橋本治のレビュー一覧
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老若の女性を主人公にした6作の短編小説集。収録最初の短編「ふらんだーすの犬」があまりに衝撃的で言葉を失う。
巷で繰り返される母親による子への虐待事件。報道を見るたびに思うのは、自分が生み育てた子をどんなきっかけで、なぜ虐待できるのかということ。それが本作品で少し理解できた。虐待までのプロセスが論理的で筋が通っている。加害者を許すことはできないけれど。
このリード作品のインパクトが強すぎて、残りの5作品も、何かとんでもなく不穏なことが起きることを期待して読んでしまう。が、描かれるのは日常の中のちょっとした非日常に戸惑いながら、再び日常を続ける女性たちだ。この展開こそが純文学作家の橋本治作品ら -
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友人から「源氏供養の、ここの場面間違ってない?!」と問われ、初心者ながら源氏好きを公言し、尚且つ橋本治先生は大好きなのになんと!源氏供養を読んでなかったと今更気が付く私・・・
日々、友人にお勧めされた本やミーハー本に追われて最近源氏関連本読んでいなかったなあと反省しました。
源氏供養を読むならその前に窯変再読せねば!と小さな一念発起、久々に全14巻窯変源氏に手を出すことを決意しました(大げさ・笑)。
久々に読んだ橋本源氏、やっぱり異質ですごいわ。
未だにこれを超える訳本は出てないと思っています。そもそも訳本という枠を超えている。
普通の源氏物語は、誰が訳していても光源氏が主役でありながら彼 -
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掴みからして面白いんですけど!
まとめたいけど、まとめられない!
莫大な知識量を惜しげもなく。
人は言葉が足りなくなるとキレて暴力に走る。言葉の数が少ない決めつけだからこそ強く響く。「バカ」は二音。言葉の数のセンテンスが長くなると人は一瞬自分が何を言われているのか分からなくなってカッとなる事が避けれる。言葉の数が多くなると暴力性は薄れる。
「死ね!」命令→「死ねばいいのに」願望→「なんで生きてるんだろ?」主語を曖昧に。それで物足りなければ「アァ!死ねばいいのに」と感嘆をつける。
《思しき事言わぬは腹ふくるるわざー兼好法師》言語化しないと体の中は欲求不満でパンパンになるので「不穏当な願望」であ -
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ネタバレ"ちゃんと話すための敬語 = いいかげんにテキトーに使う敬語"
敬語というものは、人と人との間に距離があることを前提とした言語である。
それ故に、人と距離を縮めたたいと感じたとき矛盾が生じる。
目上の人と仲が良くなりたいために敬語を崩して会話すると、相手からは敬語が聞けない無礼者という認識を持たれてしまう。
元々、敬語というものは、日本で身分制度があったときの名残であり、言わば古い時代の言葉である。
身分制度や階級制度がなくなった比較的フラットな現代において、「自分よりえらいか、えらくないか」という序列を元にした敬語というのはコミュニケーションの足枷になり -
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橋本治氏が亡くなられたので、密かに追悼の意味を込めて、出来るだけ時間を見つけて氏の作品を読んでみようと考えている。
新書でこの限られたスペースのなかで深みのある、歴史の視点をもらった。
そして何よりずっと思っていた『もう、このシステムでは社会はまわらない。そろそろ民主主義に変わる新しい政治システムが必要なのでは』『民主主義というシステムを再興するには人類がもう一度、奈落の底に落ちるところから始めなければならないのか』への答えがあったこと。
もちろん、これは氏の意見にとどまるものたのだが、
私にとっては「たしかに」と思えたことだった。
〜〜
民主主義の弱点とは民主主義が「民主主義というものがよ -
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なぜ、この人は、こんなにも人間のことがわかってしまうのか?と、
ふと、思います。作家の想像力というか、橋本治氏の凄みというか。
現存いる人間で、恐らく最も、知性を持っている一人でしょう。
人に生き方をレクチャーできる数少ない人間です。
あらためて読むと、橋本治氏の人生相談への回答は、
