【感想・ネタバレ】その未来はどうなの?のレビュー

あらすじ

「理論」で世界が語れた20世紀はもはや遠く、今や世の中は分からないことだらけである。しかし「分からない」の仕組みだけがいっそう複雑化し、もはや何が分からないか分からないという事態なのだ。この分からなさ、視界不良はどこから来るのだろう? テレビ、出版、シャッター商店街、結婚、歴史、民主主義…等、「分からない」が山積する諸問題に「100%分からないわけではない“余り”みたいなもの」を糸口にして挑む、危険で過激な知の冒険。【目次】まえがき――自分の未来はどうなの?/第一章 テレビの未来はどうなの?/第二章 ドラマの未来はどうなの?/第三章 出版の未来はどうなの?/第四章 シャッター商店街と結婚の未来はどうなの?/第五章 男の未来と女の未来はどうなの?/第六章 歴史の未来はどうなの?/第七章 TPP後の未来はどうなの?/第八章 経済の未来はどうなの?/第九章 民主主義の未来はどうなの?/あとがき

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ちょっと斜めの視点から入っていくが、最後には必ず"確かにそうだね”とうならせる切り口になって行くのは見事だ。取り上げた話題も軽いものが多いのに、どう言うわけか内容は軽くない。これもいつもながら不思議。知的な刺激満載で面白い。

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2016年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文学と大衆小説の違い。
「美人」は権利になった。
「初めに結論ありき」の「どうなるんだろう」ではなくて、「どうすりゃいいんだろう?」という問いを。
思いやりが大事。
などなど、普段なかなか言語化されない、「へんだな?」ってことが、平たい言葉で書かれています。

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2014年07月13日

Posted by ブクログ

自分の「常識」を、揺るがすような本に出会うのは、この年齢に至ると結構なストレスを感じる。それでも、この本を読むことができたのは、幸いでした。こうした高い知性を保っている物語書きがいるのが、今のこの国の財産な気がする。何が「右傾化」だ。

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2012年10月01日

Posted by ブクログ

相変わらず、日本社会に対する批判の書であろうとは思う。そして、相変わらずわかりにくい。結局、何をいいたいのかよくわからない。そんな印象もある。

橋本治の本は、筆の向くままにいろいろなテーマが繰り出される。それに対して、丁寧に説明したりしなかったりする。しなかったテーマはそのまんま宙ぶらりんである。

橋本治という人はユニークな思考パターンを持っている人だ。それは世間に流通する「常識」とされる考え方によらず、自分自身の思考を積み重ねてきた結果なのだろうと想像する。

最も印象に残ったのは民主主義のこの先について語っている終盤の次の言葉だ。

『自分の利益ばかり求めていた王様は、その結果すべてを失いました。「王様」になってしまった国民だって、それは同じです。だから、「自由すぎる王様」になってしまった国民は、自分以外の「国民のこと」を考えなければいけないのです。しなければならない議論の方向を「自分に有利になる方向」に設定しないことです。「自分の言うことは、みんなのためになることなんだろうか?」と、まず考えることです。「自分の言うことはみんなのためになっている」と言って、それが「利害関係を同じくするみんな」のためだけになっていないのか、と考えることです。

私の言うことは本当に、小学校か中学校の先生みたいですが、「無私」とか「無私の精神」という言葉は、昔から当たり前にあって、私はそれを言っているだけです。』


うーん。ここに結論くるとは思ってもみなかった。

「どうやって?」という問題(つまりは実践方法)は残るのだが、「みんなのために」が答えだ!といわれれば、「いやまあそれはそのとおりですね」と返すしかありません。

これから先に目指すべきは「無私の精神」か。
 

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2012年09月11日

Posted by ブクログ

 橋本先生独特のトーンで、いつものような感じの評論?集。いつもどうもです。経済に関してのコメントが氏は特に秀逸ではないか、と感じる。
 200pくらいでちょっと物足りなさが残るが、また続編を読みたい。

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2016年03月03日

Posted by ブクログ

あとがきを読んで驚いた。
橋本さん、面倒な病気で長く患っているらしい。
地に足のついた並じゃない知性とまっとうさをもった、
日本の知的財産と言ってもイイ人が
「気力が続かなくて物が書けない」というのは尋常じゃない。
その中でぽつぽつと書きすすめたこの本は、分量としては少ないが、
橋本治らしく、たくさんの示唆と、物を考え直すきっかけに溢れている。
「美人は権利になった」
「日本は結論ありきでスタートし、どうするの?ではなくどうなるの?で考える」
「民主主義という究極の政治形態が行き渡り、
何事も簡単に決まらないのは当然の流れ。
力でねじ伏せるこれまでの長い歴史の前提は崩れ、
強いリーダー不在→待望論という形で、独裁者は今は心の中に現れる。
必要なのは自分の為に議論を誘導するディベートの技術ではなく、
みんなのためを考える、といういたってまっとうな道筋」
TPPに関する章を読みながら、安部が再選された現状にうんざりしてしまった。

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2013年02月06日

Posted by ブクログ

最新刊!
患っておられるとのことで、心配…。
今、脳を活性化というか、読んで次々に色んなことを考えてしまう本としてこの方の本に勝るものなし。
あかん、日曜の夜やのに…。

