橋本治のレビュー一覧
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サラリーマンが言う愚痴の代表格である「上司が思いつきでものを言い、自分たちは振り回されている」というところに着目して書かれた本。面白いです。
面白すぎて第一章など数秒で読んでしまったのではないかと思うほどでした(そんなわけはないのですが)。
何がこんなに面白いのだろう? と考えてみて思い至ったのは、語り口でしょうか。(良い意味で言っているのですが)まるで落語を聞いているかのように、”文章”という感覚なくするすると読み進めることが出来る本なのです。
内容はいろいろなところへ二転三転しながら、日本のサラリーマンを取り巻く状況や今に至る歴史など、様々な角度から「サラリーマンというもの」を見ていま -
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ネタバレ橋本治と内田樹の2004~2005年の対談本。「私的なところがなく」「自分のことなんかどうでもいいと思っている」(ただし自己犠牲的な意味では全くなくて)とにかく天才としかいいようのない橋本治の魅力が浮き上がる内容になっている。早世といってもいい年齢での逝去が惜しい。
興味深い対話がたくさんあったが、今読んで特筆だなぁと思うのは、能力を必要とする「参考にする」という行為がだんだんできなくなり「参加」するしかなくなってきて、「全員参加型社会になる」という兆しを指摘している点。15年後のいま、まさに参加する/しないの二択しかないかのような世の中になっているが、中間である縁側を設けてそこに身を置き、 -
ネタバレ 購入済み
気持ちが楽になりました。
色々な悩みに、どの悩み相談にも的確にユーモアのある回答で楽しく読めました。
そもそも、人は悩むのが好きなんでしょうね。解決する事など少なく、また、解決しても次の悩みが出てくる。あとがきにあった通り、解決しない事は悩まない、バカになって楽しむのが一番と言うのが正しい気がします。
下手な考え休むに似たり、ですね。参考になりました。 -
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短編9編を収録しています。
著者はみずから執筆している「解説」のなかで、本書に収録されている作品についての発言を引用するという手の込んだことをおこなっているのですが、そこで著者は「人生の断片は、それ自体が美しい断片であってしかるべきだと、私は思うんですね」と語っています。本書に収められているのは、まさに市井に暮らすごくふつうの人びとの人生の一コマを拾いあげて、そこに映されている輝きをていねいにえがいた物語です。
いずれの物語も、登場人物がヴァラエティに富んでおり、作品の内容も一つひとつが異なる印象をのこすものでありながら、どれもが総タイトルである「生きる歓び」を感じさせる内容になっています -
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氏は、宗教は、もう日本人には、あまり必要とされてないと言う。自立して考えればいいじゃんと、もうとっくに、そういう時代だよと言う。
日本人が自分自身に対してプリンシプルを持たない、持てないというのは、今だからこそ、より深刻な問題として日本を覆っている。何が良いのか、悪いのは、他人をキョロキョロ見ないと、自分の行動を決められないのは、近代をとっくに過ぎても、日本人に重くのしかかっている。
現状は、ますます日本人は、自立した思考、行動、立場をはっきりさせず、存在全てを何かに依存させている。氏の問題提起は、旧くて新しいが、オウム以後でも、日本人は、変わっておらず、何かにすがり付きたい態度が、社会を蝕 -
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○○ロスという言葉がありますが、
以前は、何が○○ロスだよと、引き気味の視点で見ていました。
ただ、ふと、ああ、もうこの世界に橋本治っていないんだな、、、と思うと、寂しくなりました。
この本は、橋本治氏のweb連載の時評ですが、もう二度と、新たに更新されないんだなと思うと、
残念でなりません。
橋本治氏の著作は、毒にも薬にもならないものがたくさんありますが、
語り口が、とにかく愛を感じさせるんですよね。
どうして、ここまで、人間のこと、社会のことを、説明できるんだろうと、、、、。
その説明が、なんというか、カラダ全体で考えているんだろうな、何か、大きなものを、
背負って説明しているんだろう -
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橋本治氏の本は、不思議なもので、参考文献をほぼ明記していない。
これは、自身が語る内容に、よほど自信があるか、
周囲がそれでも良いと認めているか、どちらかだ。
私は、後者だと思う。
固定ファンがいるのもそうだが、誰も氏に対して、
批判できないほど、橋本氏は、「他者の人」である。
この本で引用されてる文献も、
福沢諭吉の『学問ノススメ』だけである。
これだけの文献で、国家を語れる人は、そう多くない。
たぶん、現存する日本の知識人では、両手に数えられるぐらいだろう。
また、氏は、徹底的に権威というものに興味を示さなかった人で、
もし示した人ならば、大学教授になり、テレビのコメンテーターになり、 -
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世界価値観調査によると、日本人の世俗性は世界トップクラスです。
世俗性というのは、言い換えると、ミーハー(新しいモノ好き、古いものはダサいと思う)で、
また、物事に対して、損か得かの判断をとても重視するということです。
この特性からいうと、古典を学ぼう、学びなおそうという人は、
確実に少数派になります。
それでもなぜ学ぶのか?
①試験・受験に必要だから
②面白いから
③強制的に学ばされているから
毎年、何万点も書籍は出版されていますが、
その中で10年後、価値あると言われる本は1%もありません。
20年後、30年後になると、0.01%以下になります。
古典と呼ばれるものになると100年の -
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地域によって売れる本、並べられている本が違うので、旅先の本屋に立ち寄ることが多い。
そんな矢先、本屋で見かけたのがこの本だ。
自分の中で、「優雅」と「意地悪」は、随分とかけ離れたもの同士で、それらは両立しないものだと思っていたので、どんな本かと思い、購入。
「意地悪」と「暴力」の違いという、対立構造から始まり、メリル・ストリープ、樋口一葉、夏目漱石と例を出し、意地悪の側面から紐解いていく。
意地悪とは何かに関しては、はじめに語られているように、「完全犯罪」と同じで、自分の行為がいかにして相手に気付かれないか考えて実行に移すこと、としていて明快だ。
『「意地悪」を考えるとなると、自分を