06月06日
  • 知性のテン覆 日本人がバカになってしまう構造

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    反知性をヤンキーのくくりで考えると、なるほど比較的すっきりくる訳ですね。作者があとがきで書いているように、論旨があちこちに飛んでいくから、なかなか捉えどころのないように感じつつ読み進めていたけど、なるほど最後2章くらいで、だいぶ理解がまとまりました。読みながら思い浮かんだのは”ぼくらの民主主義~”で、共通している部分としては、小さい声にも耳を澄ませようよ、ってこと。ヘイトスピーチに限らず、どうしても幅を効かせがちなのは大きな声なんだけど、自分の知性不足を思い知らされて腹が立つから、声も大きくなるんですね。でもそもそも知性がなければ発言は控えるべきなんですね。せめて無知の知くらいが備わっていれば

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    2017年06月02日
  • 失楽園の向こう側(小学館文庫)

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     10年以上前の橋本氏の本。雑誌に連載されていたのは記憶にあったが、文庫になってたので入手。一種の哲学書のように思えてきた。人生の指針の書、というわけではないが、中年になって読むとまた心が痛むところ多し。ただ、某書評と同じく、何となく前向きになれる、という意味はわかった気がする。全体的にぼんやり感が残るが、氏独自の記述のせいかもしれない。いかに自ら咀嚼するか、が強く問われている。難しい。

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    2017年03月16日
  • 恋愛論 完全版

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    ネタバレ

    けっこう前にスタンダールの『恋愛論』を読みましたが、
    それとはまた違ってネイキッドなところのこころを扱った恋愛論です。

    話の中心は、著者の初恋です。
    それがまた、純真だなあと思った。
    実は僕って「純粋」っていうのはあんまり好きではないし、
    それにそれは今回のこの事象にたいしては違うと思って考えたら、
    純真という言葉が出てきた。
    それも、しおしおしたりもするんだけれど、
    全体として「陽」に感じた。

    読んでいて、これは僕は敬遠してきた領域だという自覚が出てきた。
    わかるんですよ、わかるんだけれど、
    社会通念上いけないことだとかなり早い段階で意識しちゃうんですよ。
    そこを飛び越えちゃってるのが、

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    2017年01月27日
  • 福沢諭吉の『学問のすゝめ』

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    福沢諭吉にとって、政府という主体は存在しません。それは代理として仮に存在するもので、主体というのは、政府でなくて人民の側にあるのです。このことを、福沢諭吉は、読者である人民に向かって言っているのですが、このことに耳を傾けなければいけないのは、もちろん、人民ではなくて、政府の方です。
    ところが困ったことに、政府の方はいつでも選挙に勝ったから国民の信任をえた!もうやりたい放題だ!の方向に行ってしまいがちです。でも残念ながら、政府は国民の代理なのです。それを忘れて政府の私事に走ったら、もうおしまいです。もうおしまいだということを、今から百四十年間以上も昔に、福沢諭吉は言っているのです。

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    2016年12月19日
  • 乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない(橋本治流ビジネス書)

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    知らなかったが、過去に読んだ「上司は思いつきでものを言う」「「わからない」という方法」を合わせて三部作なのだということ(著者曰く、何の三部作かはわからない)。
    この人の本は「わかりそうでわからない」「わからなそうでわかる」のが特徴だけど、読み進めながら薄々その理由がわかってきた。
    自分の理解をいうと、この人は複雑な話をいくつかのセグメントに分けている。そのわけられたセグメントの一つ一つの話は単純なので理解しやすい。しかし、そのセグメントを集めてきた話はいくつもの要素が重なり合っているので難しい。
    しかし、複雑な話をする時にはこういう方法をとるしかないと思う。複雑な話を単純にして「まあ、要は金の

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    2016年11月28日
  • 性のタブーのない日本

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    いろいろ雑な感じはあるが、
    単純に面白かった‼︎
    読みながらいろいろ笑ってしまった。
    小柴垣草子は初見ながら
    なんか予想外にリアルで笑えた。
    つまり、性はそんなもんでいいんじゃないかと。
    確かにそのものの動詞がないことも納得。

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    2016年07月09日
  • その未来はどうなの?