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2012年09月03日

Posted by ブクログ

分からないことを分かろうとして、橋本さんの本を読むと、分からないということが、さらに分かって、分からなくなるんだ。でも、その分からないという状態が嫌いじゃないんだなぁ。

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2012年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「「わからない」という方法 」から10年。リーマンショック、東日本大震災、原発事故、筆者自身の大病を経た、「未来」への指南書。

 橋本治とは、膨大な知識に裏打ちされた歴史認識と、独特の視点および想像力による批評が真骨頂である。まずは、目次を眺める。
第一章 テレビの未来はどうなの?
第二章 ドラマの未来はどうなの?
第三章 出版の未来はどうなの?
第四章 シャッター商店街と結婚の未来はどうなの?
第五章 男の未来と女の未来はどうなの?
第六章 歴史の未来はどうなの?
第七章 TPP後の未来はどうなの?
第八章 経済の未来はどうなの?
第九章 民主主義の未来はどうなの?

さすが、思索は多岐にわたる。

第二章
 橋本は、まず「ドラマ」を、
 「指針のない世の中で、人が生きて行くための指針となった物語」と定義する。
昨今、「大きな物語」は崩壊し、内向きな私小説でないと芥川賞をとれない、などと言われるが、話は江戸時代にさかのぼる。

江戸時代には、「なにしてやがるんだ、テメエ」的な指針に満ちていた。明治維新により「近代的自由」を獲得した人々は、「自由=指針のない状態」を生きるようになる。この時代に、どこまでも前向きな世界観を与えたのが講談であり、その講談から派生した小説が吉川英治の「宮本武蔵」を代表とする「大衆小説」である。一方で川端康成らを代表とする「純文学」は世の中の「苦い認識」を前提とする挫折に満ちたものである。

 小林秀雄が吉川英治に文化勲章を受章するように勧めた話は面白い。

 ここまで自由が多様化し、一般化している現代においては、もはや「前向きな大衆小説」のようなドラマも「売れるパターン」を失っていると言わざるを得ない。指針を示すものも、マンガ、アイドル、スポーツまで多岐にわたってしまっている。それでも、オリンピックにこれだけ人が熱狂できるのは、オリンピック選手にある種の「講談や大衆小説的な前向きさ」が元来宿っているからだろう。サクセスストーリーは、それ自身、自由な庶民の指針となりうるのである。「パワーをもらう」という形で。

自由に慣れた人間は、「押しつけの指針」に対して、「うるせー、関係ねー」と拒絶する。人生の指針は拒絶される。ドラマは、わかりやすいナレーションにより理解されるものでは、断じてない。「面白いドラマ」を自ら求めている人は、「自らの指針を求めている」のである。他人や社会とつながっていない自由に、どれほどの意味があるのだろう?

第四章
 下町の商店街における「職住近接的自営業」と、郊外に一戸建てを買う山の手型「職住分離的勤め人」の対比。庭付き一戸建ては、生活感を隠すための城のミニチュアであるという話。経済成長期において、「生活感」は「生活臭」であり、「貧しさの象徴である」という考察。金持ちになるということは、貧乏時代の下積みを「(見)なかったことにする」ということなのかもしれない。
 自営業のおかみさんに求められる、寅さんのさくら的な「炊事・洗濯・掃除に加えて、商品の仕込み、客の応対、店の経営」までわたるマルチな仕事。
 結婚までの期間が長く、お互いに仕事を持つ「男女共同参画社会」における問題とは、独身生活が長いことによる、「もはやお互いの生活価値観ができあがってしまっている」ことによる結婚後の軋轢に起因するものもあるということ。

 生活感のある街は、時代とともに医療をうけるのと同じように再開発をうけるべきであり、生活感のある街を取り戻すことを我々は考えなければならない。

第八・九章
 「経済」「民主主義」を語る上で、筆者は一つの私見を述べる。
 それは、経済成長という世界的な幻想が、リーマンショック以後の世界経済の破綻によって揺らいでいる現在、日本は、世界経済戦争を過激化してしまった先例として、「成功したゆえに失墜した限界」を認め、敗北を認めるべきであると言う。

エネルギーは好き放題に使えない。産業の発展は公害を生む。それでも産業が発展し、ゴールを見失い加速する経済競走の暴走を止められるのは、いち早く経済の成功と破綻を経験してしまった「先進国」である日本だけだ。
 印象に残ることば------------進むだけではない、Uターンの道もあると教えられる立場にあるのは、日本だけだ。

さらに、九章では、民主主義という制度が、「ものは決められないが、独裁者の抑止力としてはたらく」ものであること、こと日本では、天皇制という、「独裁者」を生みにくい
状況であり、そのような状況では、全員が自分の権利を主張できて、主張してしまうから、これを黙らせることができないし、権利を主張する側が黙ろうとしない。
 政治がものを決められない中で、「成熟した民主主義は、民主主義であることを守ろうとする。」

