橋本治のレビュー一覧
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ネタバレ橋本治は、ああでもなくこうでもなくの、力の抜けて、かつ的確な時事評論で知ることになったのだが、これまで小説は読むことがあまりなかった。この2-3年、巡礼、リア家の人々、橋などの
オリジナルを書き下ろしているが、そのさきがけとなっているのが
この短編集である。
どの話も、短編の中に細部までの描写が張り巡らされており、この人のもつ、人に対する確かな洞察力に感服させられる。
児童虐待を扱った「ふらんだーすの犬」は、身勝手な親に捨てられ、虐げられるまでがリアルに描かれる。報道で見る児童虐待や、日常診療で犯人捜しに終始する野次馬的第三者目線ではなく、このような加害者・被害者目線での鋭い視線が -
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内容はお題の通り上司が思いつきでものをいう理由について、日本の体制やはてまて聖徳太子の時代にまでサカノボリ、(いくぶんくどい展開や表現があるが)懇切丁寧に説明したもの。どうやら、部下が建設的な提案をした場合でも現場を離れている上司は
(1)現場がよく見えないため、昔現場にいた頃に則して時代遅れの指摘をしたり
(2)部下の提案を認める=今が悪いことを認める=今という時代を作った上司たる自分達の非を認める ことになるため認めたがらず部下の提案を否定したり
するものだそうです。確かに、上司のいうことは全て認めつつ、上司の意に沿った形を無理やりつくって提案したこととかあった記憶が。。なかなか現実 -
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橋本治の「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」(新潮社 2002年)を読んで(全体の20%しか読まなかったが)ホッとしたところである。
三島由紀夫は1925年に生まれ1970年に死んでいる。
私は彼の著作を殆ど読んでいない。彼は文学者としてスター作家であり常に時の人であった。ましてやあの死にざまである。多少の本読みであり1935年生まれの私が”読んでいない”のは、よほどの”読まない”意思を反映している。
しかしこれほどの大文学者の著作を読まないことについて、常に”それでいいのかな”、”かたくなな独りよがりではないのかな”の思いも無くはなかった。
今、ホッとして、敢えて三島を読まなかっ -
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清盛の先を頼もしく思った。清盛のためにならどんなことでもやってやろうと思い、そのようにして来た邦綱である。今更の他人行儀はおかしい。二十数年前も昔の話を持ち出して、無理なこじつけをする必要はない。清盛は、そのような人物ではなかったはずだ。しかし、清盛は変わった。
盛衰は、起こっては消え、消えてはまた起こる。御世の表の波頭。咲く花は、やがて散るためにこそ咲き誇る。盛りの華に降りかかる雨の滴を、風雅と見るか、無惨と見るか。治承二年の春、その一門の栄華の時は、盛りの蕾を開かせんとして息づいていた。
なにがどう絡み合っているのかは分からない。
しかし、重盛は面を動かさない。かつて勇ん -
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「朝廷中枢での官を上せる以前、受領の性に従う平氏の一族は、地方の任国を一つずつ増やしていったのだ。清盛の以前に、このように権勢を目指して勤勉なる男は、一人もいなかった。」
「清盛は争わなかった。彼が争う以前に、彼の行く道を塞ぐ男達が、争って斃れた。清盛はその後を行った。清盛が栄華を望まなかったわけではない。しかし、清盛が動くその以前に、勤勉を嫌い、権勢を望んだ男達の我執が、清盛のために道を開いてくれていた。清盛は、彼のために開かれた無人の野を行くだけでよかったのだ。」
「栄華を得たその後になって、清盛は、『人の嫉み』という敵と初めて出合わされることとなる。しかし、『嫉み』を敵として、こ -
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読む前まではあまり期待していなかったし10年以上前の書籍だが、内容は期待以上!
現代の相続、土地、銀行、担保、抵当、ローンなどを用いて見事に現代の資本原理を解き明かしている。
出てくる単語は日常の中でも聞く単語ばかりだが実は知らないことが多い。金融や経済の根幹である闇の権力による悪魔主義を理解せずとも、本書を読めば如何に現代の資本原理というものが人間を奴隷化し、大切な個人の蓄えを奪い去るものだというのかがよくわかる。
相続税に纏わる相続という概念について、土地の在り方についてを踏まえ、現代の資本原理を見事に解き明かした一書。「大人」と云われる人達、一社会人として自覚のある方は是非一度読ん -
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2001年、21世紀が始まった年にこの本に出会い、楽しく読みました。
あれから9年、そろそろ読み返してみるか。と再読。
やっぱり20世紀はおもしろい。戦争を節目にして世界も日本も大きくうねってる。20世紀あたまに絶大なる勢力を誇っていたイギリスは第一次、第二次世界大戦を経て萎んでいき、戦後脅威的存在だったソ連はもう今は存在しない。ヨーロッパ中心の世界が戦後、米ソ冷戦を経てアメリカ中心の世界へと以降していく。それが最近の俺様何様のアメリカは経済的危機を迎え、次の世界覇者はどこの国になるのか、未来のことはまったくわかりません。21世紀はどんな時代になるのやら。
22世紀を迎える頃には当然橋本氏も私 -
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本を読むことが、今こそ求められている。知識を得るためではなくて、「何か」を読み手が発見するために。
本自体の内容が良いか悪いか、役に立つか立たないかじゃない。その本が読み手にどんなインスピレーションを引き起こすかだ。
現在は行き詰まった。今から先を考えるためには振り返り、書かれていない「何か」を見つけださなくてはいけない。
読み手は今を生きる僕たちだ。
そんな感じのことを感じる本なんだけど、本文の9割方は「日本から見た世界経済をどう読み解くか」という話。
そして、おすすめの本は無いという、最後の1割での結論。
だけど、それは作者が「本を読む」という行為に対して、真摯であるための必然的な結果。