橋本治のレビュー一覧
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バブルがはじけた後、どうしたらいいかわからない日本人はそのまんまだった。そんな時に、”勝ち組”と呼ばれる人は、既存秩序の外にフロンティアという未開の市場を拓き成果をあげた。
初めはそんな”勝ち組”に反発したその他大勢も、勝ちが確定するとその下にぶら下がることで生き残りを図った。結局、何も変わらない。
日本は利権を分け合う完成された安定したシステムであり、その利権が減り、システムが破綻しかけていても、内側からそれを改革する力は生まれない。完成されているから。
それはつまりそれを構成する構成員が完全にシステムに同化しているから。みんな、「他人になんとかしてもらいたい」としか思っていないから。 -
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おもしろい論考です。難しいことを平明な文章で語らせたら橋本さんは本当に巧い。三島は全作品読んだわけではないのですが、幸い本書で取り上げられているいくつかの作品は既読で、何とかついて行けました。こうなると「豊饒の海」シリーズ読みたいですよね〜。三島の文体が装飾過剰なのは「それはそんなもの」とアッサリ考えていて深く追求したことはなかったのですが、「真実を隠すために言葉を尽くさずにはいられなかった」とは。ここまで微分された考察を提示されると唸ってしまいます。余談ですが、カバーデザインもユーモアというかシャレがきいてて素敵です。「春の雪」は妻夫木くん主演で映画になってましたが、ほかの三作品は映画にして
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全巻大人買いしちゃいました。まずは一冊目。とてもおもしろかったです。この本を初めて知ったのは遥か昔「小学六年生」という雑誌の付録小冊子で、荒俣宏さんが選ぶ百冊みたいな企画でした(チョイスがものすごく大人向けだった。「日々の泡」や「楢山節考」など。辛口チョイスで実に渋いです)。
手に取るまでには実に二十年(…)くらいかかりましたが、本当いいですね〜。原文は語り手不明ですが、この橋本源氏では光君の一人称という明快さです。何だか光君がとても著者に愛されてると思いました。橋本さん光君に萌えすぎというか。「雨夜の品定め」のシーンでは光君の少しシニカルなものの見方が女性的で興味深いです。
あと小君との -
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ネタバレいつものように、橋本治の思考過程を追いながら、小林秀雄は何を考え、当時の人はそんな小林の文章を何故ありがたがったのかが分かります。
けど、この本の中で、私が、一番好きなのは橋本治が小林秀雄の『本居宣長』を読んで「そうか、学問とはいいものだったんだ」って思ったってところです。
愚かな孫は小林秀雄の『本居宣長』を読んで、「そうか、ちゃんと学問をすればじいちゃんが言うみたいに、自信をもってなんでもやることが出来るのか学問というのは、そういう自信を与えてくれるのか』と思ったのである。だから「もう一度ちゃんと学問をしてみようかな」と思った。
(橋本治は小林秀雄の孫ではありません。念のため)
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ネタバレ大好きな橋本治と、最近興味を持った内田樹の対談集ということで読んでみました。
橋本治が自信を持ってあちこち話題が飛ぶのを、内田樹が常識でつなぎとめようという感じの対談でした。
たとえば、橋本治は桃尻娘を書くときに、
俺が知っている十二年分、彼女が知らないんだな。そういう引き算をしちゃったんです。
と、主人公のキャラクターのパーソナリティの作り方を明かすと、内田樹が、
先生は誰でもそういうことができると思ってるんでしょ。引き算が。あえてしないんじゃないんです。「できない」んですよ。引き算なんて。
と応じてみせる。うん。全般そんな感じのやり取りが続く本です。
★★★ -
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2005年出版。
しかし内容は震災と原発事故、悪化する一方の経済に喘ぐ
今の日本にますますふさわしい。
タイトルからは「何らかの解答」が示されているように思えるけれど、
これは「ほとんど解決不能な問題を前にしたときの考え方」
について書かれた本。
そんな問題に直面した時には「これからどうしよう?」ではなく
「過去にどういった選択をした結果、この状況に至ったのだろう?」
と考えるといい。
コナン・ドイルの「緋色の研究」でシャーロック・ホームズは
「物事を訴求的に推理する(reason backward)」ことの大切さを
説いているが、まさにこれが遡及的な思考。
例えば地球温暖化について著 -
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ネタバレ本にマーカー引きすぎてえらいことになっている。
それくらい「そうだよな!」とか「そうだったのか!」が詰まっている。
身体知は大事。
水泳ばかりやってたら水泳に有利な身体になるように、
文句ばっかり言ってたら文句を言うのに有利な身体になる。
この前読んだ「ミラーニューロン」も、
人間が形から変化することを証明しているのではないかな。
特に唯物論的なことを言いたいのではない。
心というものはあると思う。
愛とか勇気とかと同じくらいには。
愛とか勇気とか国家とか常識とか、
それらすべては共同幻想だから、
なんとなく皆が「在る」と思っているものは「在る」ことになっている。
その -
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集英社新書から出版しているアンチ・ノウハウ論、サラリーマン論に引き続き、今度は経済について考察しています。とは言っても、著者の事ですからいわゆる「経済学」の土俵にのって経済を論じるわけではありません。なので、いわゆる「経済学」を期待した読者からは、概念定義がちょっと違うだとか議論や過程が乱暴すぎるとかいった不満が噴出しそうです。まあ、経済学とは一種のモデルに基づいた仮説の社会科学ですから、議論のためには統一した概念とか言葉が必要なのでしょう。しかし、こういった土俵の外からの声に応えるのも、いわゆる「経済学」の役目でしょうし、そういった役割期待に沿えなかったのが現在の「経済学」不信の一因になって