そして、この閉塞感を打ち破る方法として、次のように述べる。

 「王様」になってしまった国民は、自分以外の「国民のこと」を考えなければ行けないのです。しなければいけない議論の方向を、「自分の有利になる方向」に設定しないことです。「自分の言うことは、みんなのためなることなんだろうか?」と、まず考えることです。

 「無私の精神」 吉田兼好が繰り返し述べたことであり、小林秀雄の著作にもある。

 私は、あとがきにもあるように、筆者が大病をし、自らの体(気力、体力)に不安を感じた今だからこそ、以前にも増してこのような素晴らしい文章を、ストレートに著作に著したのではないかと考えている。医師という職業の持つ「非日常的な場面」や、病気を中心とした家族や患者さんの有り様を間近で見ていて、そこから何かを悟る人は、自分の身の丈を知る=自分の万能感を捨てる、自分のための権利より、「みんなの幸せ」をごく自然に考えられるようになるのだと思う。
 
 なんだか、とても勇気づけられる一冊であった。

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2012年08月20日

Posted by ブクログ

「20世紀は理論の時代だったが、それはもう終わってしまった。」
つまりは、いまや世の中のことは、体系立てて整然と解き明かして
説明できるものではなくなったということです。
そして、そのわからない状態に加えて、
どうわからないのかもわからないくらいややこしさを増している。
そんな世界になって、それをどうでもいいとするか、
それとも少しはわかりたいとするか。
本書の態度は後者で、その未来はどうなんだ?という形式にあてはめて
論じていくものとなっています。

著者の橋本治さんはこの本を書き始める前からご病気になり、
どうにも集中力の続かない「頭の停止した」状態からこれ以上回復しないのではないか、
と医者に言われるような、その水準での安定をしている体調だったようです。
なので、知の武装はいたって平準。
とはいえ、読んでいると、その剣豪っぷりがうかがえました。
この喩えをまとめていってみるとわかりやすいと思うので続けますが、
普通の頭のいい人は、剣の腕もさることながら、
装備している防具や武器もたいそうなものなので、それらの能力にまかせたり、
武器防具自慢をしてしまうところってあります。
しかし、橋本さんの場合、病気のために防具も武器も、
軽いものしか身につけられなくなっており、さらに弱っていると見受けられる、
ご自身の剣術しか頼るものがないような状態なんです。
それなのに、最後の章になっていくにつれて、
その快刀乱麻ぶりが発揮されていくように感じられる。
借り物ではない、ご自身で生み出して育んだ、自分でしかない言葉を使って、
身体からにじみだすような思考と論理を駆使して、
わかるところは解き明かし、わからないところはぼんやりとしたまま無理はしない。

僕はまぁ、人並だと思っていますが、
それでも橋本さんのそういうところには憧れ以前に共感をしてしまいます。
僕は、暗記とかそういうのはもうやめて、自分の頭で論理的に解釈したり創造したり
していく方向で行こうと、高校生くらいの時に決めたふしがあって、
それはまぁ極端なんですが、そうやって鍛えられた部分ってあるんですよね。
それで退化したのが記憶力じゃないかと言われれば、そうでございます、と
弱気に答えるしかないんですが、橋本さんの場合はもともと
そのどちらも達者な人なんだろうな、という気がしました。
この方の本を読むのは二冊目でしたが、もっと読みたいな、
エッセイだけじゃなくて小説も気になるな、と思いました。

本書は2012年に発行されたものですが、
TPPについてや民主主義、歴史解釈についてなどの硬派なものが最後のほうに控えていて、
序盤は、テレビについて、ドラマについて、シャッター商店街について、
各々の未来についての考え、いや、現状を確かめる度合いが強いのですが、
そういう内容になっています。

うわべだけとか、表面しかみないでこれはこうだと決めがちなのが人というもの。
著者はちゃんと横からも後ろからも裏からも見る習慣がついている人だという印象です。
それだから、読んでいてハッとさせられたり、頭をくすぐられたりするんですよね。

すごい武器になるような本ではないかもしれないですが、
思考の経路を体感的に学ぶようなものとしてはとても好い読み物だと思います。

私ごととしては、テレビの項とシャッター商店街の項を参考にすると、
うちの従兄を痛烈に批判できそうな感じでした。
テレビ大好きゆえ、そして都市というものを解釈できていないためなのだなぁとわかりました、
服装に気をつけないところだとか。すごくオシャレせい、と言うんじゃないですが、
そこそこ服装に気を使え、と思う人っているじゃないですか。
それでしたね。僕が言うなってところもありますけども。

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2014年05月23日

Posted by ブクログ

「日本は、敗北を認めた方いいと思います。原発は使わない方がいいと思います。」同感。  経済発展だけが国の目指すところというのは、もう、古い。

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2013年07月17日

Posted by ブクログ

期待したような本ではなかったけど、独特な語り口で、そういう意味ではおもしろい。橋本治さんってこんな本も書くのか。
いろんなテーマに関して、独り言のように、著者自身の考えが淡々と述べられている。
まとまらないので頭に入りにくいのは難点やけど、こういう「このことについてわからないけど、どのようにわからないのか」を正直に書いてくれる本はなかなかない。そういう雰囲気がめっちゃ好きでした。

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2012年08月31日

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