相談者が書かれた文章を正しく理解しようとするアプローチから始まります。
というか、それだけです。
あなたの相談文には、こう書いてあるけど、
少し論理がおかしいから、こうですよねとか、
なんで、この状況と、あの状況を一緒に考えてしまっているのか、
ほんとは、別々に考えることですよねとか、、、、
相談者からすれば -
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タイトルにあるほど『だめだし』はされていないが、やはり橋本氏と橋爪氏の日本語に対するスタンスの違いが際立つ対談になっている。どちらが正しいというものでもないだろうが、自分としては橋本氏の『複雑なものは複雑なまま理解すべき』というスタンスの方に共感する。
この対談で何か結論めいたものを期待する向きにとっては期待外れに終わるが、日本語の成り立ちにまつわる雑多な知識、トリビアを学ぶ目的には持ってこいである。大いに楽しめた。特に日本語は音が基本の話し言葉と、漢文をベースにした書き言葉が2重螺旋のように絡み合いながら発展してきたとの解説には目から鱗が落ちた。
それにしても橋本氏は頭の回転が速いだけで -
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もうこうなると哲学書のようだ。しかもかなり難解の。
反知性主義が蔓延する理由を緻密な構成で考察しているのだが、正直よく理解できない。自分にはそんなに難しい話でなくて、経済成長による中流化で従来存在感のなかった大衆が『ヤンキー』に成り上がり、さらにネットの出現で彼らが自己主張を始めて目立つようになっただけではないのか?
橋本治風に言うと最後まで「よくわからない」だったので、自分としては異例なことに3回繰り返し読んでみた。そうしたら上記の事がちゃんとそう書いてありました。
3回も読むと一つの概念が形を変えて重層的に示されていることに気付くが、極めて複雑な立体図形を分解して「こういう構造になってい -
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この人の書いた新書だからと、気楽な調子で読み始めましたが、期待を裏切る意地悪さで面白かったです。気の抜けた様子で書かれていて、「あれ?」とよく理解できなかったところを読み返すと結構考えさせられることが書いてあります。相当意地悪な本です。著者が書かれている通りに「内容がない」のか、わかっていないのか、一度読んだだけの今は分かりません。でももう一回読んでおかないといけないと思わされるような、何かが書かれています。たぶん。
日本人と西洋人とは、悪の捉え方が違っていて、それゆえに世間一般の悪の考え方が、日本では違うニュアンスになっていると思います。そういうことや、悪を公然と行う「暴力」を行えない人たち -
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俺なんかもバブルの時になんか変だな、嫌な感じと思ってたから、そうだったんだぁ~!て膝を打てるけど、その頃ちっちゃかったり、まだ生まれてない人も今や大勢いるから、実感湧かない人もさらにもっといるんだろうな。
人ってやってる最中は何やってんのかよくわからないことのほうが多い。特に状況がそうなっててその状況に対応する時なんてそうだと思う。だから、後になって、あれはそういうことだったのか!となる。でも、必ずそうなるわけじゃなくて「あれは一体何だったのだろう?」と自分で問いを立てないとおそらく永遠になんだかわからないまま終わるでしょう。それで、無事に人生終えるならそれはそれでおめでたいことではある。
で -
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橋本治氏の俯瞰した社会を見つめ、語る文体が心地よいです。彼の生き方自体もマイノリティ側にあるのだろう。身構えずに、その語りに素直に心を傾けることができる。そして、何よりも分かりやすい。至極まっとうなことを言っているのに、あまり社会の中では触れることのない視点からの世の中の姿を言葉で映し出してくれる。
本のタイトルの『知性の転覆』の「知性」という言葉が実際の社会の中でどのように存在しているかを分かりやすく描いた初まりの「ヤンキーの定義」の箇所を引用します。
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ヤンキーの定義「自分の経験した事だけ」で、その範囲を超えたものは「よく分からない」という判断保留の状態になり、知識を得ることによっ