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    ちょっと斜めの視点から入っていくが、最後には必ず"確かにそうだね”とうならせる切り口になって行くのは見事だ。取り上げた話題も軽いものが多いのに、どう言うわけか内容は軽くない。これもいつもながら不思議。知的な刺激満載で面白い。

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    2016年04月09日
  • 小林秀雄の恵み(新潮文庫)

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    古典をよくわかっている橋本治が、結局のところ古典を理解できていない近代人である小林秀雄を、その痛々しい本居宣長への自己投影に満ちた”読み込み”を解読していく。
    この人のエッセイは、自分の言いたいことを徒然草よろしくのらりくらりと語っていくものが多いのだが、この本は小林秀雄の『本居宣長』という読み込む対象の本があるせいか、作者からの距離がほどよく取れていて読みやすい。小林秀雄とも本居宣長とも、そして著者自身とも、気持ちのよい距離感を保ったまま論が展開していく。モノフォニックなエッセイが多いこの作者にしては、三者の声でできたポリフォニーでできた、重層的な、コクのある評論である。
    文庫版の方が、人名

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    2016年03月08日
  • 乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない(橋本治流ビジネス書)

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    「大不況には本を読む」もそうだったが、主題は「もう経済成長を続けようとしても無理があるのだから、皆が主体的に不便さを選択して成長しない社会(=必要のみに基づく暮らし)を楽しもうよ。」と言う事だと理解した。それが「市場原理は嘘」に端的に表れている。確かにこうやって回りくどく説諭されるとそんな気にもなるのだが、ふとした瞬間に「そんな我慢はできないなぁ」と考え直してしまう。やはり欲望の力は大きいのだ。
    複雑な事象でも物事の本質を的確な比喩で分かりやすく表現する能力には脱帽。本当に頭の良い人だ。読み物としても純粋に面白い。

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    2015年12月17日
  • これで古典がよくわかる

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    万葉がな、ひらがな、カタカナ…それぞれの成り立ちは聞いたことがあったけど、こんな風に変遷してきたとは知らなかったし、意識したこともなかった。いまの日本語の文章が読みやすいのは、昔から試行錯誤を続けてきた結果なんだな。

    『方丈記』は漢字+ひらがなの文章で読むと無常観を感じる。しかし原文は漢字+カタカナで、それを読んでみると科学的な観察に読めてしまう…というのが一番面白くて、印象的だった。

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    2017年05月20日
  • これで古典がよくわかる

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    日本語だと思ってかかると痛い目にあい、外国語だと思ってもとっつきにくい古典の複雑さがの原因がよくわかりました。
    ひとくくりに古典といっても、漢文に万葉仮名、ひらがな、漢文の書き下し文等いろいろあって、現代に近い和漢混淆文が出てくるのは鎌倉時代から。
    読めても、当時の常識分かっていないとネタが分からず頭を捻ることになる。
    そんな古典の分かりにくいところをひも解き、かつ解りやすく入門するための方法が、堅苦しくない文章でかいてあり面白かったです。

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    2015年09月09日
  • 大不況には本を読む

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    「不景気にする」という能動的な手の打ち方だってあるのです。
    「保護貿易」と「自由貿易」という二つの言葉が対になって並んでいると、この二つが同時に生まれたようにも思いますが、そんなことはありません。「自由貿易」が先で、「保護貿易」が後です。

    平易で深い。日本人と資本主義の精神。次男の僻み。

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    2015年09月02日
  • これで古典がよくわかる

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    「ものごとを分かりやすく説明する事の天才」と内田樹氏が絶賛する橋本治氏による古典の読みかた。「窯変源氏物語」など、古典の超現代語訳に取り組んだ筆者ならではの、独特な視点からの古典文学の腑分けが実に面白い。
    歳を取ってから、なんども古典を読み直そうと試みている。何十年ぶりかで古語辞典を買い、「徒然草」や「方丈記」などをぽつぽつと読んでいたのだが、今ひとつ深く入り込めない。どこかよそよそしく、学校の授業での読解のように感じられて、文学として身に入ってこない。

    しかし本書を読んで古典へのアプローチが間違っていたことがわかった。

    まず基本にあるのは「昔の人も、我々と同じ人間である」という認識。何に

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    2014年11月26日
  • 「わからない」という方法

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    「わからないからやる」という方法。
    21世紀は「わからない」時代。
    「わからないからやる」が日本社会の膠着を突破する。
    「わからない」を方法にするのは、度胸と覚悟である。「自分の体は頭が良い」
    脳は信用しないが、自分の身体性は全面的に信ずる。

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    2014年08月06日
  • その未来はどうなの?

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    ネタバレ

    文学と大衆小説の違い。
    「美人」は権利になった。
    「初めに結論ありき」の「どうなるんだろう」ではなくて、「どうすりゃいいんだろう?」という問いを。
    思いやりが大事。
    などなど、普段なかなか言語化されない、「へんだな?」ってことが、平たい言葉で書かれています。

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    2014年07月13日