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男はなぜ、ゴミ屋敷の主になり果てたのか? いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人達の非難の視線に晒される男・下山忠市。戦時中に少年時代を過ごし、昭和期日本をただまっとうに生きてきたはずの忠市は、どうして、家族も道も、見失ったのか――。誰もが顔を背けるような現在のありさまと、そこにいたるまでの遍歴を、鎮魂の光のなかに描きだす。橋本治、初の純文学長篇。
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Posted by ブクログ
ゴミ屋敷と化した家に独りで暮らす下山忠市の生涯、それに悩まされる向かいの家の吉田家や、ワイド・ショーの取材にこたえる矢嶋富子、そして町やそこに暮らす人びとの変化を見てきた田村喜久江などの登場人物たちの心理をたどった小説です。
著者の作品はおおむね、小説であれエッセイであれ、「近代」もしくは「戦後」という時間を生きてきた人間の精神の軌跡をえがくという手法がとられており、本書もその基本的な手法を共有しています。ゴミ屋敷をめぐる問題については、一人で暮らす老人の孤独といった、現代という時間だけをとりあげるかたちで語られるのをしばしば目にしますが、そうした表層的な見かたを越えて、大きな変化を遂げた戦後という時代に目を向けたところに、著者のねらいがあったように思います。
他方、忠市の弟である修次が、実家の惨状をテレビで知ってそこへ駆けつけてからの展開は、やや性急に感じられます。これも著者の小説にありがちなことではあるのですが、「時代」とそれを生きる「人間」をえがいたことで目的は達せられており、小説としての「締めくくり」を仕上げるのに、それほど関心がなかったのではないかと感じてしまいます。もっとも、忠市の生きてきた戦後という時間と空間は現代にもつづいており、われわれ自身もおなじ時間と空間を現に生きているのだと考えるならば、「締めくくり」などないのかもしれません。
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